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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1147119
審判番号 不服2004-12467  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-17 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成11年特許願第187294号「データ転送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年1月19日出願公開、特開2001-16269〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成11年7月1日の出願であって、平成16年5月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年7月20日付けで手続補正がなされ、その後平成18年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月28日付けで手続補正がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記平成18年8月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「複数のノード間でデータ転送を行うデータ転送装置において、
転送を開始するときに転送データの受入が可能であるか否かについてメッセージを伝達し合う、送信側ノードのアウトプット切替制御手段及び受信側ノードのインプット切替制御手段を有し、
複数の入力チャネルを有し、前記入力チャネル毎に、第1データ入力用バッファと、第1データ入力用バッファ内データを入力する複数の第2データ入力用バッファとを備え、
前記複数の入力チャネルに相対する複数の出力チャネルを有し、前記出力チャネル毎に、複数の第1データ出力用バッファと、第1データ出力用バッファ内データを入力する第2データ出力用バッファとを備え、
データ領域の前に転出先アドレス情報が含まれるデータ転送単位の転送を行う際に、前記転出先アドレス情報によって、前記第2データ入力用バッファの1つと、前記第1データ出力用バッファの1つとの間の接続が確立し、データ転送期間中、その接続関係が保持され続けることを特徴とするデータ転送装置。」

2.引用発明及び周知技術
(1)当審の拒絶理由に引用された特開平7-303114号公報(平成7年11月14日公開、以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0010】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の負荷分散を行なうパケット通信システムを示すブロック図、図2は図1の実施例に用いられる通信装置の入出力端部を詳細に示すブロック図である。通信装置11,12,13,14は、交換装置または端末装置であって、ネットワークを構成するために装置間が複数の双方向のリンクでそれぞれ接続され、通信装置間のトラヒックの負荷分散が図れる構成となっている。
【0011】通信装置11,12,13,14の各入出力端部は、図2に示すような同一形式のパケット送信部10とパケット受信部20とから構成されている。すなわち、伝送路102a,102bよりそれぞれパケット受信部20に入力されたパケットは、パケット受信処理部4a,4bにそれぞれ入力され、有為パケットだと識別された後にバッファメモリ3a,3bに入力される。このとき、パケット受信処理部4a,4bはパケットの受信を制御線108a,108bを介してバッファメモリ中のパケット蓄積数カウンタ5a,5b(別体として設けてもよい)に通知する(例えば、カウントアップする)。
【0012】一方、パケット読出制御部6a,6bは、バッファメモリ3a,3bに蓄積されたパケットの読み出しを交互に行い、通信路106a,106bに出力するとともに、パケットの読み出しを制御線107a,107bを介して先のカウンタ5a,5bに通知する(例えば、カウントダウンする)。セレクタ8は通信路106a,106bから来たパケットを多重し、通信路104を介して通信装置内部に送信する。
【0013】カウンタ5a,5bはバッファメモリ3a,3b内のパケット数を管理しているが、この数が一定値を越えると、パケットのオーバーフローの警告信号を制御線110a,110bを介してパケット送信部10の輻輳通知制御部1a,1bに通知する。輻輳通知制御部1a,1bは、パケットに設けられた輻輳通知領域に輻輳が生じたことを明示的に書き込む。このパケットが、伝送路101a,101bを通ってパケットの輻輳を引き起こした相手側通信装置に転送されることにより、相手側通信装置は自身の送信パケットにより輻輳が生じていることを知る。ここでのパケットの輻輳通知領域は、ネットワーク内で矛盾の内容に予め定義されている前提であり、ネットワーク内で使用するプロトコルに影響がなければどの領域をアサインしても構わない。
【0014】上述のようにパケットに明示的に記された輻輳通知は、パケットの受信側の通信装置のパケット受信処理部4a,4bにより検出され、相手側の輻輳状態を制御線109a,109bにより対向装置状態管理部7がこれを認識し、パケット送信部のセレクタ2を制御線111を介して制御する。セレクタ2は、制御線111が示すリンクの輻輳状態を参照して、通信路103を介して装置内部から受信するパケットを、通信路105a,105bのどちらに出力したら良いかを選択する。両方のリンク(それ以上のリンクがあった場合には、いずれのリンクも)がともに輻輳している場合は、装置内部からのパケットの送信を規制するために制御線112の規制信号をアクティブにする。」(3頁3?4欄、段落10?14)

上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、例えば上記「通信装置11,12,13,14」は複数の「交換装置または端末装置」(即ち、「複数のノード」)であり、「パケット」(即ち、「データ」)を送受信(即ち、転送)するものであり、「パケット送信部」と「パケット受信部」からなる「入出力端部」はいわゆる「データ送受信装置」を構成している。
また、上記「相手側通信装置」はいわゆる「送信側ノード」であり、「輻輳通知」を送出する通信装置はいわゆる「受信側ノード」である。
したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
(引用発明)
「複数のノード間でデータ転送を行うデータ送受信装置において、
受信側ノードは送信側ノードに輻輳通知を送出し、送信側ノードは通知に基づいて通信路を選択する手段を有するデータ送受信装置。」

