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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない B41J
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない B41J
管理番号 1149211
審判番号 訂正2006-39110  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-26 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-07-03 
確定日 2006-12-18 
事件の表示 特許第3183621号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3183621号発明(平成8年2月15日特許出願、平成13年4月27日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正をしようとするものである。
訂正後における特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、上記訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、上記通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベルを発行する臨時ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと上記値引価格とを、複数の商品について、各商品毎に記憶する商品マスターと、上記指定手段で指定された商品に関する印字データであって、上記商品マスターで記憶された印字データ中に、上記値引価格が含まれていないときは通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させ、上記値引価格が含まれているときには、上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルを臨時ラベル印字部に発行させる印字制御部とが備えられていることを特徴とするラベルプリンタ。」

2.訂正拒絶の理由の概要
平成18年8月18日付で通知した訂正拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「訂正発明は、上記特許出願の出願前に頒布された特開昭63-294340号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開昭62-119573号公報(以下、「刊行物2」という。)のそれぞれに記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。したがって、本件審判の請求は、同法第126条第5項の規定に適合しない。」
(なお、拒絶の理由中において、特開昭63-294340号公報、特開昭62-119573号公報と記載すべきを、特開平63-294340号公報と特開平62-119573号公報と誤って、記載したが、特開昭63-294340号公報については、請求人の提出した平成18年9月21日付の意見書からみて、請求人が正しく認識していることが明らかであり、特開昭62-119573号公報については、その関連する記載事項を上記拒絶の理由に摘記していることから、請求人は同様に正しく認識していると認められる。)

3.刊行物
上記刊行物1及び刊行物2には、訂正発明に関連する事項として、それぞれ以下の事項が記載されている。
(1)刊行物1
a.「異種のラベルを発行可能な複数の印字装置を備え、商品の商品番号に応じて、適宜の印字装置を選択してラベルを発行するラベルプリンタにおいて、商品番号毎に、発行するラベルの種類と印字データを設定する設定手段と、この設定手段によって設定されたラベルの種類と印字データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたラベルの種類と印字データに基づいて、商品番号に応じた印字装置を一つまたは複数自動的に選択してラベルを発行する制御部とを具備してなることを特徴とするラベルプリンタ。」(特許請求の範囲)。
b.「この発明は、異種のラベルを発行可能な複数の印字装置を備え、商品の商品番号に応じて、適宜の印字装置を選択してラベルを発行するラベルプリンタに関する。」(1頁右下欄1?4行)
c.「この発明のラベルプリンタは、商品番号に対応して、複数の印字機構部についての使用方法等を予め記憶しておくことにより、その記憶部の記憶データに基づいて、複数の印字機構部を自動的に制御して、複数種のラベルを適宜のタイミングで発行する。これにより、商品番号を入力するだけでラベルを印字できることとなって、オペレータの負担をなくす。」(2頁右上欄8?15行)
