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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1147897
審判番号 不服2004-789  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-09 
確定日 2006-12-01 
事件の表示 平成 7年特許願第240934号「面状光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月 7日出願公開、特開平 9- 62215〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願の経緯

本願は、平成7年8月25日付けの出願であって、平成15年12月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月9日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月7日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「透明樹脂板状体の少なくとも1つ以上の端面に1本または複数本の線状の蛍光管を当接させると共に、透明樹脂板状体の裏面に光拡散反射物質を含んだ媒体を部分的に施したサイドライト方式の面状光源装置において、前記透明樹脂板状体の裏面に光拡散反射物質を含んだ媒体より拡散性の低い光散乱透過部または光拡散反射部を全面に形成させ、さらにその上面に前記光拡散反射物質を含んだ媒体を部分的に施したことを特徴とする面状光源装置。」

2.当審の拒絶理由

当審において、平成18年4月27日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物である特開平6-118888号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.刊行物記載の発明の認定

当審における拒絶の理由で引用した引用例には、以下の事項が図面と共に記載されている。

ア.段落【0023】?【0024】
「図1には、本発明を応用した照光装置としての、エッジライト式の超薄型ライトボックスが示されている。超薄型ライトボックスは、ケーシングPの上面側が照光面として形成され、・・・。
ケーシングPの内部には、透明又は半透明の光学媒体で構成された板状体としてのアクリル板Aと、アクリル板Aの端面2からアクリル板Aの内部に光が導入される状態で設けられた光源としての2本の蛍光管Lと、蛍光管Lを発光させるための回路装置3とが設けられている。」

イ.段落【0027】
「アクリル板Aは、照光面の真下に配置され、表裏どちらかの一面側としての下面側に、乱反射用面8が形成されている。・・・。乱反射用面8には、乱反射部分9が分散状態で形成されている。乱反射部分9は、船型のパターンを複数本並べて構成されている。」

ウ.段落【0029】
「乱反射用面8における乱反射部分9が形成されていない部分には、乱反射部分9よりも乱反射量の少ない低乱反射部分10が設けられている。本実施例においては、低乱反射部分10は、乱反射用面8における乱反射部分9が形成されていない部分の全てに設けられている。」

エ.段落【0032】
「ほとんど乱反射が期待できない平滑面で構成された板状のアクリル板A(この種のアクリル板は市販されており、容易に入手可能である。)を所望の大きさに成形し、光源からの光を導入可能な平滑面をもった端面2を形成する。アクリル板Aの表裏どちらかの一面側を乱反射用面8として、まず、・・・粗面を乱反射用面8の全体に形成する。次に、前記粗面を、図2に示す船型のパターンに残しつつ、図3(B)に示すように、アクリル系の透明インクを、低乱反射部分10を構成する部分に、シルクスクリーニングによる印刷技術によって塗布する。・・・船型のパターンに残された前記粗面は、そのまま、乱反射部分9として形成される。」

オ.段落【0033】
「乱反射用の添加剤を透明インクに混入することによって、低乱反射部分10の乱反射量を調節することも可能である。」

カ.図1、図2には、線状の蛍光管Lが、アクリル板Aの端面2からアクリル板Aの内部に光が導入される状態で、該端面2に配置されていることが看取できる。

したがって、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「透明の光学媒体で構成された板状体としてのアクリル板Aの端面2に、アクリル板Aの端面2からアクリル板Aの内部に光が導入される状態で2本の蛍光管Lを配置すると共に、前記アクリル板Aの表裏どちらかの一面側としての乱反射用面8に、低乱反射部分10を構成する乱反射用の添加剤を混入した透明インクを部分的に施した照光装置において、前記アクリル板の前記乱反射用面8に乱反射部分9と前記乱反射部分9よりも乱反射量の少ない低乱反射部分10とを設けたエッジライト式の照光装置。」