(2)同じく当審の拒絶理由に引用された国際公開WO97-04543号公報(平成9年2月6日公開、以下、「引用例2」という。邦訳については例えば特表平11-510009号公報参照)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「What is claimed:
1. A method for controlling flow of at least one inputted cell within a network, the method comprising the steps of:
receiving the at least one inputted cell in a switch having a plurality of input buffers associated with a plurality of input ports, said input buffers making up at least one input queue, and an a plurality of output buffers associated with a plurality of output ports, said output buffers making up at least one output queue, the cell being received in the input queue of the input memory;
forwarding a request to transmit the at least one inputted cell to one of said at least one output queue;
granting said request to transmit if sufficient buffers are available in the output queue for receipt of the at least one inputted cell;
denying said request to transmit if sufficient buffers are not available in the output queue for receipt of the at least one inputted cell;
transmitting the at least one inputted cell from the input queue to the output queue if the submitted request is granted; and
delaying transmission of the at least one inputted cell from the input queue to the output queue if the submitted request is denied.
・・・(中略)・・・
4. The method of claim 3 including the further step of assigning each input queue and output queue to a selected connection, whereby flow control is executed on a per connection basis.
・・・(中略)・・・
7. The method of claim 3 including the further step of providing a feedback message in response to the request to transmit, the feedback message indicating whether the submitted request is granted or denied.」(PP. 22 - 23, claim 1 - 7)

(邦訳)「【特許請求の範囲】
1. 少なくとも1つの入力キューを形成し、複数の入力ポートに関連する複数の入力バッファと、少なくとも1つの出力キューを形成し、複数の出力ポートに関連する出力バッファとを有する交換機の中で、入力メモリの入力キューの中で受信された少なくとも1つの入力されたセルを受信する段階と、
少なくとも1つの入力されたセルを該少なくとも1つの出力キューへ伝送する要求を転送する段階と、
少なくとも1つの入力されたセルの受信のために出力キュー内で充分なバッファが使用可能であれば該伝送要求を認可する段階と、
少なくとも1つの入力されたセルの受信のために出力キュー内で充分なバッファが使用可能でなければ該伝送要求を拒否する段階と、
出された要求が認可されれば少なくとも1つの入力されたセルを入力キューから出力キューへ伝送する段階と、
出された要求が拒否されれば少なくとも1つの入力されたセルの入力キューから出力キューへの伝送を遅延する段階とからなる、網内の少なくとも1つの入力されたセルのフローを制御する方法。
・・・(中略)・・・
4. 選択されたコネクションに対して各入力キュー及び出力キューを割り当てる段階を更に有し、それによりフロー制御は1つのコネクション毎に実行される、請求項3記載の方法。
・・・(中略)・・・
7. 伝送要求に応答して、出された要求が認可されたか、拒否されたかを示すフィードバックメッセージを与える段階を更に有する、請求項3記載の方法。」(特許請求の範囲、請求項1?7)

ロ.「In order to provide both connection and traffic type isolation the buffers 26, 28 are organized into queues 32, 34 respectively and flow control is implemented on a per queue basis. Each queue includes multiple buffers, and each input port and output port includes multiple input queues 32 and multiple output queues 34. Upon entering the switch, each cell 24 is loaded into a particular input queue 32 for eventual transmission to a particular output queue 34.」(p. 8, l. 25 - 33)

(邦訳)「バッファ26,28は夫々キュー32,34に組織化され、フロー制御は1つのキュー毎に実施される。各キューは多数のバッファを含み、各入力ポート及び出力ポートは多数の入力キュー32及び多数の出力キュー34を含む。交換機に入るとき、夫々のセル24は特定出力キュー34への最終的な伝送のために特定入力キュー32へロードされる。」(15頁16?20行目)

即ち、上記引用例2には「転送を開始するときに転送データの受入が可能であるか否かについてメッセージを伝達し合う転送可否情報通知手段」及び「選択されたコネクションに対して入出力バッファを割り当てる」こと、「各入力ポート及び出力ポートに多数のバッファを含む多数の入力キュー及び多数のバッファを含む多数の出力キューを割り当てる」ことが開示されている。

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「データ送受信装置」と本願発明の「データ転送装置」の間に実質的な差異はない。
また、引用発明の「受信側ノードは送信側ノードに輻輳通知を送出し」という構成と本願発明の「転送を開始するときに転送データの受入が可能であるか否かについてメッセージを伝達し合う」という構成はいずれも「転送可否情報通知手段」であるという点で一致しており、引用発明の「送信側ノードは通知に基づいて通信路を選択する手段」と本願発明の「送信側ノードのアウトプット切替制御手段及び受信側ノードのインプット切替制御手段」はいずれも「伝送経路切換手段」であるという点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>)
「複数のノード間でデータ転送を行うデータ転送装置において、
転送可否情報通知手段と、伝送経路切換手段を有するデータ転送装置。」

