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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1147465
審判番号 不服2004-8780  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-28 
確定日 2006-11-17 
事件の表示 平成10年特許願第144088号「固形化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月13日出願公開、特開平11-100311〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月26日(国内優先権主張 平成9年7月30日、 特願平9-219207号)の出願であって、平成16年3月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月24日に手続補正がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成15年6月24日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「表面が無機粉体で被覆された、比重が0.05?0.5で、且つ、平均粒子径が1?80μmの中空発泡樹脂粉体を含有する組成物と、溶剤とを混合してスラリーとし、該スラリーを容器又は中皿に充填し、その後、前記溶剤を除去することにより得られる固形化粧料。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物には、以下の事項が記載されている。

(1)特開昭64-9909号公報(以下「引用例A」という。)
(a-1)「1.化粧用粉体、炭化水素油類及びシリコーン油類から選ばれるエタノール不溶性油剤並びに界面活性剤を主たる構成成分とする粉末化粧料基材を、溶剤たるエタノールと混合してスラリー状となし、該スラリー状物を容器に充填し、次いでエタノールを除去して固型化させることを特徴とする固型粉末メークアツプ化粧料の製造法。」(特許請求の範囲、1頁左下欄5?12行)
(a-2)「本発明において化粧用粉末は、通常メークアツプ化粧料に用いられるものであれば使用可能である…。斯かる化粧用粉末としては、例えばタルク、カオリン、マイカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカなどの無機体質顔料;酸化チタン、酸化亜鉛などの白色顔料;黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄などの無機着色顔料;タール色素などの有機着色顔料;雲母チタン、酸化鉄雲母チタンなどの、パ-ル剤;その他ナイロンパウダーなどの有機粉末が挙げられ、これらの中から化粧目的に合わせ適宜選択して使用することができる。」(2頁右下欄2行?3頁左上欄2行)

(2)特開平4-9319号公報(以下、「引用例B」という。)
(b-1)「1.中空球状重合体の表面に無機微粉末が付着してなる複合中空粒子を含有する化粧料用配合材。」(特許請求の範囲、1頁左下欄5?6行)
(b-2)「本発明は軽く、弾力性があり、隠蔽性、被覆性、触感等において優れた化粧料を提供することを目的とする。」(2頁左上欄7?9行)
(b-3)「本発明に用いられる中空球状重合体とは、例えば特公昭42-26524号公報、特公昭60-21770号公報等に開示されている方法で得られる熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させることにより得ることができる。即ち、重合性不飽和結合を有するモノマ-を揮発性膨張剤および重合開始剤と混合し、これを適当な乳化分散剤等を含む水性媒体中で重合させて熱膨張性マイクロカプセルを得、これを加熱することにより熱膨張させて得ることができる。熱膨張性マイクロカプセルを前述の米国特許第4,722,943号明細書に記載のごとく無機微粉末と共に加熱するとマイクロカプセルが微粉末がその表面に付着した状態で膨張するため一工程で複合中空粒子を得ることができる。」(2頁左上欄14行?右上欄8行)
(b-4)「複合中空微粉末は、これを従来の無機微粉末や有機微粒子に代えて化粧品に配合すればよい。」(3頁左上欄20行?右上欄2行)
(b-5)「参考例1(複合中空粒子(1)の製造)
松坂貿易(株)レーディゲミキサーにマツモトマイクロスフェア-F-30D(注1)と酸化チタン(注2)、重量比15/85の比率で投入し、3分間混合後、ジャケット温度140℃で10分間加熱品温90℃で冷却して複合中空粒子(1)を得た。
得られた複合中空粒子(1)は真比重0.3、見掛比重0.15、粒径は20?40μmであった。この粒子は酸化チタンの隠蔽性、中空粒子の弾力性を兼ねそなえた粒子であった。得られた複合中空粒子を用い、酸化チタン水性ペイントを作成したところ20vol%の酸化チタンと代替しても隠蔽性は低下しなかった。
注1=塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体を殻成分とする平均粒径15μm、真比重d=1.1の熱膨張性微小球。
注2=平均粒径約0.2μm、比重d=4.2。」(3頁右上欄4?20行)
(b-6)「参考例2(複合中空粒子(2)の製造)
レーディゲミキサー(連続式)に、マツモトマイクロスフェアF-30(注3)/タルク(注4)を重量比15/85の比率で連続的に供給し、ジャケット温度140℃、滞留時間20分、出口側品温90℃で連続的に熱膨張させた。得られた複合中空粒子(2)は真比重0.2、見掛比重0.1、平均粒径20μmであった。
タルクのなめらかさをそなえた圧縮性の粉体で耐荷重性は300kg/cm2であった。
注3:塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体を殻成分とする平均粒径約15μm、d=1.1の熱膨張性微小球。
注4=平均粒径約4μm、真比重d=2.8。」(3頁左下欄1行?左下欄14行)
(b-7)「本発明に用いる複合中空粒子は中に空気を含み、粒子の軽量化が可能であり、かつ所望の比重に調節できるため、種々の化粧品用粒子としての利用が可能である。」(4頁左下欄5?8行)

