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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1147859
審判番号 不服2004-7864  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-16 
確定日 2006-11-30 
事件の表示 特願2000-119628「メール通知装置及び携帯電話装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 2日出願公開、特開2001-306463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年4月20日の出願であって、平成15年9月25日付で拒絶理由が通知され、平成15年11月26日に手続補正書が提出され、平成16年4月2日付で拒絶査定がなされたところ、これに対して平成16年4月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出されたものである。

2.補正却下の決定
平成16年4月16日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

(1)[補正却下の決定の結論]
平成16年4月16日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(2)[補正却下の決定の理由]
(a)補正の内容
本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、
「所定の電子メールアドレスに対応して通知先であるメールアドレスを記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された前記通知先を示すメールアドレスに対して通知用電子メールを送信するメール送信部と、前記所定の電子メールアドレスに電子メールの着信があった場合に当該電子メールアドレスに対応する通知先を示すメールアドレスに着信通知メールを前記メール送信部に送信させる制御部と、を備え、
さらに前記制御部は、前記着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数である場合には前記メール送信部に前記着信した電子メールの本文を送信させると共に前記着信した電子メールをメールサーバより削除させる一方、前記携帯電話で表示可能な文字数を超えている場合には前記着信通知メールのみ送信させることを特徴とするメール通知装置。」と補正されている。
上記補正は、「前記制御部は、前記着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数である場合には前記メール送信部に前記着信した電子メールの本文を送信させる」について、「と共に前記着信した電子メールをメールサーバより削除させる」との限定を付加するものであり、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

(b)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平11-272582号公報(以下、「引用例」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。

