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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1147101
審判番号 不服2004-4406  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-04 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 特願2001-312764「仮想世界システム、サーバコンピュータおよび情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月26日出願公開、特開2002-207685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成13年10月10日(優先権主張平成12年10月12日)の出願であって、その請求項2に係る発明は、平成16年4月1日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項2】
仮想世界システムを提供するサーバコンピュータにコンピュータネットワークを介して接続される端末コンピュータであって、
操作者に課題を与え、操作者が課題に対して所定の条件を満たした場合には、所定のデータフォーマットで記述されたオブジェクトを操作者が前記端末コンピュータ上で操作可能な状態にするオブジェクト提供手段と、
前記サーバコンピュータ上に生成する仮想世界に参加するための手段であって、前記操作可能となったオブジェクトを、操作者からの指示に応じて前記サーバコンピュータに送信する仮想世界参加手段とを備えることを特徴とする端末コンピュータ。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-157741号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

(1)「【0023】さて、図1に示すように本実施形態では、メモリーカード(携帯型情報記憶装置)1070の挿入が可能なスロット1072が設けられる。このスロット1072は各プレーヤ毎に設けられる。また、メモリーカード1070は家庭用ゲーム装置でも使用可能になっており、プレーヤは、家庭用ゲーム装置で車の改造を行い、その改造情報(カスタマイズ情報)をメモリーカード1070に書き込む。次に、プレーヤは、改造情報が書き込まれたメモリーカード1070を、業務用ゲーム装置が設置されるゲーム施設に持ち込み、図1のスロット1072に挿入する。そして、メモリーカード1070に書き込まれた改造情報を業務用ゲーム装置に読み込ませる。そして、プレーヤが改造を施した車を業務用ゲーム装置において操作し、他のプレーヤやコンピュータが操作する車との競争ゲームを楽しむ。」(5ページ左欄46行?右欄10行)

(2)「【0026】図2に、本実施形態のゲーム装置の機能ブロック図の一例を示す。
【0027】ここで、処理部100は、装置全体の制御、装置内の各ブロックへの命令の指示、ゲーム演算などの各種の処理を行うものであり、その機能は、CPU(CISC型、RISC型)、DSP、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや所与のプログラム(ゲームプログラム)により実現できる。」(同ページ右欄24行?31行)

(3)「【0037】処理部100はゲーム演算部110を含む。
【0038】ここでゲーム演算部110は、コイン(代価)の受け付け処理、ゲームモードの設定処理、ゲームの進行処理、選択画面の設定処理、移動体(バイク、キャラクタ、ロボット、車、戦車、飛行機、宇宙船、船、ボート、スキー板、サーフボード、ボール、弾等)の位置や方向を決める処理、視点位置や視線方向を決める処理、移動体のモーションを再生する処理、オブジェクト空間へオブジェクトを配置する処理、ヒットチェック処理、ゲーム成果(成績)を演算する処理、複数のプレーヤが共通のゲーム空間でプレイするための処理、或いはゲームオーバー処理などの種々のゲーム演算処理を、操作部130からの操作情報、メモリーカード180からのカスタマイズ情報(改造情報)、ゲームプログラムなどに基づいて行う。」(6ページ左欄41行?右欄6行)

(4)「【0043】なお本実施形態における携帯型情報記憶装置としては、メモリーカード以外にも例えば図3(A)に示すようなPDA(Personal Digital Assistant、或いは携帯型ゲーム装置)900などを用いることができる。このPDA900は、表示部902、操作部904(ボタン、十字キー)を有しており、単体でゲームプレイを楽しむことが可能になっている。このPDA900は業務用ゲーム装置のスロットに挿入可能になっていると共に、家庭用ゲーム装置の本体装置のスロットやゲームコントローラのスロットにも挿入可能になっている。これにより、PDA900と業務用ゲーム装置との間の情報交換、及びPDA900と家庭用ゲーム装置との間の情報交換が可能になり、家庭用ゲーム装置と業務用ゲーム装置との間の情報交換を実現できる。
【0044】なお、図3(B)に示すように、スロットを用いずに赤外線、電波などの無線を用いて、PDA900と業務用ゲーム装置との間の情報交換、PDA900と家庭用ゲーム装置との間の情報交換、PDA900と他のPDAとの間の情報交換を行うようにしてもよい。
【0045】また、プレーヤのカスタマイズ情報の作成(車の改造)を家庭用ゲーム装置で行う代わりに、PDA900で行うようにしてもよい。
【0046】また、プレーヤのカスタマイズ情報は、メモリーカードやPDAなどの携帯型情報記憶装置を利用してゲーム装置に転送することが特に望ましいが、通信ラインを利用してゲーム装置に転送するようにしてもよい。」(同ページ右欄37行?7ページ左欄14行)

