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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1147125 |
審判番号 | 不服2004-13665 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2003-06-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-01 |
確定日 | 2006-11-09 |
事件の表示 | 特願2001-370511「著作物のリース支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月13日出願公開、特開2003-167969〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年12月4日の出願であって、平成16年5月24日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年7月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月30日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成16年7月30日付の手続補正についての補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 平成16年7月30日付の手続補正を却下する。 2 理由 (1)補正後の本願発明 本補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。 「【請求項1】通信ネットワークに接続された端末装置を介して法人または個人の著作者による著作物をリース物件として顧客に提供するためのコンピュータシステムによる支援システムであって、 著作物を所有する著作者の端末装置と、著作物の提供を受ける顧客の端末装置と、著作物を仲介するリース事業者の端末装置と、これらの各端末装置と通信ネットワークを介して接続され情報の送受信を行うリース情報管理装置とから構成され、 前記リース情報管理装置は、 前記著作物及び該著作物の著作者情報を含む著作権に関する情報を蓄積する著作物データベースと、著作権保護のために必要な法的手続を含む法律に関する各種資料を蓄積する法的資料データベースと、前記著作物の著作者とリース事業者及び著作物を使用する顧客とのリースに必要な契約情報を含むリース物件に関する各種手続情報を蓄積するリース情報データベースとから少なくともなる各データベースを一括管理するデータベース管理手段を備え、 前記著作者の端末装置からの要求に応答し、コンピュータグラフィックスによるアニメーションキャラクタや3次元表示用の3Dオブジェクト等の3次元情報を有する各種著作物の登録を受付け前記著作物データベースに登録する登録受付手段と、 前記著作物を確認し前記著作者に対して登録受付けを通知するための登録日時を含む受付情報を前記著作者の端末装置に送信する登録受付通知手段と、 前記著作物データベースに蓄積する著作物に対して権利者に代わり譲渡手続及び質権設定等の法的手続を代行する際の法的手続の登録及び関連する資料の検索を前記法的資料データベースを用いて行う法的手続代行手段と、 前記著作物データベースに蓄積する著作物に対して少なくとも前記著作者とリース事業者との契約情報及び前記著作物を利用する顧客とリース事業者とのリース契約情報の検索・登録を前記リース情報データベースを用いて行うリース手続管理手段とを備えることを特徴とする著作物のリース支援システム。」(以下、「補正発明」という。) (2)本補正前である拒絶査定時の特許請求の範囲(平成16年3月29日付け手続補正書)の請求項1に記載された発明は、次のとおりである。 「【請求項1】通信ネットワークに接続された端末装置を介して法人または個人の著作者による著作物をリース物件として顧客に提供するためのコンピュータシステムによる支援システムであって、 著作物を所有する著作者の端末装置と、著作物の提供を受ける顧客の端末装置と、著作物を仲介するリース事業者の端末装置と、これらの各端末装置と通信ネットワークを介して接続され情報の送受信を行うリース情報管理装置とから構成され、 前記リース情報管理装置は、 前記著作物及び該著作物の著作者情報を含む著作権に関する情報を蓄積する著作物データベースと、著作権保護のために必要な法的手続を含む法律に関する各種資料を蓄積する法的資料データベースと、前記著作物の著作者とリース事業者及び著作物を使用する顧客とのリースに必要な契約情報を含むリース物件に関する各種手続情報を蓄積するリース情報データベースとから少なくともなる各データベースを一括管理するデータベース管理手段を備え、 前記著作者の端末装置からの要求に応答し、コンピュータグラフィックスによるアニメーションキャラクタや3次元表示用の3Dオブジェクト等の3次元情報を有する各種著作物の登録を受付け前記著作物データベースに登録する登録受付手段と、 前記著作物を確認し前記著作者に対して登録受付けを通知するための登録日時を含む受付情報を前記著作者の端末装置に送信する登録受付通知手段と、 前記著作物データベースに蓄積する著作物に対して権利者に代わり譲渡手続及び質権設定等の法的手続を代行するための情報を前記法的資料データベースより検索し、検索して得られた情報に基づいて当該著作物の権利者のために必要なデータを作成し前記著作物データベースに登録する法的手続代行手段と、 前記著作物データベースに蓄積する著作物に対して少なくとも前記著作者とリース事業者との契約情報及び前記著作物を利用する顧客とリース事業者とのリース契約情報を前記リース情報データベースより検索し、検索して得られた情報に基づいて当該著作物を利用する顧客に必要なリースに関する各種手続き及び管理のためのデータを作成し前記リース情報データベースに登録するリース手続管理手段と、 前記受付け登録した著作者からの著作物の登録代金と譲渡又は質権設定手続に伴う諸費用とを徴収するための課金情報を前記当該データベースに登録する課金手段とを備えることを特徴とする著作物のリース支援システム。」