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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1149101
審判番号 不服2002-7163  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-05-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-25 
確定日 2006-12-20 
事件の表示 平成11年特許願第361740号「データ記憶媒体処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月23日出願公開、特開2000-140394〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成4年12月28日に出願された特許出願(特願平4-358587号、先の出願という)に基づく優先権を主張して、平成5年12月28日に出願された特許出願(特願平5-349233号)の一部が特許法第44条第1項の規定により平成11年12月20日に新たな特許出願とされたものであって、平成13年11月28日付けの拒絶理由通知に対し平成14年2月1日付けで手続補正がなされ、平成14年3月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年4月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成14年5月27日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成14年5月27日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される「データ記憶媒体処理装置」にあると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
【請求項1】遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換が可能な貨幣を受け入れる受入部と、
上記受入部より受け入れた貨幣に対応したデータ記憶媒体を発行するデータ記憶媒体発行手段と、
上記データ記憶媒体発行手段による発行情報を送信するシステム通信部と、
上記データ記憶媒体発行手段によって発行されたデータを記憶データとして内部に記憶すると共に、データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸出す貸出制御装置へ上記記憶データを供給し、実際に遊技媒体の貸出に供されたデータを減算記憶するデータ記憶制御手段と、を備え、
上記データ記憶媒体発行手段は、遊技機における遊技終了条件が生じた時点で上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」以外の場合は、上記データ記憶制御手段が記憶するデータの残高をデータ記憶媒体に書き込み、該データ記憶媒体を遊技者に供給するが、遊技媒体貸出可能な記憶データの残高が「0」に成った時点での状態又は遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の場合は、データ記憶媒体を遊技者に供給しないようにしたことを特徴とするデータ記憶媒体処理装置。

3.引用発明
i.原査定の拒絶理由において引用された、先の出願前に国内において頒布された刊行物である実願平3-4732号(実開平4-95087号)のマイクロフィルム(平成4年8月18日公開、以下、「引用例」という)には、以下の事項が記載されている。
【0007】【実施例】 図1は、遊戯場の設置台1上に、この考案が実施されたメダル貸出機2とスロットマシン3と交互に整列配置した状況を示している。各スロットマシン3は、3個のリール4a,4b,4cを持ち、機械の前面には図柄表示部5,メダル貸与枚数表示器6,メダル投入口7,始動レバー8,3個の停止釦スイッチ9,ゲーム釦スイッチ10,精算釦スイッチ11,メダル受け皿12などがそれぞれ配備されている。
【0018】 図5は、メダル貸出機2の回路構成例を示すもので、制御・演算の主体であるCPU38と、プログラムが格納されるROM39と、ワークエリアとしてのRAM40とでマイクロコンピュータが形成されている。前記CPU38にはI/Oポート41を介して光電センサなどのセンサ群42,送信指令用の押釦スイッチ15,残金表示器14,カード読取器18,紙幣判別器33,カード繰出機構22,紙幣搬送機構28,送信部43などが接続される。
【0020】 図6は、この考案の他の実施例にかかるメダル貸出機2の外観を示している。この実施例は、前記実施例が1000円紙幣のみを受け付けかつ1000円のプリペイドカードのみを発行する構成であるのに対し、5000円紙幣や10000円紙幣も受け付け、また押釦スイッチによる選択操作に応じてプリペイドカードを発行せずに1000円に相当するメダル枚数データを転送したり、或いは預け金額に相当する金額価値のプリペイドカードを発行することを可能としたものである。
【0021】 この実施例では、図2に示す各構成に加えて、預け金額表示器44,カード発行用の押釦スイッチ45,転送指令用の押釦スイッチ46などが設けられている。預け金額表示器44は個々の時点の預け金額を表示する。カード発行用の押釦スイッチ45はプリペイドカードの発行を選択するためのもの、また転送指令用の押釦スイッチ46はプリペイドカードを発行せずに1000円に相当するメダル枚数データを転送することを選択するためのものである。
【0030】 図10および図11は、図6に示す実施例におけるCPU38による制御手順を示すが、プリペイドカードがカード投入口13へ投入された場合の制御手順(ステップ1?ステップ9)は図9と同様であり、ここではその説明は省略する。
【0031】 いま貨幣投入口17へ任意の紙幣が投入されると、ステップ10の判定が「YES」となり、CPU38はステップ11で紙幣搬送機構28を駆動させて紙幣を取り込み、紙幣判別器28がその紙幣の真偽や金種を判別する。
【0032】 もし投入紙幣が1000円紙幣、5000円紙幣、10000円紙幣のいずれかであれば、ステップ12の判定が「YES」となり、CPU38は預け金額表示器44にその金額を表示させるが、もしステップ12の判定が「NO」であれば、投入紙幣は貨幣投入口17へ返却される。(ステップ14)。
【0033】 つぎのステップ15はカード発行用の押釦スイッチ45が押されたか否か、ステップ18は転送指令用の押釦スイッチ46が押されたか否かを判別しており、もしステップ15が「NO」、ステップ18が「YES」であれば、CPU38はステップ19で1000円に相当するメダル枚数データをRAM40の送信エリアに転送し、つぎのステップ20で投入紙幣の金額より1000円を差し引いて預け金額を新たに算出し、その値をRAM20の所定エリアに記憶させる。
【0034】 つぎのステップ21は送信指令用の押釦スイッチ15が押されたか否かを判別しており、その判定が「YES」であれば、CPU38は1000円に相当するメダル枚数データを送信部43より特定のスロットマシン3の制御回路部へ送信する(ステップ22)。そして預け金額が存在する場合、つぎのステップ23が「YES」となり、ステップ13へ進み、CPU38は預け金額を預け金額表示器44に表示させてつぎの押釦操作に待機する。
【0035】 つぎにカード発行用の押釦スイッチ45が押されると、ステップ15が「YES」となり、CPU38はカード発行部20のカード繰出機構22を駆動させ、書込ヘッド48により預け金額に相当するプリペイドカードを発行させ、カード放出口16へ放出させる(ステップ16)。この場合はつぎのステップ17の「預け金ありか?」の判定は「NO」となる。

