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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1148056
審判番号 不服2004-22566  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-02 
確定日 2006-11-30 
事件の表示 平成 7年特許願第 54079号「エアゾール製品」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月28日出願公開、特開平 7-309382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年3月15日に出願された特願平6-44070号を国内優先権の基礎とし、平成7年3月14日に特願平7-54079号として特許出願したものであって、当審にて平成18年5月11日付けで拒絶理由を通知したものである。その請求項1に係る発明は、平成18年7月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】 エアゾール容器の上端部にマウンティングカップが装着されたエアゾール製品であって、エアゾール容器としてポリエステル製エアゾール容器が用いられ、該ポリエステル製エアゾール容器内に、原液中における含有率が1?10重量%の過酸化水素および毛髪?皮膚用有効成分を含有した原液と噴射剤が充填されたことを特徴とするエアゾール製品であって、原液が水を溶媒としており、噴射剤が液化石油ガスであり、内圧が35℃で3?8kg/cm2・Gであるエアゾール製品。」

2.当審における通知した拒絶理由の概要・引用文献の記載事項
当審において通知した拒絶理由の概要は次の通りのものである。
引用文献1に記載された発明において、引用文献2ないし7に記載された事項に基づいて本願請求項1?9に係る発明のように構成することは当業者が容易になし得たことと認められ、請求項1?9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。なお、当審における先の拒絶理由通知においては、請求人が平成18年7月14日付け意見書中で指摘しているとおり、引用文献2に関する説明と、引用文献3に関する説明が入れ替わっている。また、引用文献6については前記拒絶理由通知では、「CD-ROM}と記載しているが、「マイクロフィルム」の誤記である。
*引用文献
1.特開平2-214555号公報
2.特開平4-220499号公報
3.特開平1-164462号公報
4.特開平5-305980号公報
5.特開平1-218656号公報
6.実願昭53-157478号(実開昭55-76064号)のマイクロフィルム
7.実願昭62-17983号(実開平1-39288号)のマイクロフィルム

当審において通知した拒絶理由通知にて示した本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平2-214555号公報(以下「文献1」という。)には下記の事項が記載されている。

ア.「(1)筒状胴部、底部及びノズル取付用口部を備えた肩部から形成された容器本体と、該口部に取付けられたノズルとから成り、内容物及び噴射剤が充填されているプラスチック製エアゾール包装容器において、
該容器本体の各部は、芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールから形成されたポリエステル及び該ポリエステル中に配合された繊維補強剤から成り、且つ噴射剤としてジメチルエーテル含有ガスが充填されていることを特徴とするプラスチック製エアゾール包装容器。」(第1頁左下欄第5-15行)

イ.「本発明のエアゾール包装容器においては、噴射剤としてジメチルエーテル(DME)含有ガスが使用されるが、このガスはLPG(液化石油ガス)との混合ガスの形で使用され、通常10?90%がDMEである。」(第4頁左上欄第7-11行)

してみると、文献1には、下記の発明が記載されている。

「エアゾール包装容器としてポリエステル製エアゾール容器が用いられ、噴射剤が10?90%のジメチルエーテルと、LPG(液化石油ガス)との混合ガスであるエアゾール製品。」

当審において通知した拒絶理由通知にて示した本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平4-220499号公報(以下「文献2」という。)には下記の事項が記載されている。

ウ.「【0012】
本発明において層(A)における熱可塑性樹脂としては通常のボトル熱成形条件で成形できるものであれば特に限定されるものではなく、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン(ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー)などのポリオレフィンやポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、アクリロニトリル-スチレン樹脂、スチレン-ブタジエンブロック共重合体あるいはこれらの混合物などが挙げられる。特にポリオレフィンやポリスチレンが好ましい。ここでポリオレフィン系樹脂を用いる場合、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、或いはポリブテン樹脂などを単独で用いても、また適当に混合してもよいが、本発明の多層容器をブロー成形などの熱成形により連続多量生産を行うためには、同系統の樹脂を用いるほうが効果的である。」

エ.「【0022】
本発明に用いられる液体漂白剤組成物としては通常の次亜塩素酸塩、過酸化水素の水溶液を漂白基剤とし、その他の常用成分を含有してなるものが挙げられ、その組成等も特に限定されない。」

当審において通知した拒絶理由通知にて示した本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平1-164462号公報(以下「文献3」という。)には下記の事項が記載されている。

オ.「内部容器(2)は、アルミニウムや鋼などの金属製またはポリアミドやポリエステル、ポリアセタールなどのエンジニアリングプラスチックおよびその他の合成樹脂製である有底筒状の耐圧容器である。」(第2頁右下欄第19行-第3頁左上欄第3行)

カ.「なお本実施例においても、ボール(34)と封箱(35)を合成樹脂にしておけば過酸化水素水のように金属との接触によって分解する内容液であっても充填することができるので都合がよい。」(第4頁右下欄第第12-15行)

当審において通知した拒絶理由通知にて示した本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平1-218656号公報(以下「文献4」という。)には下記の事項が記載されている。

キ.「(産業上の利用分野)
本発明は、ウオーターベース等の腐食性が高いエアゾール内容物を充填するエアゾール容器のマウンティングカップと該マウンティングカップを備えたエアゾール容器に関する。」(第1頁右下欄第1-5行)