(以下、「補正前発明」という。) (3)補正の適否 補正発明と、補正前発明とを対比すると、補正発明は、補正前発明の「法的手続代行手段」及び「リース手続管理手段」の構成を変更し、「課金手段」の構成を削除するものである。 このうち、「課金手段」の構成を削除する補正は、補正前の技術事項を限定するものではないから、特許法に規定する限定的減縮を目的としたものではない。 また、同補正は、明りょうでない記載の釈明にも誤記の訂正にも該当しない。 したがって、この補正は、特許法17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に違反するものであるから、同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 平成16年7月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成16年3月29日付の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前述のとおりのもの(以下、「本願発明」という。)である。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、特許法29条1項柱書に関する理由は概略、次のとおりである。 請求項1-3には、出願人が所望する作用・機能・動作・データが単に記述されているのみであり、請求項1-3において、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工が実現されておらず、請求項1-3に記載されたシステムは、ソフトウエアとハードウエア資源とが協働することにより構築された情報処理システムとはいえないので、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。 したがって、本願発明は特許法第29条1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 3 当審の判断 特許法29条1項柱書に規定される「産業上利用することができる発明」であるためには、同法2条で定義される「発明」でなければならない。 そこで、本願発明が、特許法2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて検討する。 (1)種々の場所に設置された端末装置と、情報管理装置であるコンピュータとが通信ネットワークを介して接続され、情報の授受を行うことは、本件出願時点において、既に当業者に自明の事項である。そしてコンピュータが通信ネットワークを介して受け取った情報を処理し、その結果を端末装置に返信すること、コンピュータに接続されている種々のデータベースを検索すること、及び検索したデータに何らかの加工を施して該データベースに登録することもコンピュータの機能として自明の構成である。 また、情報の内容は、ビジネス上の取決めであり、これが、自然法則を利用した技術的思想でないことは明らかである。 (2)本願請求項1の記載を検討する。 ア 「通信ネットワークに接続された端末装置を介して法人または個人の著作者による著作物をリース物件として顧客に提供するためのコンピュータシステムによる支援システムであって、」の記載において、支援システムは、通信ネットワークに接続された端末装置を介したコンピュータシステムであることが、ハードウエアとして記載されているが、これは、コンピュータのその本来の道具としての機能を示したにとどまり、著作物をリース物件として顧客に提供するための具体的な技術的手段が特定されているとはいえない。 イ 「著作物を所有する著作者の端末装置と、著作物の提供を受ける顧客の端末装置と、著作物を仲介するリース事業者の端末装置と、これらの各端末装置と通信ネットワークを介して接続され情報の送受信を行うリース情報管理装置とから構成され、」の記載は、種々の端末装置と管理装置とが通信ネットワークを介して接続されて、情報の送受信を行うというコンピュータの通常の機能が記載されているにすぎず、技術的に特有な構成が明記されてはいない。 なお、端末装置や管理装置の設置場所は、ビジネス上の課題であり技術的な特徴とはいえない。 ウ 「前記リース情報管理装置は、 前記著作物及び該著作物の著作者情報を含む著作権に関する情報を蓄積する著作物データベースと、著作権保護のために必要な法的手続を含む法律に関する各種資料を蓄積する法的資料データベースと、前記著作物の著作者とリース事業者及び著作物を使用する顧客とのリースに必要な契約情報を含むリース物件に関する各種手続情報を蓄積するリース情報データベースとから少なくともなる各データベースを一括管理するデータベース管理手段を備え、」の記載は、リース情報管理装置が種々のデータベースを一括管理するデータベース管理手段を備えていることが、ハードウエアとして記載されているが、これは、管理装置としてコンピュータが本来の機能を発揮することが示されているにとどまり、具体的なハードウエアを用いた管理手法が記載されているものではない。 