d.「1は、ラベルプリンタの本体である。この本体1の内部には、第2図に示す制御部が設けられており、この制御部には秤2が接続されている。一方、本体1の前面には、第1、第2の2つのラベル印字機構部3,4と、操作部5とが設けられている。・・・印字機構部3,4は、・・・任意の文字、数字、および画像を印字できるようになっている。また、上記印字機構部3,4には、サイズの違う計量ラベル(値付けラベル)をセットしたり、第1の印字機構部3に計量ラベルをセットし、第2の印字機構部4にPOPラベル(商品広告ラベル)をセットしたりすることにより、種類の異なるラベルを適宜印字することができる。」(2頁左下欄1?19行)
e.「第5図は、RAM30の内部構成を示すものであり、各種の処理に使用されるワーキングエリア31とPLU(プライスルックアップ)ファイル32と予約ファイル33・・・が設けられている。ワーキングエリア31には各種のレジスタと共に第10図に示すような第2の印字機構部4の使用モードフラグPF1?PF4がある。・・・PLUファイル32は、第6図に示すように、商品番号(PLUNo.)毎に、商品の単価、風袋重量、有効日、品名等を記憶するものである。また、予約ファイル33は、第7図に示すように、商品番号に対応して,後述する各種のフラグ、パック数(品出数量)、特売品の特売期間、POPNo.等を記憶するものである。・・・予約ファイル33に記憶されるフラグとしては、・・・プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つYF4・・・がある。」(3頁左下欄1行?右下欄9行)
f.「プロモーションラベルとは、第16図に示すような一般的計量ラベル(値付けラベル)の形状と印字フォーマットを持つが、印字データの色、ラベルの用紙の色、またはプリ印刷の内容が異なるものをいう。例えば、広告の品等で特に客の注意を引き付けたい場合に、他の計量ラベルとは異なる色(例えば、赤色、黄色等)のラベル用紙に印字したもの、あるいは予め「広告品」とプリ印刷されているラベル用紙に印字したものである。後者の場合には、「広告品」等の広告文は、ラベルプリンタにて印字することも可能である・・・POPラベルは、第17図に示すような商品広告用のラベルである。また、バーコードラベルは、第18図に示すように、計量ラベルで値付けした値段等をバーコードで印字したものであり」(3頁右下欄16行?4頁左上欄14行)
g.「特売に指定された商品の特売時の値段は、予めPLUファイル32に設定しておく。そのため、PLUファイル32は、通常時の値段と、特売価格との2種類の設定ができるように構成されている。」(4頁右上欄7?10行)
h.「第1の印字機構部3が計量ラベルの発行専用であるのに対し、第2の印字機構部4には次のような4つの使用目的がある。〈1〉使用しない。〈2〉プロモーションラベルを発行する。〈3〉POPラベルを発行する。〈4〉バーコードラベルを発行する。・・・第2の印字機構部4の使用目的〈1〉?〈4〉を選択することにより、それに対応してワーキングエリア31のフラグPF1?PF4が立つ(第10図参照)。・・・第2の印字機構部4の使用目的を選択した場合には、それに適合するラベル用紙を第2の印字機構部4にセットする必要がある。」(4頁左下欄4行?5頁左上欄14行)
i「画面が第11図(d)となり、既に設定されている内容が表示される。・・・商品番号に対応する通常価格と特売価格がPLUファイル32から読み出されて、表示される。」(5頁右下欄5?11行)
j.「予約モード画面において、第3の表示部分をタッチすることによって、POPラベルの予約、プロモーションラベルの予約、またはバーコードラベルの予約をする。・・・ラベルの発行データを入力することにより、予約ファイル33の内容は、第12図のとおりとなる。例えば、商品番号「0001」の商品に関しては、フラグYF1?YF4が立ち、パック数が「1」、特売日数が「2日」、POPNo.が「1」となる。」(5頁右下欄14行?6頁右上欄4行)
k.「実際のラベルの発行動作を、品番入力時と、ラベル印字時とに分けて説明する。(1)品番入力時 品番が入力されることにより、第13図のフローに入り、まずは該当するPLUデータをPLUファイル32から読み出し、それを各レジスタにセットする・・・次に、予約ファイル33をサーチし(ステップSA2)、予約ファイル33に該当PLUがあった場合には、予約データを読み出して各レジスタにセットする(ステップSA3,SA4)。・・・(2)ラベル印字時 プリントキーを操作することにより、第14図のフローに入ってラベルを印字する。・・・このフローにおいては、・・・使用モードフラグPF3(PF2の誤記と認める。)から、プロモーションラベルの印字モードであるか否かを判断する(ステップSB7)。使用モードフラグPF3(PF2の誤記と認める。)が立っているときは、プロモーションラベルの印字モードであると判断してステップSB8に進み、予約ファイル33におけるフラグYF4から、プロモーションラベルの予約があるか否かを判断する。・・・ステップSB8にて、予約ありと判断したとき、つまりフラグYF4が立っているときは、第2の印字機構部4にてプロモーションラベルを印字する(ステップSB9)。」(6頁右上欄5行?7頁左上欄末行)
