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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1148784 |
審判番号 | 不服2003-9497 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-04-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-26 |
確定日 | 2006-12-06 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第143188号「アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月22日出願公開、特開平 9-107223〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成8年6月5日(パリ条約による優先権主張1995年6月6日、フィンランド)の出願であって、平成15年2月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年5月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、 「第1の共振アンテナ素子(P2,P3)と、コイル導体である第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)とを備え、前記第1の共振アンテナ素子(P2,P3)は前記コイル導体(HX3)の内側に位置する部分(P2a)を有する無線装置用のアンテナにおいて、 前記第1の共振アンテナ素子(P2,P3)の共振周波数は第1のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にあって前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数から少なくとも400MHzだけ異なっており、 前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数は第2のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にあり、 前記アンテナは更に第3のアンテナ素子(HX5)を備え、該第3のアンテナ素子の共振周波数は前記第1のアンテナ素子(P2,P3)の共振周波数と異なっており、前記第2のアンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数とも異なっている、ことを特徴とする無線装置用アンテナ。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。(アンダーラインは補正箇所を示す) 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「無線装置用アンテナ」を特定するため、「前記アンテナは更に第3のアンテナ素子(HX5)を備え、該第3のアンテナ素子の共振周波数は前記第1のアンテナ素子(P2,P3)の共振周波数と異なっており、前記第2のアンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数とも異なっている、」という発明特定事項を直列的に付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、特許法第17条の2第3項(新規事項)、及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (3-1)補正後の発明 上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 (3-2)引用例及び周知技術 A.原審の拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前である平成7年4月21日に頒布された特開平7-106842号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は無線機に利用する、特に、自動車用電話機、携帯電話機、コードレス電話機、その他移動局用無線装置に利用するに適する。本発明は、二つの共振波長を有するアンテナ装置に関する。」(2頁1欄)、 ロ.「【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、二つの異なる周波数に共振することができるアンテナ装置に関するもので、」(2頁2欄)、 ハ.「【0012】本発明の構造では、この金属円筒の上部にらせん状のアンテナ素子を設けた。そしてこのらせん状のアンテナ素子を棒状のアンテナ素子とは別の波長に共振するようにコンデンサを介して接続する。したがって、見かけ上は1本のアンテナであるが、実効的に二つの共振波長を有するアンテナとなる。」(3頁3欄)、 ニ.「【0016】本発明実施例は、棒状のアンテナ素子1と、このアンテナ素子の下端にその中心軸が連続するように設けられた金属円筒2と、このアンテナ素子1の下端が接続されこの金属円筒2のほぼ中心軸に沿って配置された線状金属3と、この金属円筒2の下部でこの線状金属3とこの金属円筒2との間に接続された給電線4とを備え、この金属円筒2の上部近傍に一端がアンテナ素子1または線状金属3にコンデンサ5を介して接続されたらせん状アンテナ素子6が設けられ、このらせん状アンテナ素子6は、棒状のアンテナ素子1の軸まわりに金属円筒2の直径とほぼ等しい直径に形成される。」(3頁3欄)、 ホ.「【0021】その結果は図2(a)および(b)に示すように、f2=820MHzおよび950MHzで共振する2共振特性を得ることができた。」