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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1147327
審判番号 不服2003-3004  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-26 
確定日 2006-11-16 
事件の表示 平成10年特許願第329805号「ビデオゲーム装置およびビデオゲーム用情報記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年6月6日出願公開、特開2000-153061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成10年11月19日の出願であって、平成14年10月21日付で拒絶理由が通知され、平成14年12月17日付で意見書並びに手続補正書が提出され、平成15年1月15日付で拒絶査定がなされ、平成15年2月26日に審判請求がなされ、平成15年3月27日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年3月27日付の手続補正についての補正却下の検討
[補正却下の決定の結論]
平成15年3月27日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の目的
平成15年3月27日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1?21は、平成14年12月17日付の手続補正の特許請求の範囲の請求項22を削除するとともに、同特許請求の範囲の請求項1、11、12、15、17、20について発明を特定するための事項を限定して下位概念化するものに相当するものであり、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであるから、平成15年3月27日付の手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号に適合している。
そこで、平成15年3月27日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に適合するか)について以下に検討する。

(2)補正後の本願補正発明
平成15年3月27日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「プレイヤオブジェクトおよび地形オブジェクトの画像データをプログラムに従って処理することによって、仮想三次元空間中の地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクトを表示するための、画像信号を発生してディスプレイに供給するビデオゲーム装置であって、プレイヤオブジェクトの表示のためにプレイヤオブジェクト画像データを発生するプレイヤオブジェクト画像データ発生手段、および複数種類の地形オブジェクトを表示するために地形オブジェクト画像データを発生する地形オブジェクト画像データ発生手段を備え、前記地形オブジェクト画像データは各地形オブジェクト毎に複数のポリゴンのポリゴンデータと必要な地形オブジェクトのすべてのポリゴンのポリゴンデータ中に予め設定されているプログラム制御コードとを含み、前記ビデオゲーム装置はさらに、前記プレイヤオブジェクトの近傍にある地形オブジェクトの地形オブジェクト画像データに含まれる前記プログラム制御コードを検出するプログラム制御コード検出手段、および検出したプログラム制御コードに応じて前記画像信号に変化を生じさせる画像変化手段を備える、ビデオゲーム装置。」(以下、「本願補正発明」という。)

(3)引用例とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用されたRPGツクール Dante98,株式会社アスキー,1992年12月19日,第26頁には、以下の技術事項が記載されている。

・記載事項1
「イベントの属性
イベントの基本的な性質
イベント編集画面のイベントデータの下の欄にある”絵”、”移動タイプ”、”処理開始方法”の3つの項目を合わせて、”イベントの属性”と呼びます。”絵”は、イベントで表示されるグラフィックを表します。グラフィックを99番に設定すると、そのイベントのグラフィックは”透明”になります。次の”移動タイプ”は、イベントがゲーム中に動くか、動かないかを設定します。イベントの移動のしかたには、6通りの動き方が設定できます。最後の”処理開始方法”では、イベントがどのようなキッカケで発生するかを設定します。”処理開始方法”のついての詳細は、下の”処理開始方法について”という説明を参照してください。」(26頁1段目)

・記載事項2
「処理開始方法について
話す・調べるを実行したとき
イベント編集画面にある”処理開始方法”では、主人公キャラがイベントに対してどんな働きかけをしたときに、処理が実行されるかを設定します。処理開始方法を”話す・調べるを実行したとき”に設定すると、主人公キャラがそのイベントの方を向いて、リターンキーかスペースキーを押すと実行されるイベントになります。宝箱や隠しアイテムなど、”調べる”を実行すると発生するイベントを作成するときに使用します。
(写真の中の吹き出し部分のコメントにおいて)「ダンテは壺をのぞき込んだ。なんと幻の名刀”韮沢”を見つけた!!」
(表示画面の写真の下において)↑ 壺の中で隠しアイテムを、”話す・調べる”を実行することで手に入れられるというイベントです。」(26頁2段目)

・記載事項3
主人公キャラと接触したとき
処理開始方法を”主人公キャラに接触したとき”に設定すると、主人公キャラがイベントに接触しただけでそのイベントが発生するようになります。正確にいうと、階段など主人公キャラが通行できるパーツの上にこの種類のイベントを設定すると、主人公キャラがパーツに重なったときに発生し、壁などの通行できないパーツの上にイベントを作ると、パーツの上下左右に、主人公キャラが接触したときにイベントが発生するようになります。
↑ ダンジョンの中などに、主人公がイベントに接触するとダメージを受けるワナを作ります。(26頁3段目)

