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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1147939
審判番号 不服2004-16191  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-05 
確定日 2006-11-27 
事件の表示 平成 9年特許願第297043号「画像記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月21日出願公開、特開平11-136545〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年10月29日の出願であって、平成16年6月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において、平成18年8月3日付けで拒絶理由(最初)が通知され、これに対し、平成18年9月8日付けで意見書のみが提出されたものである。


2.本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明は、平成16年9月6日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。


「画像を撮影し画像データを得るための撮像手段と、
記録モードと再生モードとを切り換えるモード切り換え手段と、
前記モード切り換え手段により記録モードに切り換えられた場合には撮影しようとする画像を表示し、前記モード切り換え手段により再生モードに切り換えられた場合には撮影した画像を表示すると共に、装置本体に対して回動及び回転が可能な機構を有する画像表示手段と、
前記画像表示手段が装置本体に対して閉じた状態であることを検出する液晶開閉検出スイッチと、
前記画像表示手段の回転を検出する液晶回転検出スイッチと、を備え、
前記液晶開閉検出スイッチと前記液晶回転検出スイッチとにより、前記画像表示手段が装置本体に対して閉じており且つ装置本体に対して外側を向いた状態であることを検出した場合において、前記モード切り換え手段により記録モードに切り換えられた場合には、前記画像表示手段は画像の表示を行わず、前記モード切り換え手段により再生モードに切り換えられた場合には、前記画像表示手段は画像の表示を行うようにしたことを特徴とする画像記録装置。」


(2)引用例
当審の拒絶の理由に引用された特開平8-275097号公報(平成8年10月18日出願公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに、次のとおりの記載がある。

「【0003】
【従来の技術】従来、この種のカメラ一体型ビデオテープレコーダにおいては、撮影現場等に携帯して被写体の画像を記録することができ、携帯者はビユーフアインダを覗き又は液晶パネルを見て撮影画像を確認する。また一旦記録した撮影画像についてもビユーフアインダ又は液晶パネルによつて確認することができる。

【0015】本発明の実施例によるカメラ一体型ビデオテープレコーダの概略構成を図1に示す。このカメラ一体型ビデオテープレコーダ10では、ビユーフアインダ11又は本体側面に開閉自在に取り付けられた表示パネルとしての液晶パネル12によつて記録中の映像信号及び記録済みの映像信号を確認することができる。このカメラ一体型VTR10においては、液晶パネル12の開閉状態及び回転角(以下反転状態と言う)に応じてビユーフアインダ11、液晶パネル12、音声出力部としてのスピーカ(図示せず)の電源及びミラーモードの切換えを自動的に制御している。ここでこの実施例の場合、液晶パネル12の回転角は 180°に設定されている。

【0019】スイツチ16は電源モードとしてカメラモード又はVTRモードを選択するためのスライド式スイツチであり、カメラ一体型VTR10本体の表面に設けられている。このスイツチ16をVTRモード又はカメラモードに設定すると、マイコン15にVTR駆動信号S1 又はカメラ駆動信号S2 が送出される。マイコン15は入力されるVTR駆動信号S1 又はカメラ駆動信号S2 に基づいてカメラ一体型VTR10のカメラ機能又はVTR機能を作動させる。
【0020】スイツチ17は液晶パネル12の開閉状態によつてオンオフがメカニカル(機械的)に切り換わるスイツチであり、液晶パネル12が開いている状態のときオンし、閉じている状態のときオフする。またスイツチ18は液晶パネル12の反転状態によつてオンオフがメカニカルに切り換わるスイツチであり、液晶パネル12が反転しているときオンし、反転していないときオフする。

【0025】液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合(図2(D))、スイツチ17はオフ、スイツチ18はオンし、マイコン15にカメラ駆動信号S2 及びパネル反転信号S4 が入力される。これにより、マイコン15はカメラ機能を作動させると共に、ビユーフアインダ11にビユーフアインダ駆動信号S6 を出力してビユーフアインダ11の電源をオンし、液晶パネル12にミラーモード切換え信号S5 を出力して液晶パネル12の電源及びミラーモードをオンする。従つて図4に示すように、液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合、ビユーフアインダ11、液晶パネル12の電源及びミラーモードがオンし、スピーカ14の電源はオフする。
【0026】次にスイツチ16をVTRモードに設定した場合について説明する。液晶パネル12が開いた状態でかつ反転していない場合(図2(B))、スイツチ17はオン、スイツチ18はオフし、マイコン15にVTR駆動信号S1 及びパネル駆動信号S3 が入力される。これにより、マイコン15はVTR機能を作動させると共に、液晶パネル12にパネル駆動信号S3 を出力して液晶パネル12の電源をオンし、スピーカ14に音声出力信号S7 を出力してスピーカ14の電源をオンする。従つて図4に示すように、液晶パネル12が開いた状態でかつ反転していない場合、液晶パネル12及びスピーカ14の電源がオンし、ビユーフアインダ11の電源及びミラーモードはオフする。

