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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1147679
審判番号 不服2004-7843  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-10-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-16 
確定日 2006-11-24 
事件の表示 平成10年特許願第 74758号「画像形成装置及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月 5日出願公開、特開平11-268257〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成10年3月24日の出願であって、平成16年3月25日付で拒絶査定がなされ、同年4月16日付で拒絶査定に対する審判請求がなされた。

第2 本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年12月9日付で補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「記録媒体に画像を記録する作像形成手段と、前記記録媒体を給紙搬送する給紙搬送手段と、原稿画像を読み取る原稿読取り手段とを備えた画像形成装置において、前記作像形成手段は、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルからインク滴を吐出させるエネルギーを発生する手段と、各手段を駆動する駆動回路とを有するインクジェットプリンティングエンジンからなり、前記記録媒体の搬送経路を挟んでそれぞれ前記インクジェットプリンティングエンジンを配置すると共に、前記原稿読取り手段で読み込んだ1つの画像情報を表面側及び裏面側の各画像情報に分け、この表面側及び裏面側の各画像情報に基づいて各インクジェットプリンティングエンジンを作動させる手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。」

第3 引用例

原査定の理由に引用された、特開平10-820号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載又は図示されている。

(ア)「本発明は、複写機等の画像形成装置に関する。」(公報段落【0001】)

(イ)「本複写機は、自動原稿搬送装置110を備える画像読み取り部100と、電子写真画像形成部200と、インクジェット画像形成部300とで構成されている。画像読み取り部100における画像読み取りは、以下のように行われる。画像読み取り部100の上部に設けられている自動原稿搬送装置110にセットされた原稿は、順に原稿台ガラス107上の所定位置に自動的にセットされ、露光ランプ101により照射される。原稿面からの反射光は、3枚のミラー群103a?103cにより、レンズ104に導かれ、CCDセンサ105に結像する。」(公報段落【0006】)

(ウ)「再給紙ローラ302は、中間トレイ301に収納された一番下の用紙から順に、インクジェットユニット部308(以下、IJU部308と記す)に搬送する。」(公報段落番号【0008】)

(エ)「IJU部308には、搬送される用紙の上の面を印刷する4つのインクジェットユニット(以下、IJUと記す)304a?304dと、用紙の下の面を印刷する4つのIJU304e?304hがそれぞれ等間隔(最大使用サイズ420mmの1/4である105mm間隔)に設けられている。但し、IJU304a?304hは、複写機本体に着脱可能な構成になっており、使用者の使用環境に応じて使用個数や、装着箇所を選択することができる。例えば、少なくともIJU304a及び304eを装着することで、一度の搬送で用紙の両面にカラー印刷を行うことができる。また、IJU304a?304dを装着した場合、1つのユニットの印刷する面積は、1/4になり、IJU304aのみで印刷を行う場合の4倍の速度で印刷を行うことができる。IJU部308において印刷の施された用紙は、縦搬送路を通過して排紙トレイ229に排出される。」(公報段落【0009】)

(オ)「DMA(ダイレクトメモリアクセス)コントローラ610は、作業用RAM608内の画像データを適宜IJUコントローラ610に転送する。IJUコントローラ610は、IJU部308に装着される各ユニットの脱着及び動作状態に応じて、適切な画像データをIJU304a?304hに転送し、カラー画像形成の指示を行う。」(公報段落【0011】)

(カ)「IJU304aの底部には、インク射出用の開口部315があり、下方の用紙への記録が行える。図5は、IJU304aの内部の構成を示す。インク射出部320は、一端がシャフト319が貫通して支持されると供に、他端がベルト316に接続される。記録ヘッド駆動モータ318の軸に取り付けられた歯車317の回転に伴い、ベルト316が移動してインク射出部320を、図中に両矢印で示す何れかの方向に搬送する。インクカートリッジ321には、色別にインクが取り付けられ、各色のインク射出部320に適宜供給されるようになっている。インク射出部320のスリット322から射出されたインクは、底面の開口部315を通過して、用紙に付着する。」(公報段落【0012】)

