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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C23C
管理番号 1147332
審判番号 不服2003-10194  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-10-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-05 
確定日 2006-11-16 
事件の表示 平成11年特許願第 94764号「透明導電膜形成方法及び該方法より形成された透明導電膜」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月10日出願公開、特開2000-282225〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は平成11年4月1日に特許出願されたものであって、平成15年4月23日付けで拒絶査定がなされ、それに対し、同年6月5日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月7日付けで手続補正がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明は、平成14年9月12日付けで提出された手続補正書及び平成15年7月7日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明1」という。)。
「陰極を構成する放電プラズマ発生手段から発生されたプラズマビームを陽極に導くことにより、該陽極に収容された蒸発材料を蒸発、イオン化し、該イオン化した蒸着材料粒子を前記陽極と対向配置された基板の表面に付着させ、該表面に透明導電膜を形成する透明導電膜形成方法において、前記基板の温度を130℃以下にして前記基板の表面に前記透明導電膜を形成した後、前記形成した透明導電膜を180℃以上の温度で熱処理することを特徴とする透明導電膜形成方法。」
1.引用文献に記載された発明
(1)特開平3-29216号公報(以下、「引用文献1」という。)
原査定の拒絶の理由に引用された該文献には次の事項が記載されている。(ア)「200℃以下に加熱した基体上に、内部圧縮応力が5000kgf/cm2以下で、比抵抗が3×10-4Ω・cm以下の錫を添加した酸化インジウムからなる透明電導膜を形成することを特徴とする請求項5記載の透明電導膜の形成方法。」(請求項7)、
(イ)「基体上にカラーフィルターを形成した後、該基体を200℃以下に加熱して、請求項7記載の方法により上記カラーフィルター上に、内部圧縮応力が5000kgf/cm2以下で、比抵抗が3×10-4Ω・cm以下の錫を添加した酸化インジウムからなる透明電導膜を形成することを特徴とするカラーフィルター付電導性基体の製造方法。」(請求項8)、
(ウ)「また、蒸着チャンバー10の構成としては、第1図を例にとって説明すると、空芯コイル2によって、アーク放電プラズマ発生源の軸方向に磁場を形成し、その際形成する磁場の向きはガンの出力方向とする。さらに、アーク放電プラズマ発生源の軸を中心とし目的とする蒸着基板6と反対側に蒸着原料3と蒸着ハース(アノード)4を配置する。また、プラズマ流をハース4方向に曲げる目的で蒸着ハース4の直下に磁石5を配置する。この場合、アーク放電プラズマ発生源1から出た磁力線がハース上に効率よく集束させるために、ハース側からS極、N極となるように磁石5を配置し、アーク放電プラズマ発生源1に対して蒸着ハース4が正になるように電圧7を印加して、プラズマ流の中の主に電子流によって蒸着原料3を加熱蒸発させる。また、目的とする蒸着基板6は蒸着ハース4と対向するように配置する。」(第4頁右上欄11行?同左下欄第8行)、
(エ)「第7図のように、蒸発原料ハース4及び被膜を形成する基体6を真空室10内に配置し、細長い矩形状の永久磁石5を真空室10の外側かつ蒸発原料ハース4の下方に配置してイオンプレーティングを行なうこともできる。」(第5頁右上欄第5?9行)、
(オ)「本発明において、使用される高密度プラズマは、アーク放電を利用しているため、……、基板温度が200°以下でも、比抵抗の低い透明電導膜が従来よりも高速の成膜速度で実現できる。」(第7頁左上欄末行?同右上欄第17行)、
(カ)「本発明の方法で形成された透明電導膜を熱処理(anneal)することによりさらに低抵抗化することもできる。第10図に、本発明の方法によって成膜されたITO膜(2.9×10-4Ω・cm)を180℃、空気中でアニールした場合の低抵抗化の様子を示す。」(第7頁右上欄第19行?同左下欄第4行)、
(キ)「実施例1 基板6としてガラス板を用い、蒸着物としては導電性酸化物のITO膜を以下の方法で蒸着した。……。基板無加熱で行なった蒸着としては比抵抗もかなり低いものが得られた。」(第8頁左下欄第9行?同右下欄第6行)、
(ク)「実施例3 第3図に示すようなアーク放電プラズマ発生源を配置した第1図のような蒸着装置を用い、蒸着原料として、錫を7.5重量%添加した酸化インジウムの焼結体を使用し、200℃にあらかじめ加熱した有機物系のカラーフィルターをコート済みのノンアルカリガラス基板上(……)にITO膜をコーティングした。」(第9頁右上欄第1?9行)、