【0030】液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合(図2(D))、スイツチ17はオフ、スイツチ18はオンし、マイコン15にVTR駆動信号S1 及びパネル反転信号S4 が入力される。これにより、マイコン15はVTR機能を作動させると共に、ビユーフアインダ11にビユーフアインダ駆動信号S6 を出力してビユーフアインダ11の電源をオンし、液晶パネル12にパネル駆動信号S3 を出力して液晶パネル12の電源をオンし、スピーカ18に音声制御信号S7を出力してスピーカ14の電源をオンする。従つて図4に示すように、液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合、ビユーフアインダ11、液晶パネル12及びスピーカ14の電源はオンし、ミラーモードはオフする。

【0039】以上の構成によれば、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードの切換えを液晶パネル12の開閉状態及び反転状態に応じて切り換えることができるので、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードの切換えを自動的に制御でき、かくしてカメラ一体型VTR10の使い勝手を格段的に向上させることができる。また上述の構成によれば、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードの切換えを自動的に制御できるので、電源の消し忘れを防ぐことができ、電力の無駄な消費を回避することができる。

【0041】また上述の実施例においては、液晶パネル12の開閉状態及び反転状態によつて、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードのオンオフを図4に示すように設定した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードのオンオフの状態を液晶パネル12の開閉状態及び反転状態によつて他の状態に設定するようにしてもよい。」



(3)対比

本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。

(ア)引用例の段落【0003】の記載によれば、引用発明の「カメラ一体型ビデオテープレコーダ」は、被写体の画像を記録することができるものであるから、カメラ一体型ビデオテープレコーダのカメラ部に、本願発明の「画像を撮影し画像データを得るための撮像手段」を具えているのは明らかである。

(イ)引用例の段落【0019】の記載によれば、「スイツチ16」は「電源モードとしてカメラモード又はVTRモードを選択するためのスライド式スイツチ」である。
カメラモードは被写体画像を記録するためのモードであるから、本願発明の「記録モード」に相当し、VTRモードは撮像画像を再生して確認するためのモードであるから、本願発明の「再生モード」に相当している。
よって、「スイツチ16」は、本願発明の「記録モードと再生モードとを切り換えるモード切り換え手段」に相当する。

(ウ)引用例の段落【0015】には、「このカメラ一体型ビデオテープレコーダ10では、ビユーフアインダ11又は本体側面に開閉自在に取り付けられた表示パネルとしての液晶パネル12によつて記録中の映像信号及び記録済みの映像信号を確認することができる。」と記載されており、引用例の「液晶パネル12」「記録中の映像信号」「記録済みの映像信号」は、本願発明「画像表示手段」「撮影しようとする画像」「撮影した画像」に各々相当している。
よって、本願発明にいう「前記モード切り換え手段により記録モードに切り換えられた場合には撮影しようとする画像を表示し、前記モード切り換え手段により再生モードに切り換えられた場合には撮影した画像を表示する(画像表示手段)」の存在が認められる。

(エ)引用例の段落【0015】によれば、「このカメラ一体型VTR10においては、液晶パネル12の開閉状態及び回転角(以下反転状態と言う)に応じてビユーフアインダ11、液晶パネル12、音声出力部としてのスピーカ(図示せず)の電源及びミラーモードの切換えを自動的に制御している。」と記載されており、引用例の「開閉」「回転(反転)」は、本願発明「回動」「回転」に各々相当しているから、本願発明にいう「装置本体に対して回動及び回転が可能な機構を有する画像表示手段」の存在が認められる。

(オ)引用例の段落【0020】によれば、「スイツチ17は液晶パネル12の開閉状態によつてオンオフがメカニカル(機械的)に切り換わるスイツチであり、液晶パネル12が開いている状態のときオンし、閉じている状態のときオフする。」と記載されており、本願発明にいう「前記画像表示手段が装置本体に対して閉じた状態であることを検出する液晶開閉検出スイッチ」の存在が認められる。

(カ)引用例の段落【0020】によれば、「またスイツチ18は液晶パネル12の反転状態によつてオンオフがメカニカルに切り換わるスイツチであり、液晶パネル12が反転しているときオンし、反転していないときオフする。」と記載されており、本願発明にいう「前記画像表示手段の回転を検出する液晶回転検出スイッチ」の存在が認められる。