(イ)「【0024】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る電子メール提供装置を設けた電子メールサービスシステムの構成例を示す。このシステムでは、電子メール提供装置1と、メールサービスAの電子メールサーバ2と、メールサービスBの電子メールサーバ3とが、インターネット6を介して互いに接続されている。
【0025】電子メール提供装置1は、メール取得機能11,メール転送機能12,メール取得制限機能13及びメール加工機能14を有している。また特に、この電子メールサービスシステムでは、電子メール提供装置1とメールサーバ3とが、メールサービスBにおいて包括的な形で提供されている。ここでは、この電子メール提供装置1とメールサーバ3とを包括したものをメール取得サーバ7と呼ぶことにする。
【0026】メールサーバ3には、PHS方式の通信端末装置(小型携帯端末)が、インターネット6,ISDN網10,PHS網9及び基地局8を介して多数接続されており、小型携帯端末5もそのうちの一つである。これらの小型携帯端末(以下、代表して小型携帯端末5と呼ぶことにする)は、図4の通信端末装置20におけると同様な通信機能及び参照機能を有している。また小型携帯端末5では、メールサービスBのみを利用するための専用のメールサービス情報(メールサーバ名,ユーザーID等)がROMにファームウェアとして固定化されている。
【0027】次に、このメール取得サーバ7の動作例を、メール取得機能11及びメール転送機能12による基本動作と、メール取得制限機能13,メール加工機能14による動作とに分けて説明する。
【0028】〔メール取得機能11及びメール転送機能12による基本動作〕メール取得機能11は、メールサーバ2と接続して特定のユーザー宛の電子メールが格納されたユーザースプール21にアクセスするためのメールサービス情報(前述のように、メール受信プロトコルPOP3では、メールサーバ2のメールサーバ名と、その特定のユーザーのユーザーID及びパスワード)に基づき、メールサーバ2からそのユーザー宛の電子メールを取得する。
【0029】他方、メール転送機能12は、メール取得機能11で取得した電子メールを、メールサーバ3と接続してそのユーザーの小型携帯端末5に受信させるためのメールサービス情報(メール受信プロトコルPOP3では、メールサーバ3のメールサーバ名と、そのユーザーのメールアドレス)に基づき、メールサーバ3に転送する。これにより、そのユーザー宛の電子メールが、そのユーザーの小型携帯端末5に受信される。
【0030】これらのメールサービス情報をメール取得機能11,メール転送機能12に供給する方法としては、次の(1)?(3)のうちのいずれかの方法を採用する。
(1)メール取得サーバ7内に、メールサービス情報を格納するためのデータベース等のデータ管理装置を設け、このデータ管理装置から供給する。
(2)メールサーバ3に接続された各小型携帯端末5から、その小型携帯端末5のユーザーについてのメールサービス情報を供給させる。そのために、例えばこれらの小型携帯端末5にWWW(World-Wide Web)のブラウザ機能を具備させて、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)でメールサービス情報をメール取得サーバ7に送信させる。
(3)上記(1),(2)の方法を併用し、一部のメールサービス情報はメール取得サーバ7内のデータ管理装置から供給し、残りのメールサービス情報は小型携帯端末5から供給させる。」(段落【0024】?【0030】第5頁第7欄第42行?第6頁第9欄第6行)
(ロ)「【0032】(5)メール取得機能11が自動的に(例えば定期的に)メールサーバ2から電子メールを取得する。この場合には、メールサービス情報の供給方法としては上記(1)の方法を採用しなければならない。尚、メール取得機能11に、予めユーザーが指定した時刻に電子メールを取得する機能を具備させれば、ユーザーに都合の良い時刻に電子メールを取得させることもできるようになる。
【0033】このようなメール取得サーバ7の基本動作により、ユーザーは、メールサービスBのみを利用するようにメールサービス情報を設定された小型携帯端末5を使って、そのユーザー宛に別のメールサービスAのメールサーバ2に送信された電子メールを受信できる。これにより、単一の小型携帯端末5において、単一の設定内容のメールサービス情報のもとで複数のメールサービスA及びBを利用できるようになる。
【0034】〔メール取得制限機能13による動作〕メール取得制限機能13は、メールサーバ2からの特定のユーザー宛の電子メールを受信する小型携帯端末5(即ちそのユーザーの小型携帯端末5)の能力を次の2通りの基準で判断し、その能力に応じてメール取得機能11での電子メールの取得を制限する。
(6)電子メールのサイズ
(7)電子メールの本文に添付されたファイルのファイル形式
以下、上記(6)を基準とする場合と上記(7)を基準とする場合とに分けて説明を行う。
【0035】上記(6)のようにサイズを基準とする場合の動作は、次の通りである。メール取得制限機能13は、電子メールのサイズの情報を取得可能なメール受信プロトコルで、メールサーバ2からの電子メールのサイズの情報を取得する。尚、メール受信プロトコルPOP3では、LISTコマンドでこのサイズの情報を取得可能である。また、図2に電子メールのメールヘッダを例示するように、メールヘッダ中のContent-Length:行の情報は当該電子メールのサイズを表している(図の例ではサイズが6468であることが表されている)ので、メールヘッダからもこのサイズの情報を取得可能である。
【0036】メール取得制限機能13は、メールサーバ3に接続されている複数種類の小型携帯端末5について、それぞれの識別情報(例えば機種を表す情報やソフトウェアバージョンを表す情報)と受信可能なメールサイズの情報とを対応づけて記憶したテーブルを有している。メール取得制限機能13は、このテーブルを参照することにより、メールサーバ2からの特定のユーザー宛の電子メールを受信する小型携帯端末5で受信可能なメールサイズ(例えば一定時間内に受信可能なメールサイズ)の情報を取得する。そして、メールサーバ2からの電子メールが、この受信可能なメールサイズを超えるか否かを判断する。
【0037】超えていなければ、メール取得制限機能13はメール取得機能11でのこの電子メールの取得を制限しない。この場合のメール取得サーバ7の動作は、メール取得機能11及びメール転送機能12による基本動作として記述した通りである。
【0038】これに対し、受信可能なメールサイズを超えていると、メール取得制限機能13は、次のいずれかの形態で、メール取得機能11でのこの電子メールの取得を制限する。
(a)電子メールを全く取得させない。
(b)電子メールのメールヘッダだけを取得させる。