3.対比
本願発明と文献1に記載された発明を対比すると、前者の「エアゾール容器」は後者の「エアゾール包装容器」に相当し、いずれも液体と噴射剤が充填されるものであるから、両者の一致点は、

「エアゾール容器としてポリエステル製エアゾール容器が用いられ、液体と噴射剤が充填されたエアゾール製品。」

である。一方相違点は

(1)本願発明においては、「原液中における含有率が1?10重量%の過酸化水素および毛髪?皮膚用有効成分を含有した原液」を用いているのに対して文献1に記載された発明においては、内容物を特定していない点。

(2)本願発明においては、噴射剤として、液化石油ガスを用いているのに対して、文献1に記載された発明においては、10?90%のジメチルエーテルと、LPG(液化石油ガス)との混合ガスを用いている点。

(3)本願発明においては、「内圧が35℃で3?8kg/cm2・G」であるのに対して、文献1に記載された発明においては、内圧を明示的に限定していない点。

(4)本願発明においては、「エアゾール容器の上端部にマウンティングカップが装着」されているのに対して、文献1に記載された発明においてはそのように構成していない点。

の4点である。

4.判断
(1)上記相違点(1)について検討する。
文献2の記載事項ウ,エおよび文献3の記載事項オ,カには、過酸化水素水を含む内容物を、ポリエステルから成る容器に収納する点が記載されている。そして、出願人が主張する本願発明の効果である「原液に含有された過酸化水素が該ポリエステル製エアゾール容器と反応することがないので、過酸化水素の反応、分解によってエアゾール容器の内圧が高められることが大幅に抑制される」ことは、文献3の記載事項カの「過酸化水素水のように金属との接触によって分解する溶液であっても充填することができるので都合が良い」と相違するものではない。また、エアゾール用の染毛剤等として過酸化水素を含んだものは、周知と認められる(例えば実公平6-42757号公報第2頁右欄第7-10行には、「エアゾール組成物Lは、過酸化水素を含有する液状の組成物であり、例えば染毛剤、脱色漂白剤、消毒剤などの用途に用いられる組成物であり、過酸化水素の含有量はその用途に応じた割合とされる。」と記載されている。)。ここで、本願明細書には、「【0025】 前記毛髪?皮膚用有効成分としては、通常、毛髪脱色剤、体毛脱色剤、二液式酸化染毛剤などに用いられているものを用いることができる。」と記載されていることから見て、上記周知技術を示す文献(実公平6-42757号公報)に記載された染毛剤も前記「毛髪?皮膚用有効成分」の範疇に含まれるものと認められる。さらに、過酸化水素は、通常水を溶媒として適宜の濃度に調整・使用されるものであり、通常3%程度の水溶液とした状態で用いられる。
したがって、上記相違点(1)は、その有効成分や過酸化水素の濃度に関する特定事項も含めて文献2あるいは3の記載に基づいて当業者が容易になし得たことと認められる。

(2)上記相違点(2)について検討する。
染毛剤等の過酸化水素を含む内容物と組み合わせて使用する噴射剤として、10?90%のジメチルエーテルと、LPG(液化石油ガス)との混合ガスに変えて、液化石油ガスから成る噴射剤を用いることは、ジメチルエーテルも液化石油ガスも共に従来知られている噴射剤であって、両者およびそれらの混合ガスを用いることも従来知られている(例えば実公平6-42757号公報第2頁右欄第10-14行には、「また、噴射剤としては、従来知られている種々のものをそのまま使用することができ、例えば液化石油ガス、ジメチルエーテル、各種のフロンガス、炭酸ガスおよびそれらの混合ガスなどを用いることができる。」と記載されている。)ので、当業者が容易になし得たことと認められる。
そして、請求人が平成18年7月14日付け意見書において主張する「原液と水にほとんど溶解しない液化石油ガスがエアゾール容器内で二液に分離し、液密度が小さく、蒸気圧を有する液化石油ガスが上層に存在して液膜となり、下層に存在する原液を押さえ付ける形状となるため、過酸化水素の分解が抑制され、圧力上昇が少なくなる」効果は、上記噴射剤を液化石油ガスとした場合に、当然に生じる効果であって、格別のものとは認められない。

(3)上記相違点(3)について検討する。
上記相違点(3)であげた内圧の値は、エアゾール容器の内圧としてごく当たり前の値に過ぎず、「内圧が35℃で3?8kg/cm2・G」とする程度のことは、当業者が適宜選択しえた程度のものと認められる。

(4)上記相違点(4)について検討する。
エアゾール容器において、マウンティングカップを用いて構成するようにすることは、文献4の記載事項クに「マウンティングカップを備えたエアゾール容器」と記載されているように周知の事項と認められる。

してみると、本願発明は、文献1,2,3および4に記載された事項を寄せ集めたものに過ぎず、進歩性を有するとは認められない。

5.むすび
したがって、本願発明は、文献1,2,3および4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2006-09-29 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-19 
出願番号 特願平7-54079
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 祐介  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 宮崎 敏長
石田 宏之
発明の名称 エアゾール製品  
代理人 朝日奈 宗太  

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