• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1147138
審判番号 不服2004-20606  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-06 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成 5年特許願第 52987号「押出しチューブ容器」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 9月 6日出願公開、特開平 6-247454〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明の特定
本願は、平成5年2月18日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、審判請求後の平成16年10月28日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりである。
「ポリアクリルニトリル樹脂で形成されている表面樹脂層と、該表面樹脂層と同一の樹脂で形成されている裏面樹脂層と、これらの表面樹脂層と裏面樹脂層との間に位置するバリヤ-性層からなる中間層とを具備していて、前記中間層が、酸化珪素の蒸着層を有する2軸延伸ポリビニルアルコ-ルフィルムからなっている積層シ-トの1側辺部と他側辺部とが重畳、貼着されて、該積層シ-トにおける裏面樹脂層が胴部内周面層となるようにしてチュ-ブ容器胴部が形成されており、かつ、前記チュ-ブ容器胴部の内面に露出する積層シ-トの端面を被覆するアクリルニトリル樹脂フィルムからなるシ-ル用テ-プが、チュ-ブ容器胴部の1側辺部と他側辺部との重畳、貼着部の内面に積層されており、更に、上記チュ-ブ容器胴部の上方端部に、アクリルニトリル樹脂の射出成形により、細首の口頸部と該口頸部の下端部に連続する円錐台形状の肩部との一体成形体からなるチュ-ブ容器頭部が成形と同時に接合されて設けられており、しかも、チュ-ブ容器胴部の少なくとも1部が厚さ方向に透明であることを特徴とする押出しチュ-ブ容器。」

2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平5-8352号公報(以下、「第1引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(a)「【請求項1】 ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂およびホモポリプロピレン樹脂の少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなる最外層および最内層と、該最外層と該最内層との間に位置し2軸延伸樹脂フィルムからなる中間支持層と、該中間支持層と前記最内層との間に位置するバリアー層とを有することを特徴とする積層材。

【請求項3】 最外層を構成する熱可塑性樹脂と最内層を構成する熱可塑性樹脂とが同質の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の積層材。」(【特許請求の範囲】)
(b)「【産業上の利用分野】本発明は、積層材および歯磨き製品に係り、特に流動性乃至半流動性物質を収容するチューブ容器に用いられ、収容される物質の成分に対して非吸着性を有する積層材およびこれを用いた歯磨き製品に関する。」(段落番号【0001】)
(c)「最外層である熱可塑性樹脂フィルム層3と最内層である熱可塑性樹脂フィルム層9とは、積層材1を筒状にしてチューブ容器の胴部を形成する際にヒートシールされるため、ヒートシール性が要求される。また、積層材1がチューブ容器に形成された状態で、最内層である熱可塑性樹脂フィルム層9は収容物と接するため、収容物の構成成分に対して非吸着性を有することが要求される。このため、熱可塑性樹脂フィルム層3,9はポリアクリロニトリル樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂およびホモポリプロピレン樹脂の少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなるフィルムである。また、この熱可塑性樹脂フィルム層3,9とが同質の熱可塑性樹脂からなっていてもよい。…また、熱可塑性樹脂フィルム層3,9は単層であってもよい…」(段落番号【0014】)
(d)「接着剤層6を介して中間支持層2に積層されるバリアー層7としては、アルミニウム箔層、あるいはポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム、さらにアルミニウム蒸着樹脂フィルムを用いることができる。…」(段落番号【0015】)
(e)「上述のような本発明の積層材は、内側層である熱可塑性樹脂層がポリアクリロニトリル樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂およびホモポリプロピレン樹脂の少なくとも一種の熱可塑性樹脂からなるため、積層材がチューブ容器に形成された状態で収容物と接しても、収容物の構成成分は積層材にほとんど吸着されることがない。」(段落番号【0017】)
以上の記載を総合すると、第1引用例には、
「ポリアクリロニトリル樹脂で形成されている最外層と、該最外層と同一の樹脂で形成されている最内層と、これらの最外層と最内装との間に位置するバリア-層とを具備していて、前記バリヤー層が、アルミニウム箔層、あるいはポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム、さらにアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなっている積層材により形成されたチュ-ブ容器。」の発明が記載されているものと認める。
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平4-223156号公報(以下、「第2引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(f)「【請求項1】合成樹脂層による外層と、該外層との間にヒートシール性能を有する合成樹脂層による内層と、外層と内層との間に位置する中間層とからなる押出しチューブ用積層材において、前記中間層が、-OH基を含有する樹脂によるプラスチック層と該プラスチック層に対して形成されている無機酸化物の薄膜層とによる複合フィルム層を具備していることを特徴とする透明性を有する押出しチューブ用積層材。」(【特許請求の範囲】)
(g)「【産業上の利用分野】本発明は、押出し用のチューブ容器を得る際の容器胴部成形用素材として利用される積層材に関する。」(段落番号【0001】)
(h)「実施例1
厚さ500オングストロームの酸化珪素の蒸着層を有する厚さ15μの延伸ポリビニルアルコールフィルムを得た後…」(段落番号【0017】)
(i)「本発明のチューブ容器用の積層材による容器胴部を有する押し出しチューブ容器は、内填物の封入状態が外部から目視し得るような透明性を有し…」(段落番号【0035】)
また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭62-135161号公報(以下、「第3引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。
(j)「…両面に合成樹脂層を積層してなるシートを巻回して端縁同士をシールしてなるチューブにおいて、チューブ内側のシート端縁を覆うように耐薬品性樹脂体を貼着してなる…積層チューブ。」(特許請求の範囲)
(k)「この発明は、医薬品、化粧品、化学材料等の小型容器である積層チューブに関する。」(第1頁右欄[産業上の利用分野]の項)
(l)「かかる積層チューブをつくるには、第2図に示すように、積層材よりなる原反12を巻回部13を巻回して、その重ね合せ端縁を加熱体(超音波高周波ヒータ)14をもって加熱し、ヒートシールするに先立って、原反12の積層チューブの内側となるべき端縁に耐薬品性樹脂をエクスツルダー15等で溶融しテープ状に押出して、加圧貼着する。」(第2頁上左欄第13行?第20行)

