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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1148942
審判番号 不服2004-6569  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-09-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-01 
確定日 2006-12-07 
事件の表示 特願2001- 81184「光導波路デバイス及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日出願公開、特開2002-250905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本願は、平成13年3月21日の出願(優先権主張 平成12年12月22日)であって、平成16年2月27日付で拒絶査定がなされ、これに対して同年4月1日に拒絶査定に対する審判が請求がなされたものである。
本願の請求項1?9に係る発明は、平成16年1月29日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1及び5に記載された発明は、次のとおりである(その内、請求項5に記載された発明を以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】 基板と、
前記基板内に設けられた少なくとも1本の光導波路と、
前記基板上の前記光導波路の近傍又は上部に設けられると共に酸化物を含んだ導電性の第1の薄膜層と、
前記第1の薄膜層に積層され、酸化された状態で酸性又は中性を示すと共に導電性の第2の薄膜層と、
前記第1の薄膜層及び前記第2の薄膜層の少なくとも一方の露出面の全域に形成された保護膜とを備えることを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項5】 前記第2の薄膜層は、中性を示す導電性の第3の薄膜層が表面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の光導波路デバイス。」

2.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開昭55-69122号公報(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。

a.「電気光学効果を有する基板を用いて該基板内に電気光学効果を有する光導波路が形成され、上記基板乃至上記光導波路上に上記光導波路に変調電圧に応じた電界を与える為の金属電極が配されてなる構成を有する光変調装置に於て、上記金属電極が透明導電性層を介して上記基板乃至上記光導波路上に配されてなる事を特徴とする光変調装置。」(特許請求の範囲)

b.「本発明は電気光学効果を有する基板を用いてその基板内に電気光学効果を有する光導波路が形成され、又基板乃至光導波路上に光導波路に変調電圧に応じた電界を与える為の電極が配されてなる構成を有する光変調装置の改良に関する。」(1頁左下欄13?18行)

c.「第2図は本発明による光変調装置の実施例を示し、・・・金属電極5a及び5bが・・・レーザ光に対して透明にして且導電性を有する例えばIn2O3、SnO2或いはそれ等の混晶でなる、・・・透明導電性層6a及び6bを介して基板1上に配されてなる事を除いては第1図にて上述せると同様の構成を有する。この場合金属電極5a及び5bはそれ等が共に比抵抗の充分小なるものとして得られるべく且透明導電性層6a及び6b上に強固に附着して配されたものとして得られるべく、透明導電性層6a及び6bに対して附着性の比較的良好な例えばクロム層7と、比抵抗の格段的に小なる金層8との積層構成とするを可とするものである。」(2頁右下欄10行?3頁左上欄9行)

d.「以上が本発明による光変調装置の実施例の構成であるが、・・・レーザ光Lを入射せしめてそれを光導波路3に伝播せしめている状態で、金属電極5a及び5b間に変調信号に応じた変調電圧が印加される場合、・・・その変調信号に応じて位相変調されたレーザ光として得られ、所期の光変調装置としての機能が得られるものである。」(3頁左上欄10行?同頁右上欄15行)

e.「尚上述に於ては本発明の1つの実施例を示したに留まり、透明導電性層6a及び6bを夫々金属電極5a及び5bに比し幅広とすることも出来、勿論透明導電性層6a及び6b乃至金属電極5a及び5bの何れか一方又は双方の幅方向の一部又は全てが光導波路3上に存する態様とすることも出来、・・・。」(3頁右下欄1?13行)

また、第2図には、
f.「基板と、
前記基板内に設けられた1本の光導波路と、
前記基板上の前記光導波路の近傍に設けられ、In2O3、SnO2或いはそれ等の混晶を含んだ透明導電性層(6a及び6b)と、
前記透明導電性層(6a及び6b)に積層されたクロム層(7)と、クロム層(7)の表面に形成された金層(8)を備える光変調装置。」が図示されている。

したがって、上記a?fによれば、引用例には、
「基板と、
前記基板内に設けられた1本の光導波路と、
前記基板上の前記光導波路の近傍又は上部に設けられ、In2O3、SnO2或いはそれ等の混晶を含んだ透明導電性層(6a及び6b)と、
前記透明導電性層(6a及び6b)に積層されたクロム層(7)と、クロム層(7)の表面に形成された金層(8)を備える光変調装置。」(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。

3.対比・判断
3.1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
本願発明の「酸化物を含んだ導電性の第1の薄膜層」、「酸化された状態で酸性又は中性を示すと共に導電性の第2の薄膜層」及び「中性を示す導電性の第3の薄膜層」は、具体的にはそれぞれ「ITO薄膜」、「クロム(Cr)薄膜」及び「金薄膜」である(本願明細書【0020】)。
したがって、引用発明の「In2O3、SnO2の混晶を含んだ透明導電性層(6a及び6b)」、「クロム層(7)」及び「金層(8)」は、それぞれ、本願発明の「第1の薄膜層」、「第2の薄膜層」及び「第3の薄膜層」に相当すると認められる。

したがって、両者は、下記の一致点と相違点とを有する。

【一致点】基板と、
前記基板内に設けられた1本の光導波路と、
前記基板上の前記光導波路の近傍又は上部に設けられると共に酸化物を含んだ導電性の第1の薄膜層と、
前記第1の薄膜層に積層され、酸化された状態で酸性を示すと共に導電性の第2の薄膜層を備える光導波路デバイスであって、
前記第2の薄膜層は、中性を示す導電性の第3の薄膜層が表面に形成されている光導波路デバイス。

【相違点】本願発明は、第1の薄膜層及び第2の薄膜層の少なくとも一方の露出面の全域に形成された保護膜を備えるものであるのに対して、引用発明は、上記の保護膜を備えていない点。

3.2 判断
光導波路デバイスにおいて、その電極部分は、大気中の水分などによる影響を受けやすく、それにより電極劣化が発生して変調動作が不能となるので、それを防止するため、基板上の電極の露出面全域を保護膜で覆うことは広く行われているから(例えば、特開平9-54293号公報(【0004】?【0006】)、特開平1-128037号公報(2頁右上欄7?18行)、特開平1-126605公報(3頁右下欄18?19行)等参照)、引用発明において、その電極部分である第1の薄膜層及び第2の薄膜層の、露出面の全域に保護膜を備えるようにすることは当業者が容易に想到し得る。

また、本願発明の効果は、引用例に記載された光変調装置が既に有し、また、引用例及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであり、格別のものではない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-04 
結審通知日 2006-10-10 
審決日 2006-10-25 
出願番号 特願2001-81184(P2001-81184)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植田 高盛  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 吉田 禎治
吉野 三寛
発明の名称 光導波路デバイス及びその製造方法  
代理人 工藤 雅司  
代理人 机 昌彦  
代理人 谷澤 靖久  

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