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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B30B
管理番号 1148867
審判番号 不服2004-5190  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-12 
確定日 2006-12-08 
事件の表示 平成11年特許願第242420号「加圧装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月13日出願公開、特開2001- 62597〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年8月30日の出願であって、その請求項1ないし7に係る発明は、平成16年3月12日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「 【請求項1】 基板と、この基板と所定距離を隔てて設けられた支持板と、前記基板と前記支持板との間において基板および支持板と直交する方向に移動可能にかつ前記の方向に相対移動可能に形成された第1のスライダおよび第2のスライダと、前記第2のスライダの移動位置を検出する1個の位置検出装置と、前記第1のスライダを駆動する第1の駆動手段と、前記第2のスライダを駆動する第2の駆動手段と、前記第1の駆動手段および第2の駆動手段を制御しかつ前記位置検出装置からの位置信号を受理して処理する中央処理装置とからなり、前記第1の駆動手段により次いで第1の駆動手段と第2の駆動手段とを同時に駆動することにより前記第1のスライダおよび第2のスライダを予め設定された位置まで移動させる段階と、前記第2の駆動手段により前記第2のスライダを所定の位置まで移動させることにより、前記第2のスライダと基板との間に存在する被加圧体を加圧する段階とを有することを特徴とする加圧装置。」

