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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1147711
審判番号 不服2005-13600  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-14 
確定日 2006-11-24 
事件の表示 平成11年特許願第278797号「断熱箱体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月13日出願公開、特開2001- 99551〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯・本願発明
本願は,平成11年9月30日の出願であって,その請求項1に係る発明は,平成17年3月22日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「外装板の内面に凝縮パイプを複数枚の金属製テープで貼り付け、この外装板と内箱との間に発泡断熱材を充填して形成される断熱箱体において、
前記複数枚の金属製テープを一部重なるように貼り付け、前記金属製テープを発泡充填されないエリアまで延在させたことを特徴とする断熱箱体。」

2. 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された,本願出願前に頒布された刊行物である特開昭61-265474号公報(以下,「引用例」という。)には,図面と共に次の記載がある。

ア. 「近年冷凍サイクル中の凝縮パイプは放熱特性の向上から,内箱と外箱と内外箱間を充填するウレタン断熱材から成る断熱箱体において,その外箱面のウレタン断熱材側へ配設されている。
・・・。
第3図から第5図は,従来の断熱箱体を示す。
図において,1は断熱箱体であり,プラスチック製の内箱2と鉄板等の外箱3及び外箱3の側板4にアルミテープ5等で貼りつけられた冷凍サイクル中の凝縮パイプ6と内外箱間に,充填されたウレタン断熱材7より成り立つ。
・・・。
以上の如く構成された断熱箱体1においては,凝縮パイプ6を側板4にアルミテープ5で貼りつける場合,アルミテープ5に数多くのしわ14が発生し,また,凝縮パイプ6とアルミテープ5の間に,空間15が生ずる。また,アルミテープ5の2つの端面16はウレタン断熱材中に埋設されているので,前記しわ14や端面16から,ウレタン断熱材7中のトリクロロモノフルオロメタン(以下フロンガス)が,侵入し,前記空間15に,密閉されたフロンガス溜まりを生ずる。」(1頁左欄15行?2頁左上欄12行)

イ. 「発明が解決しようとする問題点
しかしながら上記のような構成では,空間15にフロンガス溜まりが,外気温の変化に対応し,圧力変化を生じ,例えば0℃以下の低外気温においては,内部圧力0.5(kg/cm2)以下となり,鋼板4のへこみを生じ,また,30℃以上の高外気温においては,内部圧力1.2(kg/cm2)以上となり,鋼板4のふくれを生じるという問題点を有していた。
したがって,本発明は温度変化により外箱が変形するのを防止するものである。」(2頁左上欄14行?右上欄2行)

ウ. 「問題点を解決するための手段
上記問題点を解決するために本発明の断熱箱体は,テープとパイプと外箱の間に生じる空間の一端を,ウレタン断熱材より外部へ導くという構成を備えたものである。
作用
本発明は,上記の構成によって,ウレタン断熱材からアルミテープとパイプの間の空間へ,フロンガスが,侵入しても,前記空間がウレタン断熱材の外へ開放され,密閉されていない為,フロンガスの外気温変化による膨張,収縮に対し,空間内の圧力は変動せず,常に大気圧と同値であるので,側板の変形という問題を解消する事ができる。」(2頁右上欄3行?15行)

エ. 「以下,本発明の一実施例の断熱箱体について,第1図,第2図を参照しながら説明するが,従来と同一構成については同一番号を符して,その詳細な説明を省略する。
冷凍サイクル中の凝縮パイプ6は,アルミテープ5によって直管部9の端から,底部8を通り,ウレタン断熱材7の外部迄側板4に貼りつけられている。そして,底板8からのアルミテープ5のはみ出し分は,数十mm程である。
また,凝縮パイプ6のウレタン断熱材7への出入り口12では,底板8がパイプ6の位置ずれ防止のため,半円状に切り欠かれており,側板4に凝縮パイプ6をアルミテープ5で固定した後,底板8の切欠部12’をアルミテープ5の上から,凝縮パイプ6に沿わせ,その後に,ホットメルト系のシール材にて,接合及びウレタン断熱材の洩れ防止のシールが施されている。
したがって凝縮パイプ6とアルミテープ5の間に生じる空間15は,アルミテープ5の片端が,ウレタン断熱材7の外にある為,外気に開放している。そして前記しわ14や端面16からフロンガスが侵入して来ても,外気温の変化に対して,空間15内の圧力は変動せず常に大気圧と同値であるので,側板4の変形が防止できる。」(2頁右上欄17行?左下欄末行)

3. 引用例に記載された発明
ところで,記載事項ア?エ及び第1図,第2図の記載から,引用例には次の発明(以下,「引用例の発明」という。)が記載されていると認められる。

