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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1149107
審判番号 不服2002-15899  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-06-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-21 
確定日 2006-12-20 
事件の表示 特願2000-370685「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 5日出願公開、特開2001-149589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年10月9日に出願した特願平10-287962号の一部を平成12年12月5日に新たな特許出願としたものであって、平成14年7月17日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後当審において、平成18年7月25日付で拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月21日付で手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月21日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。

「遊技領域区画部材により形成され遊技球が落下する遊技領域を有する遊技盤を備え、該遊技盤に設けられ、始動条件が成立すると当否に係る複数の識別情報を可変表示させる表示領域を少なくとも備えた画像表示装置、及びその周囲に配置され遊技球が入ることができる厚みを有する遊技球流通部材を含んで構成された可変図柄表示装置と、前記可変図柄表示装置の下方に配置され、前記画像表示装置に表示される識別情報が特定図柄となるとき羽根部材が所定時間開放される普通電動役物と、前記普通電動役物の下方に配置され、前記画像表示装置に表示される複数の識別情報が特定の組合せであるとき特別遊技状態となる大入賞装置とを備えた弾球遊技機であって、
前記可変図柄表示装置が前記遊技領域の略中央部に配置され、
遊技者にとって第1の有利な遊技状態に係る第1の判定をするとともに、第2の有利な遊技状態に係る第2の判定をする判定手段と、前記画像表示装置における前記表示領域に、前記判定手段による前記第1の判定に係る前記複数の識別情報のうちの一部の識別情報に前記第2の判定に係る識別情報を兼用表示させるよう表示制御を行う表示制御手段とを備え、
前記第1の判定は、前記複数の識別情報が前記特定の組合せになり、前記大入賞装置が所定回数開放されて前記特別遊技状態が実行されるか否かの判定であり、前記第2の判定は、前記複数の識別情報のうちの一部の識別情報が前記特定図柄となり、前記普通電動役物の羽根部材が所定時間開放されるか否かの判定であり、
前記普通電動役物は、前記第1の判定において前記複数の識別情報が前記特定の組合せとなる場合には、前記第2の判定において前記一部の識別情報が前記特定図柄となるときでも、前記羽根部材が開放されないことを特徴とする弾球遊技機。」

2.引用刊行物記載の事項
(1)当審における平成18年7月25日付で通知した拒絶理由に引用された特開平9-299564号公報(以下、「第1引用例」という。)の記載事項
「【0018】
【実施の態様】
【実施例】図1は本発明を実施する遊技板の正面図で、図2は要部の一部断面とした拡大正面図である。図中の符号1はパチンコ機の遊技板、2は遊技板面3に付設するレール4によって囲まれ形成された遊技部で、5は遊技部の中央上部に設置されたセンター役物である。
【0019】遊技部2は遊技板面3に向けて発射される打球をレール4を案内に受け入れ、入賞口6,7、或いは大入賞口と称している入賞口8のいずれかに受け入れてセーフ球とし、賞球放出の対象とするか、或いは最下部に形成するアウト口9に拾ってアウト球とするように遊技を構成設定するもので、この内部には前記センター役物5を始め上記の各入賞口6,7,8、そして、案内された打球を変則落下させる障害釘10や表示乃至飾りのランプケース11等が設備される。
【0020】センター役物5は特定図柄を表示する可変液晶表示装置を内蔵しており、その矩形をなす図柄表示装置12を中央部に備え、この表示装置12を囲むように上部から左右の側縁、そして下部に亘って、誘導路13,13を左右対象状に設けており、…… 」

「【0034】入賞口6は図示するようにここでは電動式のチューリップ型の入賞口となっており、更にここでは前記特別図柄の表示装置12に表示される特別図柄を作動させる始動スイッチを内蔵する始動口となっている。
【0035】打球Aが下方の判定スイッチ32を通過すると、入賞口6の前面に設けた普通図柄表示装置33が作動し、次に予め設定した図柄,数字において作動が停止すると入賞口6の翼片6aが開放し、飛入条件が好転するようにしてある。この翼片6aの開放はタイマーを組込むことによって一定時間継続して開放状態を維持させるようにしても、また次の打球Aが同じくスイッチ32に通過したとき閉じるようにしてもよく、種々の遊技設定が可能である。
【0036】上記翼片6aの開放は飛入条件の緩和であり、入賞口6に打球Aが飛入したときスイッチにより検出し、信号を発して前記特別図柄を作動させることになる。ここにおいて予め設定する図柄の組合せ、数字の組合せが達成されたとき大入賞口8を開放し打球の入賞を大幅に緩和して多数の賞球の放出を許すことになる。尚、特別図柄の作動中に続けて入賞口6に飛入した打球は予め設定した個数カウントし、記憶して上記作動停止後再作動させて設定回数の範囲でこれを繰り返すようにしてある。」

