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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09J
管理番号 1148040
審判番号 不服2005-13522  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-14 
確定日 2006-11-29 
事件の表示 平成 8年特許願第302840号「粘着テープの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月26日出願公開、特開平10-140107〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年11月14日の出願であって、平成17年6月8日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年7月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月5日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年8月5日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年8月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「テープ基材の片面に粘着剤層を設けてなる粘着テープの製造方法であって、
前記テープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面に、付与量が0.3?30g/m2の範囲となるように揮散性物質を付与する工程と、
前記揮散性物質が付与された面に粘着剤を塗工する工程と、
前記揮散性物質をガス化することにより粘着剤層中に無数の独立気泡を含有させる工程とを備えることを特徴とする粘着テープの製造方法。」
と補正された。
上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記テープ基材の片面に」を「前記テープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面に」とさらに限定を付し、同じく「揮散性物質」について、「付与量が0.3?30g/m2の範囲となるように」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-203687号公報(以下、「引用例1」という。)には、
「実施例1
クラフト紙の一面に、メルトインデックス(以下MIという)が8.0dg/min、密度0.919g/cm3、Vicat軟化点87℃の低密度ポリエチレン(以下LDPEという)を通常行われている押出条件で皮膜厚が15μmの厚さにラミネートしたテープ基材を作製した。この基材に、沸点80℃のエチルメチルケトン(以下MEKという)を約10重量%含有させた。
一方、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体100重量部(以下部という)、石油系樹脂100部、及び老化防止剤1部からなる接着組成物を得る。
該組成物を前記基材の皮膜層とは反対の面に糊厚30μmになるように溶融塗工した。
次にこのテープを乾燥機中で85℃で10分間加熱して、接着層中に無数の微小独立気泡を有する接着テープを得た。」(第2頁左下欄第17行?同頁右下欄第14行)との記載が認められる。
同実施例では、クラフト紙に低密度ポリエチレンをラミネートしたテープ基材にエチルメチルケトンを含有させており、エチルメチルケトンは、クラフト紙の低密度ポリエチレンをラミネート層が形成された面とは反対の面、すなわち、接着剤を塗工する面に含有されると解される。また、エチルメチルケトンの沸点は80℃であり、得られたテープを85℃で10分間加熱して、接着層中に無数の独立気泡を有する接着テープを得ていることから、エチルメチルケトンをガス化することにより接着剤層中に無数の独立気泡を含有させたことになり、引用例1には、「テープ基材の片面に接着剤層を設けてなる接着テープの製造方法であって、前記テープ基材にエチルメチルケトンを含有させる工程と、前記エチルメチルケトンを含有させた面に接着剤を塗工する工程と、前記エチルメチルケトンをガス化することにより接着剤層中に無数の独立気泡を含有させる工程とを備えることを特徴とする接着テープの製造方法。」(以下、「引用例1発明」という。)が開示されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「接着剤」及び「接着テープ」は、それぞれ、本願補正発明の「粘着剤」及び「粘着テープ」に相当し、引用例1発明において、「エチルメチルケトン」は、ガス化して粘着剤層に独立気泡を形成するものであるから、本願補正発明の「揮散性物質」に相当する。
したがって、両者は「テープ基材の片面に接着剤層を設けてなる粘着テープの製造方法であって、前記テープ基材に揮散性物質を含有させる工程と、前記揮散性物質を含有させた面に粘着剤を塗工する工程と、前記揮散性物質をガス化することにより粘着剤層中に無数の独立気泡を含有させる工程とを備えることを特徴とする接着テープの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願補正発明においては、テープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面に揮散性物質を付与するのに対し、引用例1発明においては、テープ基材に揮散性物質を含有させることは記載されているものの、どのようにして揮散性物質をテープ基材の粘着剤層が設けられる側に含有させるのか明記されていない点、及び
[相違点2]本願補正発明においては、揮散性物質の付与量が0.3?30g/m2の範囲であるのに対し、引用例1発明においては、揮散性物質の含有量が平方メートル当たりのグラム数で表示されていない点。