・記載事項4
自動的に処理を開始する
処理開始方法を”自動的に実行する”に設定すると、主人公キャラがそのイベントの設定された画面に入ってきたときに、イベントが発生します。たとえば、ある画面に自動的に実行するイベントを設定したとすると、主人公キャラがその画面に入ってきた瞬間にイベントが実行されることになります。このとき、主人公キャラが、どの方向から画面に入ってきても、まったく同じことが起こります。なお、ワープポイントから入ってきても同様です。
↑ 主人公キャラが画面内に入っただけで起こるイベントを作ります。画面内のどこから入っても構いません。(26頁4段目)

以上の記載事項1?記載事項4および表示画面の写真を総合すると、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
「主人公キャラおよび階段や壁などの主人公キャラが通行するパーツの画像を表示するビデオゲーム装置」(以下、「引用例に記載された発明」という。)

(4)対比
本願補正発明と上記引用例に記載された発明とを対比する。
引用例に記載された発明の「主人公キャラ」は、本願補正発明の「プレイヤオブジェクト」に相当している。
また、引用例について、以下のことを実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項1
「階段や壁などの主人公キャラが通行するパーツ」は、下記の実質的具備事項2で示すRPGの技術的意味からみて、階段や壁は主人公キャラが通行できる表示画面であり、かつ、その表示画面を構成するパーツの画像を意味するのであるから、それら壁や階段やその他のパーツは「地形オブジェクト」に実質的に相当していることは明らかである。

・実質的具備事項2
特開平10-113466号公報、特開平10-113465号公報、特開平10-307905号公報、および特開平10-179931号公報等において、RPGとは、ロールプレイングゲーム[role-playing game] の略称であって、プレーヤーが、テレビゲームの世界の中で,プレーヤーがゲームの中の主人公になって、怪物を退治したり、難題を解決したりするある人物の役割を演じ、さまざまな経験を通して成長していく過程を楽しみながら、目的を達成していくゲームであり、また、これらRPGを行うビデオゲーム装置において、プレーヤ等のキャラクタが山、川、林、野原、海等の表示画面に表示された擬似3次元マップなどの地形の上でゲームを行っていることが示されている。
このようなRPGに関する記載、および引用例に記載されたRPG(ロールプレイイングゲーム)は、プログラムを記憶したソフトウェアをコンピュータ本体に読み込んで、操作者が操作するプレーヤーがディスプレイ・表示装置上でゲームを行うものであることは、ゲーム技術分野においてきわめて広く知られている周知技術であることを踏まえると、引用例に記載された発明のビデオゲーム装置は、主人公キャラおよびパーツの画像データをプログラムに従って処理すること、主人公キャラを表示するために主人公キャラ画像データを発生する主人公キャラ画像データ発生手段を備えていること、および複数種類のパーツを表示するためにパーツ画像データを発生するパーツ画像データ発生手段を当然に備えているということができる。
そして、引用例に記載された発明の「主人公キャラ」は本願補正発明の「プレイヤオブジェクト」に相当していることは、(4)対比の柱書きに示したとおりであり、かつ、引用例1に記載された発明の「パーツ」は本願補正発明の「地形オブジェクト」に実質的に相当していることは上記実質的具備事項1において示したとおりである。
そうすると、引用例に記載された発明は、プレイヤオブジェクトおよび地形オブジェクトの画像データをプログラムに従って処理すること、プレイヤオブジェクトを表示するためにプレイヤオブジェクト画像データを発生するプレイヤオブジェクト画像データ発生手段を備えていること、および複数種類の地形オブジェクトを表示するために地形オブジェクト画像データを発生する地形オブジェクト画像データ発生手段を実質的に備えているということができる。