(3頁4欄)。 上記引用例の記載及びこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。 「棒状のアンテナ素子(1)と、らせん状アンテナ素子(6)とを備え、前記棒状のアンテナ素子(1)は前記らせん(6)の内側に位置する部分を有する移動局無線装置用のアンテナにおいて、 棒状のアンテナ素子(1)とらせん状アンテナ素子(6)は、移動局用無線に割り当てられた周波数帯域である950MHzと820MHzという2つの異なる周波数に共振することを特徴とする無線装置用アンテナ。」 B.周知例として例示するが、本願の優先権主張の日前である平成7年4月21日に頒布された特開平7-107540号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに下記イの事項が記載され、同じく平成6年4月22日に頒布された特開平6-112732号公報(以下、「周知例2」という。)には、下記ロ、ハの事項が記載されている(下線加筆)。 イ.「【0002】 【従来の技術】今日、自動車に搭載され、或いは携帯型の端末を無線で一般電話回線網に繋いで通話するセルラーシステムの普及は目ざましいものがある。かかるセルラーシステムでは、電話サービスを行う区域が、セルと呼ばれる小さなエリア(半径2?数km程度の範囲である)に細かく分割され、そのセル内だけをコントロールする基地局が各セル毎に置かれ、電話(端末器)を搭載した自動車が移動してゆくに従って、対応する基地局がどんどん変更されてゆくという小ゾーン方式が採用されている。この方式は、電波の出力が小さくて済み、限られた周波数を有効に利用できる(即ち、複数の基地局で同じチャネルを使用することができるようになる)というメリットがあるため、不特定多数の使用する移動通信の主流となってきている。 【0003】また、上記セルラーシステムでは、当初、アナログ方式が採用され、800MHz帯が割り当てられていたが、将来にわたる需要の増加が見込まれることから、最近、ディジタル方式を採用した、より効率的な無線電話システムが導入されるようになった。そして、このディジタル方式によるセルラーシステム(以下、PDCシステムと言う)では、これまでの800MHz帯に加え、新たに1.5GHz帯が割当てられ、ディジタル化することによって、周波数利用効率や通話品質、更に秘話機能や通信内容の高度化等の向上が図られ、更に、構成部品をLSI化することによって、端末器の小型化が図られている。 【0004】かかるPDCシステムの仕様は、次のようになっている。使用周波数帯としては、上述したように、800MHz帯と1.5GHz帯が割り当てられている。」(周知例1、2頁1?2欄) ロ.「【0002】 【従来の技術】自動車電話、携帯電話等の著しい普及に伴って1つの周波数帯域だけでは必要な回線数を賄い切れなくなりつつある。そこで、自動車電話においては、現在の800MHz帯でのサービスに加えて、1.5GHz帯でのサービスが検討されている(さらに、陸上移動用としては、2.2GHz帯でのサービスも検討されている)。 【0003】従って、将来的に、800MHz帯と1.5GHz帯の電波の両方を送受信するアンテナが必要になると予想される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、800MHz帯用と1.5GHz帯用の2種類のアンテナを移動体に配置することは不便であり、また、設置スペース上も好ましくない。 【0005】また、従来のアンテナでは、1つのアンテナ素子で使用周波数帯域を完全にカバーすることは困難であり、アンテナの広帯域化が望まれる。 【0006】この発明は上記実情に鑑みてなされたもので、複数の周波数帯域で共用でき、しかも、複数の周波数帯域の帯域幅をカバーできるアンテナを提供することを目的とする。」(周知例2、2頁1?2欄) ハ.「【0009】 【作用】導電層14に形成されるスリット12の作用により、容量装荷型モノポールアンテナは図7(a),図14(a)に示すように、複数の共振点を持つ。また、給電線路11に分岐線路11bを形成することにより、ノッチアンテナは図7(b)、図14(b)に示すように複数の共振点をもつ。」(周知例2、2頁2欄)。 上記周知例1、2の記載及びこの分野における技術常識によれば、移動局用無線装置において、「800MHz帯を使用周波数とする第1のデジタルセルラ無線システムと1.5GHz帯を使用周波数とする第2のデジタルセルラ無線システムの双方に対応可能にすること」は周知である。 C.また、例えば、本願の優先権主張の日前である昭和62年8月18日に頒布された特開昭62-188505号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに以下イ?ハの事項が記載され、同じく平成4年12月10日に頒布された特表平4-507176号公報(以下、「周知例4」という。)には、図面とともに以下ニ?ヘの事項が記載されている(下線加筆)。 イ.「〔産業上の利用分野〕 この発明はインピーダンス特性の優れた移動体用小形アンテナ装置に関するものである。」(周知例3、1頁右下欄8?10行目)、 ロ.「線状ユニポールアンテナ(4a)、(4b)、(4c)の長さを違えておくと、それぞれの線状ユニポールアンテナで共振する周波数が異なる。したがって、線状ユニポールアンテナの長さを適当に選ぶことによりこのアンテナ装置は広帯域なインピーダンス特性を持つ。」(周知例3、2頁左上欄3?8行目)、 ハ.「〔実施例〕 第1図はこの発明の実施例を示す構成図であり、(1)、(2)は上記従来装置と同一のものである。(5a)、(5b)は給電線の一部、(6a)、(6b)、(6c)は板状ユニポールアンテナ、(7)は誘電体棒である。給電線の一部(5a)、(5b)、板状ユニポールアンテナ(6a)、(6b)、(6c)は誘電体棒(7)の表面に固着支持されている。