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審決分類 |
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 C07D |
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管理番号 | 1149114 |
審判番号 | 不服2003-8285 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-07-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-05-12 |
確定日 | 2006-12-20 |
事件の表示 | 特願2000-377135「7,8-シクロプロパタキサン類」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月24日出願公開、特開2001-199974〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本願発明 本願は、平成 5年 6月30日を国際出願日とする特許出願(特願平5-214717号)の一部を平成12年12月12日に新たな特許出願としたものである。 本願の請求項1に係る発明は、平成14年 9月12日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「下記式Iの化合物 【化1】(略) (式中 R1はベンゾイル又はt-ブトキシカルボニルであり、 R2はフェニルであり、 R3はアセチルオキシであり、そしてR4は水素である。」 2.原査定の理由の概要 原査定の理由の概要は、「本願発明は、本願出願日前の特許出願であってその出願後に出願公告又は出願公開がされた特願平6-514312号の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者が特願平6-514312号に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願出願の時において、その出願人が特願平6-514312号の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。」というものである。 3.当審の判断 (1)本願発明と引用出願の明細書に記載された発明の同一 a.引用出願 特願平6-514312号(以下、「引用出願」という)は、平成 5年12月13日を国際出願日とする特許法第184条の4第1項の外国語特許出願であって、本願の出願(特許法第44条第2項の規定により、平成 5年 6月30日にしたものとみなされる)後に国際公開(国際公開第94/13655号:平成 6年 6月23日公開)がされたものである。 b.引用出願の明細書に記載された発明 引用出願の国際出願日における明細書、請求の範囲若しくは図面及びこれらの書類の特許法第184条の4第4項の出願翻訳文のいずれの記載からも、7-デオキシ-7β,8β-メタノタキソールが製造されたこと、及びそれがガンに有用であること、が明らかであり、両者には化合物「7-デオキシ-7β,8β-メタノタキソール」の発明(以下、「引用出願の明細書に記載された発明」という。)が記載されていると認められる。(特に、出願翻訳文の記載に関し、特表平8-506568号公報第145頁第19行-第146頁第24行、第163頁第9-11頁、第163頁第23行-第164頁第7行及び第181頁化合物IIb、また、国際出願の明細書等の記載に関し、国際公開第94/13655号パンフレット第70頁第26行-第71頁第13行、第81頁第19-22行、第81頁第27-34行及び第101頁化合物IIb参照) c.本願発明と引用出願の明細書に記載された発明の対比 本願発明と引用出願の明細書に記載された発明とを対比する。 本願発明は、上述したとおりの化合物(以下、「シクロプロパタキソール化合物」という)の発明であって、7位と8位がメチレン鎖で架橋した化学構造を有するものである。 一方、引用出願の明細書に記載された発明の化合物「7-デオキシ-7β、8β-メタノタキソール」も7位と8位がメチレン鎖で架橋した化学構造を有するものであって、本願発明の式IにおけるR1がベンゾイルである「シクロプロパタキソール化合物」に相当するものである。 したがって、本願発明は引用出願の明細書に記載された発明と同一である。 (2)本願発明と引用出願の明細書に記載された発明の優先日の前後 (2-1)本願発明の優先日 本願は、1992年 7月 1日にされた米国特許出願第907261号(以下、「第1出願」という。)、1993年 1月19日にされた米国特許出願第006423号(以下、「第2出願」という。)、及び1993年 3月11日にされた米国特許出願第029819号(以下、「第3出願」という。)に基づくパリ条約の優先権が主張されたものである。 そこで、第1乃至第3出願に係る出願書類に、本願発明の「シクロプロパタキソール化合物」が明らかにされているか否かを検討する。 a.第1乃至第3出願に係る出願書類の記載 a-1.