・実質的具備事項3
また、引用例1の記載事項2の「・・・、主人公キャラがそのイベントの方を向いて、リターンキーかスペースキーを押すと実行されるイベントになります。宝箱や隠しアイテムなど、”調べる”を実行すると発生するイベントを作成するときに使用します。↑ 壺の中で隠しアイテムを、”話す・調べる”を実行することで手に入れられるというイベントです。」および同記載事項の「ダンテは壺をのぞき込んだ。なんと幻の名刀”韮沢”を見つけた!!」並びに引用例1の第26頁の表示画面の写真に基づけば、引用例に記載された発明の主人公キャラであるダンテは、壁に囲まれたスペース内において、壺の中から名刀”韮沢”を見つけ出している場面が示されており、それら壺、壁等が仮想三次元的空間として画面に表示されていることは明らかであるから、引用例に記載された発明は、仮想三次元空間中にパーツ上に存在する主人公キャラを表示しているということができる。
そして、引用例に記載された発明の「主人公キャラ」は本願補正発明の「プレイヤオブジェクト」に相当していることは、(4)対比の柱書きに示したとおりであり、かつ、引用例1に記載された発明の「パーツ」は本願補正発明の「地形オブジェクト」に実質的に相当していることは上記実質的具備事項1において示したとおりである。
そうすると、引用例に記載された発明は、仮想三次元空間中の地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクトを表示するための、画像信号を発生してディスプレイに供給するビデオゲーム装置なる構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項4
本願補正発明は、プレイヤオブジェクトと地形オブジェクトおよびプレイヤオブジェクトとプレイヤオブジェクトの近傍にある地形オブジェクトが重なるときおよび接触するという特定の位置関係になったときに、予め地形オブジェクトと対応づけて設定してあるプログラム制御コードを検出し、およびその検出したプログラム制御コードに応じて画像信号に変化を生じさせると説明されている。
一方、主人公キャラクタと背景画像などオブジェクトの位置関係が特定の対応関係にあることを検知して、現在の背景画像と異なる背景画像を読み出して画像信号を変化させていることは、RPGを含むゲーム技術分野の表示技術において周知な技術にすぎない(特開平9-131465号公報の段落【0034】、特開平10-154240号公報の段落【0038】、特開平9-171567号公報の段落【0003】等参照)。
本願補正発明の説明および周知技術を踏まえつつ、引用例の記載事項3の「・・・主人公キャラがイベントに接触しただけでそのイベントが発生するようになります。正確にいうと、階段など主人公キャラが通行できるパーツの上にこの種類のイベントを設定すると、主人公キャラがパーツに重なったときに発生し、壁などの通行できないパーツの上にイベントを作ると、パーツの上下左右に、主人公キャラが接触したときにイベントが発生するようになります。・・・」、および同記載事項4の「・・・主人公キャラがそのイベントの設定された画面に入ってきたときに、イベントが発生します。たとえば、ある画面に自動的に実行するイベントを設定したとすると、主人公キャラがその画面に入ってきた瞬間にイベントが実行されることになります。」なる記載に基づけば、主人公キャラがパーツである壁や階段や壺等に接触または重なると、その接触または重なり(設定された画面の中に入ること)を検出して、その検出内容に応じて表示画面の画像信号を変化させ、かつ、そのような機能を実現し得る手段を有しているということができ、また、パーツの画像データは、各パーツ毎に予め設定されて、プログラム処理を行わせしめる情報を含んでいるということができる。
ところで、ゲーム技術を含む3次元表示画像に関する技術分野において、制御を行うためには制御情報が必要であること、その制御情報はコンピュータが読み取れるようにコード化すること、コード化されたデータ等の情報を読み込んだり検出したりすること、および読み取ったり検出したコード化されたデータ等の制御情報に基づいて表示装置等の制御を行うことは周知な技術にすぎない(なお、ゲーム機のフィールド表示時に、表示画像をコード化した事例として、特開平8-187356号公報の段落【0015】?【0023】、特開平3-63695号公報の5頁の左上欄、および擬似三次元表示画像における例として、特開平1-279380号公報等を参照されたい)。
そして、引用例に記載された発明の「主人公キャラ」は本願補正発明の「プレイヤオブジェクト」に相当していることは、(4)対比の柱書きに示したとおりであり、かつ、引用例1に記載された発明の「パーツ」は本願補正発明の「地形オブジェクト」に実質的に相当していることは上記実質的具備事項1において示したとおりである。
そうすると、引用例に記載された発明において、地形オブジェクト画像データは、各地形オブジェクト毎に予め設定されたプログラム制御コードを含む構成を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項5
引用例に記載された発明の「主人公キャラ」は本願補正発明の「プレイヤオブジェクト」に相当していることは、(4)対比の柱書きに示したとおりであり、かつ、引用例1に記載された発明の「パーツ」は本願補正発明の「地形オブジェクト」に実質的に相当していることは上記実質的具備事項1において示したとおりである。
また、引用例に記載された発明において、主人公キャラがパーツである壁や階段や壺等に接触または重なると、その接触または重なり(設定された画面の中に入ること)を検出して、その検出内容に応じて表示画面の画像信号を変化させ、かつ、そのような機能を実現し得る手段を有しているということができ、また、パーツの画像データは、各パーツ毎に予め設定されて、プログラム処理を行わせしめる情報を含んでいるということができること、並びにゲーム技術を含む3次元表示画像に関する技術分野において、制御を行うためには制御情報が必要であること、その制御情報はコンピュータが読み取れるようにコード化すること、コード化されたデータ等の情報を読み込んだり検出したりすること、および読み取ったり検出したコード化されたデータ等の制御情報に基づいて表示装置等の制御を行うことは周知な技術にすぎないことは、上記実質的具備事項4において示したとおりである。
そうすると、引用例に記載された発明は、地形オブジェクトの地形オブジェクト画像データに含まれるプログラム制御コードを検出するプログラム制御コード検出手段と、検出したプログラム制御コードに応じて画像信号に変化を生じさせる画像変化手段を実質的に具備しているということができる。
以上の実質的具備事項1?実質的具備事項5を勘案すると、本願補正発明と引用例に記載された発明は、

