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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1147851
審判番号 不服2004-3947  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-02-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2006-11-30 
事件の表示 平成 7年特許願第222480号「ファクシミリ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月18日出願公開、特開平 9- 51418〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成7年8月8日に出願されたものであって、平成16年1月22日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成16年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成16年2月26日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「【請求項1】回線から呼出信号が入力されると、ファクシミリ受信動作を行うファクシミリ装置において、
前記回線から送られてくる受信信号のオン/オフ時間を検出する検出手段と、
予め設定された発信元電話番号情報を通知するためのID起動信号のオン/オフ時間を蓄積するメモリと、
前記検出手段で検出した信号のオン/オフ時間を前記メモリに格納されている前記ID起動信号のオン/オフ時間と比較して、前記検出したオン/オフ時間が前記ID起動信号のオン/オフ時間の規定範囲であるかどうかを判断する判断手段と、
該判断手段が規定範囲であると判断した場合は、前記受信信号を前記ID起動信号であると判断してファクシミリ受信動作を行わないように制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とするファクシミリ装置。」
と補正された。

前記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するための補正であり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうかについて以下に検討する。

(2)引用刊行物
(引用例1)
本件出願前に刊行された実願平2-92226号(実開平4-50963号)の願書に最初に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(平成4年4月28日特許庁発行。以下、「引用例1」いう。)には、図面と共に次の記載がある。

(ア)「[産業上の利用分野]
本考案は、ファクシミリ送受信装置に係り、更に詳しくは、各国毎に定められた呼出信号を自動判別して着信させるようにしに特徴を有したものに関する。
[従来の技術]
近時、図形や文字などの画像データを電気信号に変換して電話回線などを介して遠方に伝送し、伝送された画像データを受信側で模写印字させるようにしたファクシミリ送受信装置(以下、ファクシミリと記載する)が開発使用されるようになってきた。
ところで、このようなファクシミリ(電話機も同様)では、各国毎に呼出信号の規格が独自に設定されており、例えば、日本国内では、電圧レベル75Vr.m.s、周波数16Hz、繰返周期3sec(ON時間1秒、OFF時間2秒)と定められており、また、西ドイツなどでは、電圧レベル50Vr.m.s、周波数23?55Hz、繰返周期5秒(ON時間1秒、OFF時間4秒など)と定められており、この規格に合致した呼出信号が到来したときには着信を判別しなければならず、また、規格からはずれた信号に対しては着信と判別してはならない。
従って、ファクシミリメーカでは、例えば、ヨーロッパなどにファクシミリを輸出する場合には、予め電圧レベル、周波数、繰返周期などを半固定抵抗器などで可変設定できるような構成にしておき、輸出先でその国の呼出信号に合致するように逐一調整するような方法を採っていたが、調整が面倒で手間がかかる上に、機械的な振動などによって半固定抵抗の設定が変動するために正確な呼出信号の着信判別が行えず信頼性を低下させていた。
[考案が解決しようとする課題]
上記事情に鑑みて提案される本考案は、予め、必要な国の呼出信号のパターンをメモりに記憶させておき、伝送されてきた呼出信号を記憶した呼出信号パターンと比較して合致するものがある場合に自動的に着信を判別するようにし、これによって面倒な調整を排除し、信頼性を向上させたファクシミリ送受信装置を提供することを目的としている。
[課題を解決するための手段]
上記目的を達成するために提案される本考案は、呼出信号の電圧レベルを検出する電圧検出部と、その周波数を検出する周波数検出部と、その繰返周期を検出する繰返周期検出部とを含んで成る呼出信号識別手段と、少なくとも、各国毎に定められた呼出信号の電圧レベル、周波数および繰返周期の各データを予め格納したメモリ部と、呼出信号が伝送されたときは上記呼出信号識別手段で識別された各データを上記メモリ部に格納された各データと比較し、一致判別時には着信する信号判別処理部とを備えた構成とされている。
[作用]
本考案では、電話回線を介して呼出信号が伝送されて来ると、呼出信号識別手段の電圧検出部では呼出信号の電圧レベルを検出し、周波数検出部では呼出信号の周波数を検出し、更に、繰返周期検出部では呼出信号の繰返周期を検出して、これらのデータを各々信号処理判別部に伝送する。そして、信号処理判別部では、伝送されたこれらのデータをメモリ部に格納されたデータと比較して一致するデータがあるときのみ着信と判別する。」(第1頁第16行?第4頁第20行)
なお、下線は、審決において附された。以下同様。