「外箱3の側板4の内面に凝縮パイプ6を複数枚のアルミテープ5で貼り付け、この外箱3の側板4と内箱2との間にウレタン断熱材7を充填して形成される断熱箱体1において、前記アルミテープ5を前記ウレタン断熱材7の外部にまで延在させた断熱箱体1。」

4. 対比,一致点・相違点
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)と引用例の発明を対比すると,引用例の発明の「外箱3の側板4」,「凝縮パイプ6」,「アルミテープ5」,「内箱2」及び「断熱箱体1」は,それぞれ本願発明の「外装板」,「凝縮パイプ」,「金属製テープ」,「内箱」及び「断熱箱体」に相当する。

また,引用例の発明の「ウレタン断熱材7」は,記載事項ア中の「ウレタン断熱材7中のトリクロロモノフルオロメタン(以下フロンガス)が,侵入し,」の記載や技術常識からみて,外箱3の側板4と内箱2との間で発泡充填される発泡断熱材と認められ,本願発明の「発泡断熱材」に相当する。

したがって,両発明は,
「外装板の内面に凝縮パイプを複数枚の金属製テープで貼り付け、この外装板と内箱との間に発泡断熱材を充填して形成される断熱箱体において、前記金属製テープを発泡充填されないエリアまで延在させた断熱箱体」の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では前記複数枚の金属製テープを一部重なるように貼り付けるのに対して,引用例の発明では前記複数枚の金属製テープを一部重なるように貼り付けていない点。

5. 相違点についての検討
前記の相違点について検討すると,先ず両発明は,外装板の浮き上がり,要するに変形という課題(本願明細書段落【0012】,記載事項イ参照),金属テープの内側の空間に取り残された空気ないし気体を外部に逃がす隙間を設けるという課題解決手段(本願明細書段落【0013】,記載事項ウ参照),及び前記空間が前記隙間の存在により密閉されていないため,該空間内の圧力は変動せず,常に大気圧と同値であるから前記の変形が防止されるという作用において(本願明細書段落【0020】,記載事項ウ参照),格別な相違が認められない。

そして,引用例の発明において,凝縮パイプ6を外箱3の側板4,即ち外装板の内面に貼り付けたのは,記載事項アに示すように,放熱特性の向上の観点からであり,このことから,アルミテープ5を貼り付けに用いたのも,その良好な熱伝導性による放熱特性の向上の観点からであることは,当業者にとって明らかなことである。

したがって,引用例の発明において,放熱特性の向上の観点から,凝縮パイプ6の曲管部分もアルミテープで貼り付けることは,当業者が容易に想到し得たことであり,また,その際,隣接するアルミテープの内側の空間を連通させ,取り残された空気ないし気体を外部に逃がすことができるように,複数枚のアルミテープを一部重なるように貼り付けることは,当業者が適宜なし得たことである。

よって,引用例の発明において,上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,本願発明の効果は引用例の発明から予測し得る程度であって,格別ではない。

以下、付言する。
引用例には,「外箱3の側板4の内面に凝縮パイプ6を一枚のアルミテープ5で貼り付け、この外箱3の側板4と内箱2との間にウレタン断熱材7を充填して形成される断熱箱体1において、前記アルミテープ5を前記ウレタン断熱材7の外部にまで延在させた断熱箱体1。」の発明(以下、「引用例の発明2」という。)が記載されているものとも認められる。

そうすると、本願発明と引用例の発明2とは,「外装板の内面に凝縮パイプを金属製テープで貼り付け、この外装板と内箱との間に発泡断熱材を充填して形成される断熱箱体において、前記金属製テープを発泡充填されないエリアまで延在させた断熱箱体」の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では,凝縮パイプを複数枚の金属製テープで貼り付け,前記複数枚の金属製テープを一部重なるように貼り付けるのに対して,引用例の発明2では一枚の金属製テープで貼り付けている点。

しかるに,引用例の発明2において,凝縮パイプを金属製テープで貼り付けるに際して,一枚の金属製テープで貼り付けるか,複数枚の金属製テープで貼り付けるかは,当業者が適宜選択できることであり,複数枚の金属製テープで貼り付けた場合に,隣接する金属テープの内側の空間を連通させ,取り残された空気ないし気体を外部に逃がすことができるように,複数枚の金属テープを一部重なるように貼り付けることは,当業者が適宜なし得たことである。

したがって,引用例の発明2において,上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

6. むすび
本願発明は,引用例の発明(又は,引用例の発明2)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-22 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-11 
出願番号 特願平11-278797
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 富夫  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
会田 博行
発明の名称 断熱箱体  
代理人 ▲角▼谷 浩  

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