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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  H01M
管理番号 1148123
異議申立番号 異議2003-72844  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-21 
確定日 2006-11-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3417228号「非水電解液及びリチウム二次電池」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3417228号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3417228号の手続の経緯は次のとおりである。

特許出願: 平成 8年 8月30日
設定登録: 平成15年 4月11日
特許掲載公報発行: 平成15年 6月16日
特許異議申立て: 平成15年11月21日
(異議申立人 三簾 寛)
特許異議申立て: 平成15年12月15日
(異議申立人 尾谷 勉)
特許異議申立て: 平成15年12月16日
(異議申立人 山口正夫)
取消理由通知: 平成16年 9月28日付け
訂正請求: 平成16年12月 7日
特許異議意見書: 平成16年12月 7日
審尋: 平成17年 1月13日付け
回答書:(三簾 寛) 平成17年 3月14日
回答書:(尾谷 勉) 平成17年 3月15日
回答書:(山口正夫) 平成17年 3月22日
上申書:(山口正夫) 平成17年 4月 8日

II.本件特許発明
本件の請求項1?7に係る発明は、特許明細書の請求項1?7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合物である非水溶媒と、リチウム塩とを含む非水電解液であって、下記一般式(1)で表わされる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有するリチウム二次電池用非水電解液:【化1】
R11-CH-R13 (1)

R12
[R11は、総炭素数6乃至24の置換もしくは無置換のアリール基を表わし; R12は、総炭素数1乃至24の置換もしくは無置換のアルキル基、総炭素数2乃至24の置換もしくは無置換のアルケニル基、総炭素数2乃至24の置換もしくは無置換のアルキニル基、総炭素数7乃至24の置換もしくは無置換のアラルキル基、総炭素数6乃至24の置換もしくは無置換のアリール基、あるいは総炭素数3乃至24の置換もしくは無置換の複素環残基を表わす;そして R13は、水素原子、総炭素数1乃至24の置換もしくは無置換のアルキル基、総炭素数2乃至24の置換もしくは無置換のアルケニル基、総炭素数2乃至24の置換もしくは無置換のアルキニル基、総炭素数7乃至24の置換もしくは無置換のアラルキル基、あるいは総炭素数3乃至24の置換もしくは無置換の複素環残基を表わす、 但し、R11とR12またはR12とR13とは互いに結合して環を形成している]。
【請求項2】 一般式(1)のR12が、総炭素数1乃至24の置換もしくは無置換のアルキル基、総炭素数2乃至24の置換もしくは無置換のアルケニル基、あるいは総炭素数2乃至24の置換もしくは無置換のアルキニル基である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項3】 一般式(1)のR12が、総炭素数1乃至24の置換もしくは無置換のアルキル基であって、R13が、水素原子、総炭素数1乃至24の置換もしくは無置換のアルキル基である、請求項2に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項4】 一般式(1)の化合物が下記化合物のうちのいずれかである請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液: 1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、 9,10-ジヒドロアントラセン、 インダン、 インデン、 9,10-ジヒドロフェナントレン、 アセナフテン、 シクロヘキシルベンゼン、 1,2-ジヒドロナフタレン、 ドデカヒドロトリフェニレン、 1-フェニル-3,4-ジヒドロナフタレン、 フルオレン。
【請求項5】 環状カーボネートが、エチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネートである請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項6】 非環状カーボネートが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、もしくはメチルエチルカーボネートである請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項7】 容器内に、正極、負極、そして請求項1乃至6のうちのいずれかの項に記載の非水電解液が充填されているリチウム二次電池。」

III.取消理由の概要
当審が平成16年9月28日付けで通知した取消理由の1つは、平成14年5月17日付け、及び平成15年2月7日付けでした手続補正による明細書の補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、本件の請求項1?7に係る発明の特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきであるというものである。具体的には、上記補正により、補正後の発明は、「負極材料が黒鉛の場合」をも実施例として含むものとされたが、この「負極材料が黒鉛の場合」を実施例として含むような発明は、当初明細書に記載されていないから、上記補正は、当初明細書に記載された事項の範囲内においてしたものではない(新規事項の追加に該当する)というものである。

IV.当初明細書の記載事項、手続補正による補正事項、及び特許明細書の記載事項
(1)当初明細書の記載事項
「負極材料」に関し、当初明細書に記載されていた事項を摘示すると、次のとおりである。
(ア)「【従来の技術】 リチウムを利用する非水電解液二次電池(リチウム二次電池)はリチウムを可逆的に吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、リチウム塩を含む非水電解液、およびこれらを適切に保持、隔離する部材から構成される。リチウムが軽量かつ極めて卑な電位を有するため、リチウムまたはリチウム合金を負極とする二次電池は高電圧、高容量という優れた特徴を有する反面、デンドライトが析出し短絡しやすいという欠点も有していた。負極に炭素材量を有する電池は、長期にわたって充放電を繰り返した際の容量の低下の度合いが小さいというサイクル特性の向上は認められるものの、リチウム金属を負極に用いた電池程の高容量にはほど遠い。一方、非晶質の酸化物もしくはカルコゲン化合物を負極材料に用いた場合、リチウムの吸蔵量が飛躍的に増大し極めて容量の高い優れた二次電池が得られる。しかしながらこの電池では長期にわたって充放電を繰り返すと、容量の低下がみられるという問題があった。・・・」(【0002】)
(イ)「【発明が解決しようとする課題】 本発明の課題は、リチウム二次電池のサイクル性を向上させることであり、特に、非晶質の酸化物もしくはカルコゲン化合物を負極材料に用いたリチウム二次電池のサイクル性を向上させることである。」(【0003】)
(ウ)「本発明の負極材料は周期表1、2、13、14、15族原子から選ばれる三種以上の原子を含む、主として非晶質のカルコゲン化合物または酸化物である。・・・」(【0030】)
(エ)「・・・実施例-1 ・・・〔負極合剤ペーストの作成〕 負極材料;SnGe0.1 B0.5 P0.58Mg0.1 K0.1 O3.35(・・・結晶性の回折線は見られなかった。)を200g・・・加えさらに混練混合し、負極合剤ペーストを作成した。・・・各々の電池缶内に電解液1から18をそれぞれ注入し、・・・円筒型電池(1から18)を作成した。」(【0062】?【0066】)
(オ)「実施例-2 負極材料として黒鉛粉末を用いる以外は実施例1と同様の方法で円筒型電池(電池番号1aから10a)を作成した。上記の方法で作成した電池について、電流密度4.8mA/cm2 、充電終止電圧4.1V、放電終止電圧2.8Vの条件で充放電を繰り返し、各サイクルにおける放電容量を求めた。表2には作成した電池の相対容量(各電池の1サイクルめの容量を電池1の容量で規格化したもの)およびサイクル性(各電池の1サイクルめの放電容量に対する300サイクルめの放電容量の割合)を示した。
(次頁へ続く。)

(注:電解液番号2?18は「本発明」であり、電解液番号1、1a?10aは「比較例」であることが備考欄に記載されている。)」(【0067】?【0068】)
(カ)「表2より一般式(1)で表される化合物を添加した場合サイクル性を向上する事がわかる。中でも例示化合物12、13、14、15、16、17、19、20を添加した場合その効果が著しい。
例示化合物(12)について添加量の効果を見ると添加濃度が0.01重量パーセントの場合がサイクル性が良く好ましい。負極材料として黒鉛を用いた場合は初めから容量が小さい。また本発明の化合物を添加してもサイクル性の向上効果はわずかしかなく、総合的にみて本発明を応用した電池には性能が及ばない。」(【0069】)
(キ)「【発明の効果】 本発明の化合物を用いれば容量が高く、充放電繰り返しによる放電容量の低下の少ない非水電解液二次電池を得ることができる。」(【0070】)
(下線は、比較のために付した。)