l.「上記実施例においては、印字装置が第1および第2の印字機構部の2つの場合であり、第2の印字機構部でPOPラベルおよびプロモーションラベルのいずれか1つを選択的に印字する場合であったが、これに限定されるものではなく、さらに第3、第4の印字機構部を設け、値付ラベル以外にPOPラベル、バーコードラベル等を同時に二種類以上印字するように構成してもよい。また、発行するラベルの種類および発行するラベルの組み合わせも上記実施例に限定されるものではない。さらに、上記実施例では、第2の印字機構部の使用モードの設定と、予約ファイルの記憶内容に基づいて、商品番号に応じた印字装置を自動的に選択するように構成しているが、この構成に限定されるものではない。例えば、予約ファイルと同じ機構をPLUファイルに兼用させることも考えられる。」(7頁左下欄3?末行)
m.第11図(d)から、PLUファイル32には、商品毎に特売価格(特売価格を含む場合)が記憶されていることが看取できる。
n.第16?18図から、計量ラベル、POPラベル及びバーコードラベルは、それぞれのラベル用紙のサイズすなわち大きさが異なると共にそれらの印字内容が、文字、図形、バーコードのようにそれぞれ異なっていることが看取できる。
o.第14図から、第2の印字機構部4の使用目的がプロモーションラベルを発行するものであっても、プロモーションラベル予約がないときは計量ラベルを第1の印字機構部4に発行させ、プロモーションラベル予約があるときには、第1の印字機構部3を作動させることなく、プロモーションラベルを第2の印字機構部4に発行させるようにすることが看取できる。

(2)刊行物2
a.「品名が印字される品名欄と単価・重量・値段等が印字されるデータ欄とが配設されたラベルにおいて、前記品名欄又は前記データ欄の空白部に値引情報を印字したことを特徴とするラベル。」(特許請求の範囲、請求項1)。
b.「従来、ラベルプリンタにおいては、商品の単価や値段をPLU(プライス・ルック・アップ)メモリに記憶させておき、通常の値段で商品を売る場合に既に設定されている単価を呼び出した後、重量を計り、重量×単価=値段としてラベル上に印字している。そして、値下げした場合にその値引情報を買い手に伝えるためには値引情報用のラベルを別に作成して商品に貼るか、商品棚に値引情報が記載された表示用紙等を貼っている。また、別の手段としては通常の大きさよりも大きいラベルを作成し、このラベルに通常時の重量・単価・値段を印字するとともに値下げ後の重量・単価・値段を別の欄に印字している。」(1頁右下欄4?18行)。
c.「通常のラベルの品名欄又はデータ欄の空白部に値引情報を印字したので、商品の値段を値引したとき、通常のラベルを使用するだけで値引情報を得ることができ、従来のように二枚のラベルを貼ったり、大きなラベルを用いなくても値引の状態を買い手にアピールすることができるものである。」(3頁右上欄6?12行)。

3.対比・判断
(1)刊1発明の認定
ア.記載f.における「広告品」等の広告文がラベルプリンタにて印字される計量ラベルの印字フォーマットを持つプロモーションラベルの印字データは、計量ラベルの印字データ(以下、「計量ラベルデータ」という。)と「広告品」等の広告文の印字データ(以下、「広告文データ」という。)とを合わせたデータであることは明らかである。
イ.刊行物1から、第1の印字機構部3を計量ラベルの発行専用として計量ラベルに適合するラベル用紙がセットされるようにすると共に、第2の印字機構部4を、印字データが計量ラベルデータと広告文データとを合わせたものであるプロモーションラベル(以下、「広告文付加プロモーションラベル」という。)の発行専用として当該広告文付加プロモーションラベルに適合するラベル用紙をセットされるラベルプリンタの発明を捉えることができる(記載d.及びh.参照)。
ウ.上記イ.のように捉えたラベルプリンタの発明においても、上記広告文付加プロモーションラベルもプロモーションラベルの1種である以上、その発行の予約があるとき、予約ファイル33に記憶される広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4を立てることは自明であって(記載e.参照)、そうすると、広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4が立っていないときには、計量ラベルデータのみが印字された計量ラベルを第1の印字機構3に発行させ、広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4が立っているときには、上記第1の印字機構部3を作動させることなく、上記広告文付加プロモーションラベルを第2の印字機構部4に発行させる制御部を備えることも自明である(記載k.及びo.参照)。
