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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1148750
審判番号 不服2004-511  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-07 
確定日 2006-12-04 
事件の表示 平成7年特許願第282423号「レーザーマーキング用樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成9年4月15日出願公開、特開平9-100390〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年10月5日の出願であって、平成15年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年2月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月4日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年2月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の平成15年11月4日付けの手続補正書の特許請求の範囲、
「【請求項1】 ゴム状重合体(a)の存在下または非存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸およびマレイミド化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を重合して得られる(A)ビニル系重合体10?99重量部と、(B)他の熱可塑性樹脂(ただし、他の熱可塑性樹脂がポリカーボネートの場合は粘度平均分子量は10,000?40,000であり、また他の熱可塑性樹脂としてポリエステルの単独使用を除く)90?1重量部の合計量100重量部[ただし、(A)?(B)成分の組み合わせとして商品名:Bayblend FRを除く]に対し、(C)着色剤(ただし、低次酸化チタンの単独使用を除く)0.001?5重量部を配合してなるレーザーマーキング用樹脂組成物。」
を、

「【請求項1】 ゴム状重合体(a)の存在下または非存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸およびマレイミド化合物の群から選ばれた少なくとも1種の単量体成分(b)〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を重合して得られる(A)ビニル系重合体10?99重量部と、(B)ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルエステルケトン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、及びノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種である他の熱可塑性樹脂90?1重量部の合計量100重量部に対し(ただし、上記(A)及び(B)の組合せとして、商品名「Bayblend FR90」を除く。)、(C)着色剤(低次酸化チタンを含む着色剤を除く。)0.001?5重量部を配合してなるレーザーマーキング用樹脂組成物。」
と補正することを含むものである。

(2)補正の適否
上記補正の適否について検討するに、補正前の「(B)他の熱可塑性樹脂(ただし、他の熱可塑性樹脂がポリカーボネートの場合は粘度平均分子量は10,000?40,000であり、また他の熱可塑性樹脂としてポリエステルの単独使用を除く)90?1重量部の合計量100重量部[ただし、(A)?(B)成分の組み合わせとして商品名:Bayblend FRを除く]に対し」を、補正後の「(B)ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリエーテルエステルケトン、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ポリウレタン、及びノボラック樹脂から選ばれた少なくとも1種である他の熱可塑性樹脂90?1重量部の合計量100重量部に対し(ただし、上記(A)及び(B)の組合せとして、商品名「Bayblend FR90」を除く。)」にする補正は、補正前の請求項1に記載した発明から、「粘度平均分子量は10,000?40,000」との発明特定事項を削除するものであり、これにより「他の熱可塑性樹脂がポリカーボネートの場合」に「粘度平均分子量」が「10,000?40,000」ではないものにまで特許請求の範囲が拡張されることになるので、上記補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また、同1号に掲げられた請求項の削除、同3号に掲げられた誤記の訂正、同4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。

(3)まとめ
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、その余のことを検討するまでもなく、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年2月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明は、平成13年9月25日付け及び平成15年11月4日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用例及び記載事項
原査定の拒絶の理由に先願3として引用された、本件出願の日前の平成6年10月31日の特許出願であって、その出願後に特開平8-127670号公報として出願公開された、特願平6-266899号の出願の願書に最初に添付された明細書(以下、「先願明細書」という。)には、次の事項が記載されている。

記載事項A:請求項1
「【請求項1】 (A)熱可塑性樹脂100重量部に対して(B)低次酸化チタンを0.001?20重量部配合してなるレーザーマーキング用樹脂組成物。」

記載事項B:段落0003
「【0003】 レーザーマーキングを効果的に施すには、プラスチックを予め感光し易いように改質しておく必要がある。これは、材料の中に光や熱を吸収する充填剤を予め配合しておくことによってレーザー照射時に発泡、分解等によってマーキングが可能となる技術である。例えば、特開平1-254743号公報には、YAGレーザーによるプラスチックスのマーキング性の改善手段に白色の二酸化チタン又はこれとカーボンブラックを配合することが開示されている。」