(ケ)「実施例4 第3図に示すようなアーク放電プラズマ発生源を配置した第1図のような蒸着装置を用い、蒸着原料として、錫を7.5重量%添加した酸化インジウムの焼結体を使用し、200℃にあらかじめ加熱したノンアルカリガラス基板上(……)にITO膜をコーティングした。」(第9頁右下欄下から第2行?第10頁左上欄第5行)、
(コ)「本発明は、無機ガラス基板に加えて、200℃以上に加熱できない有機フィルムや有機膜のコーティングされた無機ガラス基板にも、マグネトロンスパッタリングなどの従来の成膜方法の成膜速度(……)に比べ、2?5倍の高成膜速度(……)で、従来法による膜と同等か、あるいは、それ以下の比抵抗を持ち、かつ内部応力が小さく、カラーフィルターの剥離などを生じない透明電導膜を成膜できるという優れた効果を有するだけでなく、又、かかる透明電導膜を高温に加熱することなく成膜可能なため、透明電導膜の膜厚が同じであっても、EB蒸着やマグネトロンスパッタリング法等の従来方法に比べシート抵抗が半分程度と従来にない低抵抗の透明電極付き液晶ディスプレー用カラーフィルター基板が提供でき、液晶ディスプレーの応答機能、解像度を飛躍的に向上できるという効果も有する。」(第10頁左下欄第18行?同右下欄第17行)、
(サ)第1図(第12頁)には、蒸着チャンバー10にアーク放電プラズマ発生源1と蒸着原料3を収容する蒸着ハース4を設け、また、蒸着ハース4の上部に蒸着基板6を蒸着ハース4と対向するように配置して設け、さらに、アーク放電プラズマ発生源1と蒸着ハース4とに亘る高密度プラズマ9を発生させるものが示されている。
3.対比・判断
これらの記載を本願発明1の記載振りに則して整理すると、引用文献1には、「陰極を構成するアーク放電プラズマ発生源から発生された高密度プラズマを陽極を構成する蒸着ハースに導くことにより、該蒸着ハースに収容された蒸着原料を蒸発、イオン化し、該イオン化した蒸着原料粒子を前記陽極を構成する蒸着ハースと対向するように配置して設けられた基体の表面に付着させ、該表面に透明電導膜を形成する透明電導膜形成方法において、前記基体の温度を200℃以下から無加熱にして前記基体の表面に前記透明電導膜を形成した後、前記形成した透明電導膜を180℃で熱処理することを特徴とする透明電導膜形成方法。」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本願発明1と引用1発明を対比すると、引用1発明の「アーク放電プラズマ発生源」、「高密度プラズマ」、「陽極を構成する蒸着ハース」、「蒸着原料」、「基体」及び「透明電導膜」が、それぞれ、本願発明1の「放電プラズマ発生手段」、「プラズマビーム」、「陽極」、「蒸発材料」又は「蒸着材料」、「基板」及び「透明導電膜」に相当することは当業者にとって明らかなことである。したがって、「陰極を構成するアーク放電プラズマ発生源から発生された高密度プラズマを陽極を構成する蒸着ハースに導くことにより、該蒸着ハースに収容された蒸着原料を蒸発、イオン化し、該イオン化した蒸着原料粒子を前記陽極を構成する蒸着ハースと対向するように配置して設けられた基体の表面に付着させ、該表面に透明電導膜を形成する透明電導膜形成方法」は、本願発明1の「陰極を構成する放電プラズマ発生手段から発生されたプラズマビームを陽極に導くことにより、該陽極に収容された蒸発材料を蒸発、イオン化し、該イオン化した蒸着材料粒子を前記陽極と対向配置された基板の表面に付着させ、該表面に透明導電膜を形成する透明導電膜形成方法」であるといえる。そして、引用1発明の「基体の温度を200℃以下から無加熱にして前記基体の表面に前記透明電導膜を形成した後、前記形成した透明電導膜を180℃で熱処理すること」は、本願発明1の「基板の温度を130℃以下にして前記基板の表面に前記透明導電膜を形成した後、前記形成した透明導電膜を180℃以上の温度で熱処理すること」に相当する。
そうすると、両発明には、実質的に差違があるとは認められない。
してみると、本願発明1は、引用1発明である。
なお、原査定においては、上記引用文献1に記載された発明から進歩性がないとの拒絶の理由により拒絶査定しているが、平成14年6月24日付け拒絶理由通知書において新規性について拒絶の理由が通知され、審判請求人が審判請求書(d)において本願発明と引用文献の対比を行うなど、新規性についての意見を述べる機会が与えられているので、あらためて新規性について拒絶の理由を通知しないで審決することとした(必要であれば審判便覧62-03参照。)。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-13 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-02 
出願番号 特願平11-94764
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C23C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬良 聡機  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 斉藤 信人
廣野 知子
発明の名称 透明導電膜形成方法及び該方法より形成された透明導電膜  
代理人 別役 重尚  
代理人 池田 浩  
代理人 後藤 夏紀  
代理人 村松 聡  

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