(2)手続補正による補正事項
(2-1)平成14年5月17日付け手続補正による補正事項
平成14年5月17日付け手続補正(以下、「補正1」という。)は、当初明細書の全文を対象とするものであるところ、「負極材料」に関する補正事項を摘示すると、次のとおりである。
(補-1)当初明細書の「本発明の負極材料は周期表1、2、13、14、15族原子から選ばれる三種以上の原子を含む、主として非晶質のカルコゲン化合物または酸化物である。・・・」(段落【0030】)を、「本発明の負極材料は周期表1,2,13,14,15族原子から選ばれる三種以上の原子を含む、主として非晶質のカルコゲン化合物または酸化物であることが好ましい。・・・」(【0025】)と補正する。
(補-2)当初明細書の「・・・実施例-1 ・・・〔負極合剤ペーストの作成〕 負極材料;SnGe0.1 B0.5 P0.58Mg0.1 K0.1 O3.35(・・・結晶性の回折線は見られなかった。)を200g・・・加えさらに混練混合し、負極合剤ペーストを作成した。・・・各々の電池缶内に電解液1から18をそれぞれ注入し、・・・円筒型電池(1から18)を作成した。」(段落【0062】?【0066】)を、「[実施例-1] ・・・〔負極合剤ペーストの作成〕 負極材料;SnGe0.1 B0.5 P0.58Mg0.1 K0.1 O3.35(・・・結晶性の回折線は見られなかった。)を200g・・・加えさらに混練混合し、負極合剤ペーストを作成した。・・・各々の電池缶内に電解液をそれぞれ注入し、・・・円筒型電池を作成した。・・・表2に、作成した電池の相対容量(・・・)およびサイクル性(・・・)を示した。」(段落【0059】?【0064】)と補正する。
(補-3)当初明細書の「実施例-2 負極材料として黒鉛粉末を用いる以外は実施例1と同様の方法で円筒型電池(電池番号1aから10a)を作成した。上記の方法で作成した電池について、電流密度4.8mA/cm2 、充電終止電圧4.1V、放電終止電圧2.8Vの条件で充放電を繰り返し、各サイクルにおける放電容量を求めた。表2には作成した電池の相対容量(各電池の1サイクルめの容量を 電池1の容量で規格化したもの)およびサイクル性(各電池の1サイクルめの放電容量に対する300サイクルめの放電容量の割合)を示した。」(段落【0067】)を、「[実施例-2] 負極材料として黒鉛粉末を用いる以外は実施例1と同様の方法で円筒型電池(電池番号1a、7a、8a)を作成した。・・・表3に、作成した電池の相対容量(各電池の1サイクル目の容量を表2の電池1の容量で規格化したもの)およびサイクル性(各電池の1サイクル目の放電容量に対する300サイクルめの放電容量の割合)を示した。」(段落【0065】と補正する。
また、当初明細書の表2(段落【0068】)を、その備考欄を削除すると共に、比較例と実施例を取捨選択して、次に示す新たな「表2」(段落【0066】)と「表3」(段落【0067】)にそれぞれ補正する。


(補-4)当初明細書の「表2より一般式(1)で表される化合物を添加した場合サイクル性を向上する事がわかる。中でも例示化合物12、13、14、15、16、17、19、20を添加した場合その効果が著しい。 例示化合物(12)について添加量の効果を見ると添加濃度が0.01重量パーセントの場合がサイクル性が良く好ましい。負極材料として黒鉛を用いた場合は初めから容量が小さい。また本発明の化合物を添加してもサイクル性の向上効果はわずかしかなく、総合的にみて本発明を応用した電池には性能が及ばない。」(段落【0069】)を、「表2と表3より、一般式(1)で表される化合物を添加した場合サイクル性を向上する事がわかる。例示化合物(12)について添加量の効果を見ると添加濃度が1重量パーセントの場合がサイクル性が良く好ましい。負極材料として黒鉛を用いた場合は初めから容量が小さい。 」(段落【0068】)と補正する。
(下線は)比較のために付した。)

(2-2)平成15年2月7日付け手続補正による補正事項
平成15年2月7日付け手続補正(以下、「補正2」という。)は、補正1によって補正された明細書の特許請求の範囲を特許明細書の特許請求の範囲の記載のとおりに補正するものであり、その補正内容は、上記 II.に記載のとおりである。

(3)特許明細書の記載事項
上記補正1及び補正2は、審査手続においてそのまま採用されているから、補正1の上記(補-1)乃至(補-4)によって補正された事項は、すべて特許明細書に記載された事項であり、それぞれ、当初明細書の上記(ウ)乃至(カ)に対応するものである。

V.当審の判断
(1)新規事項の追加(特許法第17条の2第3項違反)の判断
(1-1)上記補正1についての検討
上記補正1による補正事項(補-1)乃至(補-4)は、前示のとおりであるが、特に当初明細書の「表2」に関する補正事項は、次の(a)乃至(c)のとおりであるといえる。
(a)上記(補-3)により、当初明細書の「表2」の記載から「本発明」(実施例を意味する)と「比較例」とを区別するために設けられた「備考欄」を削除する。
(b)上記(補-2)、(補-3)により、当初明細書の「表2」に記載された電解液番号「1?18」の中から、「1」を含む適当な幾つかの具体例だけを取捨選択して、新たな「表2」を作成すると共に、同様に電解液番号「1a?10a」の中から、「1a」を含む適当ないくつかの具体例を取捨選択して新たに「表3」を作成する。
(c)上記(補-4)により、上記(b)に関連し、当初明細書の段落【0069】の記載に「表3」という語句を新たに追加すると共に、「また本発明の化合物を添加してもサイクル性の向上効果はわずかしかなく、総合的にみて本発明を応用した電池には性能が及ばない。」という記載部分を削除する。
次に、上記補正事項について具体的に検討すると、特に、上記(補-2)、(補-3)は、当初明細書の「表2」に記載されていた「本発明」(実施例を意味する)と「比較例」という複数個の具体例から、その「本発明」及び「比較例」というカテゴリーを削除するとともに、複数個の具体例を取捨選択して、2つのグループに分けるものであり、その具体的内容は、当初明細書で「添加剤あり」の場合に「本発明」と、「添加剤なし」の場合に「比較例」とされていた「非晶質酸化物を負極とする場合」の具体例「1?18」から、「1」を含む複数個の具体例を取捨選択して新たな「表2」(第1のグループ)を作成し、同様に当初明細書で「添加剤あり」でも「添加剤なし」でも「比較例」とされていた「黒鉛を負極とする場合」の具体例「1a?10a」から1aを含む複数個の具体例を取捨選択して新たな「表3」(第2のグループ)を作成するものである。そして、このように2つのグループに分けられた具体例には、「本発明」及び「比較例」というカテゴリーを示す表記が全くなされていないから、上記(補-2)、(補-3)は、第1のグループの具体例と第2のグループの具体例とを同様に扱うべき同種のものとする補正であるというべきである。
そうすると、補正後の「表2」の第1のグループの具体例については、当初明細書の表2には「添加剤なし」の具体例「1」に「比較例」、「添加剤あり」の具体例「2?18」に「本発明」という実施例を意味する表記が付されていたのであるから、補正後も「添加剤あり」の場合の具体例が本発明の「実施例」といえるものであることが明らかであるが、補正後の「表3」の第2のグループの具体例については、表2と同様に「添加剤の有無」で切り分けると、「添加剤なし」の具体例「1a」が「比較例」であり、「添加剤あり」の具体例「7a、8a」が「実施例」ということになるから、上記(補-2)、(補-3)は、当初明細書の「表2」の備考欄を削除し、新たな「表2」、「表3」を作成することによって、当初明細書に記載されていた負極材料として黒鉛を用いる比較例をも、「添加剤あり」の場合は本発明の実施例であるとする内容のものといえる。
そして、このことは、上記(補-4)の補正事項、すなわち当初明細書の段落【0069】の「表2より」を「表2と表3より、」と補正するとともに、負極材料として黒鉛を用いた場合の否定的な結果を示す「また本発明の化合物を添加してもサイクル性の向上効果はわずかしかなく、総合的にみて本発明を応用した電池には性能が及ばない。」という記載部分を削除した補正事項や、上記(補-1)の、当初明細書の負極材料に関する「本件発明の負極材料が周期表1、2、13、14、15族原子から選ばれる三種以上の原子を含む、主として非晶質のカルコゲン化合物または酸化物である。」という断定的な記載を、「・・・酸化物であることが好ましい。」という任意的な記載に補正する補正事項によっても裏付けられる。
しかしながら、当初明細書には、下記(1-2)で検討するとおり、負極材料が黒鉛である「比較例」が本発明の実施例であること、又は実施例となり得ることを示唆する記載は見当たらない。また、当初明細書で「比較例」と記載される電解液番号「1」は、「添加剤なし」の点で「本発明」と対比するための具体例であり、電解液番号「1a?10a」は、添加剤の有無によらず、「負極材料を黒鉛とする」点で「本発明」と対比するための具体例であるから、当初明細書記載の「比較例」とは、あくまで本発明の実施例を意味する「本発明」と対比するための具体例に対して表記されている語句であって、「実施例」又は実施例になり得る具体例を示すものでもない。
よって、上記(補-1)乃至(補-4)の内容を含む上記補正1は、形式的には当初明細書の記載を削除するものであるとしても、結果として負極材料として黒鉛を用いる比較例を実施例とする事項を含むものであるから、当初明細書に記載されていなかった技術的事項を追加するものといえ、この点で当初明細書に記載された事項の範囲内においてされたものではないというべきである。