4.本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明の「透明の光学媒体で構成された板状体としてのアクリル板A」、「蛍光管L」「アクリル板Aの表裏どちらかの一面側としての乱反射用面8」「乱反射用の添加剤を混入した透明インク」「エッジライト式の照光装置」が、本願発明の「透明樹脂板状体」「線状の蛍光管」「透明樹脂板状体の裏面」「光拡散反射物質を含んだ媒体」「サイドライト方式の面状光源装置」に相当することは明らかである。

また、本願発明では、線状の蛍光管を透明樹脂板状体の端面に「当接させる」と特定されているが、本願明細書の段落【0026】には「蛍光管8が透明樹脂基板端部7とほぼ当接するように置かれており」と記載されている。また、本願発明を図示した図1?図3からみても、蛍光管が透明樹脂板状体の端面に直接接したものとしては記載されておらず、若干の間隙を開けて配置されている。
したがって、本願発明の前記「当接させる」とは、線状の蛍光管が透明樹脂板状体の端面に直接当接することを意味するのではなく、蛍光管の光が透明樹脂板状体の端面に導入される状態で近接して配置することを意味すると解するのが相当であり、この点で、引用発明とに差異はない。

してみれば、両者は、「透明樹脂板状体の1つ以上の端面に複数本の線状の蛍光管を当接させると共に、透明樹脂板状体の裏面に光拡散反射物質を含んだ媒体を部分的に施したサイドライト方式の面状光源装置。」である点で一致し、次の点で相違するものと認める。

<相違点>
本願発明では、「前記透明樹脂板状体の裏面に光拡散反射物質を含んだ媒体より拡散性の低い光散乱透過部または光拡散反射部を全面に形成させ、さらにその上面に前記光拡散反射物質を含んだ媒体を部分的に施した」との特定があるのに対して、引用発明にはそのような特定がない点。

5.相違点の判断

まず、上記相違点に係る「前記透明樹脂板状体の裏面に光拡散反射物質を含んだ媒体より拡散性の低い光散乱透過部または光拡散反射部を全面に形成させ、さらにその上面に前記光拡散反射物質を含んだ媒体を部分的に施した」点について、技術的意味を確認する。

本願発明においては、上記相違点に係る構成を採用したことにより、「透明樹脂板状態(審決注:「透明樹脂板状体」の誤記と認める。)の裏面に拡散性の低い光散乱透過部の全面が拡散し、さらにその層を透過した光線が光拡散物質を含んだ媒体を部分的に施した反射層に当たり拡散されるため輝いて見える差が少なくなる。」(段落【0023】)との作用効果を奏するとしている。
なるほど、透明樹脂板状体の裏面全面に光散乱透過部または光拡散反射部が形成されるのであれば、それにより、透明樹脂板状体の裏面が一様に輝くのであるから、その上面に部分的に施された反射層(光拡散物質を含んだ媒体の層)とそれ以外の部分の「輝いて見える差」がより少なくなることが期待されるものと推察できる。
しかしながら、相違点に係る構成を採用したことにより、本来の面状光源装置としての「均一な発光」、「高輝度化」等(本願明細書の段落【0030】?【0031】参照)という作用効果を奏するかという観点では疑問がある。
というのは、本願発明においては、反射層(光拡散物質を含んだ媒体の層)にまで蛍光管の光線が届かなければならないのであるが、透明樹脂板状体の裏面全面に形成された「光散乱透過部または光拡散反射部」の光拡散性の程度が、「光拡散反射物質を含んだ媒体」との相対的な関係で規定されているだけで、具体的な光透過率等何も規定されていないので、透明樹脂板状体の裏面全面に形成された光散乱透過部または光拡散反射部がどの程度光を透過するのか直ちに把握できない。
そして、仮に、透明樹脂板状体の裏面全面に形成された光散乱透過部または光拡散反射部を透過した光線が光拡散物質を含んだ媒体を部分的に施した反射層(光拡散物質を含んだ媒体の層)に当たり拡散されるものとしても、該反射層に当たる光の強度は既に減衰したものであり、また、該反射層より拡散した光は再度、透明樹脂板状体の裏面全面に形成された光散乱透過部または光拡散反射部を透過しなければならないから、透明樹脂基板の観察側表面から出射する光は、蛍光管からの出射光に比べて相当程度減衰したものとなることは自明である。
そうすると、上記相違点に係る本願発明の構成を採用するに当たっては、確かに、透明樹脂板状体の裏面が一様に輝くのであるから、その上面に部分的に施された反射層とそれ以外の部分の「輝いて見える差」がより少なくなることが期待されるものの、面状光源装置としての本来の機能を得るには、実際には、透明樹脂板状体の裏面全面に形成された光散乱透過部または光拡散反射部の光透過率や、その上面に部分的に施される反射層(光拡散物質を含んだ媒体の層)の具体的なパターン(形状、配置、本数、比率等)等が、創意工夫されるはずであり、それらが本願発明において特定されなければならない。
言い換えれば、透明樹脂板状体の「裏面全面に」光拡散反射物質を含んだ媒体より拡散性の低い光散乱透過部または光拡散反射部を形成し、さらに「その上面に部分的に」光拡散反射物質を含んだ媒体を施したとの特定をした上記相違点に係る記載では、本願発明の所望の作用効果を奏するための本質的な構成が記載されておらず、相違点に係る構成自体に格別の技術的意味は認められない。
してみれば、相違点に係る本願発明の構成は、透明樹脂板状体の裏面に乱反射部分と低乱反射部分とを備えた引用発明において、単に、乱反射部分と低乱反射部分の設け方を適宜選択した程度のものであって、当業者が適宜為し得た設計事項の範囲内のものというべきである。

