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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G |
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管理番号 | 1147638 |
審判番号 | 不服2002-13056 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-11 |
確定日 | 2006-11-24 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第342089号「クリーニング装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月11日出願公開、特開平10-214013〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯等 本願は、平成9年11月27日(国内優先権主張、平成8年11月29日)の出願であって、「クリーニング装置及び画像形成装置」の発明に関しており、その明細書及び図面は、平成14年5月7日付け手続補正書及び平成17年10月3日付け手続補正書により補正されたとおりのものである。 2.当審拒絶理由の概要 平成17年7月27日付けで当審から通知した2つの拒絶の理由のうち、理由1)の概要は、「本件出願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」というものであって、具体的には、下記の不備を指摘している。 (1)指摘事項A 平成14年5月7日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりであるが、以下の理由により不備がある。 【請求項1】 1成分現像剤のトナーでトナー像が形成された移動する像担持体の表面に残留した転写残りのトナーを、像担持体の表面に当接した弾性ブレードにより除去するクリーニング装置において、 前記像担持体の表面はOPCの感光層を備え、前記トナーは形状係数SF1が100?120、形状係数SF2が100?120のトナーであり、前記弾性ブレードを前記像担持体の表面に線圧で70?75g/cmの当接圧により当接し、前記弾性ブレードはJIS A硬度が63°以上で73°以下であることを特徴とするクリーニング装置。 [請求項2ないし請求項10の記載を省略] 本願明細書の記載を参照すると、本願発明は、像担持体の表面に残留した転写残りの球形トナーを、像担持体の表面に当接する弾性ブレードにより良好に除去することができるクリーニング装置を得ることを目的としている。 ところで、弾性ブレードを用いて像担持体の表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置において、弾性ブレードの材質、形状、像担体の表面に対する当接のさせ方及び当接部の形状、弾性ブレード及び像担持体の表面粗さ、トナーの大きさや固さ等の要素がクリーニング性能に対して大きな影響を与えることはよく知られていることである[特開平5-119686号公報等参照]。 また、像担持体の表面の物性がクリーニング特性に影響を与えることもよく知られていることである[例えば、特開平7-209952号公報の段落【0080】参照]。 請求項1には、クリーニング特性に大きな影響を与える要素である弾性ブレードの形状や像担持体に対する当接のさせ方や当接部の形状、トナーの大きさや物性(固さ等)、像担持体表面の物性などについて何ら記載されておらず、発明を特定する事項が明確でない。 (2)指摘事項B 本願明細書の段落【0034】、【0058】、【0065】に、実施例1、実施例3、実施例4に係る実験結果が、【表1】、【表3】、【表4】としてそれぞれ記載されており、これらの実験結果に基づいて本願請求項1ないし請求項3に線圧の数値範囲がそれぞれ規定されているものと考えられる。 しかしながら、これらの実験結果は特定のトナーを用い、特定の弾性ブレードを特定の角度で特定の感光体に接触させたときのものであり、トナーやブレードや感光体の状態が異なるものについても、同様の作用効果が奏されるものか確認できない。 3.当審の判断 平成17年10月3日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された発明のうち、請求項1に係る発明は以下のとおりである。(補正前の請求項1に対して上記手続補正書により追加された事項に下線を付した。) 「1成分現像剤のトナーでトナー像が形成された移動する像担持体の表面に残留した転写残りのトナーを、像担持体の表面に当接した弾性ブレードにより除去するクリーニング装置において、 前記像担持体の表面はOPCの感光層を備え、前記トナーは形状係数SF1が100?120、形状係数SF2が100?120のトナーであり、前記弾性ブレードはその先端を前記像担持体の移動方向と逆方向から前記像担持体の表面に線圧で70?75g/cmの当接圧により当接し、前記弾性ブレードはJIS A硬度が63°以上で73°以下であることを特徴とするクリーニング装置。」 実施例1に係る実験結果である【表1】を以下に示す。 【表1】 上記【表1】は、それぞれのJIS A硬度が63°、69°、73°である3種類の特定の弾性ブレード(ブレードA、ブレードB、ブレードC)について、低温低湿、常温常湿、高温高湿の環境下で感光ドラムに対して、当接圧を50g/cmから100g/cmまで変えて6000枚の連続カラープリントを行う実験をしたときの、クリーニング性と異音の発生の有無についての実験結果を示すものである。 (3-1)指摘事項Aについての検討 請求項1における「70?75g/cmの当接圧」の規定は、実施例1の実験結果を示すものである上記【表1】の記載を根拠とするものである。 そして、実施例1に関する事項は、本願明細書の段落【0014】ないし【0038】に記載されている。 