(1-2)当初明細書の記載についての検討
当初明細書の「負極材料」に関する記載について順次検討すると、次のとおりである。
(i)「従来の技術」について
記載(ア)によると、「炭素材料」を負極に用いる電池は、「サイクル特性の向上は認められるものの、リチウム金属を負極に用いた電池程の高容量にはほど遠い」ものであり、「非晶質のカルコゲン化合物または酸化物」を負極材料に用いる電池は、「リチウムの吸蔵量が飛躍的に増大し極めて容量の高い優れた二次電池が得られる。しかしながらこの電池では長期にわたって充放電を繰り返すと、容量の低下がみられる」ものである。
そうすると、当初明細書には、「炭素材料」を負極材料とする場合に関しては、従来から「サイクル特性の向上」が認められるが、「容量が小さい」ものであり、「非晶質のカルコゲン化合物または酸化物」を負極材料とする場合に関しては、従来から「高容量」であるが、「サイクル性が劣る」と認識されていたことが記載されていたといえる。

(ii)「課題」について
記載(イ)によると、発明が解決しようとする課題は、「リチウム二次電池のサイクル性を向上させる」こと、「特に、非晶質の酸化物もしくはカルコゲン化合物を負極材料に用いたリチウム二次電池のサイクル性を向上させる」ことである。そして、記載(ウ)によると、「本発明の負極材料は・・・主として非晶質のカルコゲン化合物または酸化物である」とされている。
そうすると、上記(ア)記載の解釈をも併せ考慮すると、当初明細書に記載されていた「サイクル性の向上」という課題は、従来より「サイクル性の向上」が認められる「炭素材料」を負極材料に用いた場合の課題というより、むしろ従来より「サイクル特性が劣る」と認識されていた「非晶質のカルコゲン化合物または酸化物」を負極材料として用いた場合の課題に該当するというべきである。
(iii)「実施例」について
記載(エ)によると、「実施例-1」の電池1?18は、「SnGe0.1 B0.5 P0.58Mg0.1 K0.1 O3.35」(非晶質の酸化物)を負極に用い、電解液番号1?18(電解液番号1は一般式(1)で表される化合物の添加なし、電解液番号2?18は該化合物の添加あり)の電解液を用いた電池である。
そして、記載(オ)の表2、相対容量及びサイクル性の欄の記載によると、電解液番号2?18の場合は、電解液番号1の場合と比べて、容量を低下させることなく、サイクル性が0.65から0.71?0.85となり、0.06?0.20向上していることが認められ、同表の備考欄の記載によると、電解液番号2?18(該化合物の添加あり)の場合は「本発明」と、電解液番号1(該化合物添加なし)の場合は「比較例」とされている。
そうすると、「実施例-1」において、「サイクル性の向上」という発明の課題を解決し得る真の「実施例」は、一般式(1)で表される化合物の添加がされる電解液(電解液番号2?18)を用いた場合のみであるといえ、「実施例-1」のうちの該化合物が添加されない電解液(電解液番号1)を用いた場合は、実際には「比較例」であるといえる。
次に「実施例-2」についてみると、記載(オ)によると、「実施例-2」の電池1a?10aは、炭素材料の一種である「黒鉛」を負極に用い、電解液番号1a?10a(電解液番号1aは一般式(1)で表される化合物の添加がない場合、電解液番号2a?10aは該化合物の添加がある場合)の電解液を用いた電池である。
そして、電解液番号2a?10a(化合物の添加あり)の場合は、表2の相対容量の欄の記載によると、電解液番号1a(化合物の添加なし)の場合と比べて同程度の容量しか得られず、電解液番号2?18の場合の容量には及ばないことが認められ、同表のサイクル性の欄の記載によると、電解液番号1aと比べてサイクル性は0.70と変わらないか、又は向上しているとしても最大0.03であるから、「実施例-1」の電解液番号2?18の場合にみられるような、サイクル性の向上は認められない。さらに、同表の備考欄の記載によると、電解液番号1の場合とともに全て「比較例」と記載されている。
また、これら比較例は、記載(カ)の「負極材料として黒鉛を用いた場合は初めから容量が小さい。また、本発明の化合物を添加してもサイクル性の向上効果はわずかしかなく、総合的にみて本発明を応用した電池には性能が及ばない。」という記載から明らかなように、「本発明を応用した電池には性能が及ばない。」として本発明の実施例(応用例)から除外されている。
以上の記載によれば、負極材料として炭素材料の一種である「黒鉛」を用いた「実施例-2」の項は、負極材料として「非晶質のカルコゲン化合物または酸化物」を用いた「実施例-1」に比べて、「黒鉛」を用いた「実施例-2」はその「相対容量」と「サイクル性」の点で及ばないことを示すために記載されたものであり、表2の備考欄において、「実施例-2」の項で行われた具体例はすべて「比較例」と表記されていることと整合するものである。
(iv)「効果」について
記載(キ)によると、この発明の効果は「本発明の化合物を用いれば容量が高く、充放電繰り返しによる放電容量の低下の少ない非水電解液二次電池を得ることができる」というものであるが、「炭素材料」を負極材料に用いた場合は、記載(ア)によると、従来から「リチウム金属を負極に用いた電池程の高容量にはほど遠い」ものである。そして、記載(カ)によると、炭素材料の一種である「黒鉛」を負極材料に用いた場合、一般式(1)で表される化合物を電解液に添加しても、初めから小さい容量は改善されず、サイクル性の向上効果もわずかであって、「総合的にみて本発明を応用した電池には性能が及ばない。」と評価されていたものであるから、「炭素材料」を負極材料に用いた比較例は、本発明の効果を奏していないものといえる。
したがって、当初明細書には、本発明の効果の観点からみても、「炭素材料」を負極材料に用いた場合は、本発明の範囲外の「比較例」として記載されていたことは明らかである。

(v)まとめ
以上(i)?(iv)の検討のとおり、当初明細書の「従来の技術」、「解決すべき課題」、「実施例」及び「発明の効果」のいずれの記載からみても、「炭素材料」を負極材料に用いた「比較例」は、例示化合物の添加の有無に拘わらず、すべて本発明の実施例を意味する「本発明」と対比されるために記載されたものであって、本発明の実施例ではないし、また実施例となり得るものでもないといえる。

(1-3)特許明細書の記載についての検討
本件特許明細書は、上記補正1と補正2によって補正された明細書であるから、上記補正1の(補-1)乃至(補-4)の補正事項を含むものである。
したがって、その記載の詳細な検討は、上記補正1についてと同様であるから、省略する。

(1-4)小括
以上の検討のとおり、本件特許明細書は、新規事項を追加する上記補正1によって補正された明細書であるから、本件発明についての特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

(2)訂正についての判断
特許権者は、上記取消理由通知に対して平成16年12月 7日付け訂正請求を行っているから、上記新規事項の追加という取消理由がこの訂正請求によって解消されたか否かについて、以下に検討する。

(2-1)訂正の内容
平成16年12月 7日付け訂正請求における訂正事項は、次のとおりである。
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合物である非水溶媒と、リチウム塩とを含む非水電解液であって、下記一般式(1)で表わされる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有するリチウム二次電池用非水電解液:【化1】
R11-CH-R13 (1)