3.対比
引用例Aには「化粧用粉体、炭化水素油類及びシリコーン油類から選ばれるエタノール不溶性油剤並びに界面活性剤を主たる構成成分とする粉末化粧料基材を、溶剤たるエタノールと混合してスラリー状となし、該スラリー状物を容器に充填し、次いでエタノールを除去して固型化させることにより得られる固型粉末メークアツプ化粧料」(摘記事項(a-1))(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
引用発明で用いられる粉体は、無機体質顔料、白色顔料、無機着色顔料、有機着色顔料、パ-ル剤、有機粉末等である(摘記事項(a-2))から、本願発明と引用発明を対比すると、両者は

「化粧用粉体を含有する組成物と、溶剤とを混合してスラリーとし、該スラリーを容器に充填し、その後、溶剤を除去することにより得られる固形化粧料。」

である点で一致し、
本願発明は溶剤と混合する粉体が「表面が無機粉体で被覆された、比重が0.05?0.5で、且つ、平均粒子径が1?80μmの中空発泡樹脂粉体」であるのに対して、引用発明で用いられる粉体は、無機体質顔料、白色顔料、無機着色顔料、有機着色顔料、パ-ル剤、有機粉末等である点で相違する。

4.当審の判断
引用例Bには「中空球状重合体の表面に無機微粉末が付着してなる複合中空粒子」が記載されており(摘記事項(b-1))、この複合粒子を構成する中空球状重合体は中空発泡樹脂粉末である(摘記事項(b-3))。そして、その具体例として参考例1、2に記載されている複合中空粒子(1)は、真比重0.3、見掛比重0.15、粒径20?40μm、複合中空粒子(2)は真比重0.2、見掛比重0.1、平均粒径20μmである(摘記事項(b-5),(b-6))。
すなわち、引用例Bには、「表面が無機粉体で被覆された、比重が0.05?0.5で、且つ、平均粒子径が1?80μmの中空発泡樹脂粉体」に含まれる複合中空粒子が記載されている。
そして、引用例Bには、複合中空粒子が、軽く、弾力性があり、隠蔽性、被覆性、感触等において優れた化粧料を提供するものである(摘記事項(b-2),(b-7))こと、及び従来の無機微粉末や有機微粒子に代えて化粧品に配合すればよい(摘記事項(b-4))ことが記載されている。
してみれば、引用発明において、より優れた化粧料を製造するために、無機体質顔料、白色顔料、無機着色顔料、有機着色顔料、パ-ル剤、有機粉末等の粉体に代えて、引用例Bに記載の複合中空粒子を採用することは当業者が容易に想到し得ることである。さらに、引用例Bに記載の複合中空粒子の比重及び平均粒径を含む、比重が0.05?0.5で、且つ、平均粒子径が1?80μmという比重及び平均粒子径に関する条件も当業者が適宜選定することができるものである。
そして、本願発明の効果も当業者が予測し得る範囲内のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例A及びBに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-05 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願平10-144088
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 横尾 俊一
弘實 謙二
発明の名称 固形化粧料  
代理人 小野 信夫  

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