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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1148753
審判番号 不服2004-19691  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-03-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2006-12-04 
事件の表示 特願2001-281022「スキャナーノート」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月20日出願公開、特開2003- 87466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年9月17日の出願であって、平成16年8月20日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成16年10月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成16年10月25日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】ノート型のスキャナーノート本体を備え、このスキャナーノート本体の表面に液晶表示部を有する表示ユニットを設けるとともに、スキャナーノート本体には読取ユニットと印字ユニットを内蔵させ、文字・図形等の画像を書き込んだ書込みボードを別途用意し、スキャナーノート本体の液晶表示部の裏側に配置した読取ガイドに書込みボードをセットして、書込みボードを液晶表示部と平行に相対移動させて読取ユニットを通過させることにより、読取ユニットで書込みボード上の画像を読み取って、上記表示ユニットの液晶表示部に表示するようにしたことを特徴とするスキャナーノート。」と補正された。

上記補正は、補正前の平成16年6月28日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「液晶表示部」について限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-139785号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像の読み取り並びに手書き入力等が可能で、持ち運びや移動が簡単にできる小形で軽量化されたパーソナル形電子入力装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】今日、持ち運びに便利なハンディタイプの電子入力装置が普及し、各種のものが出廻っている。この中には、画像を読み取るイメージスキャナ(画像読取装置)と、このイメージスキャナで読み取られた画像情報を処理して表示する表示器とを備えたシステムもある。この場合のシステムとしては、表示器とイメージスキャナは分離されており、互いにケーブルで接続して使用するのが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ハンディタイプのものでは、その小形化の利点を活かして機動性が求められる。したがって、移動が便利なように小形・軽量化は勿論のこと、操作性に優れていることも要求される。
【0004】本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は表示部(表示器)と画像読取部(イメージスキャナ)を一体化して小形・軽量化した装置でありながら、操作性にも優れたパーソナル形電子入力装置を提供することにある。さらに、他の目的は、以下に説明する内容の中で順次明らかにして行く。」

イ 「【0008】図4乃至図7において、この電子入力装置1は、大きくは正面にペンタッチ入力面を兼ねた表示面4を有する表示部2と、この表示部2の一端部(下端部)に連続して設けられている画像読取部(イメージスキャナ部)3とで構成されており、これらは1つのケーシング5を共用して組み立てられ、一体化されている。なお、ここでの表示面4は、液晶ディスプレイ4aの上に、シート状をした透明な座標読み取りタブレット4bを積層配置させた構造になっている。」

ウ 「【0010】さらに、ケーシング5の周面において、片側面(正面より見て左側面)には、・・・例えばプリンタ等の外部機器と接続させる各種コネクタが設けられている部分を、通常閉じておくための開閉可能なカバー13が設けられている。」

エ 「【0011】加えて、表示部2には、原稿19を乗せて滑らせる正面側に、この表示部2の一部全体を表示面4よりも隆起させて、ペーパーガイド部20と表示面4との間に段差21a(以後、この段差の部分を「ガイド規制部分21a」と言う)を作っているペーパーガイド部20を、表示面4の左右両側に形成している。このガイド規制部分21aの段差は、原稿19の左右両側における動きを規制することができる程度であり、約1?1.5ミリである。」

オ 「官製ハガキや名刺等、比較的硬い紙の原稿19が給紙口18より差し込まれたときに、この原稿19をカールさせずに略真っ直ぐ斜め下側に向かって排出させることができる構造になっている(図11参照)。」(段落【0024】)

カ 「このロッド48の回転で原稿19をセンサ部49のガラス面に原稿19を圧接させながら排紙口方向に向かって送る(図10,図11参照)。すると、このときセンサ部49では原稿19上のイメージ情報を読み取る。ここで読み取られたイメージ情報は表示部2内に送られて画像処理され、これが表示面4に表示される。」(段落【0028】)

キ 第4図には、電子入力装置本体1の表面に、液晶ディスプレイ4aを有する表示面4と、ペーパーガイド部20を配置した構成が示されている。

以上の記載事項によると、引用例1には、
「ハンディタイプのイメージスキャナ付き電子入力装置本体を備え、この電子入力装置本体の表面に液晶ディスプレイを有する表示面を設けるとともに、電子入力装置本体には画像読取部を内蔵させ、プリンタは、外部機器としてコネクタで接続され、硬い紙を含む原稿を別途用意し、電子入力装置本体の液晶ディスプレイの表側に配置したペーパーガイド部に原稿をセットして、原稿を液晶ディスプレイと平行に相対移動させて画像読取部を通過させることにより、画像読取部で原稿の画像を読み取って、上記表示面の液晶ディスプレイに表示するようにしたことを特徴とするイメージスキャナ付き電子入力装置」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2-2)同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-323950号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ク 「【0002】
【従来の技術】近時、電話回線の増大化とともに、ファクシミリ装置の使用も種々の分野で増大しているが、従来のファクシミリ装置では、送信の度にファクシミリ送信に適した紙を準備し、その紙に伝言や絵等を書込んで逐一入力し送信しているのが現状である。しかしながら、送信すべき内容をいちいちファクシミリ送信に適合した紙に書いてファクシミリ装置に入力して送信を行う場合には、作業が面倒な上に使用した紙は1回限りでゴミとなり、いたずらに紙を消費してしまい省資源化に反する結果となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような事情に鑑みて、特定の送信紙を何度も使用し省資源化を図るためにも、何度でもファクシミリ装置に入力して送信できる方法が要望されているが、本発明は、このような要望に応えるべく開発されたものであり、メモ書きボードを送信原稿の代わりにそのまま使用できる新規な機能を備えたファクシミリ装置を提供することを目的としている。」