上記記載事項及び図面によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、引用発明という。)が記載されている。
「レール4に囲まれ打球が落下する遊技部2を有する遊技板1を備え、遊技部2に設置され、入賞口6に打球Aが飛入したとき作動させる複数の特別図柄を表示する特別図柄表示装置12、及びこの特別図柄表示装置12を囲むように上部から左右の側縁、そして下部に亘って、左右対称状に設けた誘導路13,13を設けたセンター役物5と、前記センター役物5の下方に配置され、普通図柄表示装置33が作動して予め設定した図柄,数字において作動が停止すると翼片6aが一定時間開放される電動式のチューリップ型の入賞口6と、入賞口6の下方に配置され、前記特別図柄表示装置12に表示される複数の特別図柄が予め設定する図柄の組合せ、数字の組合せが達成されたとき開放し打球の入賞を大幅に緩和して多数の賞球の放出を許す大入賞口8とを備えたパチンコ機であって、
前記センター役物5が前記遊技部2の中央上部に設置され、
入賞口6に打球Aが飛入したときスイッチにより検出し、信号を発して前記特別図柄を作動させ、予め設定する図柄の組合せ、数字の組合せが達成されたとき大入賞口8を開放し打球の入賞を大幅に緩和して多数の賞球の放出を許し、
入賞口6の前面に設けた普通図柄表示装置33が作動し、予め設定した図柄,数字において作動が停止すると入賞口6の翼片6aが開放し、飛入条件が好転するようにしてあり、この翼片6aの開放は一定時間継続して開放状態を維持させるパチンコ機。」

(2)当審における平成18年7月25日付で通知した拒絶理由に引用された特開平4-97769号公報(以下、「第2引用例」という。)の記載事項
「図示しない打球装置によりパチンコ玉が打ち込まれる遊技領域223には、そのほぼ中央に、可変表示装置1と役物(通称チューリップ)2と普通可変入賞球装置4とが一体的に設けられている。役物2の入賞口により普通始動入賞ロ7が構成されており、この普通始動入賞ロ7に入賞した入賞玉は通路90を通って入賞玉検出器8により検出され、その検圧出力に基づいて駆動源の一例のチューリップソレノイド5が励磁されて普通可変入賞球装置4が開成状態となる。」(第19頁右上欄第2?11行目)

「この普通可変入賞球装置4の入賞口により特別始動入賞口9が構成されており、この特別始動入賞口9にパチンコ玉が入賞すれば普通入賞玉検出手段の一例の始動入賞玉検出器10により検出され、その検出出力に基づいて可変表示装置1の各可変表示器1a、1b、lcがいっせいに可変表示される。そして、所定時間が経過することにより各可変表示器1a、lb、lcが所定の順番に従って順次停止制御される。この各可変表示器1a、lb、lcは、0?9の10種類の識別情報をそれぞれ可変表示できるものであり、横3行および斜め対角線上の2列の合計5ライン上に所定の識別情報の組合せ(たとえば777)かそろうとアタッカーソレノイド16が励磁される。すると、遊技領域223の下方部分に設けられている特別可変入賞球装置3の開閉板51が開成制御されて大当たり状態が発生する。」(第19頁左下欄第1?18行目)

「……なお、大当たり制御中に打玉が特別始動入賞口9a、9b、9に入賞すれば普通可変入賞球装置4を開成制御させてもよい。」(第20頁右上欄第20行目?同頁左下欄2行目)

「本実施例では、普通始動入賞ロ7(第1図参照)にパチンコ玉が入賞したことに基づいて普通可変入賞球装置4を第1の状態に駆動制御するものを示したが、可変表示装置1(第1図参照)の可変停止時の表示結果が所定の識別情報の組合せになったことに基づいて普通可変入賞球装置4を第1の状態に駆動制御してもよい。」(第27頁左上欄第14?20行目)

3.対比
引用発明における「レール4に囲まれ打球が落下する遊技部2を有する遊技板1」は本願発明の「遊技領域区画部材により形成され遊技球が落下する遊技領域を有する遊技盤」に相当し、以下同様に、「図柄」及び「数字」は「識別情報」に、「特別図柄表示装置12」は「画像表示装置」に、「囲むように上部から左右の側縁、そして下部に亘って、左右対称状に設けた誘導路13,13」は「周囲に配置され遊技球が入ることができる厚みを有する遊技球流通部材」に、「センター役物5」は「可変図柄表示装置」に、「予め設定した図柄,数字」は「特定図柄」に、「翼片6a」は「羽根部材」に、「一定時間」は「所定時間」に、「入賞口6」は「普通電動役物」に、「開放し打球の入賞を大幅に緩和して多数の賞球の放出を許す」は「特別遊技状態となる」に、「大入賞口8」は「大入賞装置」に、「パチンコ機」は「弾球遊技機」に、「特別図柄」は「第1の判定に係る識別情報」に、「普通図柄」は「第2の判定に係る識別情報」に相当する。

また、引用発明の可変図柄表示装置は、遊技領域の中央上部に設置されるものであり、図1も参照すると、遊技領域の略中央に配置されるものといえる。

そして、引用発明は、複数の特別図柄が特定の組合せになると、大入賞装置を開放し特別遊技状態が実行されるものであるから、第1の有利な遊技状態に係る第1の判定をしているものといえ、第1の判定を実行する判定手段を備えるものといえる。

