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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1147150
審判番号 不服2003-14963  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-04 
確定日 2006-11-08 
事件の表示 平成11年特許願第206744号「マルチフィードデュアルオフセット反射器アンテナの直交偏波の劣化を減少する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年2月25日出願公開、特開2000-59134〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成11年7月21日(パリ条約による優先権主張 1998年7月20日 米国(US))の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年4月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
(本願発明)
「焦点を有する反射器と、
反射器の焦点であるz軸上に位置する第1のフィードと、
第1のフィードに隣接してフィードアレイのy軸上に配置された第2のフィードと、
第1のフィードに隣接してフィードアレイのy軸上に配置された第3のフィードとを含み、第2のフィードと第3のフィードはフィードの第1の段を形成し、
第2のフィードはz軸に平行でかつ第2のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで回転され、
第3のフィードはz軸に平行でかつ第3のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで回転され、
第2のフィードの回転方向は第3のフィードの回転方向と反対であることを特徴とする反射器アンテナシステム。」

2.引用発明と周知技術
(1)当審の拒絶理由に引用された実願平1-133465号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平3-73020号参照、以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「反射鏡と前記反射鏡の焦点付近に配置された2個の1次放射器とそれぞれの1次放射器に電波を供給するための給電導波管よりなる2ビームアンテナにおいて,1つの1次放射器の給電導波管の1次放射器端側をフレキシブル導波管とし,この1次放射器を中心軸まわりで単独に回転可能な構造としたことを特徴とする2ビームアンテナ。」(1頁、実用新案登録請求の範囲)
ロ.「従来の2ビームアンテナは・・・(中略)・・・,片方の1次放射器の偏波面を対向するアンテナの偏波面に合わせると,他方の1次放射器の偏波面が対向するアンテナの偏波面からずれるために交さ偏波識別度が劣化するという問題点があった。」(2頁、13?19行目)
ハ.「以下,この考案の実施例を図について説明する。
第1図において,(1)は反射鏡,(2)は反射鏡の焦点,(3a),(3b)は反射鏡(1)の焦点(2)付近に設置された1次放射器,(4)は給電導波管,(5)は給電導波管の1次放射器端側に挿入されたフレキシブル導波管である。
フレキシブル導波管(5)を給電導波管(4)の一次放射器(3a)に挿入し,1つの1次放射器(3a)を中心軸まわりで単独に回転可能な構造とすることにより,組立て後に2個の1次放射器の偏波面の一致度を調整することができる。
1次放射器(3a)を回転可能とする構造の例としては,第2図に示すように,他の1次放射器(3b)から支持板(6)を出し,固定用ネジ(7)により任意の角度に固定する方法等が考えられる。」(3?4頁、〔実施例〕の項)
ニ.「以上のように,この考案によれば,給電導波管の1次放射器端側にフレキシブル導波管を挿入する構成とすることにより,2個の1次放射器の偏波面の一致度が調整可能となり,交さ偏波識別度の良好な2ビームアンテナを得られる効果がある。」(4頁、〔考案の効果〕の項)

上記引用例の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「2ビームアンテナ」は、「反射鏡」(即ち、反射器)を用いるいわゆる「反射器アンテナシステム」を構成しており、上記「1次放射器(3b)」と「1次放射器(3a)」はそれぞれ「第1の放射器」と「第2の放射器」を構成している。
また、前記「第1の放射器」は反射鏡の焦点付近にその偏波面を対向するアンテナの偏波面に合わせて設置し、「第2の放射器」は、反射鏡の焦点からずれて設置されるため、その偏波面が対向するアンテナの偏波面からずれ、その偏波面のずれを当該放射器の回転により解消するものである。
したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。
(引用発明)
「焦点を有する反射器と、
反射器の焦点付近に位置する第1の放射器と、
第1の放射器に隣接して配置された第2の放射器とを含み、
第2の放射器はその偏波面のずれが解消されるように回転される反射器アンテナシステム。」

(2)同じく、当審の拒絶理由に引用された特公昭61-37807号公報(以下、「周知例」という。)のFig.8に開示されているように「反射器を備えたアンテナシステムにおいて、電波の入来方向をz軸、放射素子配列配列の水平方向をy軸、垂直方向をx軸と表記する」ことは単なる慣用手段であり、またFig.12に開示されているように「反射器の焦点であるz軸上に位置する第1の放射素子と、この第1の放射素子に隣接して放射素子配列のy軸上に配置された第2の放射素子と、第1の放射素子に隣接して放射素子配列のy軸上の前記第2の放射素子と反対側に配置された第3の放射素子とを含み、該放射素子配列が配列の1段を構成している反射器を備えたアンテナシステム」は周知である。


3.対比
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「放射器」と本願発明の「フィード」はいずれも同じものを指す用語であり、両者の間に実質的な差異はない。
また、引用発明の「反射器の焦点付近」と本願発明の「反射器の焦点であるz軸上」はいずれも「反射器の焦点を含む焦点近傍」であるという点で一致しており、引用発明の「その偏波面のずれが解消されるように」回転される構成と本願発明の「z軸に平行でかつ第2のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで」回転される構成はいずれも「所定の角度だけ」回転される構成であるという点で一致している。
したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。
<一致点>
「焦点を有する反射器と、
反射器の焦点を含む焦点近傍に位置する第1のフィードと、
第1のフィードに隣接して配置された第2のフィードとを含み、
第2のフィードは所定の角度だけ回転される反射器アンテナシステム。」

