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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60H
管理番号 1147136
審判番号 不服2004-19752  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-01-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 特願2001-190085「乗物内の冷房方法および冷房装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 8日出願公開、特開2003- 2040〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本願は,平成13年6月22日の出願であって,その請求項1?4に係る発明は,平成16年10月25日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 余剰電力を利用して乗物内で製氷を行うことにより蓄熱し、蓄熱後に送風ファンを作動させ、冷却すべき空気をこの氷で外側から冷却されたダクト内に導入して氷との熱交換を行い、該ダクトから導出された冷空気で乗物内を冷房することを特徴とする乗物内の冷房方法。
【請求項2】 余剰電力を利用した製氷手段、蓄熱手段、冷却すべき空気を導入し、氷との熱交換を行う送風・冷却手段、空気中の水分が凝縮して生じる水の処分手段、ならびにそれらを内部に収納する筐体を備えてなり、製氷手段および/または送風・冷却手段が、その伝熱面に放熱フィンを設置されてなる乗物用冷房装置。
【請求項3】 処分手段が、水を一時溜めておく貯水容器とその水を蒸発させる蒸発装置である請求項2記載の乗物用冷房装置。
【請求項4】 製氷を行う際に水に融点調節剤を添加して氷の融点を制御する請求項1記載の乗物内の冷房方法。」

2. 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平9-150627号公報(以下,「引用例1」という。)及び特開2000-13901号公報(以下,「引用例2」という。)には,それぞれ図面と共に以下の記載がある。

[引用例1について]

1a. 「【発明の属する技術分野】本発明は、トラックの仮眠室等を駐車時(エンジン停止時)にも良好に冷房し得る車両用冷房装置に関する。」(段落【0001】)

1b. 「車両エンジンによって駆動される冷凍サイクルの第1蒸発器(25)、この第1蒸発器(25)に向かって送風する第1送風機(26)、および前記第1蒸発器(25)で冷却された冷風を車室内に吹き出すための第1吹出口(54)を有し、この第1吹出口(54)から車室内に前記冷風を吹き出すことによって車室内を冷房するように設けられた第1冷却ユニット(A)と、
前記冷凍サイクルに設けられた第2蒸発器(28)、前記冷凍サイクルの運転時において前記第2蒸発器(28)によって蓄冷可能なごとく構成された蓄冷材(29、29a)、および少なくとも前記第2蒸発器(28)と前記蓄冷材(29、29a)とを収納するケース(30、60)を有し、前記蓄冷材(29、29a)と車室内の所定区域の空気との熱交換により、前記所定区域を冷房するように設けられた第2冷却ユニット(B)と、
(中略)切り換える弁(48)と,
(中略)蓄冷開始指示手段(4)と,
(中略)蓄冷制御手段(5)とを備え,
前記ケース(30、60)は車室内の側壁部に設けられたことを特徴とする車両用冷房装置。」(【請求項1】)

1c. 「一方、仮眠室冷房用の第2冷却ユニットBは、仮眠室51内においてベッド52の後方位置における側壁部に配設されている。第2冷却ユニットBの蓄冷材容器30は、ステンレス等の金属にて図示のごとき薄形の箱状に形成され、その内部に蒸発器28および蓄冷材29を封入している。蓄冷材29としては種々のものを使用し得るが、本実施形態では、凍結温度が-5℃の塩水を用いている。
蓄冷材容器30の外表面は、そのほぼ全体が仮眠室51内に直接露出するようになっているので、容器30の外表面のほぼ全体が仮眠室内空気との熱交換面を構成している。すなわち、矢印イで示す自然対流によって空気が蓄冷材容器30の外表面と接触して熱交換を行うようになっている。」(段落【0019】中,【0020】中)

1d. 「前述したように、仮眠室冷房用第2冷却ユニットBの蓄冷材29が凍結を完了すると、駐車時のごとく車両エンジンが停止し、圧縮機21が停止しても、仮眠室51の内部を長時間良好に冷房できる。」(段落【0029】中)

1e. 「次に、本発明の第2実施形態について図4を用いて説明する。図4は、本発明の第2実施形態を示すもので、仮眠室冷房用の第2冷却ユニットBにおいて、蓄冷材容器30の背面側上部に車載バッテリ1を電源として作動するモータ駆動の小型送風機58を追加設置し、この送風機58の吸入口を容器30の背面下方へ向けて設けるとともに、吹出口58aを仮眠室51の上方へ向けて設けるようにしたものである。
この図4の第2実施形態によれば、駐車時に仮眠室51の冷房を行うとき、車載バッテリ1を電源として小型の送風機58を作動させると、自然対流による矢印イの空気流れの他に、強制対流による矢印ロの空気流れが形成されるので、仮眠室51内を均一な温度で冷房できるとともに、ベッド52上の乗員に対して強制対流による風を吹き当てることも可能となり、冷房感を向上できる。」(段落【0032】,【0033】)

1f. 記載事項1c及び1eを参照すると,図4には,前記蓄冷材容器30の背面と前記仮眠室後方位置の側壁との間に,矢印ロの空気流れを形成する通路が記載されている。

[引用例2について]