さらに、引用発明は、普通図柄が特定図柄になると、普通電動役物の羽根部材が所定時間開放されるものであるから、第2の有利な遊技状態に係る第2の判定をしているものといえ、第2の判定を実行する判定手段を備えるものといえる。

そのうえ、引用発明は、画像表示装置(特別図柄表示装置12)に第1の判定に係る識別情報を表示させ、普通図柄表示装置33に第2の判定に係る識別情報を表示させるものであるから、表示装置に判定手段による第1の判定に係る識別情報と第2の判定に係る識別情報を表示させるよう表示制御を行う表示制御手段とを備えるものといえる。

したがって、両者は、
「遊技領域区画部材により形成され遊技球が落下する遊技領域を有する遊技盤を備え、該遊技盤に設けられ、始動条件が成立すると当否に係る複数の識別情報を可変表示させる表示領域を少なくとも備えた画像表示装置、及びその周囲に配置され遊技球が入ることができる厚みを有する遊技球流通部材を含んで構成された可変図柄表示装置と、前記可変図柄表示装置の下方に配置され、表示装置に表示される識別情報が特定図柄となるとき羽根部材が所定時間開放される普通電動役物と、前記普通電動役物の下方に配置され、前記画像表示装置に表示される複数の識別情報が特定の組合せであるとき特別遊技状態となる大入賞装置とを備えた弾球遊技機であって、
前記可変図柄表示装置が前記遊技領域の略中央部に配置され、
遊技者にとって第1の有利な遊技状態に係る第1の判定をするとともに、第2の有利な遊技状態に係る第2の判定をする判定手段と、表示装置に前記判定手段による前記第1の判定に係る識別情報と前記第2の判定に係る識別情報を表示させるよう表示制御を行う表示制御手段とを備え、
前記第1の判定は、前記大入賞装置が所定回数開放されて前記特別遊技状態が実行されるか否かの判定であり、前記第2の判定は、前記可変図柄表示装置の下方に設けられる普通電動役物の羽根部材が所定時間開放されるか否かの判定である弾球遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明は、画像表示装置における表示領域に、第1の判定に係る複数の識別情報のうちの一部の識別情報に第2の判定に係る識別情報を兼用表示させるよう表示制御を行うものであるのに対し、引用発明では、画像表示装置における表示領域に第1の判定に係る識別情報を表示させるものの、第2の判定に係る識別情報は別個の普通図柄表示装置33に表示させる点。

<相違点2>
本願発明は、普通電動役物は、第1の判定において複数の識別情報が特定の組合せとなる場合には、第2の判定において一部の識別情報が特定図柄となるときでも、羽根部材が開放されないものであるのに対し、引用発明は、そのような構成は備えていない点。

4.当審の判断
<相違点1について>
第2引用例には、「……可変表示装置1の可変停止時の表示結果が所定の識別情報の組合せになったことに基づいて普通可変入賞装置4を第1の状態に駆動制御してもよい。」(第27頁左上欄第14?20行目)と記載されており、第1の判定に係る識別情報に第2の判定に係る識別情報を兼用表示させる技術事項が開示されているものといえる。そして、引用発明の普通図柄表示装置33に代えて、第2引用例に開示されている上記技術事項を適用して、識別情報を兼用表示させることは、第1引用例と第2引用例がいずれも弾球遊技機の遊技状態の判定に係る識別情報の表示という同一技術分野に関わるものであることから、当業者が容易に想到できるものである。
そして、大入賞装置が開放される特別遊技状態が実行されるか否かの判定に係る識別情報が複数(例えば3桁)で、普通電動役物の羽根部材が所定時間開放されるか否かの判定に係る識別情報が1桁のものが、弾球遊技機の技術分野における周知技術であることから、複数の識別情報の一部を用いて構成することも当業者が容易になし得るものである。

<相違点2について>
遊技者にとって有利な遊技状態の判定が2つ同時にあった場合に、一方の判定を優先させてその判定に基づく実行をさせ、他方の判定に基づく実行をさせないようにすることは、例えば、特開平4-102482号公報(特別遊技中は特定入賞手段の作動スイッチ87のオン・オフの判別を行なわない、第6頁右下欄17行目?第7頁左上欄2行目参照。)、特開平4-102488号公報(可変入賞装置4および普通入賞球装置5が同時に駆動されることを防止する、第7頁左上欄第17行目?同頁右上欄第7行目参照。)、特開平9-117550号公報(大当たり時を除いて、中図柄に再変動図柄が停止表示された場合に再可変表示制御が行われる、段落【0021】及び段落【0026】参照。)に記載されているように、弾球遊技機に関わる技術分野では周知技術であるから、この周知技術を引用発明に適用すること、及び適用に際して優先判定を第1の判定と特定することは、当業者が容易になし得るものであり、当該特定による効果も予測の範囲内である。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び第2引用例に記載された発明並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-24 
結審通知日 2006-10-25 
審決日 2006-11-08 
出願番号 特願2000-370685(P2000-370685)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
藤田 年彦
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 菅原 正倫  

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