【0039】他方、上記(7)のようにファイル形式を基準とする場合の動作は、次の通りである。メール取得制限機能13は、電子メールの全文を取得可能なメール受信プロトコルで、電子メールの全文を取得する。そして、取得した電子メールを解析することにより、この電子メールの本文に添付されているファイルの形式を調べる。尚、電子メールへのファイルの添付は、一般に通常の電子メールにおけるメールヘッダ及びメール本文の後にファイルを付加するマルチパート形式で行われている。図3はこうしたマルチパートメールを例示するものであり、メールヘッダ110及びメール本文120の後にビットマップ形式の画像ファイル130及びテキストファイル140が付加されている。そして、このマルチパートメールでは、メール本文及び各添付ファイル中のContent-Type:行の情報がそれぞれ本文及び添付ファイルの形式を表している(図の例では、メール本文120及び添付ファイル140の形式がtext/plainであり、添付ファイル130の形式がimage/x-MS-bmpであることが表されている)。従って、このContent-Type:行の情報から添付ファイルの形式を調べることが可能である。
【0040】メール取得制限機能13は、メールサーバ3に接続されている複数種類の小型携帯端末5について、それぞれの識別情報(例えば機種を表す情報やソフトウェアバージョンを表す情報)と表示可能なファイル形式の情報とを対応づけて記憶したテーブルを有している。メール取得制限機能13は、このテーブルを参照することにより、メールサーバ2からの特定のユーザー宛の電子メールを受信する小型携帯端末5で表示可能なファイル形式の情報を取得する。そして、メールサーバ2からの電子メールに添付されているファイルに、この表示可能なファイル形式と異なるものが存在するか否かを判断する。
【0041】存在しなければ、メール取得制限機能13はメール取得機能11でのこの電子メールの取得を制限しない。この場合のメール取得サーバ7の動作は、メール取得機能11及びメール転送機能12による基本動作として記述した通りである。
【0042】これに対し、表示可能なファイル形式とは異なるものが存在していると、メール取得制限機能13は、次のいずれかの形態で、メール取得機能11でのこの電子メールの取得を制限する。
(c)電子メールを全く取得させない。
(d)表示可能なファイル形式とは異なるファイル形式のファイルを除いた残りの部分を取得させる。」(段落【0032】?【0042】第6頁第9欄第22行?第7頁第11欄第28行)
(ハ)「【0047】また、以上のメール取得制限機能13による動作例では、上記(7)の基準のもとで、小型携帯端末5で表示可能なファイル形式と異なる添付ファイルが存在する場合に、そのファイル形式の異なる添付ファイルだけを除いた残りの部分をメール取得機能11で取得させるようにしている。しかし、別の例として、こうした場合に、表示可能なファイル形式の添付ファイルを含めた全ての添付ファイルを除いた残りの部分(即ちメールヘッダ及びメール本文だけ)をメール取得機能11で取得させるようにしてもよい。
【0048】また、以上のメール取得制限機能13による動作例では、上記(6)の基準のもとでの電子メールの取得の制限と上記(7)の基準のもとでの電子メールの取得の制限とを分けて説明しているが、これらの2通りの基準を重畳させて電子メールの取得の制限する(例えば上記(7)の基準により添付ファイルを削除しても、残りの部分が小型携帯端末5で受信可能なメールサイズを超えている場合には、上記(6)の基準のもとでメールヘッダだけを取得させる)ようにしてよいことはもちろんである。
【0049】〔メール加工機能14による動作〕メール加工機能14は、メール取得制限機能13が上記(6),(7)の基準のもとでメール取得機能11での電子メールの取得を制限した際に、電子メール転送機能12で転送する電子メールを加工するものである。ここでも、メール取得制限機能13が上記(6)を基準とした場合と上記(7)を基準とした場合とに分けて説明を行う。
【0050】メール取得制限機能13が上記(6)のようにサイズを基準として電子メールの取得を制限した際には、上記(a)のように電子メールがメール取得機能11に全く取得されないか、または上記(b)のように電子メールのメールヘッダだけがメール取得機能11に取得されるようになる。
【0051】このうち、上記(a)の場合には、メール加工機能14は、メールサーバ2からのそのユーザー宛の電子メールを取得しなかった旨のメッセージを内容とする電子メールを作成して、メール転送機能12に供給する。これにより、このメッセージの電子メールがそのユーザーの小型携帯端末5に受信されるので、ユーザーは、メールサーバ2に自己宛の電子メールの送信があった事実を知ることができるようになる。
【0052】これに対し、上記(b)の場合には、メール加工機能14は、メールサーバ2からのそのユーザー宛の電子メールを全ては取得しなかった旨(例えばメールヘッダのみを取得した旨)のメッセージを内容とする電子メールを作成する。そして、このメッセージの電子メールと、メール取得機能11で取得したメールヘッダとを、メール転送機能12に供給する。これにより、このメッセージの電子メールとメールヘッダとがそのユーザーの小型携帯端末5に受信される。メールヘッダには、図2や図3にも例示するように、発信時間を表すData:行や、見出し(サブジェクト)を表すSubject:行や、発信元を表すFrom:行や、宛先を表すTo:行等が含まれている。従って、ユーザーは、メールサーバ2に自己宛の電子メールの送信があった事実を知ることができると共に、その電子メールの発信時間や見出しや発信元等を知ることもできるようになる。
【0053】他方、メール取得制限機能13が上記(7)のようにファイル形式を基準として電子メールの取得を制限した際には、上記(c)のように電子メールがメール取得機能11に全く取得されないか、または上記(d)のように小型携帯端末5で表示可能なファイル形式とは異なるファイル形式のファイルを除いた残りの部分(あるいは別の例としてメールヘッダ及びメール本文だけ)がメール取得機能11に取得されるようになる。
【0054】このうち、上記(c)の場合には、上記(a)の場合と同じく、メールサーバ2からのそのユーザー宛の電子メールを取得しなかった旨のメッセージを内容とする電子メールを作成して、メール転送機能12に供給する。これにより、ユーザーは、メールサーバ2に自己宛の電子メールの送信があった事実を知ることができるようになる。
【0055】これに対し、上記(d)の場合には、メール加工機能14は、メールサーバ2からのそのユーザー宛の電子メールを全ては取得しなかった旨(例えば受信不能な添付ファイルを除いた残りの部分を取得した旨)のメッセージを内容とする電子メールを作成する。そして、このメッセージの電子メールと、メールサーバ2からの電子メールのうちメール取得機能11で取得した部分とを、メール転送機能12に供給する。これにより、ユーザーは、メールサーバ2に自己宛の電子メールの送信があった事実を知ることができると共に、その電子メールの内容の一部を知ることもできるようになる。」(段落【0047】?【0055】第7頁第12欄第31行?第8頁第14欄第15行)
(ニ)「【0061】また、図1の例ではPHS方式の小型携帯端末にメール取得サーバからの電子メールを受信させているが、その他の適宜の通信端末装置(例えば携帯電話)にメール取得サーバからの電子メールを受信させるようにしてよいことはもちろんである。」(段落【0061】第9頁第15欄第17行?第21行)