(イ)「[実施例]
以下に、図面を参照して本考案の実施例を説明する。
第1図は、本考案のファクシミリ1の内部構成例をブロック図をもって示したもので、図において、11は呼出信号の識別を行う呼出信号識別手段、12は電話回線lの断接制御を行う回線制御部、13は電話回線lを介して制御信号や画像信号の送受を行うモデム、14はROM14aおよびRAM14bを有したメモリ部、15は各操作キーを有したキー操作部、16はモデム13を介して受信された画像信号を印字出力するための印字出力部、17は送信原稿を読み取って画像信号に変換する画像読取部、Hはハンドセットであり、各部の信号処理を信号判別処理部10で集中して行うようにされている。
呼出信号識別手段11は、電話回線lを介して伝送された呼出信号の電圧V(実効値)を検出する電圧検出回路110aと、検出したアナログ電圧データをデジタルデータに変換するA/D変換回路110bとを有した電圧検出部110と、伝送された呼出信号の周波数Fを検出する周波数検出回路111aと、検出したアナログ周波数データをデジタルデータに変換するA/D変換回路111bとを有した周波数検出部111と、伝送された呼出信号の繰返周期T(ON時間T1およびOFF時間T2を含む)を検出する繰返周期検出回路112aと、検出したアナログ繰返周期データをデジタルデータに変換するA/D変換回路112bとを有した繰返周期検出部112とを備えている。
メモリ部14のROM14aには、各国毎に定められた呼出信号の電圧レベル、周波数および繰返周期のデータや処理プログラムなどを予め格納しており、RAM14bは、信号判別処理部10の処理時のデータを一時的に記憶させるようになっている。
第2図は、呼出信号の一例として、日本の規格で定められた呼出信号野波形を示したもので(電話回線lの一線側を設置電位として記載している)、電圧レベルVは実効値75ボルト(図では)便宜上、波高値で示している)、周波数Fは16Hz、繰返周期Tは3秒(ON時間1秒、OFF時間2秒)になっている。
次に、上述した構成の本考案のファクシミリ1の動作を第3図のフローチャートを参照して説明する。
(1)電話回線lを介して伝送されてきた信号は回線制御部12を介して呼出信号識別手段に常時加えられている。そして、伝送された信号を受けて、電圧検出部110では、電圧検出回路110aで電圧Vの実効値を検出してA/D変換回路110bでデジタルデータに変換し、周波数検出部111では、周波数検出回路111aで周波数Fを検出してA/D変換回路111bでデジタルデータに変換し、また、繰返周期検出部112では、繰返周期検出回路112aで繰返周期TおよびON時間T1,OFF時間T2を検出してA/D変換回路112bでデジタルデータに変換し、このようにして得られた各デジタルデータを信号判別処理部10に伝送する(第3図ステップ1000?1002参照)。
(2)信号判別処理部10では、まず、伝送されてきた各データの電圧データVをROM14aに格納された各国の電圧データと比較し、一致するデータがあればステップ1004の周波数の一致判別に移る。しかし、一致するデータがないときにはステップ1000?1002に戻る(第3図ステップ1003参照)。
(3)ステップ1003で、一致する電圧データVがあれば、次に、伝送された周波数データFをROM14aに格納された各国の周波数データと比較し、一致するデータがあればステップ1005の繰返周期の一致判別に移る。しかし、一致するデータがないときにはステップ1000?1002に戻る(第3図ステップ1004参照)。
(4)ステップ1004で、一致する周波数データFがあれば、次に、伝送された繰返周期データT(ON時間T1,OFF時間T2を含む)をROM14aに格納された各国の繰返周期データと比較し、一致するデータがあるときには、着信と判別して以降の通信処理あるいは通話処理を実行する。しかし、一致するデータがないときにはステップ1000?1002に戻る(第3図ステップ1005,1006参照)。
このように本考案のファクシミリ1によれば、メモリ部に各国の呼出信号のデータを格納しておけば、信号判別処理部で自動的に呼出信号の着信を判別することができるので、国毎に着信信号の検出部の調整を行うような手間が不要となる。
尚、上記実施例では、呼出信号識別手段11で検出されたデジタルデータとROM14aに格納された各国のデータとが一致した場合に着信を判別する構成としているが、信号判別処理部10において、所定の誤差範囲内では一致したものと判別させるような許容範囲をプログラム処理によって設定することも可能である。」(第5頁第1行?第9頁第17行)