(5)「【0047】図4に、ゲーム装置(ゲーム端末)200-1?200-Nを通信ライン202を介してホスト装置204に接続した場合の全体構成例を示す。この場合の接続は、I/Oポート等を用いた直接接続、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の小規模ネットワークを介した接続、インターネット等の広域ネットワークを介した接続など、任意の形態をとることができる。また、接続トポロジーも、バス型、リング型、ツリー型、スター型等、種々のトポロジーをとることができる。例えばIEEE1394やUSBの規格で接続する場合にはツリー型の接続トポロジーが望ましい。
【0048】なお、図4の構成の場合、本発明の処理を、ホスト装置とゲーム装置(ゲーム端末)とで(サーバーを設ける場合にはホスト装置とサーバーとゲーム装置とで)分散して処理するようにしてもよい。」(7ページ左欄15行?29行)

(6)「【0051】図6に家庭用ゲーム装置の構成例を示す。
【0052】図6に示すように、この家庭用ゲーム装置は、処理部400、操作部430、記憶部440、情報記憶媒体450、画像生成部460、表示部462、音生成部470、音出力部472、通信部474、I/F部476を含む。処理部400が含むゲーム演算部410は、操作部430からの操作情報や情報記憶媒体450に格納されるゲームプログラム、データなどに基づいてゲーム演算を行う。そして、このゲーム演算の結果に応じたゲーム画像、ゲーム音が生成され、表示部462、音出力部472から出力される。プレーヤは、このゲーム画像を見たりゲーム音を聞きながらゲームをプレイする。また、プレーヤのゲームプレイや編集作業により得られたカスタマイズ情報は、メモリーカード180に書き込まれ、図2のゲーム装置にて読み出すことが可能になる。逆に、図2のゲーム装置で得られた情報は、メモリーカード180に書き込まれて、図6の家庭用ゲーム装置にて読み出すことが可能になる。」(7ページ左欄49行?右欄16行)

(7)「【0054】2.本実施形態の特徴
まず、本実施形態により実現されるゲーム、即ちスロットリンクシステムを利用した車レースゲームについて説明する。」(同ページ右欄21行?24行)

(8)「【0056】ゲーム施設においてプレーヤは、業務用ゲーム装置のスロットにメモリーカードを挿して、ゲームを開始する。業務用ゲーム装置では図1のように、現実世界の車の運転と同様に、シート1040に座りステアリング1052、アクセル1054等を操作して車1060を運転できるため、家庭用ゲーム装置でのゲームプレイに比べて、プレーヤの仮想現実感を高めることができる。また業務用ゲーム装置では不特定多数のプレーヤと対戦できるため、家庭用ゲーム装置でのプレイに比べて、様々なプレーヤと対戦できるという楽しみがある。
【0057】レースにおいて優勝したり入賞するとプレーヤは賞金を獲得できる。そして、獲得した賞金の情報はメモリーカードに書き込まれる。プレーヤは、このメモリーカードを自宅に持ち帰り、獲得した賞金で改造パーツや新しいベース車を購入する。そして、レースにおいて更に良い成績をとるために、車に新たな改造を加える。」(同ページ同欄34行?50行)

(9)「【0120】また本発明は、業務用ゲーム装置に適用することが特に好ましいが、家庭用ゲーム装置(特にインターネットなどに接続可能な家庭用ゲーム装置)に適用することも可能である。また、シミュレータ、多数のプレーヤが参加する大型アトラクション装置、パーソナルコンピュータ、マルチメディア端末、ゲーム画像を生成するシステム基板等の種々のゲーム装置に適用することが可能である。」(12ページ左欄29行?36行)

