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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1147361
審判番号 不服2004-3815  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2006-11-16 
事件の表示 特願2001-287909「ポリッシング装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-141318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年9月20日に出願した特願平6-297821号(優先権主張平成5年9月21日)の一部を平成13年9月20日に新たな特許出願としたものであって、平成15年11月28日付で明細書を補正対象とする手続補正がなされた後、平成16年1月19日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月19日付で明細書を補正対象書類とする手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月19日付の明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】
本件補正を却下する。

【理由】
2.1 本件補正の内容
2.1.1 補正事項a(請求項1)
<補正前>「ポリッシング対象物を搬入して研磨した後に洗浄し、清浄なポリッシング対象物を搬出するポリッシング装置であって、
該ポリッシング装置はカバーで覆われ、
研磨を行うべきポリッシング対象物を載置するロード部と、
該ロード部から搬送されたポリッシング対象物を研磨する少なくとも1つの研磨部と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる少なくとも1つの洗浄部と、
洗浄後の清浄で乾燥したポリッシング対象物を載置するアンロード部と、
装置内でポリッシング対象物を搬送する搬送ロボットとを備え、
前記研磨部は複数のターンテーブルを備え、該複数のターンテーブルにおける研磨条件は異なることを特徴とするポリッシング装置。」
<補正後>「ポリッシング対象物を搬入して研磨した後に洗浄し、清浄なポリッシング対象物を搬出するポリッシング装置であって、
該ポリッシング装置はカバーで覆われ、
研磨を行うべきポリッシング対象物を載置するロード部と、
該ロード部から搬送されたポリッシング対象物を研磨する少なくとも1つの研磨部と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる少なくとも1つの洗浄部と、
洗浄後の清浄で乾燥したポリッシング対象物を載置するアンロード部と、
装置内でポリッシング対象物をアームの回転により搬送する搬送ロボットとを備え、
前記研磨部は複数のターンテーブルを備え、前記複数のターンテーブルは前記研磨部間でポリッシング対象物を搬送する前記搬送ロボットを中心とした周囲に配置され、該複数のターンテーブルにおける研磨条件は異なることを特徴とするポリッシング装置。」

2.1.2 補正事項b(請求項2)
<補正前>「ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、
ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、
クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、
ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、
洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、
前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なるターンテーブルでの研磨であることを特徴とするポリッシング方法。」
<補正後>「ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、
ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、
クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、
ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、
洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、
前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なるターンテーブルでの研磨であり、
搬送ロボットを中心としたアームの回転移動により前記工程間のポリッシング対象物の搬送を行うことを特徴とするポリッシング方法。」

2.1.3 補正事項c(請求項5)
<補正前>「ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、
ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、
クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、
ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、
洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、
前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なる研磨クロスでの研磨であることを特徴とするポリッシング方法。」
<補正後>「ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、
ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、
クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、
ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、
洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、
前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なる研磨クロスでの研磨であり、
搬送ロボットを中心としたアームの回転移動により前記工程間のポリッシング対象物の搬送を行うことを特徴とするポリッシング方法。」

2.1.4 補正事項d(請求項8)
<補正前>「ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、
ポリッシング対象物を載置するロード部からロボットによりピッキングされ反転された後、研磨部のロードポジションに移送され、該ロードポジションからトップリングでポリッシング対象物を吸着し、該ポリッシング対象物をテーブルの上面に押し当て、ポリッシング対象物の表面を研磨することを特徴とするポリッシング方法。」
<補正後>「ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、
ポリッシング対象物を載置するロード部からロボットによりピッキングされ反転された後、該ロボットを中心としたアームの回転移動により研磨部のロードポジションに移送され、該ロードポジションからトップリングでポリッシング対象物を吸着し、該ポリッシング対象物をテーブルの上面に押し当て、ポリッシング対象物の表面を研磨することを特徴とするポリッシング方法。」

