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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1147437
審判番号 不服2006-8619  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-01 
確定日 2006-11-13 
事件の表示 平成8年特許願第320653号「交通機関運転手特定機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年5月22日出願公開、特開平10-133595〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年10月28日に出願された特願平8-320653号の特許出願であって、原審において平成17年2月4日付の拒絶理由を通知したところ、平成17年3月31日付の意見書とともに同日付の手続補正書が提出され、さらに平成17年4月26日付の拒絶理由を通知したところ、平成17年6月8日付の意見書のみが提出され、そして平成17年12月8日付の最後の拒絶理由を通知したところ、何らの応答もなく、前記拒絶理由により平成18年3月31日付で拒絶査定がなされ、その後、前記拒絶査定を不服として平成18年5月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付の手続補正書が提出されたものである。

第2 平成18年5月1日付の手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年5月1日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容
平成18年5月1日付の手続補正(以下、この補正を「本件補正」という。)は、平成17年3月31日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲についての
「【請求項1】 移動発進させようとする時に運転手自身の身体的特徴を所定の場所にセツトしなければ内燃機関、電動機関等、原動力の始動使用出来ない移動手段。
【請求項2】 移動発進させようとする時に運転手自身の身体的特徴を所定の場所にセツトしなければハンドルのロック解除、ドアー開閉が出来ない移動手段。
【請求項3】 予め単数、複数の運転手の予定者を決めて登録し、登録以外の者は運転をできない様にする請求項1又は2に記載の移動手段。
【請求項4】 警察や特定の関係者等による解除運転出来る請求項1から3のいずれか一に記載の移動手段。」
の記載を、
「【請求項1】 移動発進させようとする時に、運転免許証、又は運転手を特定する物を、交通機関の内部の所定の場所にセツトしなければドアー開閉が出来ない移動手段。
【請求項2】 予め単数、複数の運転手の予定者を決めて登録し、登録以外の者はドアー開閉が出来ない様にする請求項1に記載の移動手段。
【請求項3】 警察や特定の関係者等によるドアー開閉が出来る請求項1又は2に記載の移動手段。」
とする補正である。

2.本件補正についての検討
(1)本件補正が特許法第17条の2第4項の規定に適合するか否か、すなわち、同法第17条の2第1項第4号の規定によりなされた特許請求の範囲についてする補正が、同法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的に該当する補正であるか否かについて、次に検討する。

(2)本件補正における請求項1ないし請求項3についての補正は、次の「ア.」?「キ.」に示すとおりのものである。
ア.本件補正前の請求項1を、削除する補正。
イ.上記ア.の補正に伴って、本件補正前の請求項3及び請求項4における各引用請求項を、本件補正の請求項2及び請求項3において順次繰り上げる補正。
ウ.本件補正前の請求項2における「運転手自身の身体的特徴」を、本件補正の請求項1において「運転免許証、又は運転手を特定する物」とする補正。
エ.本件補正前の請求項2における「所定の場所」を、本件補正の請求項1において「交通機関の内部の所定の場所」とする補正。
オ.本件補正前の請求項2における「ハンドルのロック解除、ドアー開閉」を、本件補正の請求項1において「ドアー開閉」とする補正。
カ.本件補正前の請求項3における「運転をできない様にする」を、本件補正の請求項2において「ドアー開閉が出来ない様にする」とする補正。
キ.本件補正前の請求項4における「解除運転出来る」を、本件補正の請求項3において「ドアー開閉が出来る」とする補正。

(3)上記「ア.」?「キ.」の各補正のうちの「ウ.」の補正は、本件補正前の請求項2に記載の「運転手自身の身体的特徴」を、本件補正の請求項1において「運転免許証、又は運転手を特定する物」とする補正であるが、当該補正における「運転免許証」及び「運転手を特定する物」は、本願の出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1においては、「運転免許証 又 運転手を特定する物 又 運転手自身の身体的特徴」のように択一的表現により記載されていた三つの事項の中の二つであって、このことからみて、それらの「運転免許証」、「運転手を特定する物」及び「運転手自身の身体的特徴」の各事項には包含する関係がなく、各事項が上位概念又は下位概念の関係にあるものではないから、それらの前記事項は互いに独立した事項であることが明らかである。
そして、前記「ウ.」の補正は、本件補正前の請求項2に係る発明を特定するために必要な事項である「運転手自身の身体的特徴」を、審判請求人が平成17年6月8日付の意見書において主張しているところの「『身体的特徴』とは、指紋、声紋、網膜パターン、顔情報などを意味する」としている「運転手自身の身体的特徴」であるところの「指紋、声紋、網膜パターン、顔情報など」の概念に包含され得ない「運転免許証、又は運転手を特定する物」に変更する補正でもあるから、前記「ウ.」の補正は、特許法第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項である「運転手自身の身体的特徴」を限定する補正であるということができない。
したがって、前記「ウ.」の補正は、特許法第17条の2第4項の第2号に規定されているところの、
第2号:特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
の目的に該当する補正であるということができない。
そしてまた、前記「ウ.」の補正は、特許法第17条の2第4項の第1号、第3号及び第4号に規定されているところの、
第1号:第三十6条第5項に規定する請求項の削除
第3号:誤記の訂正
第4号:明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
のいずれかの目的に該当する補正でないことも明らかなことである。
したがって、前記「ウ.」の補正は、特許法第17条の2第4項の第1号ないし第4号に規定する補正の目的のいずれにも該当しない補正である。

