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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1147924
審判番号 不服2003-7874  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-07 
確定日 2006-11-27 
事件の表示 特願2000-249272「オーダーメイドリボンの受注販売システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 63424〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年8月21日の出願であって、平成15年4月4日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月7日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成15年5月7日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成15年3月18日付の手続補正により補正された特許請求の範囲(以下、「補正前の特許請求の範囲」という。)の記載事項を以下のとおりの特許請求の範囲(以下、「補正後の特許請求の範囲」という。)の記載事項に補正することを含むものである。

(補正前の特許請求の範囲)
「【請求項1】 インターネット2に接続され、リボン生地の色、幅、長さなどの形状に関する項目と、リボン生地に表示すべき文字テキストWの入力欄とを少なくとも含むオーダーメニュー要素群A(A1・A2・A3…)・B(B1・B2・B3…)・C(C1・C2・C3…)…を記憶し、かつ、各種書体の文字フォントソフトが装備されたサーバー手段1と;
前記インターネット2を介して同サーバー手段1との接続が可能で、かつ、リボン生地に表示すべき文字テキストWを入力可能な入力手段を備えたコンピュータ端末3・3…とから構成されており、かつ、前記サーバー手段1は、前記オーダーメニュー要素群A・B・C…をアクセスしてきたコンピュータ端末3に送信するオーダーメニュー発信手段を備える一方、
前記コンピュータ端末3には、前記サーバー手段1から送信されたオーダーメニュー要素群A・B・C…のうち、前記リボン形状に関する項目から選択されたものと、フォントの書体、大きさ、色などを指定し、前記文字テキストWの入力欄において前記入力手段により入力されたものとを少なくとも含む確定オーダー要素AX(Xは1・2・3…のうちから選択された少なくとも一つ)・BX・CX…を組み合わせたシミュレーション画像Pを端末モニター3aに形成して表示する画像形成手段を備えると共に、前記確定オーダー要素AX・BX・CX…、および/または前記シミュレーション画像Pは、当該コンピュータ端末3から注文情報データとして前記サーバー手段1に送信する成約データ返信手段を備えており、
前記コンピュータ端末3・3…との交信を通じてサーバー手段1に記憶された注文情報データを読み出すことにより前記シミュレーション画像Pに基づく正確な受注を可能にすることを特徴とするオーダーメイドリボンの受注販売システム。」

(補正後の特許請求の範囲)
「【請求項1】インターネット2に接続され、リボン生地の色、幅、長さなどの形状に関する項目と、リボン生地に表示すべき文字テキストWの入力欄とを少なくとも含むオーダーメニュー要素群A(A1・A2・A3…)・B(B1・B2・B3…)・C(C1・C2・C3…)…を記憶し、かつ、各種書体の文字フォントソフトが装備されたサーバー手段1と;
前記インターネット2を介して同サーバー手段1との接続が可能で、かつ、リボン生地に表示すべき文字テキストWを入力可能な入力手段を備えたコンピュータ端末3・3…とから構成されており、かつ、前記サーバー手段1は、前記オーダーメニュー要素群A・B・C…をアクセスしてきたコンピュータ端末3に送信するオーダーメニュー発信手段を備える一方、
前記コンピュータ端末3には、前記サーバー手段1から送信されたオーダーメニュー要素群A・B・C…のうち、前記リボン形状に関する項目から選択されたものと、フォントの書体、大きさ、色などを指定し、前記文字テキストWの入力欄において前記入力手段により入力されたものとを少なくとも含む確定オーダー要素AX(Xは1・2・3…のうちから選択された少なくとも一つ)・BX・CX…を組み合わせたシミュレーション画像Pを端末モニター3aに形成して表示する画像形成手段を備えると共に、前記確定オーダー要素AX・BX・CX…、および/または前記シミュレーション画像Pは、当該コンピュータ端末3から注文情報データとして前記サーバー手段1に送信する成約データ返信手段を備えており、
前記コンピュータ端末3・3…との交信を通じてサーバー手段1に記憶された注文情報データを読み出すことができ、かつ、前記成約データ返信手段により、受信した注文情報データの整合性を再確認するために当該消費者のコンピュータ端末3へ受領確認情報データが自動的に返信されて注文の受付が完了することにより、前記シミュレーション画像Pに基づく正確な受注を可能にすると共に、
当該注文情報データに基づくテキスト文字Wをリボン生地に表示処理する生産工程により得られるリボン製品が消費者に販売できることを特徴とするオーダーメイドリボンの受注販売システム。」