2.1.5 補正事項e(明細書段落【0009】)
<補正前>「【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するため、本発明のポリッシング装置は、ポリッシング対象物を搬入して研磨した後に洗浄し、清浄なポリッシング対象物を搬出するポリッシング装置であって、該ポリッシング装置はカバーで覆われ、研磨を行うべきポリッシング対象物を載置するロード部と、該ロード部から搬送されたポリッシング対象物を研磨する少なくとも1つの研磨部と、研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる少なくとも1つの洗浄部と、洗浄後の清浄で乾燥したポリッシング対象物を載置するアンロード部と、装置内でポリッシング対象物を搬送する搬送ロボットとを備え、前記研磨部は複数のターンテーブルを備え、該複数のターンテーブルにおける研磨条件は異なることを特徴とする。」
<補正後>「【課題を解決するための手段】上述した目的を達成するため、本発明のポリッシング装置は、ポリッシング対象物を搬入して研磨した後に洗浄し、清浄なポリッシング対象物を搬出するポリッシング装置であって、該ポリッシング装置はカバーで覆われ、研磨を行うべきポリッシング対象物を載置するロード部と、該ロード部から搬送されたポリッシング対象物を研磨する少なくとも1つの研磨部と、研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる少なくとも1つの洗浄部と、洗浄後の清浄で乾燥したポリッシング対象物を載置するアンロード部と、装置内でポリッシング対象物をアームの回転により搬送する搬送ロボットとを備え、前記研磨部は複数のターンテーブルを備え、前記複数のターンテーブルは前記研磨部間でポリッシング対象物を搬送する前記搬送ロボットを中心とした周囲に配置され、該複数のターンテーブルにおける研磨条件は異なることを特徴とする。」

2.1.6 補正事項f(同段落【0010】)
<補正前>「本発明のポリッシング方法の1態様は、ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なるターンテーブルでの研磨であることを特徴とする。
ここで、前記複数の研磨条件はあらかじめ設定されている。
また、前記複数の研磨条件はポリッシング対象物の性状により選択される。」
<補正後>「本発明のポリッシング方法の1態様は、ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なるターンテーブルでの研磨であり、搬送ロボットを中心としたアームの回転移動により前記工程間のポリッシング対象物の搬送を行うことを特徴とする。
ここで、前記複数の研磨条件はあらかじめ設定されている。
また、前記複数の研磨条件はポリッシング対象物の性状により選択される。」

2.1.7 補正事項g(同段落【0011】)
<補正前>「本発明のポリッシング方法の他の態様は、ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なる研磨クロスでの研磨であることを特徴とする。
ここで、前記複数の研磨条件はあらかじめ設定されている。
また、前記複数の研磨条件はポリッシング対象物の性状により選択される。」
<補正後>「本発明のポリッシング方法の他の態様は、ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、ポリッシング装置をカバーで覆うことによりクリーンルーム内に設置し、クリーンルーム内からポリッシング対象物をポリッシング装置内に搬入する工程と、ポリッシング対象物を研磨する研磨工程と、研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる工程と、洗浄乾燥の終了した清浄なポリッシング対象物をポリッシング装置からクリーンルーム内に搬出する工程とを備え、前記研磨工程は、複数の研磨条件の異なる研磨クロスでの研磨であり、搬送ロボットを中心としたアームの回転移動により前記工程間のポリッシング対象物の搬送を行うことを特徴とする。
ここで、前記複数の研磨条件はあらかじめ設定されている。
また、前記複数の研磨条件はポリッシング対象物の性状により選択される。」

