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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1149015
審判番号 不服2004-23153  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-11 
確定日 2006-12-14 
事件の表示 特願2000-7420「ワークのプラズマ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月19日出願公開、特開2001-196360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年1月17日の出願であって、平成16年4月16日付で拒絶の理由が通知され、平成16年6月4日に意見書及び手続補正書が提出された。その後、平成16年10月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年11月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?6に係る発明は、平成16年6月4日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】上部電極部と下部電極部を備えた真空チャンバの下部電極部上にワークをその回路パターンの形成面を下面にして載置し、この下部電極に接続した高周波電源で上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させて前記ワークの表面をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、前記下部電極部と前記ワークの間に誘電体を介在させることを特徴とするワークのプラズマ処理方法。」

2.刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に国内で頒布された刊行物である特開昭63-127531号公報(以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)刊行物:特開昭63-127531号公報
(1a)「1)平面研削された半導体基板の面に電極が被着される半導体装置の製造方法において、平面研削後研削面をガスエッチングすることを特徴とする半導体装置の製造方法。」(特許請求の範囲)
(1b)「【従来技術とその問題点】単結晶棒から切り出された半導体基板の厚さ調整のため、あるいは一導電形の層の上に他面側の逆導電形層形成のための不純物拡散時に生じた他導電形の層の除去のために、半導体基板の一面をロータリーサーフェスグラインダ等を用いて平面研削することが行われる。この場合、研削によって表面層に生ずる結晶欠陥が問題となる半導体装置においては、結晶欠陥を取り除く目的で熱処理あるいは化学研磨をする必要がある。しかし、熱処理については、高温処理が既に基板内に形成された層構造に影響を及ぼす虞があるため適用に制限があり、また化学研磨は、表面が鏡面化するため後工程で被着される金属電極との密着力が弱くなるという欠点があった。さらに化学研磨では、研磨しない表面を覆う保護膜が耐強酸性でなければならないという制約があった。」(1頁左欄下から8行?右欄9行)
(1c)「【発明の目的】本発明は、上述の欠点を除き、平面研削時に発生した表面層結晶欠陥を高温にさらすことなく、鏡面化することなく取除き、後工程で被着される電極との密着性のよい表面を容易に形成できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。」(1頁右欄10?15行)
(1d)「【発明の実施例】先ず、厚さを調整すべき半導体基板の一面に表面保護膜を塗布し、ロータリーサーフェスグラインダにより保護膜を塗布しない他面を研削し、所定の厚さにする。次いで基板を洗浄、乾燥したのち、反応槽に入れ、フレオン(CF4)と酸素(O2)の混合ガスを用いて露出した研削面をプラズマエッチングする。そして、表面保護膜を除去する。・・・・表面保護膜としては化学研磨の場合のような耐強酸性の膜は必要なく、例えばフォトレジスト等を用いることができる。」(1頁右欄末行?2頁左上欄13行)

3.当審の判断
3-1.刊行物記載の発明
上記摘記事項(1b)によれば、半導体基板の厚さ調整のため、あるいは一導電形の層の上に他面側の逆導電形層形成のための不純物拡散時に生じた他導電形の層の除去のために、半導体基板の一面を平面研削することが記載されている。
又、上記摘記事項(1d)によれば、先ず、厚さを調整すべき半導体基板の一面に表面保護膜を塗布し、保護膜を塗布しない他面を研削し、所定の厚さにし、次いで基板を洗浄、乾燥したのち、反応槽に入れ、フレオン(CF4)と酸素(O2)の混合ガスを用いて露出した研削面をプラズマエッチングすること、表面保護膜としては、フォトレジストを用いることができることが記載されている。ここで、半導体基板をプラズマエッチングする装置として、上部電極部と下部電極部を備えた真空チャンバの下部電極部上に半導体基板を載置し、上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させて前記半導体基板の表面をプラズマ処理することは周知の技術である。
そこで、上記摘記事項(1a)?(1d)を総合すると、刊行物には、「平面研削された半導体基板の面を平面研削後、研削面を、プラズマエッチングする半導体装置の製造方法において、半導体基板の一面にフォトレジストからなる表面保護膜を塗布し、保護膜を塗布しない他面を平面研削後、研削面を、プラズマエッチングするに際し、上部電極部と下部電極部を備えた真空チャンバの下部電極部上に半導体基板の一面にフォトレジストからなる表面保護膜を塗布した面を載置し、上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させてプラズマ処理する、半導体装置の製造方法。」(以下、「刊行物発明」という。)が記載されているといえる。