また、データベースに蓄積されている情報の内容は、ビジネス上の取決めであり、これが、自然法則を利用した技術的思想でないことは上述のとおりである。 エ 「前記著作者の端末装置からの要求に応答し、コンピュータグラフィックスによるアニメーションキャラクタや3次元表示用の3Dオブジェクト等の3次元情報を有する各種著作物の登録を受付け前記著作物データベースに登録する登録受付手段と、」の記載において、3Dオブジェクトというハードウエアが記載されているが、コンピュータグラフィックスによる3Dオブジェクトの作成技術は、周知の技術であり、ハードウエア資源を用いて具体的に記載しているとはいえず、端末装置からの情報を基に管理装置がデータベースに登録する、というコンピュータの通常の機能が示されているにとどまり、具体的なハードウエアを用いた登録受付手法が記載されているわけではない。 オ 「前記著作物を確認し前記著作者に対して登録受付けを通知するための登録日時を含む受付情報を前記著作者の端末装置に送信する登録受付通知手段と、」の記載は、管理装置が端末装置へ情報を送信する、というコンピュータの通常の機能が記載されているにすぎず、技術的に特有な構成が明記されてはいない。 カ 「前記著作物データベースに蓄積する著作物に対して権利者に代わり譲渡手続及び質権設定等の法的手続を代行するための情報を前記法的資料データベースより検索し、検索して得られた情報に基づいて当該著作物の権利者のために必要なデータを作成し前記著作物データベースに登録する法的手続代行手段と、」の記載は、情報を検索し、検索して得られた情報に基づいて必要なデータを作成し、登録するという、単に道具としてのコンピュータ本来の機能を記載したものであり、ソフトウエアとハードウエア資源が協働しているとはいえず、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。 キ 「前記著作物データベースに蓄積する著作物に対して少なくとも前記著作者とリース事業者との契約情報及び前記著作物を利用する顧客とリース事業者とのリース契約情報を前記リース情報データベースより検索し、検索して得られた情報に基づいて当該著作物を利用する顧客に必要なリースに関する各種手続き及び管理のためのデータを作成し前記リース情報データベースに登録するリース手続管理手段と、」の記載は、情報を検索し、検索して得られた情報に基づいて必要なデータを作成し、登録するという、単に道具としてのコンピュータ本来の機能を記載したものにすぎず、ソフトウエアによる情報処理がコンピュータのハードウエア資源と協働する点については記載されていない。 ク 「前記受付け登録した著作者からの著作物の登録代金と譲渡又は質権設定手続に伴う諸費用とを徴収するための課金情報を前記当該データベースに登録する課金手段」の記載は、情報を登録する、というコンピュータの通常の機能が記載されているにすぎず、技術的に特有な構成が明記されているとはいえない。 なお、審判請求人は、「各手段とハードウェア資源としてのデータベースとの関係を明確にすることで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されたものといえるように補正を行ったものである。」と主張するが、ソフトウエアによる情報処理が、ハードウエア資源を用いて具体的に実現されているといえるためには、単にあるハードウエア資源(本願発明ではコンピュータシステム)を用いることに言及していればよしとするものではなく、当該処理を実施するためのソフトウエアのアルゴリズムを当業者が把握できる程度に具体的に記載することが必要であるから、請求人の上記主張を採用することはできない。 (3)したがって、本願発明には端末装置、管理装置及びデータベース等、コンピュータのハードウエア資源としての記載は認められるものの、これらの記載は、コンピュータが本来備えている道具としての機能であり、ハードウエア資源を用いて具体的に処理を実現しているとはいえないので、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえないから、特許法2条で定義される「発明」に該当しない。 4 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法2条で定義される発明に該当せず、同法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-11 |
結審通知日 | 2006-09-12 |
審決日 | 2006-09-25 |
出願番号 | 特願2001-370511(P2001-370511) |
審決分類 |
P
1
8・
14-
Z
(G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷口 信行 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
鈴木 明 伊知地 和之 |
発明の名称 | 著作物のリース支援システム |
代理人 | 特許業務法人共生国際特許事務所 |