R12
[・・・]。」を「環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合物である非水溶媒と、リチウム塩とを含む非水電解液であって、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる群より選ばれる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有するリチウム二次電池用非水電解液。」と訂正する。
・訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2?4を削除するとともに、請求項5,6の項番号を2,3に繰り上げ、請求項7の「請求項1乃至6」を「請求項1乃至3」と訂正するとともに、項番号を4に繰り上げる。
・訂正事項c
【0004】の「下記一般式(1)で表わされる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有するリチウム二次電池用非水電解液にある。」を「1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる群より選ばれる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有するリチウム二次電池用非水電解液にある。」と訂正する。
・訂正事項d
【0005】?【0010】を削除し、【0011】を【0005】に繰り上げるとともに、【0012】の「一般式(1)の化合物」を「添加化合物」に訂正し、【0006】に繰り上げる。
・訂正事項e
【0013】?【0016】、【0018】?【0020】を削除し、【0017】を【0007】に繰り上げるとともに、「一般式(1)の化合物」(二箇所)をともに「添加化合物」と訂正する。
・訂正事項f
【0021】を【0008】に繰り上げるとともに、「一般式(1)で表される化合物」(二箇所)をともに「添加化合物」と訂正する。
・訂正事項g
【0026】の「一般式(3)」を「一般式(0)」に、【0027】の「一般式(4)」を「一般式」と訂正するとともに、【0022】?【0027】をそれぞれ【0009】?【0014】に繰り上げるとともに、る。
・訂正事項h
【0029】、【0030】、【0035】、及び【0039】の「本発明の負極材料」をそれぞれ「上記負極材料」と訂正するとともに、【0028】?【0046】を、それぞれ【0015】?【0033】に繰り上げる。
・訂正事項i
【0047】の「一般式(1)の化合物」(二箇所)をともに「添加化合物」と訂正するとともに、【0047】?【0058】を、それぞれ【0034】?【0045】に繰り上げる。
・訂正事項j
【0062】の「表1に記載の化合物」を「1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン前記添加化合物」と、「電解液1,7,・・・18」を「電解液2乃至6」と訂正するとともに、【0059】?【0062】をそれぞれ【0046】?【0049】に繰り上げる。
・訂正事項k
【0063】を削除し、【0064】を【0050】に繰り上げるとともに、「10個」を「6個」と、「表2」を「表1」と訂正する。
・訂正事項l
【0065】の「7a、8a」を「2a」と、「表3」を「表2」と、「表2」を「表1」と訂正し、【0066】の表2、及び【0067】の表3をそれぞれ下記の表1及び表2と置き換えるとともに、【0065】?【0067】をそれぞれ【0051】?【0053】に繰り上げる。

・訂正事項m
【0068】の「表2と表3より、一般式(1)で表される化合物」を、「表1と表2より、本発明の添加化合物」と訂正し、「例示化合物(12)について」を削除するとともに、【0068】、【0069】を、それぞれ【0054】、【0055】に繰り上げる。

(2-2)当審の判断
本件訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、または誤記の訂正を目的とするものであり、また、その訂正事項も、特許明細書の記載を基準とすれば、いずれも特許明細書に記載された事項の範囲内においてされたものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項および第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
しかしながら、取消理由の対象とされた特許明細書の記載、すなわち上記(補-1)乃至(補-4)に対応する記載について検討するに、上記(補-1)に対応する記載については、上記訂正事項gにより、訂正明細書の【0012】となったが、その記載内容は何ら変更されていない。また、特許明細書の上記(補-2)乃至(補-4)に対応する記載についても、上記訂正事項j?mによって上記訂正明細書の【0046】?【0054】に記載のとおりとなったが、依然として(補-2)乃至(補-4)の記載内容を保持するものである。
したがって、訂正された特許明細書の記載は、依然として新規事項を含むものであるから、取消理由は、上記訂正によっても解消されていないといえる。

(3)特許権者の主張に対して
特許権者は、特許異議意見書において、「出願当初の請求項1の非水電解液二次電池は、正極および負極材料を限定していません。すなわち、特許請求の範囲の記載を見る限り、負極材料の種類に限らず、当初明細書に記載された添加化合物を含有する非水電解液を用いた二次電池は発明の実施例に相当します。従って、発明の詳細な説明の欄における記載が比較例とされていても、これは当初明細書に記載されていた発明の実施例に相当することは明らかです。すなわち、当初明細書における「比較例」との記載は誤記であると理解すべきです。」と主張している。
しかしながら、当初明細書の「比較例」が本発明の実施例に相当すると解する合理的な理由がないことは、前示のとおりである。
また、当初明細書の表2では、添加剤なしの具体例や負極材料に黒鉛を用いた具体例がすべて「比較例」と表記されているのであるから、添加剤なしの具体例だけが「比較例」であって、その他はすべて誤記であるとするためには、当初明細書に、負極材料に黒鉛を用いた具体例が実施例であることを示唆する記載が存在するか、又は添加剤なしの具体例のみが比較例であるとする記載が存在する必要があるが、そのようないずれの記載も当初明細書から見出すことができない。
したがって、特許権者の上記主張は、採用することができない。