ケ 「なお、5はボード面20aにメモ書きするためのペンである。そして、このメモ書きボードMは、消しては書ける反復使用性を有している。」(段落【0007】)

コ 「この場合、送りギア13a、13b、13cが前述したように逆回転し、メモ書きボードMを上部に排出するとともに、密着イメージセンサ6がメモ書きボードMのメモを画像データとして、読取、電話回線を通じて送信する。」(段落【0015】)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明を対比する。
本願補正発明の「スキャナーノート」は、スキャナー付き電子入力装置といえる。
引用発明の「イメージスキャナ」「液晶ディスプレイ」及び「表示面」は、本願補正発明の「スキャナー」「液晶表示部」及び「表示ユニット」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「画像読取部」「プリンタ」及び「ペーパーガイド部」は、本願補正発明の「読取ユニット」「印字ユニット」及び「読取ガイド」にそれぞれ相当する。

以上を踏まえると、両者は、
「スキャナー付き電子入力装置本体を備え、この電子入力装置本体の表面に液晶表示部を有する表示ユニットを設けるとともに、電子入力装置本体には読取ユニットを内蔵させ、原稿を別途用意し、読取ガイドに原稿をセットして、原稿を液晶表示部と平行に相対移動させて読取ユニットを通過させることにより、読取ユニットで原稿上の画像を読み取って、上記表示ユニットの液晶表示部に表示するようにしたことを特徴とするスキャナー付き電子入力装置。」で一致し、次の点で相違する。

【相違点】
【相違点1】
スキャナー付き電子入力装置が、本願補正発明は、ノート型のスキャナーノートであるのに対し、引用発明は、ノート型であるとは明記されていない点。

【相違点2】
原稿が、本願補正発明は、文字・図形等の画像を書き込んだ書込みボードであるのに対し、引用発明は、硬い紙を含む原稿である点。

【相違点3】
読取ガイド及び読取ユニットが、本願補正発明は、液晶表示部の裏側に配置されているのに対し、引用発明は、液晶表示部の表側に配置されている点。

【相違点4】
印字ユニットが、本願補正発明は、電子入力装置本体に内蔵されているのに対し、引用発明は、外部機器として接続される点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
【相違点1】について
本願当初明細書には、ノート型の定義が明確にされていない。
一般にノート型といえば、縦横の長さに対して厚さが薄い形状であるといえる。 また、入力装置を備えた電子機器において、ノート型の形状は、いわゆるノートパソコン等で見られるように周知の形状である。
したがって、引用発明のハンディタイプのスキャナー付き電子入力装置をノートパソコンと類似の形状であるノート型のスキャナーノートとすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

【相違点2】について
電子入力装置のスキャナーで読む原稿として、書込みボードを用いる構成は、「メモ書きボード対応機能を有したフアクシミリ装置」と題する前記引用例2に「密着イメージセンサ6がメモ書きボードMのメモを画像データとして、読取」る(前掲コ参照)ことが示されているように公知な技術である。
また、ボードに書くメモ書きとして、文字・図形等の画像とすることは、電子入力装置の操作者が必要に応じてなし得ることにすぎない。
そして、本願の請求項の記載には、書込みボード上の画像を読み取るための特有な構成は存在しない。
したがって、引用発明の硬い紙を含む原稿に代えて、文字・図形等の画像を書き込んだ書込みボードとすることは、両者が類似の技術であり、かつ適用に際し阻害要因も認められないことから、当業者が容易になし得たことと認められる。

【相違点3】について
請求項の記載には、読取ガイド及び読取ユニットを、液晶表示部の裏側に配置するための特有な構成は存在しない。そして、読取ガイド及び読取ユニットを電子入力装置のどの部分に設けるかは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるから、液晶表示部の表側に代えて裏側とする相違点3は、格別評価に値する特徴といえるものではなく当業者であれば容易に想到できたものである。

【相違点4】について
電子入力装置において、外付け型プリンタ及び内蔵型プリンタはともに当業者に周知であり、本願当初明細書にも「【0021】印字ユニット14は小型インクジェットプリンタ等で構成することが望ましいが、特にスキャナーノート本体21に内蔵する必要はなく、外付け型のプリンタとすることができる。もちろん、携帯時には外しておき、会社や家庭に戻ってからプリントするようにすることができる。」との記載があり、周知であることは請求人も自認している事項である。
したがって、引用発明の印字ユニットを外付け型から内蔵型に代えることは当業者が適宜選択し、採用し得る事項である。

以上のとおり、相違点1ないし4は、当業者が引用例1、2に記載された発明に基づいて容易に推考できたものであり、効果についても、当業者が予測できる範囲内のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、159条1項で準用する53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
平成16年10月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年6月28日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】ノート型のスキャナーノート本体を備え、このスキャナーノート本体の表面に液晶表示部を有する表示ユニットを設けるとともに、スキャナーノート本体には読取ユニットと印字ユニットを内蔵させ、文字・図形等の画像を書き込んだ書込みボードを別途用意し、スキャナーノート本体の液晶表示部の裏側に配置した読取ガイドに書込みボードをセットして、書込みボードを液晶表示部と平行に相対移動させて読取ユニットを通過させることにより、読取ユニットで書込みボード上の画像を読み取るようにしたことを特徴とするスキャナーノート。」

1 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は、前記「第2 2」で検討した本願補正発明から「液晶表示部」における「読み取って、表示ユニットの液晶表示部に表示する」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2(4)」に記載したとおり、引用例1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-12 
結審通知日 2006-10-12 
審決日 2006-10-24 
出願番号 特願2001-281022(P2001-281022)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大野 雅宏  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 鈴木 明
青柳 光代
発明の名称 スキャナーノート  
代理人 土橋 博司  
代理人 土橋 博司  
代理人 土橋 博司  

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