<相違点>
(1)「第1のフィード」に関し、本願発明は「反射器の焦点であるz軸上に位置する」ものであるのに対し、引用発明は「反射器の焦点付近に位置する」ものである点。
(2)「第2のフィード」に関し、本願発明は「フィードアレイのy軸上に配置され」ているのに対し、引用発明はその点の構成が不明瞭である点。
(3)「所定の角度だけ回転される」構成に関し、本願発明は「z軸に平行でかつ第2のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで回転される」構成であるのに対し、引用発明は「その偏波面のずれが解消されるように回転される」構成である点。
(4)本願発明は「第1のフィードに隣接してフィードアレイのy軸上に配置された第3のフィード」をさらに含み、「第2のフィードと第3のフィードはフィードの第1の段を形成し」、「第3のフィードはz軸に平行でかつ第3のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで回転され、第2のフィードの回転方向は第3のフィードの回転方向と反対である」構成を備えているのに対し、引用発明は第3のフィードに関する構成を備えていない点。

4.当審の判断
そこで、まず、上記相違点(1)の「第1のフィード」、相違点(2)の「第2のフィード」及び相違点(4)のうちの「第3のフィード」を備える構成について検討するに、例えば上記周知例のFig.8に開示されているように「反射器を備えたアンテナシステムにおいて、電波の入来方向をz軸、放射素子配列配列の水平方向をy軸、垂直方向をx軸と表記する」ことは単なる慣用手段であり、またFig.12に開示されているように「反射器の焦点であるz軸上に位置する第1の放射素子と、この第1の放射素子に隣接して放射素子配列のy軸上に配置された第2の放射素子と、第1の放射素子に隣接して放射素子配列のy軸上の前記第2の放射素子と反対側に配置された第3の放射素子とを含み、該放射素子配列が配列の1段を構成している反射器を備えたアンテナシステム」は周知であるところ、これらの周知・慣用手段を引用発明の反射器アンテナシステムに適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、引用発明の「反射器の焦点付近に位置する第1の放射器と、この第1の放射器に隣接して配置された第2の放射器とを含み」という構成を本願発明のような「反射器の焦点であるz軸上に位置する第1のフィードと(相違点1)、この第1のフィードに隣接してフィードアレイのy軸上に配置された第2のフィードとを含み(相違点2)」という構成に変更するとともに、「第1のフィードに隣接してフィードアレイのy軸上に配置された第3のフィード」をさらに含み、「第2のフィードと第3のフィードはフィードの第1の段を形成し」という構成を付加する(相違点4)程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点(3)の「所定の角度だけ回転される」構成について検討するに、引用発明の「その偏波面のずれが解消されるように回転される」構成は、上記座標軸の表記法によれば、当該「回転」が「z軸に平行でかつ第2のフィードの中心を通る軸線に関して、その偏波面のずれが解消されるように、回転される」構成であることは明らかであり、引用発明の「その偏波面のずれが解消される」ような角度と本願発明の「第1の大きさ」が意味する角度とはその作用効果(直交偏波(交さ偏波)の劣化防止)を考慮すれば当然に同じ角度となるものであるから、これらの点に実質的な差異はない。したがって、相違点3の「所定の角度だけ回転される」構成に関し、引用発明の「その偏波面のずれが解消されるように回転される」構成を本願発明のように「z軸に平行でかつ第2のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで回転される」構成とする程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。
ついで、上記相違点(4)のうちの「回転」に関する構成について検討するに、本願発明の「第3のフィード」は「第1のフィードに隣接してフィードアレイのy軸上に配置され」ているのであるから、当該第3のフィードは第1のフィードを挟んで第2のフィードと反対側に配置されるものである。一方、上記相違点(3)の検討結果において、例えば引用発明の第2のフィードを基準に考えると、引用発明の第1のフィードは第2のフィードと同じ向きから第2のフィードを回転させた場合の回転方向とは逆方向に同じ大きさだけ回転したものと等価である。そして、この場合(即ち、第2のフィードを基準にして第1のフィードを回転させる場合)の引用発明の第1のフィードは、本願発明の第1のフィードに対する第3のフィードの関係と同じである。したがって、本願発明のように「第3のフィードはz軸に平行でかつ第3のフィードの中心を通る軸線に関して第1の大きさで回転され、第2のフィードの回転方向は第3のフィードの回転方向と反対である」構成とする程度のことも当業者であれば適宜成し得ることである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-07 
結審通知日 2006-06-13 
審決日 2006-06-26 
出願番号 特願平11-206744
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 勝則  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 宮下 誠
浜野 友茂
発明の名称 マルチフィードデュアルオフセット反射器アンテナの直交偏波の劣化を減少する方法  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 白根 俊郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  

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