3 対比
本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比すると、後者の「最外層」、「最内層」及び「バリアー層」は、前者の「表面樹脂層」、「裏面樹脂層」及び「バリヤー性層」に相当する。
また、後者の「積層材」は前者の「積層シート」に対応するものであって、後者の「バリアー層」が積層材の中間層を構成すること、及び、この積層材における最内層が胴部内周面層となるようにチューブ容器胴部が形成されることは明らかである。
しかも、後者の「ポリアクリロニトリル樹脂」及び「チューブ容器」は、前者の「ポリアクリルニトリル樹脂」及び「押出しチューブ容器」と同義語であるので、両者は、本願発明の表記にならえば、
「ポリアクリルニトリル樹脂で形成されている表面樹脂層と、該表面樹脂層と同一の樹脂で形成されている裏面樹脂層と、これらの表面樹脂層と裏面樹脂層との間に位置するバリヤ-性層からなる中間層とを具備している積層シートであって、該積層シ-トにおける裏面樹脂層が胴部内周面層となるようにしてチューブ容器胴部が形成されている押出しチューブ容器。」
である点で一致し、次の点で相違している。
〈相違点1〉
本願発明は、チューブ容器胴部を形成する積層シートの「前記中間層が、酸化珪素の蒸着膜を有する2軸延伸ポリビニルアルコールフィルムからなっている」とし、「チューブ容器胴部の少なくとも一部が厚さ方向に透明である」のに対し、第1引用例に記載された発明は、チューブ容器胴部を形成する積層材(積層シート)のバリアー層(中間層)が、アルミニウム箔層、あるいはポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム、さらにアルミニウム蒸着樹脂フィルムからなっていて、チューブ容器胴部が厚さ方向で透明であるか否かについては不明である点。
〈相違点2〉
本願発明は、「積層シートの1側辺部と他側辺部とが重畳、貼着されて」チューブ容器胴部が形成されており、「前記チュ-ブ容器胴部の内面に露出する積層シ-トの端面を被覆するアクリルニトリル樹脂フィルムからなるシ-ル用テ-プが、チュ-ブ容器胴部の1側辺部と他側辺部との重畳、貼着部の内面に積層されて」いるのに対し、第1引用例に記載された発明は、積層材(積層シート)の1側辺部と他側辺部がどのように貼着されてチューブ容器胴部が形成されているのか不明であり、しかも、シール用テープに関して言及されていない点。
〈相違点3〉
本願発明は、「上記チュ-ブ容器胴部の上方端部に、アクリルニトリル樹脂の射出成形により、細首の口頸部と該口頸部の下端部に連続する円錐台形状の肩部との一体成形体からなるチュ-ブ容器頭部が成形と同時に接合されて設けられており」としているのに対し、第1引用例に記載された発明は、チューブ容器頭部に関して言及がない点。