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が開示されていると認められる。

「自動的(例えば定期的に)にメールサーバ2と接続して特定のユーザー宛の電子メールが格納されたユーザースプール21にアクセスするためのメールサービス情報(メールサーバ2のメールサーバ名と、その特定のユーザーのユーザーID及びパスワード)に基づき、メールサーバ2からそのユーザー宛の電子メールを取得するメール取得機能11と、メール所得機能11で取得した電子メールを、メールサーバ3と接続してそのユーザーの小型携帯端末5に受信させるためのメールサービス情報(メールサーバ3のメールサーバ名と、そのユーザーのメールアドレス)に基づき、メールサーバ3に転送し、そのユーザーの小型携帯端末5に受信させるメール転送機能12と、前記メールサービス情報を格納するためのデータベース等のデータ管理装置と、メールサーバ2からの特定のユーザー宛の電子メールを受信する小型携帯端末5で受信可能なメールサイズ(例えば一定時間内に受信可能なメールサイズ)を越えていると、メール取得機能11で電子メールを全く取得させないメール取得制限機能13と、メール取得制限機能13により電子メールがメール取得機能11に全く取得されない場合には、メールサーバ2からのそのユーザー宛の電子メールを取得しなかった旨のメッセージを内容とする電子メールを作成してメール転送機能12に供給するメール加工機能14と、を備え、前記メッセージの電子メールがそのユーザーの小型携帯端末5に受信されるので、ユーザーは、メールサーバ2に自己宛の電子メールの送信があったことを知ることができる電子メール提供装置。」