2.1.8 補正事項h(同段落【0012】)
<補正前>「本発明のポリッシング方法の更に他の態様は、ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、ポリッシング対象物を載置するロード
部からロボットによりピッキングされ反転された後、研磨部のロードポジションに移送され、該ロードポジションからトップリングでポリッシング対象物を吸着し、該ポリッシング対象物をテーブルの上面に押し当て、ポリッシング対象物の表面を研磨することを特徴とする。
ここで、前記ロボットは、真空吸着によりポリッシング対象物を保持する。
また、前記ポリッシング対象物は半導体ウエハである。
また、前記研磨部は複数個ある。
更に、前記複数の研磨部での研磨の途中でポリッシング対象物を洗浄する。
また、前記ポリッシング対象物は、研磨の後、洗浄部で洗浄が行われた後、ポリッシングを完了したポリッシング対象物を載置するアンロード部に載置される。
また、前記ポリッシング対象物を研磨した後、ドレッシング機構によりターンテーブル上の研磨クロスをドレッシングする。
ここで、前記ドレッシング機構はブラシである。」
<補正後>「本発明のポリッシング方法の更に他の態様は、ポリッシング対象物を研磨した後に洗浄するポリッシング方法であって、ポリッシング対象物を載置するロード部からロボットによりピッキングされ反転された後、該ロボットを中心としたアームの回転移動により研磨部のロードポジションに移送され、該ロードポジションからトップリングでポリッシング対象物を吸着し、該ポリッシング対象物をテーブルの上面に押し当て、ポリッシング対象物の表面を研磨することを特徴とする。
ここで、前記ロボットは、真空吸着によりポリッシング対象物を保持する。
また、前記ポリッシング対象物は半導体ウエハである。
また、前記研磨部は複数個ある。
更に、前記複数の研磨部での研磨の途中でポリッシング対象物を洗浄する。
また、前記ポリッシング対象物は、研磨の後、洗浄部で洗浄が行われた後、ポリッシングを完了したポリッシング対象物を載置するアンロード部に載置される。
また、前記ポリッシング対象物を研磨した後、ドレッシング機構によりターンテーブル上の研磨クロスをドレッシングする。
ここで、前記ドレッシング機構はブラシである。」
(なお、下線は補正箇所を明確にする目的で、当審にて付与したものである。)

2.2 補正の目的に関する判断
2.2.1 <補正事項a>について
補正事項aは、請求項1に係る発明の構成に不可欠の事項である「搬送ロボット」及び「複数のターンテーブル」について、「アームの回転により搬送する」もの、及び「研磨部間でポリッシング対象物を搬送する搬送ロボットを中心とした周囲に配置され」るもの、にそれぞれ限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.2.2 <補正事項b,c>について
補正事項b及びcは、それぞれ請求項2及び5に係る発明の構成に不可欠の事項である「ポリッシング対象物」について、「搬送ロボットを中心としたアームの回転移動により工程間の搬送を行う」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.2.3 <補正事項d>について
補正事項dは、請求項8に係る発明の構成に不可欠の事項である「研磨部のロードポジションに移送」について、「ロボットを中心としたアームの回転により」との限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2.2.4 <補正事項e?h>について
補正事項e,f,g,hはそれぞれ、上記補正事項a?dにより補正された請求項1,2,5,8の記載との整合を図るものであるから、不明りょうな記載の釈明を目的とするものに該当する。

2.2.5 まとめ
上記補正事項a?hは、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
したがって、本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項の規定を満たしている。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.3 刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に国内で頒布された次の刊行物には、以下の事項が記載されていると認められる。
刊行物1: 特開平4-334025号公報
刊行物2: 特開平5-226308号公報