2a. 「バッテリの電力により駆動力を発生する駆動用モータと内燃機関により駆動力を発生するエンジンを併用して走行するハブリッド自動車において、
コンプレッサを駆動するための空調用モータを有する空調装置と、
前記バッテリの蓄電残量に応じて、前記エンジンにより該バッテリを充電するバッテリ充電手段と、
前記空調装置の作動時において、前記エンジンを高効率領域で運転すると共に、その余剰エネルギを電力として前記空調用モータに供給する制御手段とを具備することを特徴とするハイブリッド自動車の空調制御装置。」(【請求項2】)

2b. 「また、請求項2に記載の発明によれば、空調装置の作動時において、エンジンを高効率領域で運転すると共に、その余剰エネルギを電力として空調用モータに供給することにより、空調能力を高めつつ、エンジンの燃費効率も向上することができると共に、バッテリの消費を抑えることができ、これによりエンジン駆動による蓄電を少なくでき燃費効率を向上できる。」(【0017】)

2c. 「[定常走行時&充電時]図6に示すように、定常走行&充電時には、クラッチ6を締結して、エンジン1からギアトレイン11を介して駆動輪9、10に駆動力が伝達されると共に、エンジン1は発電機4を駆動してバッテリ3を充電すると共に、余剰電力が空調装置50のコンプレッサ用モータ51に供給される。」(【0032】中)

2d. 「図9に示すように、図示の空調装置50はヒートポンプ式であり、冷媒圧縮用のコンプレッサ21と、(中略)コンプレッサ21の吸入側に設けられたアキュムレータ28とを有する冷凍サイクルを構成する。尚、冷房用及び暖房用減圧回路25、27としては、減圧度が変化しない固定式のキャピラリチューブ等が採用されている。
そして、四路切換弁22の切り換え動作により、(中略)車内側熱交換器24を通過する空気を加熱或いは冷却するように構成されている。」(段落【0037】,【0038】)

3. 引用例1に記載された発明
ところで,記載事項1a?1f及び図1,図4の記載から,引用例1には次の発明(以下,「引用例1の発明」という。)が記載されていると認められる。

内部に蒸発器28および蓄冷材29を封入した薄形箱状の蓄冷材容器30を,仮眠室内後方位置の側壁部に配設し,前記蓄冷材容器30の背面側上部に小型送風機58を設置した車両用冷房装置において,
車両エンジンにより駆動される冷凍サイクルにおいて,凍結温度-5℃の塩水を蓄冷材29として用いて車両内で製氷を行うことにより蓄熱し,前記小型送風機58を作動させ,冷却すべき空気を該蓄冷材容器30の背面と側壁との間の通路内に導入して氷との熱交換を行い,導出された冷空気で仮眠室51内を駐車時(エンジン停止時)にも良好に冷房し得る車両用冷房装置。

4. 対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)と引用例1の発明を対比すると,引用例1の発明の「小型送風機58」及び「車両」は,それぞれ本願発明の「送風ファン」及び「乗物」に相当する。

また,引用例1の発明の「通路内」が,蓄冷材容器内で製氷された氷で外側から冷却されることは,明らかである。

したがって,両発明は,
乗物内で製氷を行うことにより蓄熱し,送風ファンを作動させ,冷却すべき空気をこの氷で外側から冷却された通路内に導入して氷との熱交換を行い,該通路から導出された冷空気で乗物内を冷房する乗物内の冷房方法の点で一致し,次の点で相違する。

相違点1
前記蓄熱が,本願発明では,余剰電力を利用して行われるのに対して,引用例1の発明では,乗物エンジンにより駆動される冷凍サイクルにおいて行われる点。

相違点2
前記通路が,本願発明では,ダクトであるのに対して,引用例1の発明では,蓄冷材容器の背面と側壁との間の通路である点。

相違点3
本願発明では,蓄熱後に乗物内を冷房するのに対して,引用例1の発明では,そのような明記がない点。

5. 相違点についての検討
相違点1について
引用例2に,ハイブリッド自動車において,余剰電力を空調装置のコンプレッサー用モータに供給する点が記載されている(上記記載事項2c参照)ことから,引用例1の発明において,余剰電力により冷凍サイクルを駆動し,蓄熱を行うことは,当業者が容易に想到し得たことである。

相違点2について
空気等の通路としてダクトを用いることは例を挙げるまでもなく従来周知の技術であるから,引用例1の発明において,蓄冷材容器の背面と側壁との間の通路をダクトとすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

相違点3について
引用例1の発明において,蓄熱後に送風ファンを作動させ,冷房することは,冷房装置の使用者が適宜なし得たことである。

そして,本願発明の効果は,引用例1,2に記載された事項,及び従来周知の技術から,当業者が予測し得えた程度のものである。

6. むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用例1,2に記載された発明,及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-01 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願2001-190085(P2001-190085)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 裕之田中 一正荘司 英史  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 今井 義男
岡本 昌直
発明の名称 乗物内の冷房方法および冷房装置  
代理人 田崎 豪治  
代理人 田崎 豪治  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
代理人 樋口 外治  
代理人 西山 雅也  
代理人 樋口 外治  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  
代理人 樋口 外治  
代理人 田崎 豪治  
代理人 鶴田 準一  
代理人 西山 雅也  

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