(キ)引用例の段落【0026】【0030】によれば、「次にスイツチ16をVTRモードに設定した場合について説明する。」「液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合(図2(D))、スイツチ17はオフ、スイツチ18はオンし、マイコン15にVTR駆動信号S1 及びパネル反転信号S4 が入力される。これにより、マイコン15はVTR機能を作動させると共に、ビユーフアインダ11にビユーフアインダ駆動信号S6 を出力してビユーフアインダ11の電源をオンし、液晶パネル12にパネル駆動信号S3 を出力して液晶パネル12の電源をオンし、」と記載されており、液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合とは、本願発明にいう「前記画像表示手段が装置本体に対して閉じており且つ装置本体に対して外側を向いた状態」に相当することは、図2(D)の記載からも明らかである。また、「液晶パネル12の電源をオン」とは、画像表示手段で画像の表示を行うようにしたことである。
よって、本願発明にいう「前記液晶開閉検出スイッチと前記液晶回転検出スイッチとにより、前記画像表示手段が装置本体に対して閉じており且つ装置本体に対して外側を向いた状態であることを検出した場合において、前記モード切り換え手段により再生モードに切り換えられた場合には、前記画像表示手段は画像の表示を行うようにしたこと」の存在が認められる。

もっとも、引用例の段落【0025】によれば、「従つて図4に示すように、液晶パネル12が閉じた状態でかつ反転している場合、ビユーフアインダ11、液晶パネル12の電源及びミラーモードがオンし、」と記載されているから、引用発明では、画像表示手段が装置本体に対して閉じており且つ装置本体に対して外側を向いた状態であることを検出した場合において、モード切り換え手段により記録モードに切り換えられた場合にも、画像表示手段は画像の表示を行っている。


そうすると、両者は、

「画像を撮影し画像データを得るための撮像手段と、
記録モードと再生モードとを切り換えるモード切り換え手段と、
前記モード切り換え手段により記録モードに切り換えられた場合には撮影しようとする画像を表示し、前記モード切り換え手段により再生モードに切り換えられた場合には撮影した画像を表示すると共に、装置本体に対して回動及び回転が可能な機構を有する画像表示手段と、
前記画像表示手段が装置本体に対して閉じた状態であることを検出する液晶開閉検出スイッチと、
前記画像表示手段の回転を検出する液晶回転検出スイッチと、を備え、
前記液晶開閉検出スイッチと前記液晶回転検出スイッチとにより、前記画像表示手段が装置本体に対して閉じており且つ装置本体に対して外側を向いた状態であることを検出した場合において、前記モード切り換え手段により再生モードに切り換えられた場合には、前記画像表示手段は画像の表示を行うようにしたことを特徴とする画像記録装置。」

で一致し、

液晶開閉検出スイッチと液晶回転検出スイッチとにより、画像表示手段が装置本体に対して閉じており且つ装置本体に対して外側を向いた状態であることを検出した場合において、モード切り換え手段により記録モードに切り換えられた場合に、
本願発明では、画像表示手段は画像の表示を行わないのに対し、引用発明では、画像表示手段は画像の表示を行っている点で相違する。


(4)判断

上記の相違点について判断する。

引用例の段落【0041】には、
「また上述の実施例においては、液晶パネル12の開閉状態及び反転状態によつて、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードのオンオフを図4に示すように設定した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードのオンオフの状態を液晶パネル12の開閉状態及び反転状態によつて他の状態に設定するようにしてもよい。」
と記載されている。

さらに、引用例の段落【0039】には、
「また上述の構成によれば、ビユーフアインダ11、液晶パネル12、スピーカ14の電源及びミラーモードの切換えを自動的に制御できるので、電源の消し忘れを防ぐことができ、電力の無駄な消費を回避することができる。」と記載されている。

してみれば、引用発明において、記録モード時に、画像表示手段(液晶パネル12)を表示すれば、ビユーフアインダ11と、画像表示手段(液晶パネル12)の両方を用いて撮影が可能になるため、撮影上の利便性が向上するところ、撮影の利便性よりも、電力の無駄な消費を回避することを重視して、記録モード時に、画像表示手段を外側に向いて閉じた状態でも、画像表示手段への表示を行わないようにすることは、当業者であれば格別困難であるとすることはできず、当業者が必要に応じて容易になしえたことである。

なお、請求人は、平成18年9月8日付け意見書の「(3)引用例との対比」において、
「本願発明は、この従来気付いていなかった構成要件に着目したものであり、この構成要件により「電池の消耗を抑える」という視点から細かな電源制御が行えるという新たな作用効果を生じたものであり、引用例1乃至引用例3から「格別困難なことではない」あるいは「当業者が格別の推考力を要するものではない」と判断されるべきものではないと思料致します。」
と主張しているが、「電池の消耗を抑える」という視点から細かな電源制御が行えるという作用効果は、引用発明と同様の作用効果であるから、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。



(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-28 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願平9-297043
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 章裕益戸 宏  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 堀井 啓明
松永 隆志
発明の名称 画像記録装置  

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