(4)以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合していないから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
上記「第2」欄に前述した理由により、平成18年5月1日付の手続補正が却下されたことにより、当審が審理すべき本願発明は、平成17年3月31日付の手続補正により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、特にその請求項1に係る発明は、請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(上記「第2」の「1.補正の内容」欄を参照)。
「【請求項1】 移動発進させようとする時に運転手自身の身体的特徴を所定の場所にセツトしなければ内燃機関、電動機関等、原動力の始動使用出来ない移動手段。」(以下、これを「本願発明1」という。)

2.引用刊行物
原審における拒絶査定の理由に引用された刊行物であって本願特許出願前に頒布された特開平6-72291号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、「指紋識別器を使用した自動車キーシステム」に関し、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 指紋識別器を使用し、自動車のエンジンキーや自動車のドアキーとして使用し、本人又は登録してある人以外は、使用出来なくする事を可能としている。
【発明の詳細な説明】
【0001】【産業上の利用分野】 本発明は、指紋識別器を使用し、自動車のエンジキー又は、自動車のドアキーに関するものである。
【0002】【従来の技術】 自動車での、この様な使用例は無く、自動車のエンジンキーやドアキーが無ければ使用出来なかった。
【0003】【発明が解決しようとする課題】 自動車のエンジンキーやドアキーが無くなる事があり、自動車のエンジンキーを付けたままにしていると盗まれる事がある。又予備鍵が必要であった。
【0004】【課題を解決する為の手段】 自動車のエンジンキーや自動車のドアキーを指紋識別器に置き換える事により盗難防止や、キー紛失する事によるトラブルを無くす事が可能になる。
【0005】【実施例】 図1は、指紋識別器1にあらかじめ登録してある本人が、自動車の運転席にすわり指紋識別器に指を当てる事により本人と認識した時、スタータ制御回路2によりエンジンがスタートする。
【0006】 図2は、指紋識別器3にあらかじめ登録してある本人が、自動車のドアに配置してある指紋識別器に指を当てる事により本人と認識した時、ドアロック制御回路4によりドアが開く様にする。
【0007】【発明の効果】 以上説明した様に本発明の指紋識別器は、自動車のエンジンキーやドアキーを無くす事により、キー紛失による自動車の盗難や、キーの車内置忘れによるトラブルを防ぐ事が可能になる。」

そうすると、上記引用刊行物1における前記摘記事項からみて、引用刊行物1には、次の発明(以下、これを「引用発明」という。)の記載が認められる。
「自動車のエンジンキーや自動車のドアキーの替わりに、自動車のエンジンキーや自動車のドアキーとして指紋識別器を使用するものであって、
前記指紋識別器1にあらかじめ登録してある本人又は登録してある人が、自動車の運転席にすわり、指紋識別器1に指を当てることにより本人と認識した時、スタータ制御回路2によりエンジンがスタートするか、
或いは、指紋識別器3にあらかじめ登録してある本人が、自動車のドアに配置してある指紋識別器3に指を当てることにより本人と認識した時、ドアロック制御回路4によりドアが開くようにすることにより、
本人又は登録してある人以外は、自動車を使用できなくすることを可能とする指紋識別器を備えた自動車」

3.対比
本願発明1と前記引用発明とを比較すると、引用発明における「エンジンがスタートする」、「本人」、「自動車の運転席にすわり、指紋識別器1に指を当てる」、「エンジン」、「自動車を使用できなくする」及び「自動車」のそれぞれが、本願発明1の「移動発進」、「運転手自身」、「所定の場所にセツトし」、「内燃機関、電動機関等、原動力」、「内燃機関、電動機関等、原動力の始動使用出来ない」及び「移動手段」のそれぞれに相当する。
また、引用発明における、指紋識別器1に指を当てて照合がなされることによりあらかじめ登録してある本人と認識されるための個人情報である「指紋」が、本願発明1の「運転手自身の身体的特徴」に相当するものであることは、前記した審判請求人の「『身体的特徴』とは、指紋、声紋、網膜パターン、顔情報などを意味する」の主張から明らかである。
そうすると、本願発明1と引用発明とは、「移動発進させようとする時に運転手自身の身体的特徴を所定の場所にセツトしなければ内燃機関、電動機関等、原動力の始動使用出来ない移動手段」である点で一致し、両者の発明の間には、構成の異なるところが認められない。

4.まとめ
したがって、本願発明1は、引用刊行物1に記載された発明であるから、本願発明1は特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであり、本願発明1は特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-20 
結審通知日 2006-09-21 
審決日 2006-10-03 
出願番号 特願平8-320653
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G09F)
P 1 8・ 56- Z (G09F)
P 1 8・ 113- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 宏輔波多江 進  
特許庁審判長 佐藤 昭喜
特許庁審判官 森口 良子
井口 猶二
発明の名称 交通機関運転手特定機  
代理人 工藤 一郎  

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