2.刊行物記載の発明(事項)
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内で頒布された刊行物である実願平3-2983号(実開平6-54498号)のCD-ROM(以下、「刊行物1」という。)、特開平10-15699号公報(以下、「刊行物2」という。)及び特開昭61-106221号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)刊行物1
(1-ア)第1頁左下欄第7?18行
「【構成】 プレス機械1のフレーム3a,3bに偏心部25を備えたクランク軸19を回転自在に設け、偏心部25に下方に延びた連結装置27の上部側を回転自在に設け、連結装置27を比較的速い速度で昇降させるために、クランク軸19に速送用サーボモータ37を連動連結し、連結装置27の下部側にナット部材49を設け、このナット部材49に下端部に前記ラム11を一体的に備えた螺子杆51を螺合して設け、螺子杆51を上記ナット部材49に対して相対的に回転自在に設け、ラムを連結装置に対して比較的遅い速度で昇降させるために、螺子杆51、ナット部材49の一方を遅送用サーボモータ57に連動連結してなるラム昇降作動装置13。」
(1-イ)段落【0001】
「 【産業上の利用分野】
本発明は、例えば成形プレス機械、折曲げ加工機のごときプレス機械において、プレス機械のラムを昇降させるラム昇降作動装置に関する。」
(1-ウ)段落【0007】,【0008】
「 【作用】
前記の構成において、速送用サーボモータを適宜に作動してクランク軸を回転させることにより、連結装置が上死点から下死点まで比較的速い速度もとで下降させる。したがって、ラムをベッドに対して比較的速い速度のもとで下降させることができる。
連結装置が下死点に位置した後は、遅送用サーボモータを適宜に操作して螺子杆をナット部材に対して相対的に回転させることにより、螺子杆を比較的遅い速度のもとで下降させることができる。したがって、ラムをベッドに対して比較的遅い速度のもとで下降させることができ、遅送用サーボモータを適宜に制御することによりラムの高さ位置を制御することができる。」
(1-エ)段落【0010】?【0014】
「 図1,図2を参照するに、成形プレス機械、折曲げ加工機のごときプレス機械1は左右(図1において左右、図2において表裏)に立設したコの字形のサイドフレーム3,5を備え、左右のサイドフレーム3a,3bは連結プレート7を介して一体的に連結してある。
上記サイドフレーム3,5の下側には左右方向へ延伸したベッド9が設けてあり、このベッド9には下部金型(図示省略)を支持するボルトスタ(図示省略)が設けてある。上記ベッド9の垂直上方位置にはラム11がサイドフレーム3a,3bに設けたガイド(図示省略)に案内されて昇降自在に設けてあり、ラム11の下側には上記下部金型と協働してプレス加工を行う上部金型(図示省略)が取付けてある。
上記ラム11を昇降させるためにラム昇降作動装置13が設けてある。
上記ラム昇降作動装置13の詳細については、サイドフレーム3a,3bに設けた固定部材15,17には、左右方向に延伸したクランク軸19が軸受21,23に対して回転自在に設けてあり、このクランク軸19は複数の偏心部25を備えている。
各偏心部25には下方に延びた連結装置27が設けてあり、各連結装置27は、上端部が偏心部25に軸受29を介して回転自在に連結した第1連結部材31と、この第1連結部材31の下端部に連結ピン33を介して上端部が連結した第2連結部材35を備えている。」
(1-オ)段落【0015】
「複数の連結装置27を比較的速い速度のもとで昇降させるために、クランク軸19は速送用ACサーボモータ37に連動連結してある。すなわち、サイドフレーム3bの上部側にはケーシング39が設けてあり、このケーシング39には減速機(図示省略)、及びエンコーダ(図示省略)を備えた速送用ACサーボモータ37が設けてあり、・・・・」
(1-カ)段落【0017】?【0019】
「 各第2連結部材35の下部側内にはナット部材49が設けてあり、各ナット部材49には上下方向へ延伸したボールねじ51が螺合して設けてある。各ボールねじ51の下端はラム11の固定部材53に軸受55を介して回転自在に取付けてあり、各ボールねじ51はナット部材49に対して回転自在である。
ラム11を比較的遅い速度のもとで昇降させるために、複数のナット部材49は遅送用ACサーボモータ57に連動連結してある。 すなわち、ラム11には後方向へ延びた支持ブラケット59が設けてあり、この支持ブラケット59には減速装置(図示省略)、エンコーダ(図示省略)を備えた遅送用ACサーボモータ57が設けてある。・・・・」
(1-キ)段落【0022】?【0025】
「 下部金型にワークを支持せしめた後に、速送用ACサーボモータ37を適宜に作動してクランク軸19を回転させることにより、連結装置27が上死点から下方向へ比較的速い速度のもとで下降する。したがって、ラム11、上部金型はベッド9に対して比較的速い速度のもとで下降するものである。
連結装置27が下死点付近まで下降したときに、速送用ACサーボモータ37の減速装置が適宜に作動して連結装置27の下降速度が減速されて、速送用ACサーボモータ37の作動を適宜に停止せしめることにより、連結装置27を下死点に位置せしめることができる。
連結装置27が下死点に位置した後は、遅送用ACサーボモータ57を適宜に作動して各ボールねじ51を回転させることにより、各ボールねじ51を比較的遅い速度のもとで下降させることができる。したがって、ラム11、上部金型をベッド9、下部金型に対して比較的遅い速度のもとで下降させることができる。
ラム11が所定の高さ位置付近にまで下降したときに、遅送用ACサーボモータ57の減速装置が適宜に作動してラム11の下降速度が減速されて、速送用ACサーボモータ37の作動を適宜に停止せしめることにより、ラム11を所定の高さ位置に位置せしめることができる。これによって、上部金型と下部金型の協働によりワークに対して所望のプレス加工を行うことができる。」
(1-ク)図1,2
第2連結部材35およびラム11が、ベッド9とこのベッド9と所定距離を隔てて設けられた連結プレート及び該連結プレートを介して一体的に連結されたフレーム3a,3bから構成される上部フレーム部との間において、昇降移動可能にかつ相対昇降移動可能に形成されていることが看取される。
上記記載事項において、遅送用サーボモータを適宜に制御すること、エンコーダ(図示省略)を備えた速送用ACサーボモータ37が設けてあること、エンコーダ(図示省略)を備えた遅送用ACサーボモータ57が設けてあることから、これらのサーボモータを制御する制御装置を有することは明らかである。
また、第2連結部材35およびラム11が昇降移動可能にかつ相対移動可能に形成されていることは、第2連結部材35およびラム11がベッド9および連結プレート及び該連結プレートを介して一体的に連結されたフレーム3a,3bから構成される上部フレーム部と直交する方向に移動可能にかつ前記の方向に相対移動可能に形成されていると言い換えることができる。
そうすると、上記記載事項及び図1,2の記載からみて、刊行物1には、
「ベッド9と、このベッド9と所定距離を隔てて設けられた連結プレート及び該連結プレートを介して一体的に連結されたフレーム3a,3bから構成される上部フレーム部と、前記連結プレート及び該連結プレートを介して一体的に連結されたフレーム3a,3bから構成される上部フレーム部との間において前記ベッド9および前記連結プレート及び該連結プレートを介して一体的に連結されたフレーム3a,3bから構成される上部フレーム部と直交する方向に移動可能にかつ前記の方向に相対移動可能に形成された第2連結部材35およびラム11と、前記第2連結部材35を駆動するエンコーダを備えた速送用ACサーボモータ37、クランク軸19及び第1連結部材31と、前記ラム11を駆動するナット部材49、ボールねじ51及びエンコーダを備えた遅送用ACサーボモータ57と、前記エンコーダを備えた速送用ACサーボモータ37、クランク軸19及び第1連結部材31およびナット部材49、ボールねじ51及びエンコーダを備えた遅送用ACサーボモータ57を制御する制御装置とからなり、前記エンコーダを備えた速送用ACサーボモータ37、クランク軸19及び第1連結部材31により前記第2連結部材35および前記ラム11を下死点まで移動させる段階と、前記ナット部材49、ボールねじ51及びエンコーダを備えた遅送用ACサーボモータ57により前記ラム11を所定の位置まで移動させることにより、前記ラム11とベッド9との間に存在する被加圧体を加圧する段階とを有するプレス機械1。」という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)刊行物2
(2-ア)第1頁第1欄第2?19行の記載からみて、刊行物2には、
「プレス機械において、上下動自在なスライド4の位置を検出するスライド位置検出手段8を設けること。」という事項(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