VI.むすび
以上のとおり、本件の請求項1?7に係る発明についての特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法113条第1号に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
非水電解液及びリチウム二次電池
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合物である非水溶媒と、リチウム塩とを含む非水電解液であって、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる群より選ばれる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有するリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項2】環状カーボネートが、エチレンカーボネートもしくはプロピレンカーボネートである請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項3】非環状カーボネートが、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、もしくはメチルエチルカーボネートである請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項4】容器内に、正極、負極、そして請求項1乃至3のうちのいずれかの項に記載の非水電解液が充填されているリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高電圧、高容量かつ充放電サイクル特性に優れる非水電解液二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウムを利用する非水電解液二次電池(リチウム二次電池)はリチウムを可逆的に吸蔵放出可能な材料を含む正極および負極、リチウム塩を含む非水電解液、およびこれらを適切に保持、隔離する部材から構成される。リチウムが軽量かつ極めて卑な電位を有するため、リチウムまたはリチウム合金を負極とする二次電池は高電圧、高容量という優れた特徴を有する反面、デンドライトが析出し短絡しやすいという欠点も有していた。負極に炭素材料を有する電池は、長期にわたって充放電を繰り返した際の容量の低下の度合いが小さいというサイクル特性の向上は認められるものの、リチウム金属を負極に用いた電池程の高容量にはほど遠い。一方、非晶質の酸化物もしくはカルコゲン化合物を負極材料に用いた場合、リチウムの吸蔵量が飛躍的に増大し極めて容量の高い優れた二次電池が得られる。しかしながらこの電池では長期にわたって充放電を繰り返すと、容量の低下がみられるという問題があった。長期にわたって充放電を繰り返した際の充放電特性(サイクル特性)を改良する試みは、様々な観点から検討されている。電解液に特定の化合物を添加してサイクル特性を向上させる試みも多数検討され、例えば、特開平6-84523号、84524号、333595号明細書にはアミン類を添加する事が、特開平5-234618号明細書にはリチウムに対する配位性基を有する化合物を添加する事が記載されているが、サイクル性の改良効果は十分とは言い難く、更なる向上が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、リチウム二次電池のサイクル性を向上させることであり、特に、非晶質の酸化物もしくはカルコゲン化合物を負極材料に用いたリチウム二次電池のサイクル性を向上させることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合物である非水溶媒と、リチウム塩とを含む非水電解液であって、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンおよびシクロヘキシルベンゼンからなる群より選ばれる化合物を非水電解液1kgあたり1g以上、50g以下の量にて含有する非水電解液にある。
【0005】
本発明はまた、容器内に正極、負極、そして上記本発明の非水電解液が充填されているリチウム二次電池にもある。
【0006】
リチウム二次電池では充電時、正極はリチウムイオンと電子を放出する事により電位が上昇し、負極はリチウムイオンと電子を吸蔵する事により電位が下降し、電気エネルギーが蓄えられる。放電時は上記の逆反応により電気エネルギーが放出される。一連の電気化学反応は可逆的である事が理想であるが、現実には充放電の繰り返しによって電池内部での不可逆的な化学変化が避けられないため、容量低下など電池性能の劣化が起きる。本発明者らは、かかる電池性能の劣化の主要因は正極上で電解液溶媒が酸化分解し、該分解物が正極上に徐々に堆積するなどして電池内部での望ましい電気化学反応を阻害するためではないかと推測した。というのもリチウム含有遷移金属酸化物を活物質として含む正極は電位の上昇にともなって酸化的となり、活性酸素等の強酸化剤を発生し易くなるものと考えられるからである。電解液溶媒の酸化分解を防ぐ目的で種々の化合物を添加してその効果を調べた結果、上記添加化合物が極めて有効である事を見出し本発明をなすに至った。
【0007】
添加化合物がなぜサイクル性を向上しているのかという理由については推測の域を出ないが、アリール基に隣接する炭素上の水素原子がラジカルとして引き抜かれ易い事から考えて、添加化合物が正極で発生した活性酸素と優先的に反応することにより、電解液溶媒の分解を防止しているものと思われる。
【0008】
次に添加化合物の添加方法、添加量について説明する。添加化合物は正極、負極、電解質のいずれに添加しても良いが、推定される作用機構から考えて電解液に添加する事が好ましい。添加量は、電解液1kg中1g乃至50gである。好ましくは電解液1kg中5gないし20gである。
【0009】
以下、本発明の非水電解液二次電池の製造方法について説明する。本発明の非水電解液二次電池は、正負の電極シートをセパレーターと共に巻回したもの(巻回群)を電池缶に挿入し、缶と電極を電気的に接続し、電解液を注入した後封口して作成する。また、必要に応じて各種の部材(封口板、リード板、ガスケット、外装材等)が用いられる。
【0010】
正(負)の電極シートは正(負)極の合剤を集電体の上に塗布、乾燥、圧縮する事により作成する事ができる。合剤の調製は正極(あるいは負極)材料および導電剤を混合し、結着剤(樹脂粉体のサスペンジョンまたはエマルジョン状のもの)、および分散媒を加えて混練混合し、引続いて、ミキサー、ホモジナイザー、ディゾルバー、プラネタリミキサー、ペイントシェイカー、サンドミル等の攪拌混合機、分散機で分散して行うことができる。分散媒としては水もしくは有機溶媒が用いられるが、水が好ましい。このほか、適宜分散剤、充填剤、イオン導電剤、圧力増強剤等の添加剤を添加しても良い。塗布は種々の方法で行うことが出来るが、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法及びスクイーズ法を挙げることが出来る。ブレード法、ナイフ法及びエクストルージョン法が好ましい。塗布は、0.1?100m/分の速度で実施されることが好ましい。この際、合剤ペーストの液物性、乾燥性に合わせて、上記塗布方法を選定することにより、良好な塗布層の表面状態を得ることが出来る。その塗布層の厚み、長さや巾は、電池の大きさにより決められる。典型的な塗布層の厚みは乾燥後圧縮された状態で10?1000μmである。塗布後の電極シートは、熱風、真空、赤外線、遠赤外線、電子線及び低湿風の作用により乾燥、脱水される。これらの方法は単独あるいは組み合わせて用いることが出来る。乾燥温度は80?350℃の範囲が好ましく、特に100?250℃の範囲が好ましい。乾燥後の含有量は2000ppm以下が好ましく、500ppm以下がより好ましい。電極シートの圧縮は、一般に採用されているプレス方法を用いることが出来るが、特に金型プレス法やカレンダープレス法が好ましい。プレス圧は、特に限定されないが、10kg/cm2?3t/cm2が好ましい。カレンダープレス法のプレス速度は、0.1?50m/分が好ましい。プレス温度は、室温?200℃が好ましい。
【0011】
本発明で用いられる正極材料はリチウム含有遷移金属酸化物である。好ましくはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Mo、Wから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムを主として含有する酸化物であって、リチウムと遷移金属のモル比が0.3乃至2.2の化合物である。より好ましくは、V、Cr、Mn、Fe、Co、Niから選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素とリチウムを主として含有する酸化物であって、リチウムと遷移金属のモル比が0.3乃至2.2の化合物である。なお主として存在する遷移金属に対し30モルパーセント未満の範囲でAl、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P、Bなどを含有していても良い。さらに好ましいリチウム含有遷移金属酸化物は、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixCobV1-bOz、LixCobFe1-bO2、LixMn2O4、LixMncCo2-CO4、LixMncNi2-cO4、LixMncV2-cO4、LixMncFe2-cO4(ここでx=0.7?1.2、a=0.1?0.9、b=0.8?0.98、c=1.6?1.96、z=2.01?2.3)である。最も好ましいリチウム含有遷移金属酸化物としては、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoaNi1-aO2、LixMn2O4、LixCobV1-bOz(x=0.7?1.2、a=0.1?0.9、b=0.9?0.98、z=2.01?2.3)があげられる。なお、xの値は充放電開始前の値であり、充放電により増減する。
【0012】
本発明の負極材料は周期表1,2,13,14,15族原子から選ばれる三種以上の原子を含む、主として非晶質のカルコゲン化合物または酸化物であることが好ましい。ここで言う主として非晶質とはCuKα線を用いたX線回折法で2θ値20°から40°に頂点を有するブロードな散乱帯を有する物であり、結晶性の回折線を有してもよい。好ましくは2θ値で40°以上70°以下に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°以上40°以下に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の500倍以下であることが好ましく、さらに好ましくは100倍以下であり、特に好ましくは5倍以下あり、最も好ましくは結晶性の回折線を有しないことである。
【0013】
本発明で用いられる好ましい負極材料は下記一般式(0)で表される。
一般式(0)M1M2pM4qM6r