2.3.1 刊行物1
a.(第4欄第49行?第5欄第31行)
「【課題を解決するための手段】本発明の自動研磨機は複数の化合物半導体ウエハをワックスで貼り付けた円板状の研磨プレートをウエハが下向きになるように回転可能に保持する強制回転ヘッドと、上方空間に設けられたヘッドガイドと、強制回転ヘッドを懸架してヘッドガイドに沿って走行停止できる懸架走行装置と、懸架走行装置の中に設けられて強制回転ヘッドを昇降し加圧する昇降加圧部と、ヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられ研磨プレートを定置すれば下降してきた強制回転ヘッドによって研磨プレートが保持されるようにしたロード部と、回転定盤と研磨液供給装置とよりなりヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられウエハ下面を一次研磨する一次研磨装置と、回転定盤と研磨液供給装置とよりなりヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられウエハ下面を二次研磨する二次研磨装置と、上方に向けた発光素子と受光素子とよりなりウエハ面、研磨プレート面へ下方から光を当て下方に反射された光を受光素子によって検出する事により研磨プレートの下面に貼り付けられたウエハの厚みを測定する装置であってヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられた厚み測定装置と、ヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられ下降してきた強制回転ヘッドが研磨プレートを離し研磨プレートが強制回転ヘッドから離脱するようにしたアンロード部と、ヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられ研磨プレート下面のウエハに純水を吹き付けて水洗する水洗装置とヘッドガイドのいずれかの部位の直下に設けられ研磨プレート下面のウエハに空気または不活性ガスを吹き付けて乾燥させる乾燥装置とを含むことを特徴とする。
また、これらの一次、二次研磨装置、厚み測定装置は密封された部屋の中に全てを収容し、さらに上方から下方にかけて清浄な空気を流すようにするのが望ましい。」
b.(第6欄第9?24行)
「ウエハを貼り付けた研磨プレートをウエハが下に向くようにロード部に定置する。以下の動作は自動的に行われる。強制回転ヘッドが下降し研磨プレートを把持する。研磨プレートを保持したまま強制回転ヘッドが上昇する。ヘッドガイドに沿って強制回転ヘッドが平行移動し一次研磨装置の回転定盤の上へゆく。ここで強制回転ヘッドが下降しウエハが回転定盤の研磨布に接触する。研磨液を供給しながら回転定盤を公転させ、強制回転ヘッドを自転させる。これによって一次研磨がなされる。
一次研磨は一定時間行われる。これが終了すると強制回転ヘッドが上昇し平行移動し一定時間内に水洗装置に至る。ここで純水が下方からウエハに噴射される。続いて乾燥装置へ移り(移動しないこともある)強制回転ヘッドが自転し、ウエハは空気および遠心乾燥効果によって乾燥させられる。」
c.(第6欄第31?40行)
「厚み測定の後、ヘッドガイドに沿って強制回転ヘッド及び研磨プレートは、二次研磨装置の真上へ移動する。ここで強制回転ヘッドは下降し、ウエハが回転定盤の上に貼られた研磨布に接触する。研磨液を供給しながら、回転定盤を回転させ、強制回転ヘッドによって研磨プレートも回転させる。これは従来の研磨と同じで公転自転の組み合わせによってウエハを研磨できる。
二次研磨が終わると、アンロード部へ研磨プレート強制回転ヘッドが一定時間内に移動する。アンロード部で研磨プレートが強制回転ヘッドから離れる。」
d.(第9欄第21?26行)
「以上の構成に於いて、研磨の手順を再び簡単に述べる。研磨プレート7がロード部13で強制回転ヘッド4に保持される。ここで水洗される。一次研磨する。ロード部に戻り、水洗乾燥する。厚み測定を行う。二次研磨する。アンロード部17で水洗され強制回転ヘッド4から離脱する。」

上記摘記事項より、自動研磨機において、ウエハは研磨プレートに貼り付けられた状態で処理されることが明らかであるから、研磨プレートとこれに貼り付けられたウエハとは、一体となった研磨対象物ということができる。そこで、上記の摘記事項a?dの内容を本件補正発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には、
「研磨対象物を搬入して研磨した後に水洗し、水洗された研磨対象物を搬出する自動研磨機であって、
該自動研磨機は密閉された部屋に収容され、
研磨を行うべき研磨対象物を載置するロード部と、
該ロード部から搬送された研磨対象物を研磨する少なくとも1つの研磨装置と、
研磨後の研磨対象物を水洗する水洗装置と乾燥させる乾燥装置と、
水洗された研磨対象物を載置するアンロード部と、
自動研磨機内で研磨対象物を搬送する懸架走行装置とを備え、
前記研磨装置は複数の回転定盤を備える自動研磨機。」
(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