この板状ユニポールアンテナ(6a)、(6b)、(6c)を固着する方法としては導電性テープを張る方法、エツチングを行う方法、導体板を糊付する方法などが考えられる。 上記のように構成されたアンテナ装置においては、発振源(1)からの電力は給電線(2)、給電線の一部(5a)、(5b)を介して板状ユニポールアンテナ(6a)、(6b)、(6c)に供給され、空間に放射される。誘電体棒(7)は給電線の一部(5a)、(5b)、板状ユニポールアンテナ(6a)、(6b)、(6c)を支持し、これらを一体化し、このアンテナ装置を全体として強度的に強いものにしている。」(周知例3、2頁右上欄16行目?左下欄14行目)、 ニ.「双方向無線装置やページャなどの携帯通信装置では、無線設計の現在の傾向は製品の小型化にある。無線装置の最も大きな部品の一つはアンテナである。・・・(中略)・・・ 無線設計のもう一つの傾向は、多周波動作に一つの広帯域アンテナを用いることである。一つのアンテナが複数の部品を格納する不便を省くので、薄型の広帯域アンテナが望ましい。」(周知例4、1頁右下欄7?17行目)、 ホ.「本発明に従って、多共振アンテナは、異なる周波数で共振する複数の共振器によって構成される。」(周知例4、2頁左上欄15?16行目)、 ヘ.「第2図において、メタル・パターン34は、複数の実質的に長方形の細片(トリップ)34′、34″、34′″によって構成され、これらのストリップは異なる長さを有し、上部の空気と下部の誘電材料32とによって決まる異なる周波数で共振する。しかし、各共振器の下で異なる誘電材料を用いることにより、共振ストリップは、同一長さで作る(積層)することができ、それでも異なる周波数で共振して、同様な共振器を形成することができる。 テーパ型多角形の給電部材18は、容量結合により共振ストリップ34′、34″、34′″を励起する。上部の共振器が上から重複している給電部材18の長方形の底辺の長さと、給電部材18と共振ストリップ34′、34″、34′″との間の距離とにより、50オームのコネクタ入力22においてアンテナの適切な整合が行なわれる。最適な容量結合を得るため、共振ストリップ34′、34″、34′″の層が薄くなればなるほど、必要な重複部分は小さくなる。このように、複数の共振器34′、34″、34′″の励起は、一つの外部給電22により実現される。」(周知例4、2頁左下欄7行目?末行)。 上記周知例3、4の記載及びこの分野における技術常識によれば、移動局用無線装置に「互いに共振周波数が異なる第1、第2、第3のアンテナ素子を備える」ことは周知である。 (3-3)対比 補正後の発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明における「棒状のアンテナ素子」、「らせん状アンテナ素子」、「らせん」は、それぞれ補正後の発明における「第1の共振アンテナ素子」、「コイル導体である第2の共振アンテナ素子」、「コイル導体」に相当することは明らかである。 b.引用発明の「棒状のアンテナ素子」及び「らせん状アンテナ素子」と、補正後の発明の「第1の共振アンテナ素子」及び「コイル導体である第2の共振アンテナ素子」は、移動用無線に使われる互いに異なった共振周波数を有する点で共通する。 すると、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「第1の共振アンテナ素子と、コイル導体である第2の共振アンテナ素子とを備え、前記第1の共振アンテナ素子は前記コイル導体の内側に位置する部分を有する無線装置用のアンテナにおいて、 前記第1の共振アンテナ素子の移動用無線に使われる共振周波数は前記第2の共振アンテナ素子の移動用無線に使われる共振周波数と異なっている、 ことを特徴とする無線装置用アンテナ。」 (相違点1) 補正後の発明では、「前記第1の共振アンテナ素子(P2,P3)の共振周波数は第1のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にあって前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数から少なくとも400MHzだけ異なっており、 前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数は第2のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にある」のに対して、引用発明では、「第1の共振アンテナ素子と第2の共振アンテナ素子は、移動局用無線に割り当てられた周波数帯域である950MHzと820MHzという2つの異なる周波数に共振する」ものの、その余の構成を備えていない点。 (相違点2) 補正後の発明は、「前記アンテナは更に第3のアンテナ素子(HX5)を備え、該第3のアンテナ素子の共振周波数は前記第1のアンテナ素子(P2,P3)の共振周波数と異なっており、前記第2のアンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数とも異なっている」のに対し、引用発明はこのような第3のアンテナ素子を備えていない点。 (3-4)判断 そこで、上記相違点について検討する。 (相違点1について) 上記「(3-2)引用例及び周知技術」の「B」の項で記載したように、移動局用無線装置において、「800MHz帯を使用周波数とする第1のデジタルセルラ無線システムと1.5GHz帯を使用周波数とする第2のデジタルセルラ無線システムの双方に対応可能にすること」は周知である。 