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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01C
管理番号 1147458
審判番号 不服2003-3519  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-05 
確定日 2006-11-17 
事件の表示 平成11年特許願第352773号「緑化工法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月19日出願公開、特開2001-161116〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年12月13日の出願であって、平成15年1月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成18年5月22日付けで拒絶理由を通知したところ、平成18年7月28日付けの意見書と共に明細書を補正する同日付けの手続補正書が提出されたものであり、その請求項1に係る発明は、平成18年7月28日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「基盤材料、接合材、及び種子を有する植生基材を裸地に吹付けて生育基盤を造成するようにした非面的な緑化工法であって、
前記生育基盤を直線又は曲線からなる連続する枠状に配し、脆弱層が挟在している法面を枠状の前記生育基盤の内側に囲むように造成することを特徴とする緑化工法。」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用例
当審からの拒絶理由で引用され本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-224429号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(イ)ないし(ル)の事項が記載されている。
(イ)「有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹の種子とを有する植生基材を吹付筋工し、
吹付時に発生するリバウンドを吹付筋間に堆積させ、
吹付筋に極相構成樹種を発芽、生育させ、且つ吹付筋間に先駆樹種を発芽、生育させることを特徴とする法面緑化工法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
(ロ)「有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹種の種子と酸性矯正材とを有する植生基材を吹付筋工し、
吹付時に発生するリバウンドを吹付筋間に堆積させ、
吹付筋に極相構成樹種を発芽、生育させ、且つ吹付筋と吹付筋間との境界部に先駆樹種を早期に発芽、生育させることを特徴とする強酸性土壌の緑化工法。」(【特許請求の範囲】【請求項7】)
(ハ)「・・・自然樹林化を目指し、極相構成樹種や肥料木草等の各種植物種子を混入した肥沃な植生基盤を法面全面に吹付造成する工法では、コストが高くなり、加えて、混播する種子の発芽・生育条件がそれぞれ異なる等の問題から、必ずしも同じ生育基盤上ですべての植物種が、良好に成立するとは限らないという問題を有していた。」(段落【0006】)
(ニ)「以上相反する性質を持つ先駆植物と極相構成樹種を同時に、且つ同一法面に発芽・生育させるために、湿式吹付機を用いて有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹種の種子とを有する植生基材をエアー圧送し、盛土法面あるいは緩勾配法面上に筋状の生育基盤を造成する。この結果、筋状に造成された肥沃な生育基盤と、吹付工されずに前記生育基盤に比せば肥料養分の少ない盛土法面等からなる部分とが、平行して交互に筋状に存在することとなる。本明細書ではこのような生育基盤の造成工法を「吹付筋工」と指称し、これにより造成される筋状生育基盤を「吹付筋」、隣り合う2本の前記吹付筋同志にはさまれ法面が露出する部分を「吹付筋間」と指称する。」(段落【0012】)
(ホ)「上記植生基材に混入された種子のうち、肥沃な吹付筋上では、肥料要求性の高い極相構成樹種の発芽・生育が旺盛となる。」(段落【0014】)
(ヘ)「一方、吹付筋間では、薄く堆積されたリバウンドの種子の中から、痩せ地を好む先駆樹種の発芽・生育が優先的に促進される。・・・」(段落【0015】)
(ト)「前記吹付筋工の施工幅は、狭すぎると乾燥の影響を受けて発芽が困難となり、且つ生育基盤の連続性が低下して耐侵食性が低下する。逆に広すぎると、極相構成樹種と先駆樹種との生育間隔が離れて不自然な樹林が形成される。・・・」(段落【0019】)
(チ)「また、強酸性土壌の法面又は平地の緑化においては、酸性矯正材を混合した植生基材を筋状に造成し、吹付筋と吹付筋間との境界部に先駆樹種を早期に発芽、生育させる。」(段落【0021】)
(リ)「また、強酸性土壌の緑化においては、吹付筋工で造成する基盤に中和剤を混合することにより、比較的耐酸性の強い植物の基盤造成箇所(吹付筋)と裸地部(吹付筋間)との境界付近への成立を促すこととなり、その後は有機物の蓄積などによる経年的な土壌の中和作用などによる自然の回復力によって強酸性土壌の緑化が行われることとなる。」(段落【0024】)
(ヌ)「吹付筋20の幅w1は略30乃至200cm、吹付筋厚hは5cm以上とする。吹付筋20は法面10の底辺A-A’に対し水平で、且つ吹付筋間30の幅w2が略50乃至100cmとなるよう、平行に複数施工する。」(段落【0029】)
(ル)「以上の実施の形態以外にも、吹付筋の配列を千鳥状にするなど、吹付筋の造成形状は適宜応用可能である。尚、本願発明はあくまで自然な複層林の形成を目的としたものであるが、あえて人為的な列状の樹林化を図る場合は、吹付筋工20の幅w1、吹付筋間の幅w2等を目標に応じて設定してもよい。」(段落【0039】)
これらの記載から、引用例には、「有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹の種子とを有する植生基材を基盤造成箇所に吹付筋工し生育基盤を造成するようにした緑化工法であって、前記生育基盤を筋状または千鳥状に造成する緑化工法」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
引用例記載の発明の「吹付筋工し」の部分について、上記2.(イ)には、「有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹の種子とを有する植生基材を吹付筋工し、」と記載され、また、2.(ニ)には、「湿式吹付機を用いて有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹種の種子とを有する植生基材をエアー圧送し、盛土法面あるいは緩勾配法面上に筋状の生育基盤を造成する。この結果、筋状に造成された肥沃な生育基盤と、吹付工されずに前記生育基盤に比せば肥料養分の少ない盛土法面等からなる部分とが、平行して交互に筋状に存在することとなる。本明細書ではこのような生育基盤の造成工法を「吹付筋工」と指称し、」と記載されている。これらの記載からすると、引用例記載の発明における「植生基材を基盤造成箇所に吹付筋工し」は、生育基盤の造成工法に際して、基盤造成箇所に「植生基材を筋状に吹付けて」の意味であると解される。
そこで、本願発明と引用例記載の発明とを比較すると、引用例記載の発明の「有機質資材の主材料と接合材と極相構成樹種の種子と先駆樹の種子とを有する植生基材」、「基盤造成箇所に吹付筋工し」は、本願発明の「基盤材料、接合材、及び種子を有する植生基材」、「裸地に吹付けて」に相当する。また、本願発明の「非面的な緑化工法」につき本願明細書【0006】の記載を参しゃくすると、「例えば、非面的な緑化工法の一例として、生育基盤材と種子を混合した基材を帯状に配置さて生育基盤を造成する工法(特許第2886514号)が知られており」と記載されていることから、「生育基盤を筋状に造成する緑化工法」である引用例記載の発明のものも非面的な緑化工法といえる。そして、生育基盤を造成するに際して、引用例記載の発明の「筋状または千鳥状に造成する」と、本願発明の「直線または曲線からなる連続する枠状に配し」とは、「生育基盤を筋状に所定の形状に配する」点で共通している。
よって、両者は、
「基盤材料、接合材、及び種子を有する植生基材を裸地に吹付けて生育基盤を造成するようにした非面的な緑化工法であって、前記生育基盤を筋状に所定の形状に配して造成する緑化工法」である点で一致し、以下の点で相違している。
〈相違点1〉
連続状に配して造成する生育基盤が、本願発明では、直線または曲線からなる連続する枠状であるのに対し、引用例記載の発明では筋状または千鳥状である点。
〈相違点2〉
本願発明では、脆弱層が挟在している法面を枠状の生育基盤の内側に囲むように造成するのに対し、引用例記載の発明ではそのような構成であるのかどうか不明な点。