ii.前記摘示の記載及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「スロットマシンでのゲームに用いるメダルと交換が可能な貨幣の投入を受け付ける貨幣投入口17と、
上記貨幣投入口17より投入された貨幣に対応したプリペイドカードを発行するカード発行部20と、
上記貨幣投入口17より投入された貨幣の投入金額がゲームに必要な1000円、5000円、10000円のいずれかの金額であれば(ステップ12)、該投入金額を預け金額表示器44に表示させると共に(ステップ13)、カード発行用の押釦スイッチ45が押されることなく(ステップ15)、転送指令用の押釦スイッチ46が押された場合に(ステップ18)、1000円に相当するメダル枚数データをRAM40の送信エリアに転送し(ステップ19)、上記1000円を差し引いて新たに算出した預け金額を上記RAM40の所定エリアに記憶させ(ステップ20)、次いで送信指令用の押釦スイッチ15が押された場合に(ステップ21)、上記1000円に相当するメダル枚数データを送信部43より特定のスロットマシン3の制御回路部へ送信し(ステップ22)、上記新たに算出した預け金額が存在する場合には(ステップ23)、該預け金額を上記預け金額表示器44に表示させ、ここで、カード発行用の押釦スイッチ45が押されると(ステップ15)、カード発行部20のカード繰出機構22を駆動させて書込ヘッド48により預け金額に相当するプリペイドカードを発行させ(ステップ16)、あるいは、上記預け金額が存在しない場合には(ステップ23)貨幣投入に基づく制御をエンドとする制御手順を実行する、CPU38とROM39とRAM40とからなるマイクロコンピュータを備え、
カード発行用の押釦スイッチ45が押された時点で上記新たに算出した預け金額が存在する場合は、カード発行部20により上記新たに算出した預け金額に相当するプリペイドカードを発行するが、上記新たに算出した預け金額が存在しない場合は、貨幣投入に基づく制御をエンドとするようにしたプリペイドカード処理装置。」