なお、強いて、相違点に係る本願発明の構成が技術的意味のあるものとしても、以下に述べるように、相違点に係る構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

引用発明は、前記記載エにあるように、アクリル板Aの乱反射用面8全体に設けた粗面に透明インクを部分的に塗布して、乱反射部分と低乱反射部分とを構成したものであるが、該透明インクについては、「乱反射用の添加剤を透明インクに混入することによって、低乱反射部分10の乱反射量を調節することも可能である。」(引用例の記載オ)との記載がある。
ここで、「乱反射」とか「低乱反射」というのは、そもそも相対的な指標でしかないのであって、「粗面」の乱反射量の設定は多様であり、透明インクに混入する乱反射用添加剤の量により「粗面」と「透明インク塗布部分」との乱反射量の相対的関係を変化させ得ることは自明であるから、透明インクに混入する乱反射用添加剤を多くして(この場合、もはや「透明インク」とは言えないかもしれないが、便宜上「透明インク」という用語を使用する。)、アクリル板A全面の粗面より透明インク塗布部分の乱反射量を大とする程度のことは、当業者が何の困難もなく容易に為し得ることである。
このことは、引用例に、「ガラスビーズなどの乱反射材が添加された淡濃度白色系インクや乳白色系塗料などを、印刷技術により板状体の表面上に塗布することによって乱反射部分9及び低乱反射部分10を形成することも可能である。」(段落【0030】)との記載があり、さらに、粗面と乱反射用の添加剤を混入したインクとの組み合わせで乱反射部分と低乱反射部分とを構成することが、上述したとおり引用例に示唆されていることからみても、当業者が容易に採用し得る設計変更といえる。

以上のとおり、相違点に係る本願発明の構成を想到することは当業者にとって想到容易であり、相違点に係る構成を採用することによって、格別の作用効果が奏されるとも認められない。

6.むすび

本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、他の請求項を検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-29 
結審通知日 2006-10-04 
審決日 2006-10-17 
出願番号 特願平7-240934
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤井 靖子
國田 正久
発明の名称 面状光源装置  
代理人 中村 壽夫  
代理人 小野塚 薫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 萼 経夫  

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