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審決分類 |
審判 訂正 発明同一 訂正しない H04N |
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管理番号 | 1147772 |
審判番号 | 訂正2005-39003 |
総通号数 | 85 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-08-24 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2004-12-27 |
確定日 | 2006-12-01 |
事件の表示 | 特許第3429744号に係る訂正審判事件についてされた平成16年 8月16日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10451号,平成17年12月20日判決言渡し)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 請求の要旨 1 本件審判の請求の要旨は,特許第3429744号(平成4年8月6日に出願された特願平4-209355号の一部を平成12年12月22日に新たに特許出願したものであり,平成15年5月16日に特許権の設定登録がなされた。)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。 2 本件特許第3429744号の手続経緯 平成12年12月22日 特許出願 (特願平4-209355号:平成4年8月6日出願の分割) 平成15年 5月16日 特許権の設定登録 特許異議の申立 平成16年 7月30日 訂正請求 同 年 8月16日 特許異議決定(訂正を認め特許取消) 同 年 9月29日 東京高裁に係属 (平成17年(行ケ)第10333号) 3 本件特許第3429744号の特許請求の範囲の記載(本件訂正前) 「【請求項1】 画像形成に用いた画像形成装置を特定するために,少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と, 選択的に,入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と,前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有する画像形成装置。 【請求項2】 2次元ビットマップ情報を発生する手段は,再生画像全面より小さい所定の大きさの2次元ビットマップ情報を繰り返して読み出し,再生画像全面に2次元ビットマップ情報を発生することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。」 4 本件審判請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 画像形成に用いた画像形成装置を特定するために,少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を含んだ符号化パターンである2次元ビットマップ情報を該装置内で発生する手段と, 選択的に,入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する付加手段と, 前記付加手段からの信号に基づき記録媒体上に画像を形成する手段とを有し, 前記付加手段は, a)前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する場合,前記入力画像信号に前記符号化パターンの一部を付加した信号と付加しない信号とを局所的に切り替えて出力することによって前記2次元ビットマップ情報を示す前記符号化パターンを前記入力画像信号に付加し, b)前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加しない場合,前記入力画像信号をそのまま出力する, ことを特徴とする画像形成装置。」 第2 訂正拒絶の理由 平成17年2月4日付けで通知した訂正拒絶の理由の概要は,次のとおりである。 1 特許法36条5項及び6項について 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は明確ではなく,特許法36条5項及び6項に規定する要件を満たしていないから,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 2 特許法29条の2について 本件訂正後の請求項1に係る発明は,特願平3-60248号(特開平4-294682号)又は特願平3-272227号(特開平5-110815号)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるから,特許法29条の2の規定の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 特許法29条1項及び2項について 訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成されている発明は,本件特許出願前に頒布された特開平4-184571号公報」(平成4年7月1日発行)に記載された発明と実質的に同一の発明であるか,又は同発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条1項3号又は同条2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 したがって,本件審判の請求は,同法126条3項の規定に適合しない。 