2.3.2 刊行物2
a.(第1欄第28?30行)
「図5は図4に示した半導体ウエハの裏面処理方法に用いられる半導体ウエハの裏面処理装置の概念図である。」
b.(第2欄第1?21行)
「キャリヤ・ローダー18に搬入された複数枚の半導体ウエハ1はウエハキャリヤ21から一枚毎に取り出されて回動ステージ11の固定場所Aに、その保護テープ3の方を下側に向けて、真空吸着により固定し、その後180°回動して、半導体ウエハ1の裏面を粗砥石12の下に持ち来し、粗研削する。
この粗研削が終了すると、この回動ステージ11を元の位置に回動し、その粗研削された半導体ウエハ1Bを次の工程(4)における回動ステージ13の固定場所Bに移替え、前工程(3)と同様に真空吸着により固定し、そしてこの回動ステージ13を180°回動して半導体ウエハ1Bの裏面を仕上砥石14の下に持ち来し、仕上研削する。
ほぼ所定の厚さに半導体ウエハ1Bを仕上研削すると、回動ステージ13が元の位置に回動し、その仕上研削された半導体ウエハ1Cをスピンナー15に移送、載置し、回転させながら注水用ノズル16から噴射させた純水で洗浄し〔工程(5)〕、次に、同じくスピンナー15で回転させながら空気ノズル17から空気を噴射させて半導体ウエハ1Cを乾燥する〔工程(6)〕。」
c.(図5)
スピンナー15に続いて、キャリヤ・アンローダー19が備えられていることが看取される。

刊行物2記載のものにおいて、「キャリヤ・アンローダー19」が、スピンナー15にて洗浄及び乾燥された半導体ウエハを載置して搬出するものであることは、当業者にとって明白である。また、回動ステージ11及び回動ステージ13では、それぞれ粗研削と仕上研削をするため、両者における研削条件が異なることも当業者にとって自明である。
したがって、上記の摘記事項a?cからみて、刊行物2には、
「研削後の半導体ウエハを洗浄し乾燥させる手段と、
洗浄後の清浄で乾燥した半導体ウエハを載置するキャリヤ・アンローダーとを備え、
研削部は複数の回動ステージを備え、該複数の回動ステージにおける研削条件は異なる半導体ウエハの裏面処理装置。」
(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

2.4 対比
本願補正発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、後者の「研磨対象物」、「水洗」、「研磨装置」、「懸架走行装置」、「回転定盤」及び「自動研磨機」が、前者の「ポリッシング対象物」、「洗浄」、「研磨部」、「搬送ロボット」、「ターンテーブル」及び「ポリッシング装置」にそれぞれ相当することは明白である。後者において、「水洗」することは、ポリッシング対象物を洗浄して清浄にすることであり、また、「密閉された部屋に収容」することは、装置全体をカバーで覆うことと同等である。後者の「水洗装置」及び「乾燥装置」が、前者の「洗浄部」を構成することも明白である。
そうすると、両者の間には次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「ポリッシング対象物を搬入して研磨した後に洗浄し、清浄なポリッシング対象物を搬出するポリッシング装置であって、
該ポリッシング装置はカバーで覆われ、
研磨を行うべきポリッシング対象物を載置するロード部と、
該ロード部から搬送されたポリッシング対象物を研磨する少なくとも1つの研磨部と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる少なくとも1つの洗浄部と、
洗浄後のポリッシング対象物を載置するアンロード部と、
装置内でポリッシング対象物を搬送する搬送ロボットとを備え、
前記研磨部は複数のターンテーブルを備えるポリッシング装置。」である点。
<相違点1>
アンロード部は、前者では洗浄後の清浄で乾燥したポリッシング対象物を載置するのに対し、後者ではアンロード部においてポリッシング対象物が乾燥しているか明らかでない点。
<相違点2>
前者では複数のターンテーブルにおける研摩条件が異なるのに対し、後者では複数のターンテーブルにおける研磨条件の異同が明らかにされていない点。
<相違点3>
前者では搬送ロボットがポリッシング対象物をアームの回転により搬送するものであり、複数のターンテーブルが研磨部間でポリッシング対象物を搬送する前記搬送ロボットを中心とした周囲に配置されるのに対し、後者では、搬送ロボット、ターンテーブルの配置とも、このようなものでない点。