以上の記載から、引用例には、次の発明(以下「引用例発明」という。)が記載されているものと認める。

「業務用ゲーム装置200-1?200-Nは通信ライン202を介してホスト装置204に接続され、この場合の接続は、I/Oポート等を用いた直接接続、LAN(ローカルエリアネットワーク)等の小規模ネットワークを介した接続、インターネット等の広域ネットワークを介した接続など、任意の形態をとることができ、
ゲーム装置の処理部100は、装置全体の制御、装置内の各ブロックへの命令の指示、ゲーム演算などの各種の処理を行うものであって、ゲーム演算部110を含み、
ゲーム演算部110は、ゲームの進行処理、車などの移動体の位置や方向を決める処理、視点位置や視線方向を決める処理、移動体のモーションを再生する処理、オブジェクト空間へオブジェクトを配置する処理、ゲーム成果(成績)を演算する処理、複数のプレーヤが共通のゲーム空間でプレイするための処理などの種々のゲーム演算処理を、操作部130からの操作情報、メモリーカード180からのカスタマイズ情報(改造情報)、ゲームプログラムなどに基づいて行い、
ゲーム施設においてプレーヤは、業務用ゲーム装置のスロットにメモリーカードを挿して、ゲームを開始し、
業務用ゲーム装置では、現実世界の車の運転と同様に、車1060を運転でき、
プレーヤが改造を施した車を業務用ゲーム装置において操作し、他のプレーヤやコンピュータが操作する車との競争ゲームを楽しむことができ、
レースにおいて優勝したり入賞するとプレーヤは賞金を獲得でき、獲得した賞金の情報はメモリーカードに書き込まれ、
プレーヤは、このメモリーカードを自宅に持ち帰り、獲得した賞金で改造パーツや新しいベース車を購入して、レースにおいて更に良い成績をとるために、車に新たな改造を加えるものであり、
家庭用ゲーム装置は、プレーヤのゲームプレイや編集作業により得られたカスタマイズ情報をメモリーカード180に書き込むものであって、
プレーヤのカスタマイズ情報は、通信ラインを利用してゲーム装置に転送するようにしてもよい
スロットリンクシステムを利用した車レースゲーム。」

3.対比
本願発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「車レースゲーム」は、「現実世界の車の運転と同様に、車1060を運転でき」るものであるから、本願発明の「仮想世界システム」であるといえる。
また、このようなゲームを行うにあたり、本願発明の「ホスト装置204」は、「ゲーム装置の処理部100」によって「装置全体の制御、装置内の各ブロックへの命令の指示、ゲーム演算などの各種の処理を行うものであって、ゲーム演算部110を含み、
ゲーム演算部110は、ゲームの進行処理、車などの移動体の位置や方向を決める処理、視点位置や視線方向を決める処理、移動体のモーションを再生する処理、オブジェクト空間へオブジェクトを配置する処理、ゲーム成果(成績)を演算する処理、複数のプレーヤが共通のゲーム空間でプレイするための処理などの種々のゲーム演算処理を、操作部130からの操作情報、メモリーカード180からのカスタマイズ情報(改造情報)、ゲームプログラムなどに基づいて行」うものであるから、本願発明の「仮想世界システムを提供するサーバコンピュータ」に相当するものと認められる。
引用例発明の「業務用ゲーム装置200-1?200-N」は「通信ライン202を介してホスト装置204に接続され」ていることから、当該業務用ゲーム装置とホスト装置204とはコンピュータネットワークを介して接続しているといえる。
また、引用例発明の「業務用ゲーム装置」も「家庭用ゲーム装置」も、所定の処理部を有するコンピュータであることは明白であり、また、摘記事項(9)によれば、「家庭用ゲーム装置」は、インターネットなどに接続可能な家庭用ゲーム装置に適用した場合には、コンピュータネットワークを介してホスト装置204と接続されているといえるから、ホスト装置から見れば、いずれも端末コンピュータであると認められ、両者まとめて本願発明の「端末コンピュータ」に相当しているといえる。
引用例発明は、「プレーヤが改造を施した車を業務用ゲーム装置において操作し、他のプレーヤやコンピュータが操作する車との競争ゲームを楽しむことができ」るので、引用例発明の「プレーヤが改造を施した車」は、本願発明の「操作可能となったオブジェクト」に相当する。
また、引用例発明は、「レースにおいて優勝したり入賞するとプレーヤは賞金を獲得でき、獲得した賞金の情報はメモリーカードに書き込まれ、
プレーヤは、このメモリーカードを自宅に持ち帰り、獲得した賞金で改造パーツや新しいベース車を購入して、レースにおいて更に良い成績をとるために、車に新たな改造を加える」ことから、端末コンピュータの一部である業務用ゲーム装置で、操作者に課題を与え、操作者が課題に対して所定の条件を満たした場合に、端末コンピュータの一部である家庭用ゲーム装置でプレーヤが改造を施した車を、業務用ゲーム装置において操作し、他のプレーヤやコンピュータが操作する車との競争ゲームを楽しむものであるから、引用例発明は、「操作者に課題を与え、操作者が課題に対して所定の条件を満たした場合には、オブジェクトを操作者が前記端末コンピュータ上で操作可能な状態にするオブジェクト提供手段」に相当するものを有するものと認められる。
引用例発明は、カスタマイズ情報をメモリーカードを通じて業務用ゲーム装置に提供しつつ、ホスト装置にも提供して、プレーヤが改造を施した車によって車レースゲームを楽しむことができるものであるから、本願発明の「サーバコンピュータ上に生成する仮想世界に参加するための手段」を有するものと認められる。