(2)補正の適否
補正後の請求項1は、「シミュレーション画像Pに基づく正確な受注を可能にする」との構成要件について、「…ができ、かつ、前記成約データ返信手段により、受信した注文情報データの整合性を再確認するために当該消費者のコンピュータ端末3へ受領確認情報データが自動的に返信されて注文の受付が完了することにより」との限定を付加し、「オーダーメイドリボンの受注販売システム」の構成要件について、「当該注文情報データに基づくテキスト文字Wをリボン生地に表示処理する生産工程により得られるリボン製品が消費者に販売できること」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)独立特許要件
(3-1)引用例
原審の拒絶の理由に引用された特開平10-207940号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(a)「【0013】図1は本発明が適用されるネットワークショッピングシステムの構成を示すブロック図、図2は図1に示すシステムを用いたショッピングの手順を説明するフローチャートである。図1において、1は顧客側装置、2はアクセス装置、3は公衆回線網、4はサービスプロバイダ、5はバーチャルショップ、6は回線接続装置、7は顧客端末、8は表示装置、9は端末本体部、10は外部記憶装置、11は入力装置、12は通信回線である。
【0014】図1に示す本発明が適用されるネットワークショッピングシステムは、インターネット等の公衆回線網3と、この回線網に接続されているアクセス装置2と、購入者側装置1と、サービスプロバイダ4と、複数のバーチャルショップ5と、アクセス装置2と購入者側装置1とを接続する電話回線等の通信回線12とにより構成されている。なお、図1には、購入者側装置1、アクセス装置2、サービスプロバイダ4をそれぞれ1台のみ示しているが、これらは、実際にはさらに多数が公衆通信網3に接続されていることはいうまでもない。また、図1には、インターネットとして代表される1つの公衆通信網3のみを示しているが、公衆通信網3と購入者装置1との間には多数のネットワークが介在する場合もある。
【0015】サービスプロバイダ4は、商品提供者によるバーチャルショップ5を持ち、利用者である顧客からのアクセスにより、バーチャルショップ5に備えられている各種の商品情報を顧客に提供するサービスを行っている。また、アクセス装置2は、利用者である購入者側装置1と公衆回線網3を介したサービスプロバイダー4との間の接続サービスを行うもので、公衆回線網接続プロバイダ、双方向CATV放送局等であってよい。また、通信回線12としては、電話回線、双方向CATV回線、衛星回線等であってよい。
【0016】購入者側装置1は、モデム、LANアダプタ、ディジタル公衆電話、モデム内蔵携帯電話等の回線接続装置6と、公衆回線網対応のPC(パソコン)、TV、PDA(携帯端末)等による顧客端末7とにより構成される。顧客端末7は、例えば、表示装置8、端末本体部9、外部記憶装置10、入力装置11を備えて構成されればよく、また、入力装置11は、キーボード、マウス、コントローラ、リモコン、ペン、ジョイスティック等、あるいは、これらの組み合わせにより構成されていればよい。さらに、表示装置8は、テレビ受像機等であってもよい。
【0017】次に、前述のように構成されるシステムにおいて、顧客がネットワークショッピングを行おうとする場合のショッピング手順を図1に示すフローを参照して説明する。
【0018】(1)ネットワークショッピングを行おうとする顧客は、顧客端末7を使用して、回線接続装置6、通信回線12、アクセス装置2、公衆通信網3、サービスプロバイダ4を介して、サイトとしてのバーチャルショップ5にアクセスする。このアクセスの処理は、公知のインターネットに対するアクセスの場合と同様に行われる(ステップ21)。」(3頁右欄38行?4頁左欄42行)
(b)「【0024】図3は本発明の第1の実施形態によるメッセージカードをデザインして作成するシミュレーションの方法を説明するフローチャート、図4?図7は図3の各ステップにおける表示画面の例を示す図である。この本発明の第1の実施形態は、ギフト用の商品を選択し、その商品に添えるメッセージカードをデザインするシミュレーションを行うものである。
【0025】(1)図2により説明したステップ22でギフト用の商品を探索選択してステップ23に移ると、図示していないが、メッセージカードを添えるか否かの問合せが表示画面上に表示される。顧客が、メッセージカードの添付が不要であると判断して、そのまま、商品を定形のラッピングにより発送してもらう場合、顧客は、入力装置から終了を指示し、あるいは、図示していないが表示画面上に表示される終了ボタンを選択することにより、図2で説明した注文、決済の処理に移ることができる(ステップ301)。
【0026】(2)ステップ301でメッセージカードを添えることを選択決定してその指示が行われると、初期画面として、図4に示すように、カード作成領域50を中心として、その周辺に、“手書き指示”ボタン41、“キーボード入力指示”ボタン42、“書き直し指示”ボタン43、“キャンセル”ボタン44、“終了”ボタン45、“消しゴム”ボタン46、“ペンの色選択”のパレット47、“カード選択”のボタン48、“ペンの太さ選択”のパレット49、ペンの種類選択領域51が表示される。このような初期画面では、カード作成領域50には何も表示されず白紙の状態である。顧客は、この状態でカードの種類を切り替えたい場合、“カード選択”のボタン48を選択指示する(ステップ302、303)。
【0027】(3)“カード選択”のボタン48が選択指示されると、図5(a)に示すように、表示画面の中央部に表紙パターン表示領域52が作られ、カードの表紙のパターン53が複数表示される。この表紙のパターンは、例えば、誕生日、結婚記念日、卒業のお祝いのための絵柄等を予めデザインして用意したものであってよい。顧客が、表示された複数のカードの1枚を選択指示すると、図4のカード作成領域50の絵柄が選択されたものに変わる(ステップ304?306)。
【0028】(4)前述したカードの切り替えを行った後、あるいは、ステップ302でカードの切り替えを行うことなく、顧客は、手書きによりカードを作成するか、キーボード入力によりカードを作成するかを選択する。但し、ここでは何の操作も必要なく、ステップ308、313以降の操作を行えばよい(ステップ307)。
(中略)
【0030】(6)また、キーボード入力によりカードを作成しようとする場合、顧客は、“キーボード入力指示”ボタン42を選択する。これにより、表示画面は、図6に示すように、“ペンの太さ選択”のパレット49に代わり、文字の大きさ選択のパレット62が、ペンの種類選択領域51に代わり、文字フォント選択領域63が表示され、また、“定型文選択”ボタン61が表示された画面に変化する(ステップ313)。
【0031】(7)顧客は、この状態で、表示画面上の文字フォント選択領域63から文字フォントの1つを選択し、文字の大きさ選択のパレット62から文字の大きさを選択し、さらに、“ペンの色選択”のパレット47から所望色を選択する(ステップ314?316)。」(4頁右欄25行?5頁左欄47行)
(c)「【0035】(11)ステップ312、320または323までの処理により、メッセージカードが作成され完成するが、その後修正の必要があるか否かをチェックし、修正の必要があれば、“消しゴム”ボタン46をマウス等により指示し、メッセージの消したい場所に消しゴムを移動させてその部分を消し、また、書き直しを行いたい場合、“書き直し指示”ボタン43選択する(ステップ324?327)。
【0036】(12)前述で修正、書き直しを行う場合、まだ出来上がりではないので、前述した処理に戻って再度同様な処理を行う。顧客は、自分で納得の行くまで、前述の処理を繰り返して、ギフト用の商品に添えるメッセージカードをデザインするシミュレーションを行って、出来上がり状態を確認し、修正、書き直しの必要がなくなった場合、“終了”ボタン45を選択する。これにより、メッセージカードの内容が確定し、図2で説明した注文、決済の処理に移ることができる(ステップ328、329)。」(5頁右欄17?34行)