(ウ)「ところで、上記実施例では、呼出信号識別手段11の電圧検出部110、周波数検出部111あるいは繰返周期検出部112における部品のばらつきなどによって、検出データに誤差が発生することが多く、このような場合には、各検出部110?112に誤差を吸収するための半固定抵抗などを予め設けておき、電話回線lに基準信号を加えて調整しなければならず手間を要することになるが、次に示すような構成によって、部品のばらつきによる検出誤差をソフト処理あるいはハード処理によって自動的に修正することが可能である。
第4図に、このような部品のばらつきによる誤差をソフト処理によって自動修正するようにしたファクシミリ1’の回路構成例をブロック図をもって示したもので、上述したファクシミリ1と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
このファクシミリ1’では、キー操作部15に呼出信号識別手段11の誤差率を算出、記憶するための調整モードに切り換える調整モード切換スイッチを有しており、調整モードに切換設定されたときには、基準信号発生回路18から呼出信号識別手段11予め定められた基準信号(本実施例では、上述した日本の呼出信号を基準信号としている)を加えるようになっている。
そのような構成のファクシミリ1’の動作を第5図のフローチャートを参照して説明する。
1.調整モードの動作。
(1)キー操作部15の調整モード切換スイッチを操作して調整モードに切り換える。
(2)基準信号発生回路18から呼出信号識別手段11に基準信号が加えられ、呼出信号識別手段11では、基準信号の電圧V(実効値)、周波数Fおよび繰返周期T(ON時間T1,OFF時間T2)を検出し、デジタルデータとして信号判別処理部10に伝送する(第5図ステップ2000?2003参照)。
(3)信号判別処理部10では、検出されたこれらのデータを予めROM14aに格納されている基準信号の電圧V、周波数F、周波数誤差率および繰返周期誤差率を算出してRAM14bに記憶する(第3図ステップ2004?2006参照)。
このようにして調整モードによって誤差率が記憶されると、自動的に調整モードが終了して通常の受信待機状態に戻り、以降は、呼出信号が伝送されると、呼出信号識別手段11で検出された電圧V、周波数Fおよび繰返周期Tの各々のデータにRAM14bに記憶された誤差率を掛け算処理した結果をROM14aに格納された各国のデータと比較して着信判別処理を行う。
このように、呼出信号識別手段11の部品のばらつきなどによる誤差率を調整モードによって予め算出し、以降は、検出された各データに誤差率をかけ算処理して自動修正が行われるので、正確な着信判別を行うことが可能となる。
以上は、ソフト処理によって呼出信号識別手段11の検出誤差を自動修正するものであるが、ハード処理によって検出誤差を自動修正するようにしたファクシミリ1”を示したものであり、上述したファクシミリ1’と同一部分には同一の符号を付している。
この構成では、調整モードに切換設定すると呼出信号識別手段11から信号判別処理部10に基準信号の検出データが伝送されるまでの動作は上述したファクシミリ1’と同一であるが、信号判別処理部10では、伝送された検出データをROM14aに予め格納された基準信号に対応した電圧V、周波数Fおよび繰返周期Tと比較して誤差に応じた電圧オフセット信号、周波数オフセット信号および繰返周期オフセット信号を各々求めて呼出信号識別手段11の各A/D変換回路110b?112bに加えるようになっている。
従って、電圧検出回路110a、周波数検出回路111a、および繰返周期検出回路112aで検出されたデータは各々のA/D変換回路110b?112b でデジタルデータに変換される時点で信号判別処理部10から加えられているオフセット信号によって誤差修正が行われるようになっている(以上、第7図ステップ3000?3007参照)。尚、オフセット信号を各A/D変換回路に加える構成に代えて、各検出回路110a?112aに加える構成とすることも可能である。
このように、呼出信号識別手段11の検出誤差をハード処理によって自動修正することで正確な着信判別を行うことが可能となる。
[考案の効果]
本考案によれば、各国の呼出信号のデータをメモり部に格納しておけば、電話回線を介して伝送された呼出信号の電圧、周波数、繰返周期を検出して自動的に着信判別を行うので、異なった呼出信号を判別させるために半固定抵抗などの調整を行う手間が不要となり、しかも、設定の変動などが生じないため、信頼性を向上させたファクシミリ送受信装置を提供できる。」(第9頁第18行?第14頁第11行)