式中、M1、M2は相異なりSi、Ge、Sn、Pb、P、B、Al、Sbから選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはSi、Ge、Sn、P、B、Alであり、特に好ましくはSi、Sn、P、B、Alである。M4はLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはK、Cs、Mg、Caで、特に好ましくはCs、Mgである。M6はO、S、Teから選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはO、Sであり、特に好ましくはOである。p、qは各々0.001?10であり、好ましくは0.01?5であり、特に好ましくは0.1?2である。rは1?50であり、好ましくは1?26であり、特に好ましくは1?6である。M1、M2の価数は特に限定されることはなく、単独価数であっても、各価数の混合物であっても良い。またM1、M2、M4の比はM2およびM4がM1に対して0.001?10モル当量の範囲において連続的に変化させることができ、それに応じM6の量(一般式(0)におけるrの値)も連続的に変化する。
【0014】
上記に挙げた化合物の中でも、下記一般式で表されるSnを主体とする非晶質酸化物もしくは硫化物が好ましい。
一般式 SnM3pM5qM7r
式中、M3はSi、Ge、Pb、P、B、Alから選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはSi、Ge、P、B、Alであり、特に好ましくはSi、P、B、Alである。M5はLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Baから選ばれる少なくとも一種であり、好ましくはCs、Mgで、特に好ましくはMgである。M7はO、Sから選ばれる少なくとも一種であり、Oが好ましい。p、qは各々0.01?5であり、好ましくは0.1?2である。rは1?20であり、好ましくは1?6である。当然の事ながら各条件の好ましいもの同士の組み合わせが最も好ましい。
【0015】
本発明において、特に優れた効果を得ることができるのはSnの価数が2価で存在する化合物である。Snの価数は化学滴定操作によって求めることができる。例えばPhysics and Chemistry of Glasses Vol.8 No.4(1967)の165頁に記載の方法で分析することができる。また、Snの固体核磁気共鳴(NMR)測定によるナイトシフトから決定することも可能である。例えば、幅広測定において金属Sn(0価のSn)はSn(CH3)4に対して7000ppm付近と極端に低磁場にピークが出現するのに対し、SnO(=2価)では100ppm付近、SnO2(=4価)では-600ppm付近に出現する。このように同じ配位子を有する場合、ナイトシフトが中心金属であるSnの価数に大きく依存するので119Sn-NMR測定で求められたピーク位置で価数の決定が可能となる。
【0016】
なお上記負極材料には微量の不純物元素を意図的に混入しても良い。不純物元素としては例えば、遷移金属(Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、ランタノイド系金属、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg)や周期表17族元素(F、Cl)などが挙げられる。また電子伝導性をあげる各種化合物(例えば、Sb、In、Nbの化合物)のドーパントを含んでも良い。
【0017】
上記負極材料の例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。SnAl0.4B0.5P0.5K0.1O3.65、SnAl0.4B0.5P0.5Na0.2O3.7、SnAl0.4B0.3P0.5Rb0.2O3.4、SnAl0.4B0.5P0.5Cs0.1O3.65、SnAl0.4B0.5P0.5K0.1Ge0.05O3.85、SnAl0.4B0.5P0.5K0.1Mg0.1Ge0.02O3.83、SnAl0.4B0.4P0.4O3.2、SnAl0.3B0.5P0.2O2.7、SnAl0.3B0.5P0.2O2.7、SnAl0.4B0.5P0.3Ba0.08Mg0.08O3.26、SnAl0.4B0.4P0.4Ba0.08O3.28、SnAl0.4B0.5P0.5O3.6、SnAl0.4B0.5P0.5Mg0.1O3.7。
【0018】
SnAl0.5B0.4P0.5Mg0.1F0.2O3.65、SnB0.5P0.5Li0.1Mg0.1F0.2O3.05、SnB0.5P0.5K0.1Mg0.1F0.2O3.05、SnB0.5P0.5K0.05Mg0.05F0.1O3.03、SnB0.5P0.5K0.05Mg0.1F0.2O3.03、SnAl0.4B0.5P0.5Cs0.1Mg0.1F0.2O3.65、SnB0.5P0.5Cs0.05Mg0.05F0.1O3.03、SnB0.5P0.5Mg0.1F0.1O3.05、SnB0.5P0.5Mg0.1F0.2O3、SnB0.5P0.5Mg0.1F0.06O3.07、SnB0.5P0.5Mg0.1F0.14O3.03、SnPBa0.08O3.58、SnPK0.1O3.55、SnPK0.05Mg0.05O3.58、SnPCs0.1O3.55、SnPBa0.08F0.08O3.54、SnPK0.1Mg0.1F0.2O3.55、SnPK0.05Mg0.05F0.1O3.53、SnPCs0.1Mg0.1F0.2O3.55、SnPCs0.05Mg0.05F0.1O3.53。
【0019】
Sn1.1Al0.4B0.2P0.6Ba0.08F0.08O3.54、Sn1.1Al0.4B0.2P0.6Li0.1K0.1Ba0.1F0.1O3.65、Sn1.1Al0.4B0.4P0.4Ba0.08O3.34、Sn1.1Al0.4PCs0.05O4.23、Sn1.1Al0.4PK0.05O4.23、Sn1.2Al0.5B0.3P0.4Cs0.2O3.5、Sn1.2Al0.4B0.2P0.6Ba0.08O3.68、Sn1.2Al0.4B0.2P0.6Ba0.08F0.08O3.64、Sn1.2Al0.4B0.2P0.6Mg0.04Ba0.04O3.68、Sn1.2Al0.4B0.3P0.5Ba0.08O3.58、Sn1.3Al0.3B0.3P0.4Na0.2O3.3、Sn1.3Al0.2B0.4P0.4Ca0.2O3.4、Sn1.3Al0.4B0.4P0.4Ba0.2O3.6、Sn1.4Al0.4PK0.2O4.6、Sn1.4Al0.2Ba0.1PK0.2O4.45、Sn1.4Al0.2Ba0.2PK0.2O4.6、Sn1.4Al0.4Ba0.2PK0.2Ba0.1F0.2O4.9、Sn1.4Al0.4PK0.3O4.65、Sn1.5Al0.2PK0.2O4.4、Sn1.5Al0.4PK0.1O4.65、Sn1.5Al0.4PCs0.05O4.63、Sn1.5Al0.4PCs0.05Mg0.1F0.2O4.63。
【0020】
SnSi0.5Al0.1B0.2P0.1Ca0.4O3.1、SnSi0.4Al0.2B0.4O2.7、SnSi0.5Al0.2B0.1P0.1Mg0.1O2.8、SnSi0.6Al0.2B0.2O2.8、SnSi0.5Al0.3B0.4P0.2O3.55、SnSi0.5Al0.3B0.4P0.5O4.30、SnSi0.6Al0.1B0.1P0.3O3.25、SnSi0.6Al0.1B0.1P0.1Ba0.2O2.95、SnSi0.6Al0.1B0.1P0.1Ca0.2O2.95、SnSi0.6Al0.4B0.2Mg0.1O3.2、SnSi0.6Al0.1B0.3P0.1O3.05、SnSi0.6Al0.2Mg0.2O2.7、SnSi0.6Al0.2Ca0.2O2.7、SnSi0.6Al0.2P0.2O3、SnSi0.6B0.2P0.2O3、SnSi0.8Al0.2O2.9、SnSi0.8Al0.3B0.2P0.2O3.85、SnSi0.8B0.2O2.9、SnSi0.8Ba0.2O2.8、SnSi0.8Mg0.2O2.8、SnSi0.8Ca0.2O2.8、SnSi0.8P0.2O3.1。
【0021】
Sn0.9Mn0.3B0.4P0.4Ca0.1Rb0.1O2.95、Sn0.9Fe0.3B0.4P0.4Ca0.1Rb0.1O2.95、Sn0.8Pb0.2Ca0.1P0.9O3.35、Sn0.3Ge0.7Ba0.1P0.9O3.35、Sn0.9Mn0.1Mg0.1P0.9O3.35、Sn0.2Mn0.8Mg0.1P0.9O3.35、Sn0.7Pb0.3Ca0.1P0.9O3.35、Sn0.2Ge0.8Ba0.1P0.9O3.35。
【0022】
上記負極材料は焼成法または溶接法にて合成することができる。例えば焼成法について詳細に説明するとM1化合物、M2化合物とM4化合物(M1、M2は相異なりSi、Ge、Sn、Pb、P、B、Al、Sb、M4はMg、Ca、Sr、Ba)を混合し、焼成すればよい。
【0023】
Sn化合物としてはたとえばSnO、SnO2、Sn2O3、Sn3O4、Sn7O13・H2O、Sn8O15、水酸化第一錫、オキシ水酸化第二錫、亜錫酸、蓚酸第一錫、燐酸第一錫、オルト錫酸、メタ錫酸、パラ錫酸、弗化第一錫、弗化第二錫、塩化第一錫、塩化第二錫、ピロリン酸第一錫、リン化錫、硫化第一錫、硫化第二錫、等を挙げることができる。Si化合物としてはたとえばSiO2、SiO、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン等の有機珪素化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、トリクロロハイドロシラン等のハイドロシラン化合物を挙げることができる。Ge化合物としてはたとえばGeO2、GeO、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド等のアルコキシゲルマニウム化合物等を挙げることができる。Pb化合物としてはたとえばPbO2、PbO、Pb2O3、Pb3O4、硝酸鉛、炭酸鉛、蟻酸鉛、酢酸鉛、四酢酸鉛、酒石酸鉛、鉛ジエトキシド、鉛ジ(イソプロポキシド)等を挙げることができる。P化合物としてはたとえば五酸化リン、オキシ塩化リン、五塩化リン、三塩化リン、三臭化リン、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸、トリプロピルリン酸、ピロリン酸第一錫、リン酸ホウ素等を挙げることができる。B化合物としてはたとえば三二酸化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、炭化ホウ素、ほう酸、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリプロピル、ほう酸トリブチル、リン化ホウ素、リン酸ホウ素等を挙げることができる。Al化合物としてはたとえば酸化アルミニウム(α-アルミナ、β-アルミナ)、ケイ酸アルミニウム、アルミニウムトリ-iso-プロポキシド、亜テルル酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ホウ化アルミニウム、リン化アルミニウム、リン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ほう酸アルミニウム、硫化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ホウ化アルミニウム等を挙げることができる。Sb化合物としてはたとえば三酸化二アンチモン、トリフェニルアンチモン等を挙げることができる。Mg、Ca、Sr、Ba化合物としては、各々の酸化塩、水酸化塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩等を挙げることができる。