エ.記載g.、i.、m.の各「特売価格」が、いずれも「値引価格」を意味していることは明らかである。
オ.記載l.における「予約ファイルと同じ機構をPLUファイルに兼用させる」における「機構」は「機能」の誤記と認められ、「予約ファイルと同じ機構(機能)を兼用させるPLUファイル」とは、商品番号毎に記憶されるPLUファイルに商品番号毎に記憶される予約ファイルで記憶した記憶内容を追加したもの(以下、「予約内容追加PLUファイル」という。)を指していると認定できる(そうでなければ、予約ファイルと同じ機能を兼用できない。仮に認定できないとしても、刊行物1のPLUファイルと予約ファイルはいずれも商品番号(PLUNo.)毎のデータを記憶するものであり、しかも、いずれもラベル発行のデータをレジスタにセットするために品番(商品番号)が入力されることにより読み出されるものであって、両者を1つに合体させるか別個にしておくかは、必要に応じ適宜なす範囲のことであるから、予約内容追加ファイルを備えることは、当業者が適宜なす設計変更の範囲内である。)。
カ.記載g.、i.及びm.から、上記予約内容追加PLUファイルも、商品に関するデータとして通常時の値段を含む計量ラベルデータと値引価格(値引価格を含む場合)を、複数の商品について、各商品毎に記憶するものであるといえる。
以上のことから、記載a.?o.を含む刊行物1には、以下の発明が記載されていると認定できる。
「所定の計量ラベルデータが印字された計量ラベルを発行する第1の印字機構部3と、広告文付加プロモーションラベルを発行する、通常のラベルとは種類が異なるラベルを発行可能な第2の印字機構部4とが備えられたラベルプリンタ1であって、ラベルを貼付する商品の商品番号(PLUNo.)を入力する操作部5と、商品番号毎に、商品の単価、風袋重量、有効日、品名、通常時の値段、値引価格(値引価格を含む場合)等を記憶するPLUファイル32に商品番号毎に上記広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるとき立つフラグYF4を記憶する予約ファイル33の記憶内容を追加した予約内容追加PLUファイルと、上記商品番号を入力する操作部5で入力された商品番号の商品に関する予約内容追加PLUファイルにおいて広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4が立っていないときには、計量ラベルデータのみが印字された計量ラベルを第1の印字機構部3に発行させ、広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4が立っているときには、上記第1の印字機構部3を作動させることなく、上記広告文付加プロモーションラベルを第2の印字機構部4に発行させる制御部が備えられているラベルプリンタ1。」(以下、「刊1発明」という。)

(2)対比・判断
訂正発明と刊1発明とを対比する。
ア.刊1発明の「計量ラベルデータ」、「計量ラベル」、「第1の印字機構部3」、「商品の品番を入力する操作部5」、「制御部」、「ラベルプリンタ1」は、それぞれ、訂正発明の「通常データ」、「通常ラベル」、「通常ラベル印字部」、「商品指定手段」、「印字制御部」、「ラベルプリンタ」に相当する。
イ.刊1発明の「第2の印字機構部4」と訂正発明の「臨時ラベル印字部」とは、通常ラベルとは異なる種類のラベル(以下、「異種ラベル」という。)を発行する印字部(以下、「異種ラベル印字部」という。)である点で共通している。
ウ.刊1発明の「広告文付加プロモーションラベル」と訂正発明の「通常データとは異なる値引価格と上記通常データとが印字された臨時ラベル」とは、通常データとは異なるデータと通常データとが印字されたラベル(以下、「異データ付加ラベル」という。)である点で共通している。
なお、刊1発明の訂正明細書の請求項1の「通常データとは異なる値引価格と通常データとが印字された臨時ラベル」と「値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベル」の規定は同義であると解する。
エ.刊1発明の「予約内容追加PLUファイル」と訂正発明の「商品マスター」とは、ラベルに印字するデータとして通常データと通常データと異なるデータとを、複数の商品について、各商品毎に記憶する記憶手段である商品マスターとして共通している。