(3-2)引用例に記載された発明
(1)上記摘記事項(a)の記載によれば、バーチャルショップを提供しているサービスプロバイダと顧客端末とは、インターネットで接続され、バーチャルショップに備えられている各種の商品情報を顧客に提供するのだから、「バーチャルショップ」には「コンピュータ」が備わっていることが明らかである。
(2)上記摘記事項(b)の記載によれば、顧客端末に表示される「“カード選択”のボタン」、「文字フォント選択領域」、「文字の大きさ選択のパレット」、「“ペンの色選択”のパレット」等を有する画面は、顧客が顧客端末を使用して「バーチャルショップ」にアクセス中に送信されてくるのだから、「バーチャルショップのコンピュータ」は、「カード選択」、「文字フォント選択」、「文字の大きさ選択」、「ペンの色選択」という「オーダーメニュー要素群」を記憶しており、また、アクセスしてきた顧客端末に当該「オーダーメニュー要素群」を送信する「オーダーメニュー発信手段」を備えていることが明らかである。
(3)上記摘記事項(b)の記載によれば、「バーチャルショップのコンピュータ」から送信されてくる画面には、「文字フォント選択領域」があることから、「バーチャルショップのコンピュータ」には、「各種書体の文字フォントソフト」が装備されていることが明らかである。
(4)そして、上記摘記事項(c)の記載によれば、顧客は、メッセージカードの修正、書き直しを行いながらメッセージカードをデザインしシミュレーションをおこなって、出来上がり状態を確認するのだから、「顧客端末」には、オーダーメニュー要素群のうち、顧客が選択・入力したメッセージカードの種類に関する項目から選択されたものと、フォントの書体、大きさ、色などを選択し、カード作成領域においてキーボードにより入力されたものとを少なくとも含む選択されたオーダー要素を組み合わせたシミュレーション画像を顧客端末の表示装置に形成して表示する画像形成手段を備えていることが明らかである。
(5)また、上記摘記事項(c)の記載によれば、顧客は、メッセージカードの内容を確定し、注文、決済の処理に移るのだから、「顧客端末」は、選択されたオーダー要素を、注文情報データとしてバーチャルショップのコンピュータに送信する注文情報データ送信手段を備えていることが明らかである。
(6)上記摘記事項(a)?(c)の記載によれば、「バーチャルショップ」は、「顧客端末」から送信された注文情報データによりメッセージカードに表示処理を行うのだから、「バーチャルショップ」は、顧客端末との交信を通じてバーチャルショップのコンピュータに記憶された注文情報データを読み出すことができ、シミュレーション画像に基づく正確な受注が可能になると共に、当該注文情報データに基づく文字をカードに表示処理する生産工程によりメッセージカードを得ることができるようになることは、明らかである。