記載事項C:段落0006
「【0006】 …本発明において(A)成分として用いる熱可塑性樹脂としては特に限定されるものではなく、…本発明においては芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂またはポリブチレンテレフタレート樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂の単独あるいは2種以上を混合して使用することが好ましく、最も好ましくは芳香族ポリカーボネート樹脂である。」

記載事項D:段落0013
「【0013】 本発明で使用されるスチレン系ポリマーとしては、ABS樹脂、AES樹脂および、ポリスチレン・AS樹脂、MBS樹脂などを挙げることができる。」

記載事項E:段落0018?0020
「【0018】 (B)成分として使用する低次酸化チタンでは、従来使用されているカーボンブラックが黄色味を帯びたマーキングになるのに対して、マーキング部の白色度が著しく高くなり高視認性のマーキングが得られる。…低次酸化チタンの配合割合は、(A)成分である熱可塑性樹脂100重量部に対して低次酸化チタンを0.001?20重量部であり、特に好ましくは0.1?1重量部である。…
【0019】 本発明において用いられる樹脂組成物には、さらには少量のカーボンブラックを配合することができる。…このカーボンブラックの配合割合は、(A)成分である熱可塑性樹脂組成物100重量部に対してカーボンブラック0.01?1重量部である。低次酸化チタンの配合量に対するカーボンブラックの配合量比が大きくなるとレーザーによる発熱量が多くなり樹脂の熱変色が進みマーキング色が黄色く変色し、視認性が悪くなるので使用量は制限される。
【0020】 本発明において用いられる熱可塑性樹脂組成物には、白色、黒色系着色剤を配合することは可能であるが、マーキングの白色度を重視する点で、白色、黒色系以外の着色剤は配合しない方がよい。」

記載事項F:段落0026?0028
「【0026】 PC;ビスフェノールAとホスゲンより製造される粘度平均分子量25、000の芳香族ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株) パンライト L-1250)… ABS;スチレン系樹脂(三井東圧化学(株)製 UT-61) 低次酸化チタン;三菱マテリアル(株)製 13M ファーネスブラック;三菱マテリアル(株)製 MA-100…
【0028】【表1】
組成 実施例(重量部)
… 2 … 6 …
PC 100 … 50 …
ABS … 50 …
低次酸化チタン 0.3 … 0.3 …
ファーネスブラック 0.05 … …」

(3)対比・判断
先願明細書には、「(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して(B)低次酸化チタンを0.001?20重量部配合してなるレーザーマーキング用樹脂組成物。」であって(記載事項A)、(A)成分として用いる熱可塑性樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂の2種以上を混合して使用することが好ましく(記載事項C)、使用されるスチレン系ポリマーとしては、ABS樹脂、AES樹脂および、ポリスチレンなどを挙げることができ(記載事項D)、(A)成分である熱可塑性樹脂組成物100重量部に対してカーボンブラック0.01?1重量部をさらに配合することができ、低次酸化チタンの配合割合は、特に好ましくは(A)成分100重量部に対して0.1?1重量部である(記載事項E)、レーザーマーキング用樹脂組成物が記載されている。

本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と先願明細書に記載された発明(以下、「先願発明」という。)とを比較する。

まず、先願発明の「ABS樹脂、AES樹脂および、ポリスチレン」などの「スチレン系樹脂」について、先願発明の「ABS樹脂、AES樹脂」は本願明細書の段落0020の「(A)成分の好ましい組合せは、…ABS樹脂(またはAES樹脂)」との記載からみて本願発明の「(A)ビニル系重合体」に相当するものと解され、先願発明の「ポリスチレン」はスチレンの単重合体であって、「スチレン」は本願明細書の段落0010の「単量体成分(b)を構成する芳香族ビニル化合物としては、スチレン」との記載からみて本願発明の「芳香族ビニル化合物」に該当するから、先願発明の「ポリスチレン」は本願発明の「ゴム状重合体(a)の非存在下に、芳香族ビニル化合物の単量体線分(b)を重合して得られる(A)ビニル系重合体」に相当するものである。よって、先願発明の「スチレン系樹脂」は、本願発明の「ゴム状重合体(a)の存在下または非存在下に、芳香族ビニル化合物の単量体成分(b)〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を重合して得られる(A)ビニル系重合体」との発明特定事項を満たすものである。