以上の記載から見て、引用例1には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「呼出信号の電圧レベルを検出する電圧検出部と、その周波数を検出する周波数検出部と、その繰返周期を検出する繰返周期検出部とを含んで成る呼出信号識別手段と、少なくとも、各国毎に定められた呼出信号の電圧レベル、周波数および繰返周期の各データを予め格納したメモリ部と、呼出信号が伝送されたときは上記呼出信号識別手段で識別された各データを上記メモリ部に格納された各データと比較し、一致判別時には着信する信号判別処理部とを備えたファクシミリ送受信装置。」

(引用例2)
本件出願前に刊行された特開平5-48754号公報(平成5年2月26日出願公開。以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の各記載がある。

(ア')「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、電話とファクシミリの切り替え手段を有し、留守番電話モードでの着信時に、OGMを送出するとともに、相手からのCNG信号を検出することにより、電話からファクシミリに切り替わる留守番電話装置において、上記OGMの送出中にCNG信号を検出した場合に、このCNG信号のレベル、オン/オフ時間および周期を検知し、これらデータに基づいて上記ファクシミリへの切り替え動作を実行するものである。このように、CNG信号の検出条件として、CNG信号のレベルやオン/オフ時間の他に、信号の周期を加えることにより、CNG信号を確実に検知して、ファクシミリへの切り替えの誤動作をなくすことができる。」

(イ')「【0013】図3は、この実施例において、CNG信号を検知する場合の信号波形の一例を示す模式図である。
【0014】この図3において、(A)は、OGMの波形を示し、(B)は、実際のCNG信号の波形を示し、(C)は、CNG検出部4の検出波形を示している。すなわち、上記実際のCNG信号とOGMとが同時にCNG検出部4の入力ポートより入力されることになり、この入力信号をCNG検出部4内でエッジ処理することで、実際のCNG信号よりやや変形した検出波形が得られる。」

(ウ')「【0017】すなわち、CNG検出部4では、回線L1の信号レベルがオンであるかどうかを識別し(S1)、オンである場合に、そのオン時間を検定する(S2)。上述のようにCNG信号は、OGMの影響を受けてノイズ成分を含むものとなっているので、短波長のレベル変動は無視して連続的なオン時間(H1)を監視しておく。なお、オン時間が所定の最大値を越えた場合は不適格とみなしてリターンする(S3)。
【0018】また、レベルがオフするのを待ち(S4)、オフになれば、オフ時間を検定する(S5)。そして、この場合も、短波長のレベル変動は無視して連続的なオフ時間(H2)を監視しておく。
【0019】そして、オフ時間が検定できた時点で1周期あったとする(S6)。次に、このような動作を、もう一度繰り返し、2周期目がとれた時点で(S7)、検定が完了したとする(S8)。
【0020】以上の処理を行った結果、制御部2は切り替え部3を電話部6にするかファクシミリ機能部7にするか決定する。つまり、上記CNG検出部4で検出したCNG信号のオン/オフ時間が所定の許容値を満足し、かつオン/オフ時間の和によるCNG信号の周期が規定値に一致している場合には、真正のCNG信号を検出したと判断し、ファクシミリへの切り替え動作を実行し、それ以外の場合には、偽のCNG信号であると判断してファクシミリへは移行しない。
【0021】このようにして、正しいCNG信号に対してのみファクシミリ機能部7への切り替えを行うことができる。」