(c)対 比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。
引用例記載の発明の「メールサーバ2と接続して特定のユーザー宛の電子メールが格納されたユーザースプール21にアクセスするためのメールサービス情報(メールサーバ2のメールサーバ名と、その特定のユーザーのユーザーID及びパスワード)」及び「メールサーバ3と接続してそのユーザーの小型携帯端末5に受信させるためのメールサービス情報(メールサーバ3のメールサーバ名と、そのユーザーのメールアドレス)」は、本願補正発明の「所定の電子メールアドレス」及び「通知先であるメールアドレス」に相当し、引用例記載の発明の「前記メールサービス情報を格納するためのデータベース等のデータ管理装置」は、本願補正発明の「所定の電子メールアドレスに対応して通知先であるメールアドレスを記憶する記憶部」に相当することは明らかである。
そして、引用例記載の発明の「電子メール提供装置」は、自動的(例えば定期的に)にメールサーバ2と接続して特定のユーザー宛の電子メールが格納されたユーザースプール21にアクセスし、メールサーバ2からそのユーザー宛の電子メールを取得するものにおいて、メールサーバ2からのそのユーザー宛の電子メールを取得しなかった旨のメッセージを内容とする電子メールを作成してメール転送機能12に供給し、前記メッセージの電子メールがそのユーザーの小型携帯端末5に受信されるから、本願補正発明の「通知先を示すメールアドレスに対して通知用電子メールを送信するメール送信部と、前記所定の電子メールアドレスに電子メールの着信があった場合に当該電子メールアドレスに対応する通知先を示すメールアドレスに通知メールを前記メール送信部に送信させる制御部」を備えている「メール通知装置」であるといえる(ただし、本願補正発明の「通知メール」は「着信通知メール」である。)。
さらに、引用例記載の発明の「小型携帯端末」は、本願補正発明の「携帯電話」に相当し、引用例記載の発明は、着信した電子メールのメールサイズが前記通知先のメールアドレスに対応する小型携帯端末で受信可能なメールサイズである場合に、メール送信部に着信した電子メールを送信させ、着信した電子メールのメールサイズが前記通知先のメールアドレスに対応する小型携帯端末で受信可能なメールサイズを越えている場合には、通知メールのみを送信するものであるから、「着信した電子メールが前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話の能力に対応した電子メールである場合には前記メール送信部に前記着信した電子メールを送信させる一方、前記携帯電話の能力を越えている場合には通知メールのみ送信させる」制御手段を備えている点で本願補正発明の「前記制御部は、前記着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数である場合には前記メール送信部に前記着信した電子メールの本文を送信させると共に前記着信した電子メールをメールサーバより削除させる一方、前記携帯電話で表示可能な文字数を超えている場合には前記着信通知メールのみ送信させる」と対応しているといえる。

したがって、両者は、
「所定の電子メールアドレスに対応して通知先であるメールアドレスを記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された前記通知先を示すメールアドレスに対して通知用電子メールを送信するメール送信部と、前記所定の電子メールアドレスに電子メールの着信があった場合に当該電子メールアドレスに対応する通知先を示すメールアドレスに通知メールを前記メール送信部に送信させる制御部と、を備え、
さらに前記制御部は、前記着信した電子メールが前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話の能力に対応する電子メールである場合には前記メール送信部に前記着信した電子メールを送信させる一方、前記携帯電話の能力を超えている電子メールである場合には前記通知メールのみ送信させるメール通知装置。」
で一致するものであり、次の(1)?(3)の点で相違している。

(1)本願補正発明では、着信通知メールを送信させるのに対し、引用例記載の発明では、そのユーザー宛の電子メールを取得しなかった旨のメッセージを内容とする通知メールを送信させる点。

(2)メール送信部に着信した電子メールを送信させるか、通知メールのみを送信するかを判断する条件が、本願補正発明では、着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数を越えているか否かであるのに対し、引用例記載の発明では、着信した電子メールのメールサイズが前記通知先のメールアドレスに対応する小型携帯端末で受信可能なメールサイズを越えているか否かである点。

(3)本願補正発明では、メール送信部に前記着信した電子メールの本文を送信させると共に前記着信した電子メールをメールサーバから削除するのに対し、引用例記載の発明では、メール送信部に着信した電子メールを送信させるものであり、着信した電子メールを送信させると共に着信した電子メールをメールサーバ2から削除することが明らかではない点。