(3)刊行物3
(3-ア)第1頁右下欄第8?12行
「(技術分野)
本発明は射出成形機における駆動装置に係り、更に詳しくは型締装置の可動盤や射出装置のスクリュを進退移動せしめる駆動装置に関するものである。」
(3-イ)第4頁右下欄第6行?第5頁左上欄第2行
「上述のような型締装置によって型を成形する場合には、まず、第一モータ34を正転させて第一の回転部材26を回転させ、第一のスライド部材40を可動盤10に向かって前進させる。この場合、第一の回転部材26と第一のスライド部材40との間に介在するボールネジ構造はリード角が大きいため、第一のスライド部材40は可動盤10に向かって高速で前進する。また、この場合には、第二モータ62は駆動されていないため、第二の回転部材46および可動盤10も第一のスライド部材40と一体的に移動する。つまり、可動盤10は、固定盤14に向かって第一のスライド部材40と同じ高速度で前進することとなる。なお、この場合、第二モータ62も同時に正転駆動させるようにすれば、可動盤10が第一のスライド部材40に対しても相対的に前進するため、可動盤10の送り速度はさらに速くなる。」
上記記載事項及び第1図の記載からみて、刊行物3には、
「射出成型装置において、第一のモータと第二のモータとを同時に駆動することにより第一のスライド部材および第二のスライド部材を高速移動させること。」という事項(以下、「刊行物3記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と、引用発明とを対比すると、後者の「ベッド9」は前者の「基板」に、以下同様に、「連結プレート及び該連結プレートを介して一体的に連結されたフレーム3a,3bから構成される上部フレーム部」は「支持板」に、「第2連結部材35」は「第1のスライダ」に、「ラム11」は「第2のスライダ」に、「エンコーダを備えた速送用ACサーボモータ37、クランク軸19及び第1連結部材31」は「第1の駆動手段」に、「ナット部材49、ボールねじ51及びエンコーダを備えた遅送用ACサーボモータ57」は「第2の駆動手段」に、「下死点」は「予め設定された位置」に、「プレス機械1」は「加圧装置」に、それぞれ相当することはその機能からみて明らかである。
また、後者の「第1の駆動手段および第2の駆動手段を制御する制御装置」は、その限りにおいて、前者の「第1の駆動手段および第2の駆動手段を制御しかつ前記位置検出装置からの位置信号を受理して処理する中央処理装置」である点で共通している。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
[一致点]
「基板と、この基板と所定距離を隔てて設けられた支持板と、前記基板と前記支持板との間において基板および支持板と直交する方向に移動可能にかつ前記の方向に相対移動可能に形成された第1のスライダおよび第2のスライダと、前記第1のスライダを駆動する第1の駆動手段と、前記第2のスライダを駆動する第2の駆動手段と、前記第1の駆動手段および第2の駆動手段を制御する制御装置とからなり、前記第1の駆動手段により前記第1のスライダおよび第2のスライダを予め設定された位置まで移動させる段階と、前記第2の駆動手段により前記第2のスライダを所定の位置まで移動させることにより、前記第2のスライダと基板との間に存在する被加圧体を加圧する段階とを有する加圧装置。」