そして、移動局用無線装置として共通の技術分野にある引用発明の第1の共振アンテナ素子と第2の共振アンテナ素子の共振周波数は、950MHzと820MHzであるが、当該共振周波数はアンテナ素子の長さ等により決定される設計事項であることが技術常識である(例えば上記「(3-2)引用例及び周知技術」の「C」の項を参照)とともに、引用発明の何れか一方のアンテナの長さ等を変更して1.5GHz帯の周波数に共振するよう設計変更することに特段の阻害要因は見あたらないから、引用例の第1の共振アンテナ素子と第2の共振アンテナ素子の共振周波数として当該周知の2つの周波数を採用し、補正後の発明のように「前記第1の共振アンテナ素子(P2,P3)の共振周波数は第1のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にあって前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数から少なくとも400MHzだけ異なっており、 前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数は第2のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にある」よう構成することは、当業者が容易になし得ることである。 (相違点2について) 上記「(3-2)引用例及び周知技術」の「C」の項に記載したように、移動局用無線装置に「互いに共振周波数が異なる第1、第2、第3のアンテナ素子を備える」ことは周知である。 更に、例えば、上記「(3-2)引用例及び周知技術」、「B」、「ロ」の項の段落【0002】に「【従来の技術】・・・そこで、自動車電話においては、現在の800MHz帯でのサービスに加えて、1.5GHz帯でのサービスが検討されている(さらに、陸上移動用としては、2.2GHz帯でのサービスも検討されている)。」旨、記載されているように、移動局用無線装置においては、800MHz帯と1.5GHz帯でのサービスにとどまらず、2.2GHz帯という第3の周波数帯域も使えるようにすることが課題に上っていることが周知である。 そして引用発明と当該周知のものは、移動局用アンテナ装置として共通するとともに、引用発明において当該周知技術のように第3のアンテナ素子を追加することに特段の阻害要因は見あたらないから、引用発明に当該周知のものを適用して、補正後の発明のように 「前記アンテナは更に第3のアンテナ素子(HX5)を備え、該第3のアンテナ素子の共振周波数は前記第1のアンテナ素子(P2,P3)の共振周波数と異なっており、前記第2のアンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数とも異なっている」よう構成することは、当業者が容易になし得ることである。 上記相違点1、2の判断に加え、補正後の発明が奏する作用効果は、上記引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものである。 よって、補正後の発明は、上記引用例に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成15年5月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年2月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「第1の共振アンテナ素子(P2,P3)と、コイル導体である第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)とを備え、前記第1の共振アンテナ素子(P2,P3)は前記コイル導体(HX3)の内側に位置する部分(P2a)を有する無線装置用のアンテナにおいて、 前記第1の共振アンテナ素子(P2,P3)の共振周波数は第1のデジタルセルラ無線システムの周波数範囲内にあって前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数から少なくとも400MHzだけ異なっており、 前記第2の共振アンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数は第2のデジタ ルセルラ無線システムの周波数範囲内にある、 ことを特徴とする無線装置用アンテナ。」 2.引用発明及び周知技術 引用発明及び周知技術は、上記「3.独立特許要件について」の項中の「(3-2)引用例及び周知技術」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明は上記「1.補正後の本願発明」の項で認定した補正後の発明から、無線装置用アンテナの限定事項である「前記アンテナは更に第3のアンテナ素子(HX5)を備え、該第3のアンテナ素子の共振周波数は前記第1のアンテナ素子(P2,P3)の共振周波数と異なっており、前記第2のアンテナ素子(HX3,HX4)の共振周波数とも異なっている、」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「3.独立特許要件について」の項に記載したとおり、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用例に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-05 |
結審通知日 | 2006-07-11 |
審決日 | 2006-07-24 |
出願番号 | 特願平8-143188 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新川 圭二 |
特許庁審判長 |
羽鳥 賢一 |
特許庁審判官 |
宮下 誠 浜野 友茂 |
発明の名称 | アンテナ |
代理人 | 倉地 保幸 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 下道 晶久 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 島田 哲郎 |