第3 当審の判断 1 特許法36条5項及び6項について 本件訂正後の特許請求の範囲の記載は明確であり,特許法36条5項及び6項に規定する要件を満たしている旨の判示が,前述の平成17年(行ケ)第10451号判決(以下,「10451判決」という。)においてなされ,この判断は当審判を拘束するから,特許法36に関する訂正拒絶理由は維持できない。 2 特許法29条の2について (1) 特願平3-272227号(特開平5-110815号,以下「先願」といい,その発明を「先願発明」という。)の願書に最初に添付された明細書には以下の記載が図面と共になされている。 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は画像処理装置に関するもので,例えば,特定原稿画像を判別する画像処理装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年の複写機の高画質化,カラー化に伴い,特に商品券や有価証券などの特定原稿についての偽造の危惧が生じている。一方,複写機において特定原稿を認識する方法として,入力画像の色データの分布を検出し,入力画像と特定原稿画像の色データの両分布を比較する方法や,入力画像と特定原稿画像の両方を共通色空間に変換し,共通色空間において,画素単位で入力画像と特定原稿画像の比較を行う方法などがある。上記の方法などにより特定原稿であると判定された場合,一般に,人間の目に見え難いドツトパターンなどを,出力画像に付加する技術が本出願人により提案されている。」 イ 「【0145】次に,ステツプ1805で,画像メモリ1116内の入力画像データを読出し,画像を複写出力する。この際,入力画像中に特定原稿画像が,存在しないと判断されたときは,通常の複写出力がなされるが,存在すると判断されたときは,既に,画像メモリ1116内の入力画像データは消去されているので,全面白または黒の画像が複写出力される。 【0146】なお,上述の説明において,入力画像中に特定原稿画像が存在すると,CPU1170が,画像メモリ1116内の入力画像データを消去することで,複写出力を禁止するとしたが,本実施例はこれに限られるものではなく,特定原稿画像が存在すると判定された場合に,CPU1170が,画像メモリ1116内の入力画像データを加工し,例えば,原稿画像とは色味の異なる画像を,複写出力することによつても,偽造を防止することができる。 【0147】さらに,図47に示す特定原稿1901を複写しようとした場合,入力画像中に特定原稿画像が存在すると判定されたならば,CPU1170が,画像メモリ1116内の入力画像データを加工し,例えば,図47に一例を示すような,複写出力1902の全面に「INVALID」(無効)の文字を重ねた,複写出力とすることでも同様の効果が得られる。 【0148】同様に,例えば,図47に一例を示すような,複写出力1903の全面に,人間の目には識別し難い色(例えばイエロー)で,記号または番号など(図47の場合は,例えば「123」)を重ねて複写出力する。具体的には,装置固有の番号,もしくは装置の製造ロツト番号などを複写出力全面に,周期的に繰返し出力する。これにより,もしこの複写出力が悪用された場合に,重ねた記号または番号などを鑑定することで,捜査の手掛かりとなる,該複写出力を出力した複写装置の情報が得られる。」 3 対比・判断 (1) 先願発明は,画像形成する画像処理装置に関する発明であり,前記段落【0145】ないし【0148】及び【従来の技術】の記載から,次のことがいえる。 ア 入力画像中に特定原稿画像が,存在しないと判断されたときは,通常の複写出力がなされる。 イ 入力画像中に特定原稿画像が,存在すると判断されたときは,以下の実施態様に示される処理がなされ,複写出力される。 (ア) 全面白又は黒の画像が複写出力される。(段落【0145】) (イ) 入力画像データを加工し,原稿画像とは色味の異なる画像を,複写出力する。(段落【0146】) (ウ) 入力画像データを加工し,複写出力の全面に「INVALID」(無効)の文字を重ね,複写出力とする。(段落【0147】) (エ) 人間の目には識別し難いイエローで,記号又は番号123など,装置固有の番号,若しくは装置の製造ロツト番号を重ねて複写出力全面に,周期的に繰返し出力する。(段落【0148】) (オ) 人間の目に見え難いドツトパターンなどを,出力画像に付加する。(段落【0002】) (2) 上記(エ)の実施態様についてみるに,この部分を説明している明細書の段落【0148】には,「同様に,例えば,図47に一例を示すような,複写出力1903の全面に,人間の目には識別し難い色(例えばイエロー)で,記号または番号など(図47の場合は,例えば「123」)を重ねて複写出力する。具体的には,装置固有の番号,もしくは装置の製造ロツト番号などを複写出力全面に,周期的に繰返し出力する。」