第1出願 第1出願に係る出願書類(特に第3頁下から第2行-第4頁第13行、第5頁第3-16行、第5頁第25-29行、第6頁第6-8行、実施例2、実施例3、実施例5、実施例6、表1、表2)には、7α及び7β-フルオロタキソール誘導体の「混合物」が製造され、その物性値が測定された旨、及び当該「混合物」が抗腫瘍活性を有していた旨、記載されており、また、7-フルオロタキソールのα-異性体をβ-異性体から分離するために使用されたHPLCの装置及び条件が記載されている。 しかしながら、第1出願に係る出願書類には、7位と8位がメチレン鎖で架橋した「シクロプロパタキソール化合物」を直接認識できる化学構造式、化学物質名などの記載はみあたらない。 また、当該出願書類に記載された物性値からは、7α及び7β-フルオロタキソール誘導体の「混合物」として記載されたものを分離したときの化合物の1つが実は7β-フルオロタキソール誘導体ではなく「シクロプロパタキソール化合物」であると明確に同定することもできない。 さらに、第1出願後に、7α及び7β-フルオロタキソール誘導体の「混合物」として記載されたものを分離して物性値を測定することにより「シクロプロパタキソール化合物」と同定される化合物が見出され、この化合物の存在が証明されても、それは、分離、物性値の測定という処理を経て明らかになることであるから、係る処理を経て得られた化合物の知見について記載のない第1出願に係る出願書類に「シクロプロパタキソール化合物」が実質的に開示されていたとすることもできない。 a-2.第2出願 第1出願と同様、第2出願に係る出願書類にも「シクロプロパタキソール化合物」が認識・同定できる記載は見あたらない。 a-3.第3出願 第3出願に係る出願書類(特に、第4頁第8行-第5頁第3行、第5頁第12行-第6頁第6行、実施例3、実施例21、実施例23、実施例24、クレーム1、2、4及び6)には、「R1がベンゾイル又はt-ブトキシカルボニルであり、R2がフェニルであり、R3がアセチルオキシであり、そしてR4が水素である式Iの化合物」(式I省略)が記載され、これは「シクロプロパタキソール化合物」に相当する。 b.本願発明の優先日 以上のとおり、第1及び第2出願に係る出願書類からは、本願発明の「シクロプロパタキソール化合物」が明らかでなく、第3出願に係る出願書類で初めてそれが明らかにされているのであるから、本願発明に関しては、第3出願に基づくパリ条約の優先権のみが認められる。 したがって、第3出願の出願日(1993年 3月11日)が、本願発明の優先日となる。 (2-2)引用出願の優先日 引用出願には、1993年 2月 2日にされた米国特許出願第08/013826号に基づくパリ条約の優先権が主張されている。 この米国特許出願第08/013826号の出願書類(特に、第7頁第35行-第8頁第21行、第13頁第25-32行及び第16頁化合物2参照)には、引用出願の明細書に記載された発明の化合物「7-デオキシ-7β,8β-メタノタキソール」が記載されている。 そうすると、引用出願の明細書に記載された発明に関して、上記優先権が認められ、1993年 2月 2日が、当該発明の優先日となる。 (2-3)本願発明と引用出願の明細書に記載された発明の優先日の前後 したがって、引用出願の明細書に記載された発明の優先日(1993年 2月 2日)は、本願発明の優先日(1993年 3月11日)よりも前となる。 (3)本願及び引用出願の出願人及び発明者の同一 本願の出願人は、ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニーであり、そして、発明者は、シューホェイ チェン、ヴィットリオ ファリナであ る。 一方、引用出願の出願人は、ジ・アップジョン・カンパニーであり、そして、発明者は、ヘスター,ジャクソン・ビィ,ジュニア、ジョンソン,ロイ・エイ、ケリー,ロバート・シィ、ミディ,エルドン・ジィ、スカルニック,ハービー・アイである。 本願と引用出願の出願人及び発明者を照合すると明らかなように、両出願の出願人及び発明者は同一でない。 4.結論 以上のとおりであるから、本願発明は、その優先日前の日を優先日とし本願出願後に国際公開がされた引用出願の明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願発明の発明者が引用出願の明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が引用出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-07 |
結審通知日 | 2006-07-18 |
審決日 | 2006-08-08 |
出願番号 | 特願2000-377135(P2000-377135) |
審決分類 |
P
1
8・
161-
Z
(C07D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 齋藤 恵 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 吉住 和之 |
発明の名称 | 7,8-シクロプロパタキサン類 |