(キ)「ハードディスク612内の先頭には、各ページにおける属性マップの所在位置、及び、原稿サイズにより決まる属性マップのサイズを示すページアドレステーブル505が格納されている。ページアドレステーブル505の後には、ページ1の属性マップ506とカラー画像のデータ507・・・が順に格納されている。・・・ハードディスク内のページアドレステーブル505と、当該テーブル505によって特定されるページの属性マップから、原稿画像のカラー画像の位置を把握することができ、IJU304a?304hへ所望するデータを供給することができる。図7に示す原稿のカラー画像のデータをハードディスク612から読み出す場合、等間隔に設けられる4つのIJU304a?304dには、それぞれ図7に示す領域501?504のデータを割り当てる。最初の1ラインを印刷する際、IJU304aには、データは供給されない。IJU304bには、5?6のラインのデータが、IJU304cには、19?20のラインのデータが、IJU304dには、27?28のラインのデータが供給される。」(公報段落【0014】)

(ク)「各色のインク射出部320は、副走査方向に16画素分のヘッドを有し、印刷時には、ライン上に並ぶ画素数×2バイト分のデータを必要とする。」(公報段落【0020】)

引用例1の記載事項(ウ)及び図面第1図の記載からみて、用紙の給紙搬送を行う給紙搬送手段を備えていることは自明である。
引用例1の記載事項(エ)の「IJU304a?304dを装着した場合、1つのユニットの印刷する面積は、1/4になり、IJU304aのみで印刷を行う場合の4倍の速度で印刷を行うことができる。」との記載と、同記載事項(キ)の記載をあわせると、印刷を行う際にひとつのページの画像データを4つに分け、その各画像データで4つのインクジェットユニットをそれぞれ作動させていることが理解される。
引用例1の記載事項(ク)によれば、複数画素分のヘッドを有していることから、インクジェットユニットとしては複数のノズルを有していることは自明である。また、インクジェットユニットを用いている以上、各ノズルからインクを射出させるエネルギーを発生させる手段を有していること、さらにそのための駆動回路を有していることも自明である。

よって、引用例1の記載(ア)?(ク)を含む引用例1の全記載及び図示からみて、引用例1には以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明1」という。)

「用紙に印刷を行うインクジェットユニットと、前記用紙の給紙搬送を行う給紙搬送手段と、原稿を読み取る画像読み取り部を備えた画像形成装置において、インクジェットユニットは、インクを射出する複数のノズルと、各ノズルからインクを射出させるエネルギーを発生する手段と、各手段を駆動する駆動回路を有するインクジェットユニットからなり、搬送される用紙の上の面を印刷する4つのインクジェットユニットと、用紙の下の面を印刷する4つのインクジェットユニットを設け、前記原稿読み取り部で読み取ったひとつのページの画像データを4つのインクジェットユニットの各画像データに分け、各インクジェットユニットを作動させるIJUコントローラを備えた画像形成装置。」

第4 周知技術に関する文献
本願の出願日前に頒布された特開平9-166938号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の事項が記載又は図示されている。

(ケ)「また、フレームメモリ104の読出し信号メモリRの符号RP及びLPは、それぞれ読出し画像データが右頁(RP)及び左頁(LP)のものである場合を表わしている。更に、各モードの本原稿の頁サイズはA4サイズで、本原稿の見開き2頁を走査ユニット200の1回の走査で連続して読み取ってその読み取り画像データをフレームメモリ104内にA3サイズ分の読み取りデータとして記憶し、各出力モードに応じてフレームメモリ104より画像データを読出してレーザプリンタ501により作像して転写紙に記録する。」(公報段落【0028】)

(コ)「図7はA4サイズの転写紙に本原稿の読み取り左右頁の各画像をそれぞれ別々に独立頁毎に出力し、同じく本原稿に対して1部の複写を行う1対1複写モードの場合を示す。」(公報段落【0029】)

