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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01N
管理番号 1147212
審判番号 不服2005-19277  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-06 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 平成11年特許願第273507号「ドライフラワーを原色のまま密封し収蔵せしめた額」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月10日出願公開、特開2001- 97801〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月28日の出願であって、平成17年9月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年10月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年10月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
この補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1である「【請求項1】アルミシートを貼り合わせた素材により作成され、底部と、周壁部よりなる容器の内で底面にシート状あるいは袋状の乾燥剤を配設し、別途、乾燥剤により原色のままドライにした立体の花を該容器の内部底面に仮止め収納すると共に、容器の上面側に額状の枠材を介してガラス板を載置し、該ガラス板と容器をアルミテープにより固定し密封せしめてドライフラワー内蔵密封容器となし、該密封容器をそのガラス板を表面側として額内に収納し、裏面側を押え板を介して止着可能ならしめたことを特徴とするドライフラワーを原色のまま密封し収蔵せしめた額。」を下記のようにする補正を含むものである。
「【請求項1】底部と、折り畳みによる周壁部を有する容器の内部底面にシート状あるいは袋状の乾燥剤を敷設して、別途乾燥剤により原色のままドライにした立体の花をその上に仮止め収納すると共に、容器の周壁内部に周壁との間に空隙を有して内枠を配設し、容器周壁と内枠との間の空隙にも乾燥剤を収納せしめて該内枠上面に額状の枠材を介しガラス板を載せ、容器とガラス板を防湿シートにより密閉固定してドライフラワー内蔵密封容器となし、該密封容器をそのガラス板を表面側として額内に収納し、裏面側を押え板を介し止着可能ならしめたことを特徴とするドライフラワーを原色のまま密封し収蔵せしめた額。」

しかし、この補正は、容器の素材を特定する「アルミシートを貼り合わせた素材により作成され」という限定を削除し、かつ、「アルミテープ」を上位概念の「防湿シート」に変更する補正を含むものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではないから、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たすものではない。
したがって、この手続補正は、その余のことを検討するまでもなく、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、この点につき審判請求人は、審判請求書の「3.(b) 補正の根拠の明示 」の項において、「今回の手続補正書における補正は出願当初の特許請求の範囲における請求項2を新請求項1とし、さきの平成17年8月26日付け提出の手続補正書における請求項2を新請求項2とし、請求項3,4は夫々上記新請求項1,2に従属する発明としたものであります。 」と説明しているが、「出願当初の特許請求の範囲の請求項1?5」は平成17年8月26日付けの手続補正書によって、新たに「請求項1?4」と補正されているため、上記説明における「出願当初の特許請求の範囲における請求項2を新請求項1とし」は実体を伴わないものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり平成17年10月6日付けの手続補正が却下されたので、本願発明は、平成17年8月26日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、該請求項に係る発明を「本願発明」という。)は下記のとおりである。
「【請求項1】アルミシートを貼り合わせた素材により作成され、底部と、周壁部よりなる容器の内で底面にシート状あるいは袋状の乾燥剤を配設し、別途、乾燥剤により原色のままドライにした立体の花を該容器の内部底面に仮止め収納すると共に、容器の上面側に額状の枠材を介してガラス板を載置し、該ガラス板と容器をアルミテープにより固定し密封せしめてドライフラワー内蔵密封容器となし、該密封容器をそのガラス板を表面側として額内に収納し、裏面側を押え板を介して止着可能ならしめたことを特徴とするドライフラワーを原色のまま密封し収蔵せしめた額。」