2.5 判断
以下に、上記相違点について検討する。
2.5.1 <相違点1>について
刊行物2には、洗浄後の清浄で乾燥した半導体ウエハを載置するキャリヤ・アンローダーをもつものが記載されている。刊行物2記載の事項における「キャリヤ・アンローダー」及び「研削」が、本件補正発明の「アンローダー部」及び「研磨」に相当することは明らかである。
刊行物2記載の事項は、刊行物1記載の発明と同じくウエハを研磨する装置に関するから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用し、相違点1に係る構成を本件補正発明のものとすることは、当業者が容易になし得るものである。

2.5.2 <相違点2>について
刊行物2にはまた、複数の回動ステージにおける研削条件が異なるものが記載されている。刊行物2記載の事項における「回動ステージ」及び「研削」が、本件補正発明の「ターンテーブル」及び「研磨」に相当することは明白である。
刊行物2記載の事項は、刊行物1記載の発明と同じくウエハを研磨する装置に関するから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用し、相違点2に係る構成を本件補正発明のものとすることは、当業者が容易になし得るものである。

2.5.3 <相違点3>について
半導体ウエハの処理装置において、処理対象物であるウエハをアームの回転により搬送する搬送ロボットにより搬送し、複数の処理装置を搬送ロボットを中心とした周囲に配置することは、従来周知の技術である。(必要ならば、特開平4-137613号公報、特開平4-186860号公報等を参照のこと。)
刊行物1記載の発明は、半導体ウエハを研磨処理する装置に係るから、刊行物1記載の発明に上記周知技術を適用し、相違点3に係る構成を本件補正発明のものとすることは、当業者が容易になし得るものである。

2.5.4 まとめ
本件補正発明には、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術に基いて普通に予測される作用効果を上回る、格別のものを見出すこともできない。
よって、本件補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2.6 むすび
以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができるものであるため、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
3.1 本願発明
平成16年3月19日付の明細書を補正対象書類とする手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成15年11月28日付で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「ポリッシング対象物を搬入して研磨した後に洗浄し、清浄なポリッシング対象物を搬出するポリッシング装置であって、
該ポリッシング装置はカバーで覆われ、
研磨を行うべきポリッシング対象物を載置するロード部と、
該ロード部から搬送されたポリッシング対象物を研磨する少なくとも1つの研磨部と、
研磨後のポリッシング対象物を洗浄し乾燥させる少なくとも1つの洗浄部と、
洗浄後の清浄で乾燥したポリッシング対象物を載置するアンロード部と、
装置内でポリッシング対象物を搬送する搬送ロボットとを備え、
前記研磨部は複数のターンテーブルを備え、該複数のターンテーブルにおける研磨条件は異なることを特徴とするポリッシング装置。」
(以下、「本願発明」という。)

3.2 刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記「2.3」に記載したとおりである。

3.3 対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、「搬送ロボット」の限定事項である、「アームの回転により搬送する」との構成を省き、「複数のターンテーブル」の限定事項である、「研磨部間でポリッシング対象物を搬送する搬送ロボットを中心とした周囲に配置され」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.6」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項並びに従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし15に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-13 
結審通知日 2006-09-19 
審決日 2006-10-02 
出願番号 特願2001-287909(P2001-287909)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三宅 達紀本 孝  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 佐々木 正章
豊原 邦雄
発明の名称 ポリッシング装置及び方法  
代理人 堀田 信太郎  
代理人 渡邉 勇  
代理人 森 友宏  
代理人 森 友宏  
代理人 渡邉 勇  
代理人 堀田 信太郎  

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