(サ)「図7は製本原稿の独立頁毎に画像を出力する1対1複写モードの場合を示す。この場合は、読み取りモード時には図6の場合と同様のタイミングで動作し、頁めくり時にはプリンタ501で連続して搬送される転写紙に合わせて二つのPFGATEによってフレームメモリ104のデータ読み出し信号メモリRが操作され、製本原稿の頁毎の画像データが出力される。フレームメモリ104のアドレスカウンタがPFGATEによってマスクされて停止することにより、製本原稿の左頁の画像に連結した右頁の第2の画像のデータが第2のPFGATE信号によりプリンタ501における転写紙間隔を持って読み出される。」(公報段落【0033】)

(シ)「見開き原稿
(機能)製本原稿の見開き左右頁を転写紙の表裏に複写する。」(公報段落【0089】)

本願の出願日前に頒布された特開昭59-105765号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載又は図示されている。

(ス)「80、81は複数の記録要素が図面の垂直方向に並んだフルラインのインクジエツトヘツドである。ヘツド80によつて、読取部10で読み取つた原稿OBの面OB1側の再生画像を記録紙51の第1面に記録し、ヘツド81によつて、読取部20で読み取つた原稿OBの面OB2の再生画像を記録紙51の第2面に記録する。」(公報第2頁右下欄第17行目?同第3頁左上欄第5行目)

(セ)「次に、第5図(A)、(B)を参照して、原稿OBの見開き頁を同一の記録紙の両面に記録する場合(以下、第2記録モードという)について述べる。操作部151上のモードセレクトキー151-5の操作により第2記録モードを指定すると、切換爪86が第2図示の実線位置Aに切りかわる。また、デジタル化回路201の出力がメモリ203をバイパスしてバツフアメモリ204に入力する様に切換回路202を動作する。コピースタートキー151-2を押下すると、搬送ローラが回転するとともに、給紙ローラ52が駆動してカセツト52からの記録紙51をレジストローラ54,55まで搬送する。レジストローラ54,55により、記録紙52は所定のタイミングで記録位置87に向けて搬送される。記録紙52の先端が位置87に達したことを第1センサS1で判断すると、読取部10の前進を開始させて原稿OBの片頁OB1の読み取りが開始される。読取部10からの画像データは、バツフア回路104、ドライブ回路105を介してインクジエツトヘツド80に供給され、このヘツド80によつて記録紙51の第1面に原稿OBの片頁OB1の再生画像が記録される。更に、記録紙51の先端が位置88に達したことを第2センサS2で判断すると、読取部20により原稿OBの片頁OB2の読み取りが開始される。ここで、この読取部20からの画像データは、切換回路202によりバツフア回路204へ供給され、更にドライブ回路205を介してヘツド81に供給される。従つて、このヘッド81により位置83を通過する記録紙51の第2面に片頁OB2の再生画像が記録される。」(公報第5頁右下欄第16行目?同第6頁右上欄第7行目)

第5 対比

そこで、本願発明と引用発明1を対比する。

引用発明1の「用紙」、「印刷」、「原稿を読み取る画像読み取り部」及び「インクを射出」は、本願発明の「記録媒体」、「画像を記録」、「原稿画像を読み取る原稿読み取り手段」及び「インク滴を吐出」にそれぞれ相当し、引用発明1の「インクジェットユニット」は、本願発明の「作像形成手段」に相当し、かつ「作像形成手段」である「インクジェットプリンティングエンジン」にも相当する。