(2)刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である実用新案登録第3035739号公報(平成9年1月8日登録。以下、「引用例」という。)には、「その前面が開放された箱体と、該前面を閉じ該箱体と当該蓋とで気密的閉鎖空間を形成する透明な蓋と、該箱体と当該蓋との間に位置して該閉鎖空間の気密性を高めるためのパッキンと、該パッキンを挟んだ該箱体と該蓋とをその周辺に沿って固定するための額縁手段と、該閉鎖空間の内部に収納されたドライフラワーと、該閉鎖空間の内部に配置された乾燥剤と、を有する、ドライフラワー収納保存用の気密性額。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1)および「該蓋がガラス板またはプラスチック板である、請求項1に記載のドライフラワー収納保存用の気密性額。」(同請求項2、併せて「摘記a」とする)に係る発明が記載され、「ドライフラワーでは、製造時の十分な乾燥に加え、その後の吸湿を防止することが長期保存に不可欠である。特に、長期保存時の吸湿は製造されたドライフラワーの変色や腐敗といった問題を引き起こすため、十分な対策を要する。」(段落[0002]、摘記b)と記載され、段落[0008]には、「箱体の製造材料は、収納されているドライフラワーが吸湿しないような気密性の高いものであればよく、金属、ガラス、陶器、材木、プラスチック等いかなるものも使用されることができる。」(摘記c)と記載され、さらに、段落[0010]には、「パッキンは、箱体と蓋との間に位置し、箱体と蓋とによって形成される閉鎖空間の気密性を高めるために使用される。・・・さらに、箱体の開放された前面の縁とパッキンとが接着されることは上記目的を達成するのに効果的である。パッキンの材料は通常のパッキンを構成する材料、例えばゴムを使用することができる。・・・なお、一層気密性を向上させるために、パッキンと蓋との間を接着したり、両者の間に両面テープ等を介在させることも有効である。」(摘記d)と説明され、段落[0016]?[0018]の実施例1には、「実施例1 ・・・図1は本考案の気密性額の上面図である。ガラス製の蓋3の周辺部を木製の額縁手段1が押さえていることがわかる。また、ガラス製の蓋3を通して、額内部に収納されたドライフラワー25が鑑賞できる・・・中敷7の下部には乾燥剤であるシリカゲルを含んだ袋9が入れられている。中敷7の上部にはドライフラワー25が収納されている。・・・パッキン11は缶5の縁にはめ込まれると共に、接着もされている。一方、缶5の下側には押さえ板13があり、押さえ板13は箱体5を上方へ押し上げている。・・・パッキン11と蓋3との間を接着することによって、蓋3と缶5とパッキン11とによって形成される閉鎖空間の気密性が保たれている。・・・図3は本考案の気密性額の下面図である。・・・押さえ板13を取り外した状態では、収納されたドライフラワー25の取替え等の作業が可能となる。」(摘記e)と記載されている。
ここで、摘記aによれば、引用例には「箱体と蓋とパッキンとで形成された閉鎖空間と、これを固定する額縁と、該閉鎖空間の内部に収納されたドライフラワーと、該閉鎖空間の内部に配置された乾燥剤と、を有する、ドライフラワー収納保存用の気密性額」が記載されるところ、摘記eによれば、該蓋はガラス板であり、箱体とパッキン、蓋とパッキンがそれぞれ接着されて形成された閉鎖空間とされ、該空間に袋状の乾燥剤が配置され、ガラス板である蓋を表面側として額内に収納し、押さえ板によって箱体は押さえられ、取付け取外しができるものであって、摘記bによれば、ドライフラワーの変色や腐敗を防止可能にしたものであるから、引用例には、「箱体とパッキン、ガラス板の蓋とパッキンがそれぞれ接着されて形成された閉鎖空間と、これを固定する額縁と、該閉鎖空間の内部に収納されたドライフラワーと、該閉鎖空間の内部に配置された袋状の乾燥剤と、を有する、ドライフラワー収納保存用の気密性額であって、箱体と蓋とパッキンはそれぞれ接着され、裏面側を押え板を介して止着可能とした、気密性額」の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。