(4)判断
[相違点1]について
まず、本願補正発明における、テープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面に揮散性物質を付与する工程について検討すると、付与するという用語は、「さずけてあたえる」(必要ならば、「三省堂国語辞典」株式会社三省堂、昭和44年2月20日、78版発行、第725頁参照)ということを意味し、本願補正発明におけるテープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面に揮散性物質を付与する工程は、塗布または噴霧などの他に、揮散性物質の蒸気の雰囲気下に置くことにより粘着剤層が設けられる側から揮散性物質が与えられるなどの多種多様な手段を包含するものと解される。
それに対して、引用例1発明においては、どのようにして揮散性物質をテープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面に含有させるのか明記されていないが、テープ基材が、クラフト紙に低密度ポリエチレンをラミネートしたものであり、このテープ基材にエチルメチルケトンを含有させ、低密度ポリエチレン層とは反対側の面に接着剤層を溶融塗工した後、加熱により、接着剤層中に無数の独立気泡を生じさせていることから、エチルメチルケトン、すなわち、揮散性物質は、クラフト紙側に含有されており、揮散性物質を含有させるに際しては、低密度ポリエチレン層の側からでなく、開放された面、すなわち、クラフト紙側から、したがって、テープ基材の粘着剤層が設けられる側の片面から、揮散性物質が含有せしめられたと解するのが妥当である。そして、本願補正発明においても揮散性物質の付与手段は特定されておらず、また、本願補正発明におけるテープ基材としては、液体吸着性の低い基材のみならず、引用例1発明と同様に、背面(すなわち、粘着剤が塗工されている面と反対側の面)をポリエチレンなどの熱可塑性樹脂でマスクしてなるクラフト紙(本願明細書の段落【0019】、段落【0035】?【0043】参照)が用いられること、また、本願補正発明においては、クラフト紙に揮散性物質を含有せしめること、すなわち、クラフト紙の厚みに対してその一部分または全部に揮散性物質が入り込む態様が排除されていないことからみて、本願補正発明と引用例1発明とは同一の態様を含むものであり、この相違点は、実質的な相違点ではない。

[相違点2]について
引用例1発明においては、揮散性物質の含有量が、平方メーター当たりのグラム数で表示されていない。
この点について検討すると、引用例1発明においては、クラフト紙の一面に、密度0.919g/cm3 低密度ポリエチレンを皮膜厚が15μmの厚さにラミネートしたテープ基材を作製し、この基材に、エチルメチルケトンを約10重量%含有させている。ここで、クラフト紙の秤量は、日本工業規格によれば50?120g/m2(必要ならば、「紙パルプ技術便覧」、紙パルプ技術協会、1992年1月30日、5版発行、第473?474頁参照)であり、低密度ポリエチレン層の厚さは、15μmで、密度が0.919g/cm3 であるから、低密度ポリエチレン層の重さは、約14g/m2であり、したがって、テープ基材の秤量は、64?134g/m2ということになり、エチルメチルケトンは、その約10重量%の約6.4?13.4g/m2含有されることになる。
よって、エチルメチルケトンの含有量は、本願補正発明における、揮散性物質の付与量である0.3?30g/m2と重複するものであるから、この点も実質的な相違点ではない。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年8月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願は、請求項1及び2に係る発明を包含するものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、当初明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「テープ基材の片面に粘着剤層を設けてなる粘着テープの製造方法であって、
前記テープ基材の片面に揮散性物質を付与する工程と、
前記揮散性物質が付与された面に粘着剤を塗工する工程と、
前記揮散性物質をガス化することにより粘着剤層中に無数の独立気泡を含有させる工程とを備えることを特徴とする粘着テープの製造方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明から、「前記テープ基材の片面に」の限定事項である「粘着剤層が設けられる側の」との構成を省き、同じく「揮散性物質」についての、「付与量が0.3?30g/m2の範囲となるように」との限定を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明であるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1に記載された発明である。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-19 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願平8-302840
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C09J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 原田 隆興
井上 彌一
発明の名称 粘着テープの製造方法  
代理人 目次 誠  
代理人 宮▲崎▼主税  

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