次に、先願発明の「芳香族ポリカーボネート樹脂」は、「ポリエステルの単独使用」に該当しないものであり、先願明細書の段落0026の「粘度平均分子量25、000の芳香族ポリカーボネート」との記載からみて(記載事項F)、その粘度平均分子量が25、000であるものを含むものであるから、本願発明の「(B)他の熱可塑性樹脂(ただし、他の熱可塑性樹脂がポリカーボネートの場合は粘度平均分子量は10,000?40,000であり、また他の熱可塑性樹脂としてポリエステルの単独使用を除く)」との発明特定事項を満たすものである。

そして、先願発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂の2種を混合して使用する場合を含むものであって、その配合比としては、先願明細書の段落0028に示されるように、PC(芳香族ポリカーボネート樹脂)50重量部に対して、ABS(スチレン系樹脂)50重量部である場合が含まれ(記載事項F)、かつ、平成15年11月4日付けの意見書の『先願1の…「Bayblend FR90」とは、…「ABS+ポリカーボネート、防炎剤を含む」』との記載を参酌するに、「防炎剤」を必須成分としていない先願発明の樹脂混合物は「Bayblend FR90」ではないと解されるから、先願発明の樹脂混合物は、本願発明の「(A)ビニル系重合体10?99重量部と、(B)他の熱可塑性樹脂90?1重量部の合計量100重量部[ただし、(A)?(B)成分の組み合わせとして商品名:Bayblend FRを除く]」との発明特定事項を満たすものである。

さらに、先願発明の「低次酸化チタン」及び「カーボンブラック」は、先願明細書の段落0003の「光や熱を吸収する充填剤を予め配合しておくことによってレーザー照射時に…マーキングが可能となる…カーボンブラックを配合する」との記載(記載事項B)、同0018の「低次酸化チタンでは…高視認性のマーキングが得られる」との記載(記載事項E)、並びに本願明細書の段落0036の「(C)着色剤は、…光エネルギーを熱エネルギーに変換することで、マーキングする」との記載からみて、本願発明の「着色剤」に相当し、カーボンブラックを併用する場合は「低次酸化チタンを単独使用」する場合に該当しないから、先願発明の「低次酸化チタン」及び「カーボンブラック」は、本願発明の「(C)着色剤(ただし、低次酸化チタンの単独使用を除く)」に相当するものと解され、先願発明の着色剤の配合割合は、その(A)成分である熱可塑性樹脂100重量部に対して、「低次酸化チタン」については「特に好ましくは0.1?1重量部」、「カーボンブラック」については「0.01?1重量部」であって、その総和は「0.11?2重量部」となるので、本願発明の「0.001?5重量部」との発明特定事項を満たすものである。

してみると、本願発明と先願発明とは、「ゴム状重合体(a)の存在下または非存在下に、芳香族ビニル化合物の単量体成分(b)〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を重合して得られる(A)ビニル系重合体50重量部と、(B)他の熱可塑性樹脂(ただし、他の熱可塑性樹脂がポリカーボネートの場合は粘度平均分子量は10,000?40,000であり、また他の熱可塑性樹脂としてポリエステルの単独使用を除く)50重量部の合計量100重量部[ただし、(A)?(B)成分の組み合わせとして商品名:Bayblend FRを除く]に対し、(C)着色剤(ただし、低次酸化チタンの単独使用を除く)0.11?2重量部を配合してなるレーザーマーキング用樹脂組成物。」という点で一致し、両者に相違する点はない。

したがって、本願発明は、先願発明(本件出願の日前の他の特許出願であって、本件出願後に出願公開がされた上記の特許出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明)と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-03 
結審通知日 2006-10-10 
審決日 2006-10-23 
出願番号 特願平7-282423
審決分類 P 1 8・ 161- Z (C08L)
P 1 8・ 572- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 木村 敏康
井上 彌一
発明の名称 レーザーマーキング用樹脂組成物  
代理人 小島 清路  

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