【0024】
焼成条件としては、昇温速度が毎分4℃以上、200℃以下であることが好ましい。好ましい焼成温度は300℃以上、1500℃以下である。好ましい焼成時間は10分以上、50時間以下である。降温速度は毎分2℃以上、200℃以下であることが好ましい。本発明における昇温速度とは「焼成温度(℃表示)の50%」から「焼成温度(℃表示)の80%」に達するまでの温度上昇の平均速度であり、本発明における降温速度とは「焼成温度(℃表示)の80%」から「焼成温度(℃表示)の50%」に達するまでの温度降下の平均速度である。降温は焼成炉中で冷却してもよくまた焼成炉外に取り出して、例えば水中に投入して冷却してもよい。またセラミックスプロセッシング(技報堂出版1987)217頁記載のgun法、Hammer-Anvil法・slap法・ガスアトマイズ法・プラズマスプレー法・遠心急冷法・melt drag法などの超急冷法を用いることもできる。またニューガラスハンドブック(丸善1991)172頁記載の単ローラー法、双ローラー法を用いて冷却してもよい。焼成中に溶融する材料の場合には、焼成中に原料を供給しつつ焼成物を連続的に取り出してもよい。焼成中に溶融する材料の場合には融液を攪拌することが好ましい。
【0025】
焼成ガス雰囲気は好ましくは酸素含有率が5体積%以下の雰囲気であり、さらに好ましくは不活性ガス雰囲気である。不活性ガスとしては例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン等が挙げられる。上記焼成されて得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の重量差から算出できる。
【0026】
上記負極材料は粉砕、分級して所定の粒子サイズに整えられる。粉砕、分級には良く知られた粉砕機や分級機(例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミルや篩など)が用いられる。粉砕時には水、あるいはメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も必要に応じて行うことができる。分級方法としては特に限定はなく、篩、風力分級機、水ひなどを必要に応じて用いることができる。平均粒子サイズ0.1?60μmが好ましく、1.0?30μmが特に好ましく、2.0?20μmがさらに好ましい。
【0027】
本発明で使用される導電剤は、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。具体例としては、鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、石油コークス、石炭コークス、セルロース類、糖類、メソフェースピッチ等の高温焼成体、気相成長黒鉛等の人工黒鉛等のグラファイト類、アセチレンブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、アスファルトピッチ、コールタール、活性炭、メソフューズピッチ、ポリアセン等の炭素材料、金属繊維等の導電性繊維類、銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉類、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物等を挙げる事ができる。これらの中では、グラファイトやカーボンブラックが好ましい。これらは単独で用いても良いし、混合物として用いても良い。導電剤の合剤層への添加量は、負極材料または正極材料に対し6?50重量%であることが好ましい。特に6?30重量%であることが好ましい。カーボンブラックやグラファイトでは、6?20重量%であることが特に好ましい。
【0028】
本発明では電極合剤を保持するために結着剤を用いる。結着剤の例としては、多糖類、熱可塑性樹脂及びゴム弾性を有するポリマー等が挙げられる。好ましい結着剤としては、でんぷん、カルボキシメチルセルロース、セルロース、ジアセチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸Na、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸Na、ポリビニルフェノール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレート、スチレン-マイレン酸共重合体等の水溶性ポリマー、ポリビニルクロリド、ポリテトラフルロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフロロエチレン-ヘキサフロロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド-テトラフロロエチレン-ヘキサフロロプロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、ポリビニルアセタール樹脂、メチルメタアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-アクリロニトリル共重合体、ビニルアセテート等のビニルエステルを含有するポリビニルエステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエーテルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等のエマルジョン(ラテックス)あるいはサスペンジョンを挙げることが出来る。特にポリアクリル酸エステル系のラテックス、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンが挙げられる。これらの結着剤は単独または混合して用いる事が出来る。結着剤の添加量が少ないと電極合剤の保持力・凝集力が弱い。多すぎると電極体積が増加し電極単位体積あるいは単位重量あたりの容量が減少する。このような理由で結着剤の添加量は1?30重量%が好ましく、特に2?10重量%が好ましい。
【0029】
充填剤は、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、0?30重量%が好ましい。イオン導電剤は、無機及び有機の固体電解質として知られている物を用いることができ、詳細は電解液の項に記載されている。圧力増強剤は、後述の内圧を上げる化合物であり、炭酸塩が代表例である。
【0030】
本発明で使用できる集電体は正極はアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金であり、負極は銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、またはこれらの合金である。集電体の形態は箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル、もしくは金網である。特に、正極にはアルミニウム箔、負極には銅箔が好ましい。
【0031】
本発明で使用できるセパレータは、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を持ち、絶縁性の薄膜であれば良く、材質として、オフィレン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン、ガラス繊維、アルミナ繊維が用いられ、形態として、不織布、織布、微孔性フィルムが用いられる。特に、材質として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレンとポリエチレンの混合体、ポリプロピレンとテフロンの混合体、ポリエチレンとテフロンの混合体が好ましく、形態として微孔性フィルムであるものが好ましい。特に、孔径が0.01?1μm、厚みが5?50μmの微孔性フィルムが好ましい。
【0032】
電解液は一般に支持塩と溶媒から構成される。リチウム二次電池における支持塩はリチウム塩が主として用いられる。本発明で使用出来るリチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウムなどのLi塩を挙げることが出来、これらの一種または二種以上を混合して使用することができる。なかでもLiBF4及び/あるいはLiPF6を溶解したものが好ましい。支持塩の濃度は、特に限定されないが、電解液1リットル当たり0.2?3モルが好ましい。
【0033】
本発明で使用できる溶媒は、環状カーボネートと非環状カーボネートを混合した混合溶媒である。環状カーボネートとしてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。また、非環状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。
【0034】
本発明で使用できる電解液としては、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒に前記添加化合物を所定量溶解した溶液に、LiCF3SO3、LiClO4、LiBF4および/またはLiPF6を含む電解液が好ましい。特にプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネートの少なくとも一方とジメチルカーボネートもしくはジエチルカーボネートの少なくとも一方の混合溶媒に前記添加化合物を所定量溶解した溶液に、LiCF3SO3、LiClO4、もしくはLiBF4の中から選ばれた少なくとも一種の塩とLiPF6を含む電解液が好ましい。これら電解液を電池内に添加する量は特に限定されず、正極材料や負極材料の量や電池のサイズに応じて用いることができる。
【0035】
また、電解液の他に次の様な固体電解質も併用することができる。固体電解質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられる。無機固体電解質には、Liの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知れらている。なかでも、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、xLi3PO4-(1-x)Li4SiO4、Li2SiS3、硫化リン化合物などが有効である。有機固体電解質では、ポリエチレンオキサイド誘導体か該誘導体を含むポリマー、ポリプロピレンオキサイド誘導体あるいは該誘導体を含むポリマー、イオン解離基を含むポリマー、イオン解離基を含むポリマーと上記非プロトン性電解液の混合物、リン酸エステルポリマー、非プロトン性極性溶媒を含有させた高分子マトリックス材料が有効である。さらに、ポリアクリロニトリルを電解液に添加する方法もある。また、無機と有機固体電解質を併用する方法も知られている。
【0036】
また、放電や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加しても良い。例えば、ピリジン、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノンとN,N’-置換イミダリジノン、エチレングリコールジアルキルエーテル、第四級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール、ピロール、2-メトキシエタノール、AlCl3、導電性ポリマー電極活物質のモノマー、トリエチレンホスホルアミド、トリアルキルホスフィン、モルホリン、カルボニル基を持つアリール化合物、12-クラウン-4のようなクラウンエーテル類、ヘキサメチルホスホリックトリアミドと4-アルキルモルホリン、二環性の三級アミン、オイル、四級ホスホニウム塩、三級スルホニウム塩などを挙げることができる。