<相違点>
(1)「転送可否情報通知手段」に関し、本願発明は「転送を開始するときに転送データの受入が可能であるか否かについてメッセージを伝達し合う」という構成であるのに対し、引用発明は「受信側ノードは送信側ノードに輻輳通知を送出し」という構成である点。
(2)「伝送経路切換手段」に関し、本願発明は「送信側ノードのアウトプット切替制御手段及び受信側ノードのインプット切替制御手段」であるのに対し、引用発明は「送信側ノードは通知に基づいて通信路を選択する」構成である点。
(3)本願発明は「複数の入力チャネルを有し、前記入力チャネル毎に、第1データ入力用バッファと、第1データ入力用バッファ内データを入力する複数の第2データ入力用バッファとを備え、前記複数の入力チャネルに相対する複数の出力チャネルを有し、前記出力チャネル毎に、複数の第1データ出力用バッファと、第1データ出力用バッファ内データを入力する第2データ出力用バッファとを備え、データ領域の前に転出先アドレス情報が含まれるデータ転送単位の転送を行う際に、前記転出先アドレス情報によって、前記第2データ入力用バッファの1つと、前記第1データ出力用バッファの1つとの間の接続が確立し、データ転送期間中、その接続関係が保持され続ける」ものであるのに対し、引用発明はそのような構成を備えているか否か不明である点。

4.判断
そこで、まず、上記相違点1の「転送可否情報通知手段」について検討するに、例えば上記引用例2に開示されているように「転送を開始するときに転送データの受入が可能であるか否かについてメッセージを伝達し合う転送可否情報通知手段」は公知であるところ、当該公知の「転送可否情報通知手段」を引用発明の転送可否情報通知手段として採用する上での阻害要因は何も見あたらないから、当該引用例2に開示された公知技術に基づいて、引用発明の「受信側ノードは送信側ノードに輻輳通知を送出し」という構成を、本願発明のような「転送を開始するときに転送データの受入が可能であるか否かについてメッセージを伝達し合う」という構成に変更する程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点2の「伝送経路切換手段」について検討するに、送信側ノードが通知に基づいて通信路を選択した場合に、受信側のノードも対応する通信路を選択する必要があることは当業者であれば自明のことであるから、引用発明の「送信側ノードは通知に基づいて通信路を選択する」構成を本願発明のような「送信側ノードのアウトプット切替制御手段及び受信側ノードのインプット切替制御手段」からなる構成とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点3について検討するに、上記引用例2には「選択されたコネクションに対して入出力バッファを割り当てる」こと、及び「各入力ポート及び出力ポートに多数のバッファを含む多数の入力キュー及び多数のバッファを含む多数の出力キューを割り当てる」ことが開示されているところ、当該引用例2の技術手段における「各入力ポート及び出力ポート」及び「多数のバッファを含む多数の入力キュー及び多数のバッファを含む多数の出力キュー」はそれぞれ本願発明の「複数の入力チャネル」、「複数の入力チャネルに相対する複数の出力チャネル」及び「複数の第2データ入力用バッファ」、「複数の第1データ出力用バッファ」に相当するものであり、また前記「選択されたコネクションに対して入出力バッファを割り当てる」場合に「到着するデータを一旦受信し蓄えておき、当該割り当て作業を行うための一時的な記憶手段」ないし「出力作業を行うための一時的な記憶手段」(即ち、本願発明でいう「第1データ入力用バッファ」ないし「第2データ出力用バッファ」)を入出力ポートと当該入出力バッファ間に設けることは単なる慣用手段に過ぎず、また前記「選択されたコネクションに対して入出力バッファを割り当てる」とは本願発明でいう「データ領域の前に転出先アドレス情報が含まれるデータ転送単位の転送を行う際に、前記転出先アドレス情報によって、前記第2データ入力用バッファの1つと、前記第1データ出力用バッファの1つとの間の接続が確立し、データ転送期間中、その接続関係が保持され続ける」ことに他ならないものであるから、これらの技術手段に基づいて、引用発明に本願発明のような「複数の入力チャネルを有し、前記入力チャネル毎に、第1データ入力用バッファと、第1データ入力用バッファ内データを入力する複数の第2データ入力用バッファとを備え、前記複数の入力チャネルに相対する複数の出力チャネルを有し、前記出力チャネル毎に、複数の第1データ出力用バッファと、第1データ出力用バッファ内データを入力する第2データ出力用バッファとを備え、データ領域の前に転出先アドレス情報が含まれるデータ転送単位の転送を行う際に、前記転出先アドレス情報によって、前記第2データ入力用バッファの1つと、前記第1データ出力用バッファの1つとの間の接続が確立し、データ転送期間中、その接続関係が保持され続ける」という構成を付加する程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-06 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平11-187294
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀和  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 浜野 友茂
中木 努
発明の名称 データ転送装置  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 工藤 雅司  
代理人 机 昌彦  

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