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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47L |
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管理番号 | 1147324 |
審判番号 | 不服2002-4924 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-03-22 |
確定日 | 2006-11-16 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第172565号「電気掃除機の吸口体」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 1月25日出願公開、特開平 6- 14853号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年6月30日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年4月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「上ケースおよび下ケースを有し、内部に回転ブラシを収納する回転ブラシ室と、該回転ブラシ室に配設され両端に軸受部を有する回転ブラシとを有し、 前記回転ブラシは、長手方向に連続した溝部を、該回転ブラシの断面において90度間隔を置いて4箇所形成し、その内、回転ブラシの断面において対称となる2箇所にブレード部を、同じく回転ブラシの断面において対称となる残り2箇所にブラシ部を嵌着し、 前記ブレード部は、断面形状を略T字形に構成し、前記ブラシ部は、パイル状の繊維を基布に連続的に植毛し、該基布を板状部材に固着し、断面形状を略T字形に構成して、前記ブレード部およびブラシ部をそれぞれ回転ブラシの溝部に螺旋状に嵌着し、 前記ブラシ部は、その径方向の長さをブレード部の長さより長くし、 さらには軸受部およびブラシ部,ブレード部を含めて、回転ブラシ全体を、水洗い可能な部材で構成したことを特徴とする電気掃除機の吸口体。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された、実願平2-85274号(実開平4-44850号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、特開昭62-284625号公報(以下、「引用例2」という。)、実願昭50-12908号(実開昭51-95267号)のマイクロフィルム(以下、「引用例3」という。)には次の事項が図面とともに記載されている。 (1)引用例1 ア.「吸入ノズルに内蔵する駆動装置とこれによって駆動回転され、床面をブラッシングする回転ロータを設けるものにおいて、 上記回転ロータは、そのロータの軸線にそって全長にわたって放射状に毛材を植毛して成るブラシを設け、さらにこのブラシの両側に並行して二つの可撓性の帯状のブレードをとりつけ、かつ、上記ブラシの開放端の外径が上記二つのブレードの開放端部の外径よりも大きくして、ブラシの開放端がブレードの開放端部よりも突出しているようにしている掃除機用吸入ノズルの回転ロータ。」(実用新案登録請求の範囲) イ.「棒状のロータ16は、その両端の軸17、ベルト20を巻掛けるプーリ19及び他の側にスリーブ22を一体に組立てて成り、このロータ16には、上記軸17の中心線である軸線に対する縦断面を示す第4図において、天然の獣毛や合成せんいを束ね(これを毛材という、以前及び以後同じである)たものを植毛して成るブラシ23とこれの両側に凹溝24を並行して設け、ここに二列に帯状で弾力性のあるブレード25の一側端26を挿入して固定し、他端側27をロータ16の外方に放射状に開放している。ロータ16は、軸線を中心として螺旋状にねじってつくり、したがって凹溝24もねじっておりブラシ23も二つの上記凹溝の間にねじった配列にして植毛した列としている。」(明細書9頁4行?18行) ウ.第1図、第2図には、上カバー21と下ケース11とを有し、内部に回転ロータ15を収納する室と、該室に配設され両端に軸受部を有する回転ロータ15とを有する掃除機用吸入ノズルが図示されており、また、第4図、第5図には、断面形状を略T字形に構成したブレード25を凹溝24に挿入固定し、ブラシ23を断面において対称となる2箇所に植毛した回転ロータ15が図示されている。 上記ア?