そうすると、引用例には、
「インターネットに接続され、カードの種類に関する項目と、カードに表示すべき文字を入力するカード作成領域とを少なくとも含むオーダーメニュー要素群を記憶し、かつ、各種書体の文字フォントソフトが装備されたバーチャルショップのコンピュータと;
前記インターネットを介して同バーチャルショップのコンピュータとの接続が可能で、かつ、カードに表示すべき文字を入力可能なキーボードを備えた顧客端末とから構成されており、かつ、前記バーチャルショップのコンピュータは、前記オーダーメニュー要素群をアクセスしてきた顧客端末に送信するオーダーメニュー発信手段を備える一方、
前記顧客端末には、前記バーチャルショップのコンピュータから送信されたオーダーメニュー要素群のうち、前記カードの種類に関する項目から選択されたものと、フォントの書体、大きさ、色などを選択し、前記カード作成領域において前記キーボードにより入力されたものとを少なくとも含む選択されたオーダー要素を組み合わせたシミュレーション画像を顧客端末の表示装置に形成して表示する画像形成手段を備えると共に、前記選択されたオーダー要素は、当該顧客端末から注文情報データとして前記バーチャルショップのコンピュータに送信する注文情報データ送信手段を備えており、
前記顧客端末との交信を通じてバーチャルショップのコンピュータに記憶された注文情報データを読み出すことができ、前記シミュレーション画像に基づく正確な受注を可能にすると共に、
当該注文情報データに基づく文字をカードに表示処理する生産工程によりメッセージカードを得ることができることを特徴とするオーダーメイドメッセージカードの受注システム。」の発明が記載されているといえる。