以上の記載から見て、引用例2には、次のような発明が記載されているものと認められる。
「電話とファクシミリの切り替え手段を有し、留守番電話モードでの着信時に、応答メッセージを送出するとともに、相手からのCNG信号を検出することにより、電話からファクシミリに切り替わる留守番電話装置において、
上記応答メッセージの送出中にCNG信号を検出した場合に、このCNG信号のレベル、オン/オフ時間および周期を検知し、これらデータに基づいて上記ファクシミリへの切り替え動作を実行することを特徴とする留守番電話装置。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「回線を介して伝送されてくる受信信号の繰返周期Tのオン時間T1およびオフ時間T2を検出する繰返周期検出回路112a」は、本願補正発明の「受信信号のオン/オフ時間を検出する検出手段」に相当し、引用例1に記載された発明の「各国の電圧データV、周波数データF、及びオン時間T1とオフ時間T2を含む繰返データTを予め格納しているメモリ部14のROM14a」は、本願補正発明の「受信信号のオン/オフ時間を蓄積するメモリ」に相当し、引用例1に記載された発明の「受信信号の繰返周期データとROM14aに格納された各国の繰返周期データとを比較して許容範囲内で一致するかどうかを判別する信号判別処理部10」は、本願補正発明の「受信信号のオン/オフ時間が規定範囲であるかどうかを判断する判断手段」に相当することは、明らかである。

そして、引用例1には、回線を介して呼出信号が入力されると、ファクシミリ動作を行うファクシミリ装置が記載されているから、本願補正発明と引用例1に記載された発明とは、
「回線から呼出信号が入力されると、ファクシミリ受信動作を行うファクシミリ装置」
である点で差異はない。

引用例1に記載された発明は、回線を介して送られてくる受信信号のオン時間T1及びオフ時間T2を検出する繰返周期検出回路112a(オン/オフ時間検出手段に相当)と、
各国の起動信号(呼出信号)の電圧データV、周波数データF、及びオン時間T1とオフ時間T2を含む繰返データTを予め格納しているROM14a(オン/オフ時間を蓄積するメモリに相当)と、
繰返周期検出回路112aで検出した信号のオン時間T1及びオフ時間T2をROM14aに格納されている起動信号のオン/オフ時間と比較して許容範囲内で一致するかどうかを判別する信号判別処理部10(判断手段に相当)とを備え、
信号判別処理部10が、許容範囲内で一致すると判断した場合、ファクシミリ受信動作を制御するから、本願補正発明と引用例1に記載された発明とは、
「前記回線から送られてくる受信信号のオン/オフ時間を検出する検出手段と、
予め設定された起動信号のオン/オフ時間を蓄積するメモリと、
前記検出手段で検出した信号のオン/オフ時間を前記メモリに格納されている前記起動信号のオン/オフ時間と比較して、前記検出したオン/オフ時間が前記起動信号のオン/オフ時間の規定範囲であるかどうかを判断する判断手段と、
該判断手段が規定範囲であると判断した場合は、前記受信信号を前記起動信号であると判断してファクシミリ受信動作を制御する制御手段と、
を備えたファクシミリ装置。」
である点で差異はない。

そうすると、本願補正発明と引用例1に記載された発明とは、
(一致点)
「回線から呼出信号が入力されると、ファクシミリ受信動作を行うファクシミリ装置において、
前記回線から送られてくる受信信号のオン/オフ時間を検出する検出手段と、
予め設定された起動信号のオン/オフ時間を蓄積するメモリと、
前記検出手段で検出した信号のオン/オフ時間を前記メモリに格納されている前記起動信号のオン/オフ時間と比較して、前記検出したオン/オフ時間が前記起動信号のオン/オフ時間の規定範囲であるかどうかを判断する判断手段と、
該判断手段が規定範囲であると判断した場合は、前記受信信号を前記起動信号であると判断してファクシミリ受信動作を制御する制御手段と、
を備えたファクシミリ装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明が、回線から送られてくる受信信号がID起動信号であるか否かを判断し、ID起動信号であるときにはファクシミリ受信動作を行わないのに対して、引用例1に記載された発明は、回線から送られてくる受信信号が呼出信号であるか否かを判断し、呼出信号であるときにはファクシミリ受信動作を行い呼出信号でないときにはファクシミリ受信動作を行わない点。