ウの記載事項及び図示内容からみて、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「上カバー21と下ケース11とを有し、内部に回転ロータ15を収納する室と、該室に配設され両端に軸受部を有する回転ロータ15とを有し、回転ロータ15には、天然の獣毛や合成せんいを束ねたものから成るブラシ23を回転ロータ15の断面において対称となる2箇所に植毛し、このブラシ23の両側に凹溝24を並行して設け、ここに二列に帯状で弾力性のあるブレード25の一端側26を挿入して固定し、ブレード25は、断面形状を略T字形に構成し、ブレード25を、回転ロータ15の凹溝24に螺旋状に挿入固定し、ブラシ23を、二つの上記凹溝の間に螺旋状に配列し、ブラシ23の開放端の外径がブレード25の開放端部の外径よりも大きくして、ブラシ23の開放端がブレード25の開放端部よりも突出しているようにした掃除機用吸入ノズル。」 (2)引用例2 ア.「この回転棒(11)のヒーター(10)間の外周面には軟質材からなるシート(12)の表面に先端が次第に細くなるような円錐状の突起(13)を多数一体成形したブラシ(14)が螺旋状に接着剤にて取付けられている。」(2頁右上欄3行?7行) イ.第3図、第5図、第6図には、回転棒の長手方向に連続した溝部にシート(12)が嵌着されているブラシ14が図示されている。 (3)引用例3 「また集塵カバーを構成する各部品の取外しと、フアンの掃除、ブラシ、モツプ等の水洗も簡単にでき、常時清潔に保ち得て、しかも耐久性にすぐれ、更にブラシ、モツプ等をその掃除の用途に応じて取り換えて能率的な掃除ができる」(明細書5頁6行?10行) 3.対比 本願発明と引用発明を比較する。 引用発明の「上カバー21」は、その構造、機能からみて、本願発明の「上ケース」の相当し、同じく「回転ロータ15」は「回転ブラシ」に、「室」は「回転ブラシ室」に、「ブラシ23」は「ブラシ部」に、「ブレード25」は「ブレード部」に、「掃除機用吸入ノズル」は「電気掃除機の吸口体」に各々相当する。 そして、引用発明の「凹溝」は、長手方向に連続していることは明らかであるから、本願発明の「長手方向に連続した溝部」に相当し、同じく「挿入して固定し」、「挿入固定」は「嵌着」に相当するから、引用発明の「回転ロータ15には、天然の獣毛や合成せんいを束ねたものから成るブラシ23を回転ロータ15の断面において対称となる2箇所に植毛し、このブラシ23の両側に凹溝24を並行して設け、ここに二列に帯状で弾力性のあるブレード25の一端側26を挿入して固定し、」と本願発明の「前記回転ブラシは、長手方向に連続した溝部を、該回転ブラシの断面において90度間隔を置いて4箇所形成し、その内、回転ブラシの断面において対称となる2箇所にブレード部を、同じく回転ブラシの断面において対称となる残り2箇所にブラシ部を嵌着し」は、回転ロータ15(回転ブラシ)が、ブレード部が嵌着される長手方向に連続した溝部と、ブレード25(ブレード部)と、回転ロータ15(回転ブラシ)の断面において対称となる2箇所にブラシ23(ブラシ部)を備えている点で共通し、また、引用発明の「ブレード25は、断面形状を略T字形に構成し、ブレード25を、回転ロータ15の凹溝24に螺旋状に挿入固定し、ブラシ23を、二つの上記凹溝の間に螺旋状に配列し」と本願発明の「前記ブレード部は、断面形状を略T字形に構成し、前記ブラシ部は、パイル状の繊維を基布に連続的に植毛し、該基布を板状部材に固着し、断面形状を略T字形に構成して、前記ブレード部およびブラシ部をそれぞれ回転ブラシの溝部に螺旋状に嵌着し」は、ブレード25(ブレード部)は、断面形状を略T字形に構成し、回転ロータ15(回転ブラシ)の溝部に螺旋状に嵌着し、ブラシ23(ブラシ部)は螺旋状に配列している点で共通する。 更に、引用発明の「ブラシ23の開放端の外径がブレード25の開放端部の外径よりも大きくして、ブラシ23の開放端がブレード25の開放端部よりも突出している」は、本願発明の「ブラシ部は、その径方向の長さをブレード部の長さより長くし」てあると云える。 そうすると、両者は、本願発明の文言を用いて表現すると、 「上ケースおよび下ケースを有し、内部に回転ブラシを収納する回転ブラシ室と、該回転ブラシ室に配設され両端に軸受部を有する回転ブラシとを有し、回転ブラシが、ブレード部が嵌着される長手方向に連続した溝部と、ブレード部と、回転ブラシの断面において対称となる2箇所にブラシ部を備えていて、ブレード部は、断面形状を略T字形に構成し、回転ブラシの溝部に螺旋状に嵌着し、ブラシ部は螺旋状に配列し、ブラシ部は、その径方向の長さをブレード部の長さより長くした電気掃除機の吸口体。」で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> ブラシ部、ブレード部の配置に関し、本願発明は、回転ブラシに、ブラシ部、ブレード部を、該回転ブラシの断面において90度間隔を置いて配置し、その内、回転ブラシの断面において対称となる2箇所にブレード部を配置し、残りの2箇所にブラシ部を配置しているのに対して、引用発明は、回転ブラシに、回転ブラシの断面において対称となる2箇所に配置したブラシ部の両側に二列にブレード部を配置している点。 <相違点2> ブラシ部の構造、取り付けに関し、本願発明は、回転ブラシに、ブラシ部が嵌着される長手方向に連続した溝部を設け、ブラシ部を、パイル状の繊維を基布に連続的に植毛し、該基布を板状部材に固着し、断面形状を略T字形に構成し、ブラシ部を回転ブラシの溝部に螺旋状に嵌着しているのに対して、引用発明は、回転ブラシに植毛している点。 <相違点3> 回転ブラシの各部材の構成に関し、本願発明は、軸受部およびブラシ部,ブレード部を含めて、回転ブラシ全体を、水洗い可能な部材で構成しているのに対して、引用発明は、該部材を水洗い可能な部材で構成しているか否か明確でない点。 4.当審の判断 (1)相違点1について 電気掃除機の吸口体の分野において、螺旋状に植毛されたブラシ体と、じゅうたん・カーペット等のパイル底のゴミを浮き上がらせる螺旋状に配設された突起部(ブレード)を90度間隔を置いて配置し、ブラシ体と突起物(ブレード)を回転ブラシにおいて対称となる2箇所に配置することは周知の技術である(例えば、特開平2-172430号、特開昭60-242822号公報、実願昭54-83078号(実開昭56-1555号)のマイクロフィルム参照)。 したがって、ブラシ部、ブレード部を、各々90度間隔をおいて対称となる2箇所に配置し、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは、引用発明及び上記周知の技術から当業者が容易に想到し得たことである。 (2)相違点2について 引用例2の「シート(12)」は本願発明の「板状部材」に相当するから、引用例2には、板状部材に円錐状の突起(13)を多数一体成形してブラシ(14)を構成し、板状部材を回転棒(11)の長手方向に連続した溝部に嵌着し、ブラシ(14)を回転棒(11)に螺旋状に取り付けた発明が記載されていると云える。 また、電気掃除機の吸口体の分野において、ブラシ部を、パイル状の繊維を連続的に板状部材に固着し、断面形状を略T字形に構成し、ブラシ部を回転ブラシの溝部に嵌着することは周知の技術であり(例えば、特開平3-188822号公報参照)、更に、パイル状の繊維を、基布に植毛し、基布を板状部材に固着することも周知の技術である(例えば、特開昭61-106108号公報、実願昭60-62710号(実開昭61-179564号)のマイクロフィルム、実願昭59-161172号(実開昭61-76451号)のマイクロフィルム参照)。 したがって、ブラシ部の構造、取り付けとして、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、引用発明、引用例2に記載された発明、及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に想到し得たことである。 (3)相違点3について 引用例3には、集塵カバーを構成する各部品を取り外すことと、ブラシの水洗が簡単に行えるとが記載されているから(上記2.(3)参照)、引用例3には、ブラシを水洗い可能な部材で構成する発明が記載されていると云える。 そして、ブラシが設けられている電気掃除機の吸口体は、ゴミ等の集塵部であってそこに設けられている部材は、ブラシだけでなく他の部材も洗浄することが必要なことは当業者にとって自明なことである。 したがって、引用発明、及び引用例3に記載された発明に接した当業者ならば、軸受部およびブラシ部,ブレード部を含めて、回転ブラシ全体を、水洗い可能な部材で構成することは容易に想到し得たことであると云える。 そして、上記相違点1ないし3によって、本願発明が奏する作用効果は、引用発明、引用例2、3に記載された発明、及び上記周知の技術から予測される範囲のものであって、格別なものとは云えない。 よって、本願発明は、引用発明、引用例2、3に記載された発明、及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2、3に記載された発明、及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-15 |
結審通知日 | 2006-09-19 |
審決日 | 2006-10-02 |
出願番号 | 特願平4-172565 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A47L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 哲男、平城 俊雅、栗山 卓也 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 和泉 等 |
発明の名称 | 電気掃除機の吸口体 |
代理人 | 小川 勝男 |