以上を総合して、両者は、

「仮想世界システムを提供するサーバコンピュータにコンピュータネットワークを介して接続される端末コンピュータであって、
操作者に課題を与え、操作者が課題に対して所定の条件を満たした場合には、オブジェクトを操作者が前記端末コンピュータ上で操作可能な状態にするオブジェクト提供手段と、
前記サーバコンピュータ上に生成する仮想世界に参加するための手段を備える端末コンピュータ。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明の「オブジェクト」は、所定のデータフォーマットで記述されたものであるのに対し、引用例発明のオブジェクトはどのようなフォーマットで記述されているか不明な点。

[相違点2]本願発明は、「操作可能となったオブジェクトを、操作者からの指示に応じて前記サーバコンピュータに送信する」のに対し、引用例発明はメモリーカード180からのカスタマイズ情報(改造情報)やプレーヤが改造を施した車をホスト装置に送信するかどうか不明な点。

4.判断
[相違点1]
引用例発明において、プレーヤが改造を施した車、すなわち操作可能となったオブジェクトは、プレーヤが、業務用ゲーム装置において操作し、他のプレーヤやコンピュータが操作する車との競争ゲームを楽しむことができるものであり、当該オブジェクトは、家庭用ゲーム装置及び業務用ゲーム装置双方で使用できるものであるから、そこに何らかのデータフォーマットが存在することは明らかである。
したがって、引用例発明のオブジェクトも所定のデータフォーマットで記述されたものと認められ、本相違は実質的なものではない。

[相違点2]
引用例発明は、サーバコンピュータがゲームの進行処理などをメモリーカードからのカスタマイズ情報(改造情報)に基づいて行い、業務用ゲーム装置のスロットにメモリーカードが挿し込まれて、プレーヤが改造を施した車を業務用ゲーム装置においてプレーヤが操作し、他のプレーヤやコンピュータが操作する車との競争ゲームを楽しむことができるものであるが、プレーヤがゲームを楽しむ際に、サーバコンピュータがゲームの進行処理などをメモリーカードからのカスタマイズ情報(改造情報)に基づいて行うことに代え、端末から送信されたオブジェクトに基づいてゲームの進行処理をするよう構成することは当業者が容易になし得るところであり、また一般に、コンピュータによって処理などを行う場合に、メモリーカード等に記録された情報を、メニュー操作などの操作者からの指示に応じてサーバコンピュータ等に送信することは、慣用的に行う程度のことに過ぎない。
したがって、引用例発明において、操作可能となったオブジェクトを、操作者からの指示に応じて前記サーバコンピュータに送信するよう構成することは当業者が容易になし得るものと認められる。

また、本願発明の効果も、引用例の記載に基づけば、当業者が普通に想起する範囲内のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-05 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-26 
出願番号 特願2001-312764(P2001-312764)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 竜也竹井 文雄  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 山崎 慎一
右田 勝則
発明の名称 仮想世界システム、サーバコンピュータおよび情報処理装置  
代理人 特許業務法人湘洋内外特許事務所  

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