[相違点1]
前者では、第2のスライダの移動位置を検出する1個の位置検出装置を設け、制御装置が第1の駆動手段および第2の駆動手段を制御しかつ前記位置検出装置からの位置信号を受理して処理する中央処理装置としているのに対して、後者では、位置検出装置を設けていることが不明であり、したがって、前記制御装置が、第1の駆動手段および第2の駆動手段を制御するものの、前記位置検出装置からの位置信号を受理して処理することについて不明である点。
[相違点2]
前者では、第1の駆動手段と第2の駆動手段とを同時に駆動することにより前記第1のスライダおよび第2のスライダを予め設定された位置まで移動させる段階を有するのに対して、後者では、そのような段階を有していない点。

4.判断
[相違点1]について
刊行物1には、第2のスライダ(ラム11)の高さ位置を制御することができる旨記載されている(上記(1-ウ)参照。)ことから、引用発明において、前記第2のスライダ(ラム11)の高さ位置を制御するためにはその移動位置を検出する何らかの手段が必要であることは自明である。
他方、刊行物2には、プレス機械において、上下動自在なスライドの位置を検出する位置検出装置(スライド位置検出手段8)を設けることが記載されており(上記(2-ア)参照。)、しかも引用発明と刊行物2記載の事項とは、プレス機械として技術分野が一致している。
してみると、引用発明の第2スライダに前記刊行物2記載の位置検出装置(スライド位置検出手段)を採用し、制御装置が位置検出装置からの位置信号を受理して処理する中央処理装置とすることにより、相違点1に係る本願発明の特定事項とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

[相違点2]について
刊行物3にも記載されているように、第1の駆動手段(第一のモータ)と第2の駆動手段(第二のモータ)とを同時に駆動することにより第1のスライダ(第一のスライド部材)および第2のスライダ(第二のスライド部材)を高速移動させることは、加圧装置の技術分野において、本件出願前に周知の事項である。
そして、引用発明と上記周知の事項とは、本願明細書の段落【0051】にも記載されているように、加圧装置の駆動装置として技術分野・課題が共通しており、しかも、引用発明に前記周知の事項の適用を阻害する特段の要因も見出せない。
してみると、引用発明に、前記周知の事項を適用することにより、本願発明の相違点2に係る特定事項とすることは当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の奏する効果も、引用発明、刊行物2記載の事項及び前記周知の事項から予測できる程度のものであって格別なものでもない。

なお、審判請求人は、平成18年8月11日付け回答書において、 「本願発明では第2のスライダの移動位置を検出する位置検出装置を設けることにより、第2のスライダに連結された第1のスライダとの相対位置の認識により、第1のスライダの位置をも間接的に検出でき、早送りモータに対する制御とプレスモータに対する制御とを分離できる」旨主張しているが、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づかない主張である。
したがって、審判請求人の上記主張は採用することができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、刊行物2記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2ないし7に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶するべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-26 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-16 
出願番号 特願平11-242420
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 鈴木 孝幸
佐々木 正章
発明の名称 加圧装置  
代理人 堀 靖男  
代理人 森田 寛  

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