4.判断
〈相違点1の検討〉
法面の緑化を行う際に、植生基盤材を充填した袋体などを、直線又は曲線からなる連続する枠状に配することは、例えば、特開平11-181779号公報、特開平10-219653号公報、特開平10-72830号公報、特開平9-88073号公報に見られるように、従来より周知の技術である。
そして、このような植生基盤材を充填した袋体などの配置の仕方を、引用例記載の発明に適用することは、当業者ならば容易に成し得るものである。
〈相違点2の検討〉
例えば、降雨の影響によって裸地部が浸食されて法面が崩壊してしまうことを防止するために、法面に緑化を施すことは、引用例に記載された発明も含めて、当該技術分野において普通に行われていることであって、こうした緑化を施す対象の法面として、緑化を行わないと崩壊することが懸念されるような法面(言い換えれば、脆弱層が挟在しているような法面)を対象にすることも、慣用的に実施されていることに過ぎない。
そして、このような脆弱層が挟在している法面において、とりわけ緑化を行わないと崩壊することが最も懸念される個所である脆弱層の部分、もしくは脆弱層を中心とした周辺部分に生育基盤を配することも、慣用的に実施されている事項であって、枠状の生育基盤を配する際に、枠状の生育基盤を脆弱層内に配したのでは、法面の崩壊を防止する機能を果たさない(すなわち、降雨等によって、生育基盤が脆弱層とともに流出してしまう)ことは自明といえる事項であることから、枠状の生育基盤で脆弱層が挟在している部分を内側に囲むように配慮することは、当業者が容易に想到し得たものである。
したがって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用例記載の発明から当業者ならば容易に成し得るものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用例記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である引用例記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
 
審理終結日 2006-09-04 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平11-352773
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 忠悦松本 隆彦  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
小山 清二
発明の名称 緑化工法  
代理人 小島 高城郎  
代理人 佐藤 卓也  
代理人 河合 典子  

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