例えば、実施例1において使用される感光ドラムについて、段落【0021】ないし【0022】に以下の記載がある。(下線は当審で付与) 「【0021】本実施例で用いた感光ドラム1は、図2に示すように、外径が略60mmのアルミニウムからなる芯金1a上に、フタロシアニン化合物からなる厚さ0.2μmの電荷発生層1bを形成し、その上にバインダーとしてのポリカーボネート中にヒドラゾン化合物を分散した電荷輸送層1cを形成してなっており、いわゆる有機感光体とされている。 【0022】この感光ドラム1の表面の水に対する接触角および滑り性を測定すると、接触角は85°が測定され、滑り性は全く滑りがなく測定不能であった。ここで滑り性とは、ヘイドン社製の滑り性試験機により測定され、ポリエチレンテレフタレート(PET)の滑り性を1として、被測定物の滑り性をPETに対する比で示したもので、滑り性の値が小さいほど、被測定物は滑り性に優れていることを示している。」 一方、本願明細書の【表3】及び段落【0056】には、感光ドラムの表面の水に対する接触角が100°で滑り性が0.4のものは、弾性ブレードの当接圧の許容範囲が65?85g/cmであることが示されており、【表4】及び段落【0063】には感光ドラムの表面の水に対する接触角が95°で滑り性が0.8のものは、弾性ブレードの当接圧の許容範囲が55?95g/cmであることが示されている。 これらの事項を勘案すると、特定の弾性ブレードを特定の当接圧で感光ドラムに当接するときのクリーニング性や異音の発生の有無は、感光ドラムの表面の水に対する接触角や滑り性によっても大きく左右されるものであり、接触角、滑り性が大きいもの程当接圧の許容範囲が広いことが容易に理解される。 ところで、実施例1において用いられている感光ドラムは、上記段落【0021】に記載されている構成の有機感光体であって、上記段落【0022】に記載されているように、表面の水に対する接触角が85°で全く滑りがないものであるが、有機感光体の表面の水に対する接触角は必ず85°以上になるとは限らない。 これに対して、請求項1に係る発明は、表面の水に対する接触角や滑り性を特定しない有機感光体(OPC)を対象としているにもかかわらず、実施例1における特定の有機感光体を用いた実験結果から得られた数値範囲を規定するものであり、接触角や滑り性にかかわらず明細書記載の効果を得られることは確認できないから、請求項1に係る発明は明確でない。 次に、異音の発生に関して検討すると、請求項1で規定している硬度範囲を含む弾性ブレードを有機感光体に対して用いる場合には、請求項1に規定している当接圧の範囲である70?75g/cmより低い当接圧で異音が発生してしまう場合があることは周知[特開平8-234639号公報の段落0021や【表2】、特開平3-20768号公報の第1表、特開昭61-140975号公報]である。 これに対して、請求項1に規定されている当接圧の数値範囲において異音を発生させないことを可能とするための構成、例えばクリーニング特性に大きな影響を与える要素である弾性ブレードの形状や配置などについて記載されておらず、明細書記載の効果を奏するために必要な事項が不明であり、請求項1に係る発明は明確でない。 (3-2)指摘事項Bについての検討 まず、実施例1において使用されている弾性ブレードについて検討する。 【表1】に、それぞれのJIS A硬度が63°、69°、73°である3種類の特定の弾性ブレード(ブレードA、ブレードB、ブレードC)が使用されていることが記載されている。 ところで、弾性ブレードの概略の構成については、明細書の段落【0031】ないし【0032】と図6、図7、図8、図11、図14に記載されているが、寸法、弾性率等の詳細について本願明細書中に記載されていない。 実施例1において使用された3種類の特定の弾性ブレードと同じ硬度を有するものであるが、異なる寸法や弾性率等を有する弾性ブレードを用いて同じ実験を行った場合に、【表1】に記載されているものと同じ実験結果が得られるのであるか不明である。 また、弾性ブレードの設定角θが32°であることは記載されているが、他の設定角で実験しても同様のクリーニング性及び異音の発生が認められるのであるか不明である。 次に、感光ドラムについて検討する。 前記したように、段落【0021】にバインダーとしてポリカーボネート中にヒドラゾン化合物を分散した電荷輸送層を形成した特定の有機感光体としたことが記載されているが、バインダーとして用いられているポリカーボネートの詳細についてなんら記載されていない。 既に指摘したように、感光ドラムの表面の物性がクリーニング特性に影響を与えることは周知である。 バインダーとして用いられているポリカーボネートとして任意のものを用いて実験を行った場合にも【表1】に記載されているものと同じ実験結果が得られるものであるか不明である。 上述のように、実施例1は、その詳細が不明である特定の弾性ブレードや特定の有機感光体を用いたものであるから、当業者が発明の効果を確認するために追試の実験を行うことはできないし、弾性ブレードや感光体の詳細が異なるものを用いた場合に、同様の作用効果が奏されるものであるか確認をすることができない。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしておらず、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-25 |
結審通知日 | 2006-09-26 |
審決日 | 2006-10-10 |
出願番号 | 特願平9-342089 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G03G)
P 1 8・ 536- WZ (G03G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 矢沢 清純 |
特許庁審判長 |
山下 喜代治 |
特許庁審判官 |
山口 由木 藤岡 善行 |
発明の名称 | クリーニング装置及び画像形成装置 |
代理人 | 倉橋 暎 |