(4)判断
前記相違点について判断するに、
(i)日本国では、ID起動信号のオン時間及びオフ時間は、それぞれ、0.5秒及び0.5秒と規約され、一方、呼出信号のオン時間及びオフ時間は、それぞれ、1秒及び2秒と規約されており、両起動信号のオン/オフ時間が明瞭に異なることは、当業者には広く知られている周知技術事項である。
そして、受信信号のオン/オフ時間の相違を判別して受信信号が呼出信号であるか又は他の信号であるかを判別し、受信信号が呼出信号と判別されたときのみファクシミリへの切り替え動作を実行することは、引用例2にその旨が記載されているように当業者には周知である。
(ii)本件出願前に刊行された次の文献、
【文献】稲垣禎介/山岸正幸著,「発信電話番号通知サービスの提供について」,NTT技術ジャーナル1995年7月号,pp.78-81
には、(a)INSネットユーザ間では、INSネットサービス開始時より既に「発信者電話番号通知」を行っていることが記載されており(第78頁左欄参照)、(b)また、アメリカでは、昭和62年より発信者の電話番号を通知する「コーラーID」サービスを提供していることが記載されている(第78頁右欄参照)。(c)更に、同文献には、1995年1月と2月に、通信機械工業会に対して、発信電話番号通知サービスの概要と加入者線信号シーケンスの説明を行ったこと、および、1995年2月末に電信電話技術委員会(TTC)において加入者線信号シーケンスの意見聴取を行ったことが記載されている(第81頁左欄参照)。
なお、発信者電話番号通知サービスの信号シーケンス、すなわちID起動信号と呼出信号の信号シーケンスの概要は、第81頁の図5等に開示されている。
(iii)そして、上記(i),(ii.a)及び(ii.b)に示されるように、ID起動信号と呼出信号とはそのオン/オフ時間が明確に相違し、その違いに基づいて両信号を判別し、その判別結果に従って、「発信者電話番号通知サービス」又は「着信動作の制御」をすることは、従来より行われていたことは明白である。また、上記(ii.c)に示されるように、発信電話番号通知サービスの信号シーケンスは、当業者には良く知られた技術事項であることも明らかである。また更に、上記文献に記載されているように、受信信号がID起動信号と判断された場合には発信者の電話番号を着信者に通知するに止まり、受信側の指示がない限り、電話及びファクシミリの受信動作を行わせないことは、その技術的意義から自明かつ当然のことである。もしID起動信号を検出したとき、電話及びファクシミリの受信動作を実行すれば、「発信者電話番号通知サービス」本来の意義が失われ、それは誤動作となる。
以上のことを踏まえると、引用例1に記載された発明に上記周知技術事項を適用して本願発明の如く、受信信号がID起動信号である場合にはファクシミリ受信動作を行わないようにすることは、当業者が適宜なし得ることである。

(5)むすび
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではなく、特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであるから、平成16年2月26日付けの手続補正は、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月26日付けの手続補正は、前記のとおり却下されるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成15年3月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものとなるが、平成15年3月27日付けの手続補正は、特許請求の範囲の請求項5及び6のみを補正し、他の請求項を補正していないから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】回線から呼出信号が入力されると、ファクシミリ受信動作を行うファクシミリ装置において、
前記回線からの受信信号のオン/オフ時間を検出し、該オン/オフ時間が特定のオン/オフ時間であるか否かに基づいて、前記ファクシミリ受信動作を行うか否かを制御することを特徴とするファクシミリ装置。」

(1)引用例
当審の拒絶の理由で引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」項に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」項で検討した本願補正発明からその限定事項である
(a)「送られてくる」、「検出手段と、」
(b)「予め設定された発信元電話番号情報を通知するためのID起動信号のオン/オフ時間を蓄積するメモリと、」
(c)「前記検出手段で検出した信号のオン/オフ時間を前記メモリに格納されている前記ID起動信号のオン/オフ時間と比較して、前記検出したオン/オフ時間が前記ID起動信号のオン/オフ時間の規定範囲であるかどうかを判断する判断手段と、」
(d)「該判断手段が規定範囲であると判断した場合は、前記受信信号を前記ID起動信号であると判断してファクシミリ受信動作を行わないように制御する制御手段と、」
を省いたものである。そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」項に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-22 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願平7-222480
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂本 聡生渡辺 努  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 岡本 俊威
鈴木 明
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 有我 軍一郎  

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