4.対比及び判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「スロットマシン」、「ゲーム」、「メダル」、「貨幣投入口17」、「プリペイドカード」、「カード発行部20」、「投入金額」、「制御回路部」、「1000円」、「差し引いて」、「マイクロコンピュータ」、「新たに算出した預け金額」、「プリペイドカード処理装置」は、それぞれ、本願発明における「遊技機」、「遊技」、「遊技媒体」、「受入部」、「データ記憶媒体」、「データ記憶媒体発行手段」、「発行されたデータ」、「貸出制御装置」、「遊技媒体の貸出に供されたデータ」、「減算」、「データ記憶制御手段」、「データの残高」、「データ記憶媒体処理装置」に相当する。
そして、引用発明が、1000円、5000円、10000円のいずれかの金額が投入されると、その投入金額(発行されたデータ)を預け金額表示器44に表示させる機能を有することからみて、本願発明における、発行されたデータを「記憶データとして内部に記憶する」機能を有していること、該投入金額(発行されたデータ)のうちから1000円に相当するメダル枚数データを特定のスロットマシン3の制御回路部へ送信する機能を有することからみて、本願発明における、投入金額(発行されたデータ)の「範囲内」で遊技媒体を遊技者に貸出す貸出制御装置へ貸出に供されるデータを供給する機能を有していることは、明らかである。
また、引用発明における、「新たに算出した預け金額が存在する場合は、これに相当するプリペイドカードを発行する(ステップ16)」ことは、本願発明における、「データの残高が「0」以外の場合は、データ記憶媒体を遊技者に供給する」ことに相当するとともに、引用発明における、「新たに算出した預け金額が存在しない場合に貨幣投入に基づく制御をエンドとする」(ステップ23)ことは、このときに「プリペイドカードを発行しないようにした」ことが明らかであるから、本願発明における、「データの残高が「0」に成った時点で、データ記憶媒体を遊技者に供給しないようにした」ことに相当する。
さらに、本願発明における「遊技機における遊技終了条件が生じた時点」とは、本願明細書によれば「カード返却スイッチ29が操作された場合」を実施例とすることから、引用発明における「カード発行用の押釦スイッチ45が押された時点」と、いずれも「カード発行の契機となる条件が生じた時点」で共通している。
そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点「遊技機での遊技に用いる遊技媒体と交換が可能な貨幣を受け入れる受入部と、
上記受入部より受け入れた貨幣に対応したデータ記憶媒体を発行するデータ記憶媒体発行手段と、
上記データ記憶媒体発行手段によって発行されたデータを記憶データとして内部に記憶すると共に、データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸出す貸出制御装置へ遊技媒体の貸出に供されるデータを供給し、実際に遊技媒体の貸出に供されたデータを減算記憶するデータ記憶制御手段と、を備え、
上記データ記憶媒体発行手段は、カード発行の契機となる条件が生じた時点で上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」以外の場合は、上記データ記憶制御手段が記憶するデータの残高をデータ記憶媒体に書き込み、該データ記憶媒体を遊技者に供給するが、遊技媒体貸出可能な記憶データの残高が「0」に成った時点での状態において、上記データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の場合は、データ記憶媒体を遊技者に供給しないようにしたデータ記憶媒体処理装置。」
相違点A.本願発明は、データ記憶媒体発行手段による発行情報を送信するシステム通信部を備えているのに対し、引用発明は、上記システム通信部を備えていない点。
相違点B.データ記憶媒体発行手段によって発行されたデータについて、本願発明は、上記発行されたデータを貸出制御装置へ供給するのに対し、引用発明は、上記発行されたデータ(1000円、5000円、10000円のいずれか)のうちから、所定のデータ(1000円に相当するメダル枚数データ)を貸出制御装置へ供給する点。
相違点C.カード発行の契機となる条件が、本願発明は、遊技機における遊技終了条件が生じた時点であるのに対し、引用発明は、カード発行用の押釦スイッチ45が押された時点である点。
相違点D.データ記憶媒体を遊技者に供給しない場合として、本願発明は、遊技機における遊技終了条件が生じた状態において、データ記憶制御手段の記憶するデータの残高が「0」の場合を含むのに対し、引用発明は、前記の場合を含まない点。

(2)判断
i.相違点Aについて
ところで、データ記憶媒体発行手段によるカード発行情報をホール管理装置やカード発行会社等へ送信するためにデータ記憶媒体発行手段にシステム通信部を備えることは周知技術(例えば、原審で引用した特開平2-264686号公報参照。)であるから、引用発明において、前記周知技術を採用して、前記相違点Aに係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものである。
ii.相違点Bについて
データ記憶媒体発行手段によって発行されたデータを貸出制御装置へ供給する方式として、該発行されたデータの全額を貸出制御装置へ供給するか、あるいは、引用発明のように、発行されたデータのうちの一部の額を貸出制御装置へ供給するかは、遊技媒体を遊技者に貸出すシステム上の単なる設計的事項(例えば、原審で引用した特開平2-264686号公報には「カード2の有価データの範囲内で遊技媒体を遊技者に貸し出す球排出装置26を制御するローカル制御装置25bへ上記有価データを供給する」技術が開示されている。)にすぎないから、引用発明における、発行されたデータのうちの一部の額を貸出制御装置へ供給する方式に代えて、該発行されたデータの全額を貸出制御装置へ供給する方式を採用して、前記相違点Bに係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものである。
iii.相違点Cについて
引用発明は、カード発行用の押釦スイッチ45が押された時点で、特定のスロットマシン3の制御回路部へ送信した1000円に相当するメダル枚数データを差し引いて新たに算出した預け金額に相当するプリペイドカードを発行するものであるところ、遊技者が遊技を終了するために、前記のようにカード発行用の押釦スイッチ45を押す場合が当然想定されるが、これは、前記に対比したように、本願発明における、遊技機における遊技終了条件が生じた時点と同じことといえる。
そうすると、引用発明における、カード発行の契機となる条件として、遊技終了時点を想定して、前記相違点Cに係る本願発明の構成のようにすることは、当業者が容易に想到できるものである。
iv.相違点Dについて
引用発明は、遊技データの残高が「0」になった時点で、データ記憶媒体を遊技者に供給しないようにするものであるところ、前記相違点Dに係る本願発明の構成のように、遊技データの残高が「0」か否かの判断を遊技機における遊技終了条件が生じた状態において行うようにすることは、単なる設計的変更にすぎない。
なお、本願発明に係る実施例には、遊技終了条件が生じた状態である、カード返却スイッチ29が操作された状態より以前の段階で、データの残高が「0」であることが判断され、該判断に基づいてカードを発行しないように確定するものが開示されており、相違点Dに係る本願発明の構成は、出願当初の明細書において必ずしも明確に記載されているものではない。
v.作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に予測できるものである。
vi.まとめ
本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-01 
結審通知日 2006-09-26 
審決日 2006-10-10 
出願番号 特願平11-361740
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 辻野 安人
藤田 年彦
発明の名称 データ記憶媒体処理装置  
代理人 福田 賢三  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 武通  

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