「プレイヤオブジェクトおよび地形オブジェクトの画像データをプログラムに従って処理することによって、仮想三次元空間中の地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクトを表示するための、画像信号を発生してディスプレイに供給するビデオゲーム装置であって、プレイヤオブジェクトの表示のためにプレイヤオブジェクト画像データを発生するプレイヤオブジェクト画像データ発生手段、および複数種類の地形オブジェクトを表示するために地形オブジェクト画像データを発生する地形オブジェクト画像データ発生手段を備え、地形オブジェクト画像データは、地形オブジェクト毎に予め設定されているプログラム制御コードとを含み、ビデオゲーム装置は、さらに、地形オブジェクトの地形オブジェクト画像データに含まれるプログラム制御コードを検出するプログラム制御コード検出手段と、検出したプログラム制御コードに応じて画像信号に変化を生じさせる画像変化手段を備えるビデオゲーム装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

・相違点1
地形オブジェクト画像データが、本願補正発明においては、必要なすべての地形オブジェクト毎に複数のポリゴンのポリゴンデータで構成されるのに対して、引用例に記載された発明においてはそのようなポリゴンとポリゴンデータで構成されているか否か不明な点

・相違点2
地形オブジェクトが有するプログラム制御コード検出手段が地形オブジェクト画像データに含まれるプログラムコードの検出を、本願補正発明においては、プレイヤオブジェクトが地形オブジェクトの近傍にあるときに行うのに対して、引用例に記載された発明においては、プレイヤオブジェクトが地形オブジェクトに接触または重なったときに行う点。

(5)判断
上記相違点について、検討する。
<相違点1について>
ゲーム技術分野に限らず、コンピュータ・グラフィックスを用いて仮想三次元物体を表現する際に、三次元立体を多角形(ポリゴン)の面の集合で表現することは周知なことであって、かつ、各ポリゴン毎がポリゴンデータで構成されることも周知なことにすぎない。(以下、「周知技術A」という。もし必要であれば、特開平6-44045号公報の【0010】、特開平6-139333号公報の【0017】、および特開平6-161368号公報の【0026】等参照されたい。)。
そして、引用例に記載された発明と上記周知技術Aはともに仮想三次元物体を表示装置上において表示してゲームを行うものである点で関連する技術であるので、引用例に記載された発明の仮想三次元表示技術に変えて、上記周知技術の仮想三次元表示技術を転用することに格別困難性を見出すことができない。
そうすると、引用例1に記載された発明の地形オブジェクト画像データに代えて、必要なすべての地形オブジェクト毎に複数のポリゴンのポリゴンデータで構成するようにすること、すなわち上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が引用例に記載された発明および周知技術Aに基づいて容易に想到し得た程度のことということができる。