(3-3)対比・判断
本件補正発明(以下、「前者」という。)と引用例に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、
(1)後者の「カード」と前者の「リボン生地」とは、「基材」という概念で共通するから、後者の「カードの種類」と前者の「リボン生地の色、幅、長さなど形状」とは、「基材の種類」という概念で共通する。
(2)後者の「文字」は、前者の「文字テキスト」に相当し、以下同様に、「文字を入力するカード作成領域」は「文字テキストの入力欄」に、「バーチャルショップのコンピュータ」は「サーバー手段」に、「顧客端末」は「コンピュータ端末」に、「キーボード」は「入力手段」に、「選択されたオーダー要素」は「確定オーダー要素」に、「顧客端末の表示装置」は「端末モニター」に、「注文情報データ送信手段」は「成約データ返信手段」に、それぞれ相当する。
(3)また、後者の「メッセージカード」と前者の「リボン」とは、「製品」という概念で共通し、また、後者の「受注」と前者の「受注販売」とは、「受注」という概念で共通するから、後者の「オーダーメイドメッセージカードの受注システム」と前者の「オーダーメイドリボンの受注販売システム」とは、「オーダーメイド製品の受注システム」という概念で共通する。

そうすると、両者は、
「インターネットに接続され、基材の種類に関する項目と、基材に表示すべき文字テキストの入力欄とを少なくとも含むオーダーメニュー要素群を記憶し、かつ、各種書体の文字フォントソフトが装備されたサーバー手段と;
前記インターネットを介して同サーバー手段との接続が可能で、かつ、基材に表示すべき文字テキストを入力可能な入力手段を備えたコンピュータ端末とから構成されており、かつ、前記サーバー手段は、前記オーダーメニュー要素群をアクセスしてきたコンピュータ端末に送信するオーダーメニュー発信手段を備える一方、
前記コンピュータ端末には、前記サーバー手段から送信されたオーダーメニュー要素群のうち、前記基材の種類に関する項目から選択されたものと、フォントの書体、大きさ、色などを指定し、前記文字テキストの入力欄において前記入力手段により入力されたものとを少なくとも含む確定オーダー要素を組み合わせたシミュレーション画像を端末モニターに形成して表示する画像形成手段を備えると共に、前記確定オーダー要素は、当該コンピュータ端末から注文情報データとして前記サーバー手段に送信する成約データ返信手段を備えており、
前記コンピュータ端末との交信を通じてサーバー手段に記憶された注文情報データを読み出すことができることにより、前記シミュレーション画像に基づく正確な受注を可能にすると共に、
当該注文情報データに基づくテキスト文字を基材に表示処理する生産工程により製品を得ることができることを特徴とするオーダーメイド製品の受注システム。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
前者では、オーダーメイド製品が「リボン」であるのに対して、後者では、オーダーメイド製品が「メッセージカード」である点。
[相違点2]
前者では、オーダーメイド製品が「リボン」であるため、基材の種類に関する項目は、「リボン生地の色、幅、長さなどの形状」であるのに対して、後者では、オーダーメイド製品が「リボン」でないため、そうでない点。
[相違点3]
前者では、成約データ返信手段により、受信した注文情報データの整合性を再確認するために当該消費者のコンピュータ端末へ受領確認情報データが自動的に返信されて注文の受付が完了するものであるのに対して、後者では、この点が不明な点。
[相違点4]
前者は、製品を消費者に販売できるようにした「受注販売システム」であるのに対して、後者は、「受注システム」であり、製品は商品に添えられるものであり、製品自体を消費者に販売していない点。