ことが記載されているから,本願発明の「画像形成に用いた画像形成装置を特定するために,少なくとも画像形成装置ごとに割り当てられた情報を該装置内で発生する手段」を備えていることが認められる。 さらに,この実施態様(エ)に対応する説明箇所には,「同様に,例えば,」とあることから,実施態様(イ)と同様,「特定原稿画像が存在すると判定された場合に,CPU1170が,画像メモリ1116内の入力画像データを加工」しているとみることができ,記録媒体上に画像を形成する手段を備えていることも認められる。 (3) 本願発明で使用されている「2次元ビットマップ情報」については,前記10451判決において,次の判示がなされている。 ア 「訂正明細書の記載によれば,「付加情報発生回路58は図3のようなビットマップデータを繰り返し読みだすことにより再生画像全面に図3の付加情報をパルス幅変調特性の変化として付加することができ」,「たとえば図3の矩形1ますはN(整数)画素に相当するようにする」というのであるから,本件発明の「2次元ビットマップ情報」は,「符号化パターン」に対応した画素データであると理解することができる。」(判決書13頁16?21行) イ 「本件発明は,「前記入力画像信号に前記符号化パターンの一部を付加した信号と付加しない信号とを局所的に切り替えて出力する」というものであり,また,上記のとおり,「2次元ビットマップ情報」は,「符号化パターン」に対応した画素データであるから,「2次元ビットマップ情報」の個々の画素が「符号化パターンの一部」に対応するものであることは明らかである。」(同13頁末行?14頁5行) ウ 「そうすると,本件発明の「前記付加手段は,a)前記入力画像信号に前記2次元ビットマップ情報を付加する場合,前記入力画像信号に前記符号化パターンの一部を付加した信号と付加しない信号とを局所的に切り替えて出力することによって前記2次元ビットマップ情報を示す前記符号化パターンを前記入力画像信号に付加し」という処理は,最終的に,「符号化パターン」に対応する「2次元ビットマップ情報」のすべての部分を付加するものであるが,局所的にみれば,処理時点での付加手段の処理対象となる「2次元ビットマップ情報」の個々の画素について,「符号化パターンの一部」に該当するか否か(すなわち,黒画素であるか否か)により,「符号化パターン」(の一部であるという情報)を,「入力画像信号」に付加するものであるということができる。 したがって,「符号化パターン」がバーコードである場合においては,上記a)の処理により,最終的に,バーコードが表す情報の全部が付加され,「画像形成装置ごとに割り当てられた情報」が付加される。そして,「符号化パターンの一部」は,「2次元ビットマップ情報」の黒画素であるということができる」(同14頁6?19行) (4) 上記判示事項に従えば,「2次元ビットマップ情報」は,「符号化パターン」に対応した画素データであるから,先願明細書における「記号または番号など(図47の場合は,例えば「123」)を重ねて複写出力する。」ことは,「画像メモリ1116内の入力画像データを加工」したものであるから,2次元ビットマップ情報であり,符号化パターンに対応したデータということができる。 そして,本願発明の「符号化パターンの一部を付加した信号と付加しない信号とを局所的に切り替えて出力すること」は,「符号化パターンの一部」は,「2次元ビットマップ情報」の黒画素であるということができる」ことから,先願明細書における記号又は番号などは,黒画素の部分では符号化パターンの一部を付加した信号とし,白画素の部分では切り替えて付加しない信号として記号又は番号などが表す情報の全部が付加されて,出力することが示されていると理解できる。 なお,記号や番号が符号化パターンと同一の意味を持つか否かは,枝葉末節な事柄であり,出力された装置を特定できる画像装置ごとに割り当てられた情報であればいかなる態様も許容されることは,先願明細書全体の記載から自明であり,本願発明についても同様である。 (5) 以上のとおり,本件訂正後の請求項1に係る発明は,特願平3-272227号(特開平5-110815号)の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の先願の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 第4 むすび したがって,他の訂正拒絶理由である特許法29条の2及び29条1項,2項について論ずるまでもなく,本件審判の請求は,特許法126条3項の規定に適合しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-15 |
結審通知日 | 2005-03-17 |
審決日 | 2005-03-29 |
出願番号 | 特願2000-389649(P2000-389649) |
審決分類 |
P
1
41・
161-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
田中幸雄 岡本俊威 |
登録日 | 2003-05-16 |
登録番号 | 特許第3429744号(P3429744) |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 森下 賢樹 |
代理人 | 村田 雄祐 |