3-2.対比・判断
本願発明と刊行物発明とを対比すると、刊行物発明の「半導体基板」は、本願発明の「ワーク」に相当し、刊行物発明における「フォトレジストからなる表面保護膜」は、通常感光性樹脂を使用するものであるから、本願発明の「誘電体」に相当している。そうすると、両者は、「上部電極部と下部電極部を備えた真空チャンバの下部電極部上にワークを載置し、上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させて前記ワークの表面をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、前記下部電極部と前記ワークの間に誘電体を介在させるワークのプラズマ処理方法。」で一致し、次の点で相違している。

相違点1:本願発明では、下部電極部上にワークをその回路パターンの形成面を下面にして載置しとしているのに対し、刊行物発明では、この点が記載されていない点。

相違点2:本願発明では、下部電極に接続した高周波電源で上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させるとしているのに対し、刊行物発明では、上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させるものの、下部電極に接続した高周波電源で上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することが不明である点。

そこで、上記相違点1、2について検討する。
相違点1について:
半導体集積回路形成完了後のウエハ裏面研削により発生した裏面破砕層を除去するために半導体ウエハの裏面をエッチングするのに、プラズマエッチングを用いることは、例えば、特開平4-74418号公報(1頁左欄下から7行?右欄14行参照)、特開平8-250456号公報(【請求項1】、段落【0001】【0002】参照)に示されるとおり周知の技術である。ここで、半導体集積回路形成完了後のウエハ裏面エッチングであるから、半導体集積回路形成面を保護膜で保護し、該回路形成面を下面にしてプラズマ処理装置内の下部電極部上に載置することは明らかである。
そして、刊行物発明のプラズマ処理は、半導体基板の厚さ調整のため、あるいは一導電形の層の上に他面側の逆導電形層形成のための不純物拡散時に生じた他導電形の層の除去のために、半導体基板の一面を平面研削し、研削によって表面層に生ずる結晶欠陥を取り除く目的で行うもの(摘記事項(1b))であるから、上記周知技術と同様な技術課題を有しているといえる。 そうすると、刊行物発明のプラズマ処理の対象である半導体基板を、上記した同様な技術課題を有している半導体集積回路形成完了後のウエハとすることは、当業者ならば容易に想到し得ることである。
そして、半導体集積回路形成完了後のウエハとすることにより、自ずから、該回路形成面を下面にしてプラズマ処理装置内の下部電極部上に載置されるものであるから、結局のところ上記相違点1は当業者ならば容易に想到し得ることである。

相違点2について
プラズマエッチング装置、特に平行平板型エッチング装置においては、高周波電源はエッチング目的に応じて通常、下部電極か、上部電極に接続するものであって、下部電極に接続した高周波電源で上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させることも次の文献を参照するまでもなく周知である。
a.特開平7-106306号公報:平行平板型エッチング装置の下部電極に高周波電力を印可すること(図1、及び関連する説明)、ウエハー上の半導体装置のチャージアップダメージの防止に関することが記載されている。
b.実願昭58-22949号(実開昭59-131151号)のマイクロフィルム:平行平板型エッチング装置の下部エッチング電極に高周波電力を印可すること(図1、及び関連する説明)、下部エッチング電極の対向電極に対向する面を耐熱性高分子フィルムにて被覆したこと(実用新案登録請求の範囲)が記載されている。
そうすると、刊行物発明において、通常の高周波電源の接続方式を採用しえるものであって、上部電極部と下部電極部の間に高周波電圧を印加することによりプラズマを発生させる際に、上記周知技術を適用して相違点2を構成することに困難性を見いだすことはできない。

そして、本願発明の作用効果も、刊行物に記載された発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものとは認められない。
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の本願の請求項2?6に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-13 
結審通知日 2006-10-17 
審決日 2006-11-01 
出願番号 特願2000-7420(P2000-7420)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 拓也  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 綿谷 晶廣
宮崎 園子
発明の名称 ワークのプラズマ処理方法  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 永野 大介  

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