(3)対比、判断
そこで、本願発明と引用例発明とを比較する。
引用例発明における、「箱体とパッキン、蓋とパッキンがそれぞれ接着されて形成された閉鎖空間の気密性が保たれているもの」は、本願発明の「容器の上面側にガラス板を載置し、該ガラス板と容器を固定し密封せしめた密封容器」ということができる。また、引用例発明の「ドライフラワー」も、摘記bに、従来の問題点として、ドライフラワーの変色や腐敗が指摘されているから、「別途、乾燥剤により原色のままドライにした立体の花」であることは明らかであり、該花を容器に収納する際に仮止めすることは当然のことであるから、両者は、「底部と、周壁部よりなる容器の内で底面に袋状の乾燥剤を配設し、別途、乾燥剤により原色のままドライにした立体の花を該容器の内部底面に仮止め収納すると共に、容器の上面側にガラス板を載置し、該ガラス板と容器を固定し密封せしめてドライフラワー内蔵密封容器となし、該密封容器をそのガラス板を表面側として額内に収納し、裏面側を押え板を介して止着可能ならしめたことを特徴とするドライフラワーを原色のまま密封し収蔵せしめた額」という点では一致し、下記の点で相違している。
[相違点]
イ:容器の素材が、本願発明は、「アルミシートを貼り合わせた素材」であるのに対して、引用例発明では「ドライフラワーが吸湿しないような気密性の高いものであればよく、金属、ガラス、陶器、材木、プラスチック等いかなるものも使用されることができる」(摘記c)とあるが、アルミシートを貼り合わせた素材は明記されていない点。
ロ:本願発明は、容器の上面側に「額状の枠材を介して」ガラス板を載置しているのに対して、引用例発明では枠材に相当するものが存在しない点。
ハ:本願発明は、ガラス板と容器を「アルミテープ」により固定して密封しているのに対して、引用例発明では、「ガラス板とパッキンと容器をそれぞれ接着して固定密封し、かつパッキンの働きにより気密性を高めている」点。

そこで、上記の相違点について検討する。
イ:の点について
アルミシートは、非通気性かつ非通水性で防湿性にすぐれ、ドライフラワーなどの包装材として適切な素材であることは本願出願前に周知であって、これは、拒絶査定の際に、引用文献[実願平4-10668号(実開平7-44950号)のCD-ROM、特開平11-222000号公報、特開平11-236562号公報)をもって示したとおりである。そして、アルミシートを貼り合わせた素材を用いた容器は、食品や粉末洗剤などの保存容器としてその防湿性を生かして日常生活で広く用いられているものであるから、引用例の容器の素材、すなわち、「ドライフラワーが吸湿しないような気密性の高いもの」として、周知の防湿性が優れているアルミシートを貼り合わせた素材を採用する程度のことは当業者にとって容易なことである。
ロ:の点について
本願発明の枠材は、単に、美的効果のために用いられているものと認められる。そして、鑑賞物を額に入れて展示する際に、額の内側に枠材を設け鑑賞物の見栄えを良くすることは一般に行われていることであるから、同様な効果を狙って、容器の上面側とガラス板の間に枠材を設ける程度のことは、当業者が必要に応じ適宜、なし得ることである。
ハ:の点について
ドライフラワーの保存のための包装体の防湿密閉をアルミテープ等の防湿テープで行うことも、拒絶査定時に示したように(実用新案登録第3055956号公報、特開平10-181300号公報)、本願出願前に周知のことであるから、引用例の発明においてガラス板とパッキンと容器をそれぞれ接着して固定密封し、かつパッキンの働きにより気密性を高める代わりに、ガラス板と容器をアルミテープにより固定して密封することは当業者が適宜に行い得ることである。

そして本願発明の効果も、引用例発明に比して、当業者の予測を超える程に格別のものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
したがって、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-06 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-26 
出願番号 特願平11-273507
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01N)
P 1 8・ 572- Z (A01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之冨永 保  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 井上 彌一
天野 宏樹
発明の名称 ドライフラワーを原色のまま密封し収蔵せしめた額  
代理人 宮本 泰一  

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