(d)当審の判断
・相違点(1)について
着信通知メール(メッセージ)を携帯情報端末に送信するメール通知装置は、本出願前周知(特開2000-101746号公報、特開平10-107835号公報、特開平10-13460号公報参照)である。
そして、引用例記載の発明の通知メールも「そのユーザーの小型携帯端末5に受信されるので、ユーザーは、メールサーバ2に自己宛の電子メールの送信があったことを知ることができる」ものである。
そうすると、引用例記載の発明において、そのユーザー宛の電子メールを取得しなかった旨のメッセージを内容とする通知メールに代え、着信通知メールを送信させるようにすることは、必要に応じて当業者が適宜なし得る設計事項である。

・相違点(2)について
本願補正発明では、メール送信部に着信した電子メールを送信させるか、通知メールのみを送信するかを判断する条件として、着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数を越えているか否かとしているが、「携帯電話で表示可能な文字数」は携帯電話のメモリ容量から規定されている受信最大文字数などの携帯電話の情報受信能力に対応するものである(例えば、特開平10-313338号公報、段落【0029】の「情報伝送能力は、携帯式装置に表示できるASCIIの文字数640,漢字文字数650,発信音出力有無660,音声出力の有無670などを持つ。」の記載、特開平11-355352号公報、段落【0031】,【0032】の「電子メール30の本文の文字数Mが、たとえば20文字であるとすると、S28では否定判定され(20文字<30文字)、電子メール30を読出し(S29)、その読出した電子メールを携帯電話機5へ送信する(S31)。」,「受信した電子メールの文字数Mが携帯電話機5によって受信可能な文字数M1を越えていない場合には、電子メール30の全部を携帯電話機5へ転送することができるため、携帯電話機5の使用者は、携帯電話機5に表示される内容をみることにより、電子メールの内容の全部を知ることができる。」の記載参照)。
そうすると、引用例記載の発明において、着信した電子メールが小型携帯端末で受信可能なメールサイズを越えているか否かを判断することは、着信した電子メールの文字数が携帯電話で表示可能な文字数を越えているか否かを判断することと実質的な差異は認められない。
そして、引用例には、「別の例として、こうした場合に、表示可能なファイル形式の添付ファイルを含めた全ての添付ファイルを除いた残りの部分(即ちメールヘッダ及びメール本文だけ)をメール取得機能11で取得させるようにしてもよい。」(記載事項(ハ))ことが記載されており、着信した電子メール全体を送信するのではなく、メールヘッダ及びメール本文だけを送信することも示されているから、引用例記載の発明において、メール送信部に着信した電子メールを送信させるか通知メールのみを送信するのかを、着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数を越えているか否かで判断させるようにすることは、必要に応じて当業者が適宜なし得る設計事項である。

・相違点(3)について
端末にメールを転送するとメールサーバに保管したメールを削除することは、本出願前周知(特開2000-3315号公報、特開平10-190728号公報、特開平11-163918号公報参照)である。
そうすると、引用例記載の発明において、メール送信部に前記着信した電子メールの本文を送信させると共に前記着信した電子メールをメールサーバから削除するようにすることは、当業者が容易なし得ることである。

結局、上記の相違点は、格別なものではなく、また、前記相違点により奏される効果は当業者であれば引用例記載の発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

(e)まとめ
そうすると、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、平成16年4月16日に提出された手続補正書による補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合しないから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
上記のとおり、上記補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年11月26日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「所定の電子メールアドレスに対応して通知先であるメールアドレスを記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された前記通知先を示すメールアドレスに対して通知用電子メールを送信するメール送信部と、前記所定の電子メールアドレスに電子メールの着信があった場合に当該電子メールアドレスに対応する通知先を示すメールアドレスに着信通知メールを前記メール送信部に送信させる制御部と、を備え、
前記制御部は、着信した電子メールの本文の文字数が前記通知先のメールアドレスに対応する携帯電話で表示可能な文字数である場合には前記メール送信部に前記着信した電子メールの本文を送信させる一方、前記携帯電話で表示可能な文字数を超えている場合には前記着信通知メールのみ送信させることを特徴とするメール通知装置。」
そして、本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「前記着信した電子メールをメールサーバより削除させる」の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記2.に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-27 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-17 
出願番号 特願2000-119628(P2000-119628)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須藤 竜也竹井 文雄  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 山崎 慎一
和田 志郎
発明の名称 メール通知装置及び携帯電話装置  
代理人 鷲田 公一  

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