<相違点2について>
ゲーム画面上でプレイヤキャラクタが移動体等のオブジェクトに接近したときに、両者間の距離が一定範囲内であれば、キャラクタの反応モーションを画面上に表示すること(国際公開第98/43715号パンフレット(1998)、キャラクタがプレイフィールド上でシャトルループ等のオブジェクトに接近したときにイベントが発生すること(国際公開第94/12255号パンフレット(1994)およびコンピュータ・グラフィックを用いるゲームにおいて、キャラクタがある目標に一定範囲内に接近してくると、魔法等のイベントが発生(SHINING FORCE III シナリオ1 王都の巨神 パーフェクトナビ ファミ通 編集部責任編集 1998年2月2日発行 、発行所 株式会社アスキー 発売元 株式会社 アスペクト、発行人/編集人 浜村弘一 57頁 左欄「シンビオス軍の誰かが4マス以内に接近すると、移動して魔法攻撃を仕掛けてくる。」)させること等に示されているように、ゲーム画面上で、プレイヤキャラクタとその他のオブジェクトとの距離が一定範囲内に接近してくると、新たなイベントが発生するようにすることは周知な技術にすぎない(以下、「周知技術B」という。)。
ところで、引用例に記載された発明におけるプレイヤオブジェクトの地形オブジェクトへの接触も重なりや接触も、結局は、上記周知技術Bの距離が一致するまたはほぼ一致する場合の例であって一定範囲を限定したものということができる。
このように、結局は上記周知技術Bも引用例に記載された発明も、一定範囲内に他のオブジェクトが進入、接触したことを検知することにおいて相違がないから、上記周知技術Bと引用例に記載された発明の相違は、プレイヤオブジェクトの目標物である地形オブジェクトに対する距離の定義または設定される範囲に一致するかまたはほぼ一致するか、若干範囲を広く設定したかの相違、すなわち一定範囲の設定の相違でしかないということができる。
そして、ゲーム技術分野におけるプレイヤオブジェクトと地形オブジェクト等のその他のオブジェクトとの両者の位置関係をトリガーにイベントを発生させる点で、引用例に記載された発明と上記周知技術Bは共通するのであるから、両者間において相互に利用することに格別困難である理由を見出し得ない。
そうすると、引用例に記載された発明のプログラム制御コード検出手段が、プレイヤオブジェクトが地形オブジェクトに接触または重なったときに検出することに代えて、プレイヤオブジェクトが地形オブジェクトに接近したときに、地形オブジェクト画像データに含まれるプログラムコードの検出を行うようにすること、すなわち上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が引用例に記載された発明および周知技術Bに基づいて容易に想到し得た程度のことということができる。

(6)作用効果
本願補正発明によって奏する効果も、引用例に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bから普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

(7)補正却下の判断
以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、平成15年3月25日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年3月27日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明の特許請求の範囲の請求項1?4は、平成14年12月17日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1?4において特定されるものであって、その請求項1に係る発明は、以下の示すとおりのものである。

「プレイヤオブジェクトおよび地形オブジェクトの画像データをプログラムに従って処理することによって、仮想三次元空間中の地形オブジェクト上に存在するプレイヤオブジェクトを表示するための、画像信号を発生してディスプレイに供給するビデオゲーム装置であって、プレイヤオブジェクトの表示のためにプレイヤオブジェクト画像データを発生するプレイヤオブジェクト画像データ発生手段、および複数種類の地形オブジェクトを表示するために地形オブジェクト画像データを発生する地形オブジェクト画像データ発生手段を備え、前記地形オブジェクト画像データはプログラム制御コードを含み、 前記ビデオゲーム装置はさらに、前記プレイヤオブジェクトの位置に関連して存在する地形オブジェクトの地形オブジェクト画像データに含まれる前記プログラム制御コードを検出するプログラム制御コード検出手段、および検出したプログラム制御コードに応じて前記画像信号に変化を生じさせる画像変化手段を備える、ビデオゲーム装置。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例について
引用例の記載及び周知技術およびそれらの記載事項は上記2.(3)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.(4)?(7)で検討した本願補正発明において、そのプログラム制御コードの「各地形オブジェクト毎に複数のポリゴンのポリゴンデータと必要な地形オブジェクトのすべのポリゴンのポリゴンデータ中に予め設定されている」なる構成を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記に記載したとおり、引用例に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術A並びに周知技術Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-13 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-03 
出願番号 特願平10-329805
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 篠崎 正
塩崎 進
発明の名称 ビデオゲーム装置およびビデオゲーム用情報記憶媒体  
代理人 山田 義人  

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