また、引用発明1の「搬送される用紙の上の面を印刷する4つのインクジェットユニットと、用紙の下の面を印刷する4つのインクジェットユニットを設け」た点は、引用例1の図面第1図を参照すれば、用紙の搬送路を挟んでインクジェットユニットを設けていることから、この点は本願発明の「記録媒体の搬送経路を挟んでインクジェットプリンティングエンジンを配置」した構成に包含される。
さらに、引用発明1の「各インクジェットユニットを作動させるIJUコントローラ」は、本願発明の「各インクジェットエンジンを作動させる手段」に、インクジェットプリンティングエンジン(インクジェットユニット)を作動させるという機能の限度で相当する。
また、本願発明の「1つの画像情報を表面側及び裏面側の各情報に分け」とは本願明細書の段落【0048】の「見開き原稿を半分ずつ両面印刷するような場合には、スキャナ6で読取った画像情報を画像情報分割手段10で片面ずつの画像情報に分けて、それぞれ表面側の画像情報、裏面側の画像情報として、画像情報記憶手段7に格納記憶させる。」との記載が対応している。
ここで「見開き原稿」からの画像情報を表面側、裏面側の画像上に分けていることから、「1つの画像情報」とは見開き原稿の左右頁合わせた画像情報を意図していることが類推できるものの、本願発明では画像情報を表面側、裏面側の画像情報に分けていることは特定されているが、その原稿が見開き原稿である等、具体的には特定されていない。
そうすると、「1つの画像情報」とは単にひとまとまりの画像情報であれば足り、引用発明1の「ひとつのページの画像データ」をも包含するものである。
そして、引用発明1においてはひとつのページの画像データを4つのインクジェットユニットにより作像すべく分けていることから、本願発明と引用発明1は、原稿読み取り手段(原稿読み取り部)で読み込んだ1つの画像情報を複数の各画像情報に分け、この複数の各画像情報に基づいて異なるインクジェットプリンティングエンジンを作動させる限度で両者は共通している。

してみれば両者は、

「記録媒体に画像を記録する作像形成手段と、前記記録媒体を給紙搬送する給紙搬送手段と、原稿画像を読み取る原稿読取り手段とを備えた画像形成装置において、前記作像形成手段は、インク滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルからインク滴を吐出させるエネルギーを発生する手段と、各手段を駆動する駆動回路とを有するインクジェットプリンティングエンジンからなり、前記記録媒体の搬送経路を挟んでそれぞれ前記インクジェットプリンティングエンジンを配置すると共に、原稿読取り手段で読み込んだ1つの画像情報を複数の各画像情報に分け、各画像情報に基づいて異なるインクジェットプリンティングエンジンを作動させる手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、「1つの画像情報を表面側及び裏面側の各画像情報に分け、この表面側及び裏面側の各画像情報に基づいて各インクジェットプリンティングエンジンを作動させ」ているのに対し、引用発明1ではそのような特定はなされていない点。

第6 判断

[相違点]について
周知例1の記載事項(ケ)、(コ)及び(サ)によれば、複写機において本原稿の見開きを一回の操作で連続して読み取ってA3サイズ分の読み取り画像データとして記憶し、A4サイズの転写紙にあわせて、製本原稿の頁毎の画像データが出力されていることが理解される。
これは、A3サイズ分の読み取り画像データがA4サイズ二つに分けて出力されることに他ならない。
さらに、同記載事項(シ)を考慮すれば、製本原稿の見開きで読み取られた左右頁を転写紙の表裏に複写することから、周知例1によれば「1つの画像情報を表面側及び裏面側の各画像情報に分け」ていることが理解される。

次に、周知例2の記載事項(ス)、(セ)によれば、同様に複写機において表面側及び裏面側の各画像情報に基づいて記録用紙の表面と裏面側にインクジェットヘッドにより画像を記録する技術が記載されている。そして、引用発明1においても記録媒体の搬送経路を挟んでそれぞれインクジェットプリンティングエンジンが配置され、記録媒体の表面と裏面側に作像が可能なように構成されている。

そして、これら周知例1,2の周知技術を考慮すると、引用発明1において、1つの画像情報を表面側及び裏面側の各画像情報に分けること、表面側及び裏面側の各画像情報に基づいて各インクジェットプリンティングエンジンを作動させること、いずれも当業者が容易になし得るものである。

また、本願発明の効果も、引用発明1及び周知技術の効果から容易に予測できる範囲内のものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-02 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願平10-74758
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
長島 和子
発明の名称 画像形成装置及び画像形成方法  
代理人 稲元 富保  

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