オ.刊1発明の制御部(印字制御部)は、予約内容追加PLUファイル(商品マスター)に商品毎に記憶される、広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4が立っているか否かに基づいて、広告文付加プロモーションラベル(異データ付加ラベル)と計量ラベル(通常ラベル)のうちのいずれを発行するかを決定するものであるから、訂正発明の印字制御部とは、指定手段で指定された商品に関するデータであって、商品マスターで記憶されたデータに基づいて、通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させるかあるいは通常ラベル印字部を作動させることなく異データ付加ラベルを異種ラベル印字部に発行させるかを決定する印字制御部である点で共通している。
以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点]
所定の通常データが印字された通常ラベルを発行する通常ラベル印字部と、異種ラベルを発行する異種ラベル印字部とが備えられたラベルプリンタであって、ラベルを貼付する商品を指定する商品指定手段と、ラベルに印字するデータとして通常データと通常データとは異なるデータとを、複数の商品について、各商品毎に記憶する記憶手段と、上記指定手段で指定された商品に関する上記記憶手段で記憶されたデータに基づいて、通常データのみが印字された通常ラベルを通常ラベル印字部に発行させるかあるいは上記通常ラベル印字部を作動させることなく、上記異データ付加ラベルを異種ラベル印字部に発行させるかを判断する印字制御部とが備えられているラベルプリンタ。
[相違点]
A.異種ラベル印字部(臨時ラベル印字部)で発行させる異種ラベル(臨時ラベル)が、訂正発明では値引価格と通常データとが合わせて印字された臨時ラベルであるのに対して、刊1発明では、広告文付加プロモーションラベルである点、
B.印字制御部が、異データ付加ラベル(臨時ラベル)を異種ラベル印字部(臨時ラベル印字部)で発行させるか否かの判断を、訂正発明では、指定手段で指定された商品に関する印字データであって、商品マスターで記憶された印字データ中に、値引価格が含まれているか否かで行うのに対して、刊1発明では、商品マスターで記憶されたデータ中の広告文付加プロモーションラベルの発行の予約があるときに立つフラグYF4が立っているか否かで行う点。
[相違点の判断]
相違点Aについて、
通常時の重量・単価・値段(通常データ)を印字するとともに値下げ後の重量・単価・値段(値引価格)を印字するラベルであって、当該ラベルのラベル用紙を、通常のラベルのラベル用紙より大きくするラベル(以下、「値引価格付加異種ラベル」という。)は、例えば、上記刊行物2に記載されている(上記2.(2)b.参照)ように、周知である。
また、当該刊行物2に記載の値引価格付加異種ラベルと刊1発明の広告文付加プロモーションラベルとは、通常データとは異なるデータと通常データとが印字されることによって客の注意を引き付けたい異データ付加ラベルという点で共通し、また、両者は、通常データが印字されるから、通常ラベルと一緒に商品に貼付されるPOPラベルやバーコードラベルと異なり、通常ラベルが貼付されない商品に、通常ラベルの代わりに単独で貼付される異種ラベルである点でも共通している。
さらに、刊1発明のラベルプリンタの第2印字機構部4(異種ラベル印字部)は、プロモーションラベルのラベル用紙に限定されず他の異種ラベルのラベル用紙もセット可能である(記載d.、l.参照)。
以上のことを勘案すると、刊1発明において、相違点Aのように、異種ラベル印字部(臨時ラベル印字部)で発行させる異種ラベル(臨時ラベル)として、上記刊行物2に記載の周知の値引価格付加異種ラベルとすることは、当業者が普通に考えることであり、そしてそれは、第2印字機構部4(異種ラベル印字部)に上記刊行物2に記載の周知の値引価格付加異種ラベルのためのラベル用紙をセットすると共に刊1発明の広告文付加プロモーションラベルの広告文に代えて値引価格を印字するように印字制御部を変更するだけですむことであるから、当業者が容易に想到できることである。
相違点Bについて、
刊1発明において、異種ラベル印字部(臨時ラベル印字部)で発行させる異種ラベル(臨時ラベル)として、上記刊行物2に記載の周知の値引価格付加異種ラベルを異種ラベル印字部で発行させる際に、相違点Bのように、値引価格付加異種ラベル(臨時ラベル)を発行させるか否かの判断を、フラグYF4を使用せずに、商品マスターで記憶された印字データ中に値引価格が含まれているか否かで行う(値引価格付加異種ラベルを発行させる場合値引価格は当然に印字データとなる。)印字制御部を備えるようにすることも、以下の理由で当業者にとって想到容易である。
[理由]
一般に、フラグは、「一連のデータの中味,または状態を示すための標識で,通常,語単位,またはレコード単位に1ビットが使用される」(「コンピュータ用語辞典」、株式会社コロナ社発行、昭和54年10月30日8版、フラグの項参照)ものであり、刊1発明は、フラグを一連のデータの仕分け基準としているものであるが、一連のデータを仕分ける方法において、仕分け専用のフラグを使わずに、データの中味にそれ自体が意味を持っている特定のデータが含まれているか否かを仕分け基準とすることは慣用技術である。