4 相違点の判断
〈相違点1〉に対して
上記(f)?(i)の記載を総合すると、第2引用例には、「押出し用のチューブ容器用の容器胴部成形用素材として利用される積層材において、中間層が、酸化珪素の蒸着層を有する延伸ポリビニルアルコールフィルムからなっており、これにより、チューブ容器は、内填物の封入状態が外部から目視し得るような透明性を有する」という技術的事項が記載されているものと認める。
してみると、延伸ポリビニルアルコールフィルムが二軸延伸であるか否かはさておき、上記相違点1に係る事項は、第2引用例に示唆されているものと認める。
そして、第1引用例に記載記載された発明に第2引用例に記載された技術的事項を適用することを妨げる特段の事情も見受けられない以上、第1引用例に記載された発明に第2引用例に記載された技術的事項を適用し、その適用に際し、延伸ポリビニルアルコールフィルムを二軸延伸のものとして、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認める。

〈相違点2〉に対して
積層シートの1側辺部と他側辺部とが重畳、貼着されてチューブ容器胴部が形成されることは、例えば、第3引用例として示した特開昭62-135161号公報にも記載の如く、周知技術である。
また、上記(j)?(l)の記載、並びに第1図を総合すると、第3引用例には、「チューブ内側の積層シ-トの端面を覆うテープ状の耐薬品性樹脂体が、チュ-ブ容器胴部の1側辺部と他側辺部との重畳、貼着部の内面に積層されている」技術的事項が記載されているものと認める。ここで、第3引用例に記載された「テープ状の耐薬品性樹脂体」は、その機能からして、本願発明の「シール用テープ」に相当する。
そして、積層体で筒体を成形し継ぎ目にシール用テープを設ける際、接着性を考慮して、シール用テープの材質として接着される層と同質の材料を用いるのが好ましいことは出願時の技術常識(例えば、特開昭61-86258号公報第6頁上左欄第7行?第9行の記載、特公昭56-16063号公報第3欄第4行?第5行の記載を参照)である。
してみると、第1引用例に記載記載された発明に前記周知技術及び第3引用例に記載された技術的事項を適用することを妨げる特段の事情も見受けられない以上、第1引用例に記載された発明に前記周知技術及び第3引用例に記載された技術的事項を適用し、その適用に際して、前記技術常識を勘案し、シール用テープを積層シートと同質のアクリルニトリル樹脂フィルムとして、上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認める。

〈相違点3〉に対して
チューブ容器において、チュ-ブ容器胴部の上方端部に、射出成形により、細首の口頸部と該口頸部の下端部に連続する円錐台形状の肩部との一体成形体からなるチュ-ブ容器頭部が成形と同時に接合されて設けられることは、周知技術(必要ならば、特開平4-294748号公報(特に段落番号【0018】)、特開平4-327143号公報(特に段落番号【0027】)参照)である。
そして、樹脂材料部材同士を接合する際、その接着性の観点から部材を同質の材料とするのが好ましいことは出願時の技術常識であり、かつ、チューブ容器の頭部を胴部に接合するに際し、それぞれを同質の材料とするのが好ましいことも同じく出願時の技術常識(例えば、特開平2-242751号公報第3頁下右欄第10行?第18行の記載、特開平3-26541号公報第4頁上左欄第15行?同頁上右欄第10行の記載を参照)である。
してみると、第1引用例に記載記載された発明に前記周知技術を適用することを妨げる特段の事情も見受けられない以上、第1引用例に記載された発明に前記周知技術を適用し、その適用に際して、前記技術常識を勘案し、チューブ容器頭部の成形をチューブ容器胴部と同質のアクリルニトリル樹脂による射出成形で行うようにして、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認める。

そして、本願発明の効果は、第1乃至第3引用例に記載された発明、及び前記各周知技術から、当業者であれば予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

5 むすび
したがって、本願発明は、第1乃至第3引用例に記載された発明、及び前記各周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-07 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平5-52987
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 石田 宏之
溝渕 良一
発明の名称 押出しチューブ容器  
代理人 金山 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