上記相違点について、検討する。
[相違点1]について
製品としてリボンは周知であるので、後者においてオーダーメイド製品を「リボン」とすることは、当業者であれば容易に想到できたものである。
[相違点2]について
リボンは、「リボン生地の色、幅、長さなどの形状」を選択することによりデザインされることは、周知の事項であるから、オーダーメイドされる製品を「リボン」とすれば、この点は、直ちに導出されるものである。
そして、上記[相違点1]について言及したようにオーダーメイド製品を「リボン」とすることが容易であれば、リボンをオーダーメイドするためのデザインとして、リボン生地の色、幅、長さなどの形状に関する項目を設けるようにすることも、また、容易である。
[相違点3]について
消費者がインターネットを介して製品販売業者に製品を注文する場合に、当該消費者のコンピュータ端末に受領確認情報データを自動的に返信させて注文の受付を完了することは、消費者が注文を確認するために普通に行われていることであるから、上記相違点3で挙げた前者のような構成を得ることは、当業者であれば容易になし得たことである。
[相違点4]について
消費者に対して、製品を販売することも、サービスとして提供することも普通に行われているところであるから、消費者からオーダーメイドされた製品を販売できるようにすることは、当業者が適宜なし得ることであるので、後者のシステムを上記相違点4で挙げたように「受注販売システム」とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

また、本件補正発明の効果についてみても、上記引用例に記載された発明、及び周知の事項から予測される範囲のものにすぎない。

したがって、本件補正発明は、上記引用例に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3-4)むすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成15年5月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年3月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「インターネット2に接続され、リボン生地の色、幅、長さなどの形状に関する項目と、リボン生地に表示すべき文字テキストWの入力欄とを少なくとも含むオーダーメニュー要素群A(A1・A2・A3…)・B(B1・B2・B3…)・C(C1・C2・C3…)…を記憶し、かつ、各種書体の文字フォントソフトが装備されたサーバー手段1と;
前記インターネット2を介して同サーバー手段1との接続が可能で、かつ、リボン生地に表示すべき文字テキストWを入力可能な入力手段を備えたコンピュータ端末3・3…とから構成されており、かつ、前記サーバー手段1は、前記オーダーメニュー要素群A・B・C…をアクセスしてきたコンピュータ端末3に送信するオーダーメニュー発信手段を備える一方、
前記コンピュータ端末3には、前記サーバー手段1から送信されたオーダーメニュー要素群A・B・C…のうち、前記リボン形状に関する項目から選択されたものと、フォントの書体、大きさ、色などを指定し、前記文字テキストWの入力欄において前記入力手段により入力されたものとを少なくとも含む確定オーダー要素AX(Xは1・2・3…のうちから選択された少なくとも一つ)・BX・CX…を組み合わせたシミュレーション画像Pを端末モニター3aに形成して表示する画像形成手段を備えると共に、前記確定オーダー要素AX・BX・CX…、および/または前記シミュレーション画像Pは、当該コンピュータ端末3から注文情報データとして前記サーバー手段1に送信する成約データ返信手段を備えており、
前記コンピュータ端末3・3…との交信を通じてサーバー手段1に記憶された注文情報データを読み出すことにより前記シミュレーション画像Pに基づく正確な受注を可能にすることを特徴とするオーダーメイドリボンの受注販売システム。」

3-1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「(3-1)」に記載したとおりである。

3-2.対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本件補正発明の「シミュレーション画像Pに基づく正確な受注を可能にする」との構成要件から、「…ができ、かつ、前記成約データ返信手段により、受信した注文情報データの整合性を再確認するために当該消費者のコンピュータ端末3へ受領確認情報データが自動的に返信されて注文の受付が完了することにより」との限定事項を省き、「オーダーメイドリボンの受注販売システム」の構成要件から、「当該注文情報データに基づくテキスト文字Wをリボン生地に表示処理する生産工程により得られるリボン製品が消費者に販売できること」との限定事項を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「(3-3)」に記載したとおり、上記引用例に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、上記引用例に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3-3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明、及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-02 
結審通知日 2006-10-04 
審決日 2006-10-17 
出願番号 特願2000-249272(P2000-249272)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 久保田 健
森次 顕
発明の名称 オーダーメイドリボンの受注販売システム  
代理人 戸川 公二  

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