【0037】
また、電解液を不燃性にするために含ハロゲン溶媒、例えば、四塩化炭素、三弗化塩化エチレンを電解液に含ませることができる。また、高温保存に適正を持たせるために電解液に炭酸ガスを含ませることができる。
【0038】
電解液は、全量を1回で注入してもよいが、2回以上に分けて注入することが好ましい。2回以上に分けて注入する場合、それぞれの液は同じ組成でも、違う組成(例えば、非水溶媒あるいは非水溶媒によりリチウム塩を溶解した溶液を注入した後、前記溶媒より粘度の高い非水溶媒あるいは非水溶媒にリチウム塩を溶解した液を注入)でも良い。また、電解液の注入時間の短縮等のために、電池缶を減圧したり、電池缶に遠心力や超音波をかけることを行ってもよい。
【0039】
本発明で使用できる電池缶および電池蓋は材質としてニッケルメッキを施した鉄鋼版、ステンレス鋼版(SUS304、SUS304L、SUS304N、SUS316、SUS430、SUS444等)、ニッケルメッキを施したステンレス鋼版(同上)、アルミニウムまたはその合金、ニッケル、チタン、銅であり、形状として、真円形筒状、楕円形筒状、正方形筒状、長方形筒状である。特に、外装缶が負極端子を兼ねる場合は、ステンレス鋼版、ニッケルメッキを施した鉄鋼版が好ましく、外装缶が正極端子を兼ねる場合は、ステンレス鋼版、アルミニウムまたはその合金が好ましい。電池缶の形状はボタン、コイン、シート、シリンダー、角などのいずれでも良い。電池缶の内圧上昇の対策として封口板に安全弁を用いることができる。この他、電池缶やガスケット等の部材に切り込みを入れる方法も利用することが出来る。この他、従来から知られている種々の安全素子(例えば、過電流防止素子として、ヒューズ、バイメタル、PTC素子等)を備えつけても良い。
【0040】
本発明で使用するリード版には、電気伝導性をもつ金属(例えば、鉄、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、銅、アルミニウム等)やそれらの合金を用いることが出来る。電池蓋、電池缶、電極シート、リード板の溶接法は、公知の方法(例、直流または交流の電気溶接、レーザー溶接、超音波溶接)を用いることが出来る。封口用シール剤は、アスファルト等の従来から知られている化合物や混合物を用いることが出来る。
【0041】
本発明で使用できるガスケットは、材質として、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ポリアミドであり、耐有機溶媒性及び低水分透過性から、オレフィン系ポリマーが好ましく、特にプロピレン主体のポリマーが好ましい。さらに、プロピレンとエチレンのブロック共重合ポリマーであることが好ましい。
【0042】
本発明の電池は必要に応じて外装材で被覆される。外装材としては、熱収縮チューブ、粘着テープ、金属フィルム、紙、布、塗料、プラスチックケース等がある。また、外装の少なくとも一部に熱で変色する部分を設け、使用中の熱履歴がわかるようにしても良い。
【0043】
本発明の電池は必要に応じて複数本を直列及び/または並列に組み電池パックに収納される。電池パックには正温度係数抵抗体、温度ヒューズ、ヒューズ及び/または電流遮断素子等の安全素子の他、安全回路(各電池及び/または組電池全体の電圧、温度、電流等をモニターし、必要なら電流を遮断する機能を有す回路)を設けても良い。また電池パックには、組電池全体の正極及び負極端子以外に、各電池の正極及び負極端子、組電池全体及び各電池の温度検出端子、組電池全体の電流検出端子等を外部端子として設けることもできる。また電池パックには、電圧変換回路(DC-DCコンバータ等)を内蔵しても良い。また各電池の接続は、リード板を溶接することで固定しても良いし、ソケット等で容易に着脱できるように固定しても良い。さらには、電池パックに電池残存容量、充電の有無、使用回数等の表示機能を設けても良い。
【0044】
本発明の電池は様々な機器に使用される。特に、ビデオムービー、モニター内蔵携帯型ビデオデッキ、モニター内蔵ムービーカメラ、コンパクトカメラ、一眼レフカメラ、レンズ付きフィルム、ノート型パソコン、ノート型ワープロ、電子手帳、携帯電話、コードレス電話、ヒゲソリ、電動工具、電動ミキサー、自動車等に使用されることが好ましい。
【0045】
【実施例】
以下に具体例をあげ、本発明をさらに詳しく説明するが、発明の趣旨を超えない限り、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0046】
[実施例-1]
〔正極合剤ペーストの作成〕
正極材料;LiCoO2(炭酸リチウムと四酸化三コバルトと3:2のモル比で混合したものをアルミナるつぼにいれ、空気中、毎分2℃で750℃に昇温し4時間仮焼した後、さらに毎分2℃の速度で900℃に昇温しその温度で8時間焼成し解砕したもの。中心粒子サイズ5μm、洗浄品50gを100mlの水に分散したときの分散液の電導度は0.6mS/m、pHは10.1、窒素吸着法による比表面積は0.42m2/g)を200gとアセチレンブラック10gとを、ホモジナイザーで混合し、続いて結着剤として2-エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とアクリロニトリルの共重合体の水分散物(固形分濃度50重量%)を8g、濃度2重量%のカルボキシメチルセルロース水溶液を60gを加え混練混合し、さらに水を50g加え、ホモジナイザーで攪拌混合し、正極合剤ペーストを作成した。
【0047】
〔負極合剤ペーストの作成〕
負極材料;SnGe0.1B0.5P0.58Mg0.1K0.1O3.35(一酸化錫6.7g、ピロリン酸錫10.3g、三酸化二硼素1.7g、炭酸カリウム0.7g、酸化マグネシウム0.4g、二酸化ゲルマニウム1.0gを乾式混合し、アルミナ製るつぼに入れ、アルゴン雰囲気下15℃/分で1000℃まで昇温し、1100℃で12時間焼成した後、10℃/分で室温にまで降温し焼成炉より取り出したものを集め、ジェットミル粉砕したもの、平均粒径4.5μm、CuKα線を用いたX線回折法において2θ値で28°付近に頂点を有するブロードなピークを有する物であり、2θ値で40°以上70°以下には結晶性の回折線は見られなかった。)を200g、導電剤(人造黒鉛)30gとホモジナイザーで混合し、さらに結着剤として濃度2重量%カルボキシメチルセルロース水溶液50g、ポリフッ化ビニリデン10gとを加え混合したものと水を30g加えさらに混練混合し、負極合剤ペーストを作成した。
【0048】
〔正極および負極電極シートの作成〕
上記で作成した正極合剤ペーストをブレードコーターで厚さ30μmのアルミニウム箔集電体の両面に、塗布量400g/m2、圧縮後のシートの厚みが280μmになるように塗布し、乾燥した後、ローラープレス機で圧縮成型し所定の大きさに裁断し、帯状の正極シートを作成した。さらにドライボックス(露点;-50℃以下の乾燥空気)中で遠赤外線ヒーターにて十分脱水乾燥し、正極シートを作成した。同様に、負極合剤ペーストを20μmの銅箔集電体に塗布し、上記正極シート作成と向様の方法で、塗布量70g/m2、圧縮後のシートの厚みが90μmである負極シートを作成した。
【0049】
〔電解液調製〕
アルゴン雰囲気で、200ccの細口のポリプロピレン容器に65.3gの炭酸ジエチル(ジエチルカーボネート)をいれ、これに液温が30℃を超えないように注意しながら、22.2gの炭酸エチレン(エチレンカーボネート)を少量ずつ溶解した。次に、0.4gのLiBF4、12.1gのLiPF6を液温が30℃を超えないように注意しながら、それぞれ順番に、上記ポリプロピレン容器に少量ずつ溶解した。得られた電解液(電解液1)は比重1.135で無色透明の液体であった。水分は18ppm(京都電子製商品名MKC-210型カールフィシャー水分測定装置で測定)、遊離酸分は24ppm(ブロムチモールブルーを指示薬とし、0.1規定NaOH水溶液を用いて中和滴定して測定)であった。さらにこの電解液1に1,2,3,4-テトラヒドロナフタレンを所定濃度になるようにそれぞれ溶解させて、電解液2乃至6を調製した。
【0050】
〔シリンダー電池の作成〕
正極シート、微孔性ポリプロピレンフィルム製セパレーター、負極シートおよびセパレーターの順に積層し、これを渦巻き状に巻回した。この巻同体を負極端子を兼ねるニッケルメッキを施した鉄製の有底円筒型電池缶に収納したものを6個用意した。各々の電池缶内に電解液をそれぞれ注入し、正極端子を有する電池蓋をガスケットを介してかしめて円筒型電池を作成した。上記の方法で作成した電池について、電流密度4.8mA/cm2、充電終止電圧4.1V、放電終止電圧2.8Vの条件で充放電を繰り返し、各サイクルにおける放電容量を求めた。表1に、作成した電池の相対容量(各電池の1サイクル目の容量を電池1の容量で規格化したもの)およびサイクル性(各電池の1サイクル目の放電容量に対する300サイクルめの放電容量の割合)を示した。
【0051】
[実施例-2]
負極材料として黒鉛粉末を用いる以外は実施例1と同様の方法で円筒型電池(電池番号1a、2a)を作成した。上記の方法で作成した電池について、電流密度4.8mA/cm2、充電終止電圧4.1V、放電終止電圧2.8Vの条件で充放電を繰り返し、各サイクルにおける放電容量を求めた。表2に、作成した電池の相対容量(各電池の1サイクル目の容量を表1の電池1の容量で規格化したもの)およびサイクル性(各電池の1サイクル目の放電容量に対する300サイクルめの放電容量の割合)を示した。
【0052】

【0053】

【0054】
表1と表2より、本発明の添加化合物を添加した場合サイクル性を向上する事がわかる。添加量の効果を見ると添加濃度が1重量パーセントの場合がサイクル性が良く好ましい。負極材料として黒鉛を用いた場合は初めから容量が小さい。
【0055】
【発明の効果】
本発明の化合物を用いれば容量が高く、充放電繰り返しによる放電容量の低下の少ない非水電解液二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例に使用したシリンダー型電池の断面図を示す。
【符合の説明】
1 ポリプロピレン製ガスケット
2 負極端子を兼ねる負極缶(電池缶)
3 セパレーター
4 負極シート
5 正極シート
6 非水電解液
7 防爆弁体
8 正極端子を兼ねる電池蓋
9 PCT素子
10 内部フタ体
11 リング
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-06-20 
出願番号 特願平8-230072
審決分類 P 1 651・ 55- ZA (H01M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 青木 千歌子  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 吉水 純子
酒井 美知子
登録日 2003-04-11 
登録番号 特許第3417228号(P3417228)
権利者 宇部興産株式会社
発明の名称 非水電解液及びリチウム二次電池  
代理人 柳川 泰男  
代理人 柳川 泰男  

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