例えば、当審が通知した訂正拒絶の理由で慣用技術の例として引用した特開平1-199839号公報には、「本発明装置においては、電子式秤は商品指定部の商品指定により品番ファイルからラベル印字用データを読出し、このラベル印字用データに基いてラベルの種類を判定し、この判定結果に応じて各ラベルプリンタのなかから最適なプリンタを選択してラベル発行を行なわせる。」(3頁右上欄3?9行)及び「品番キー32が入力されてラベル発行を要する商品が指定されると、第5図に示す処理を実行するようにプログラム構成されている。すなわち、ステップ(ST1)としてキー入力された品番により品番ファイル51をサーチし、一致する品番に対応するラベル印字用データを読出す(データ読出し手段)。次いで、ST2として読出したラベル印字用データの品名印字行数、内容データ印字行数等によりラベル種類テーブル52をサーチし、その品名、内容データなどを印字するのに最適なラベルコードを決定する(ラベル種類判定手段)。次に、ST3としてプリンタ指定テーブル53をサーチし、ST2にて決定されたラベルコードのラベルが設定されたラベルプリンタを抽出する(プリンタ抽出手段)。」(4頁右上欄3?18行)と記載されているとおりである。当該公報に記載の「ラベル印字用データの品名印字行数、内容データ印字行数等」は、品名印字行数、内容データ印字行数等を示すものであって、仕分け専用の機能だけを持っているものでないから、仕分けるときだけに使用する仕分け専用のフラグでない。
また、ラベルプリンタにおいて、記憶された商品に関するデータに基づいてラベルの発行処理の内容を変える際に、記憶された商品に関するデータ中の値引価格自体の存否及びその内容如何をその仕分け基準として利用することは周知である。
例えば、特開昭61-274227号公報の第4図と「定額値引仕様であった場合について説明する。この場合、第4図のA、B、Cで示すように、「値引値段」がセットされている場合(A)と「値引する値段(通常値段と値引値段との差額)」がセットされている場合(B)と「値引する値段の%」がセットされている場合(C)との三態様がある。まず、「値引値段」(例えば、600円)がセットされている場合には、秤部2より計量データを取り込み、PLUメモリー9のプリセット単価より通常値段を算出し、ラベル発行の条件をチェックする。条件が成立したら、第6図に示す売価変更ラベル24を発行し、値引の差額計算をした後に通常発行時と同様なメモリー処理を行なう。前述の売価変更ラベル24は、値段表示部27の数値は、625円であるが、バーコード印字部28の内容は、矢視のように値引値段600円である。つぎに、「値引する値段」(例えば、25円)がセットされている場合は、前述のようにしてラベル発行の条件が成立したら、第6図に示すようなラベル24を発行する。この場合、値引値段計算は、通常値段から値引する値段を減算したものである。この場合にも、商品30には「25円引き」と印刷したシール29をラベル24とともに貼付する。また、「値引する値段の%」がセットされている場合には、値引値段計算は通常値段からその通常値段に設定%を乗算した値を減算する。発行するラベル24は第6図に示すようなものになる。なお、この場合にも、商品30には例えば「20%引き」と表示したシール29をラベル24とともに貼付する。このように定額値引仕様である場合、予め値引値段または値引する値段もしくは値引する値段の%がセットされているので、その値が変らない限りラベル発行のための操作がきわめて良い。」(3頁右下欄17行?4頁右上欄13行)、及び特開平1-216215号公報の第3図と「不定量商品の重量を計量する計量手段と、不定量商品について設定された単価と計量手段で計量された重量とに基いてその商品の価格を算出する価格算出手段と、価格等をラベル等に印字する印字手段とを有する値付け用電子秤であって、値引き率もしくは値引き後価格を入力するための数値入力手段と、該入力手段で入力された数値が所定値より大きいか否かにより、その数値が値引き率か値引き後価格かを判別する値引き方法判別手段と、該判別手段によつて判別された値引き方法と上記入力手段で入力された数値とに基いて上記ラベル等に印字する価格を設定する値引き後価格設定手段とを有することを特徴とする値付け用電子秤。」(特許請求の範囲)の各記載にみられるとおりである。
そして、通常ラベルが貼付される商品に関する印字データと値引価格付加異種ラベルが貼付される商品に関する印字データとが相互に区別される点はいうまでもなく値引価格の有無である。
ゆえに、相違点Bのように、値引価格付加異種ラベル(臨時ラベル)を発行させるか否かの判断を予約内容追加PLUファイル(商品マスター)で記憶された印字データ中に値引価格が含まれているか否かで行う印字制御部を備えるようにすることは、当業者であれば、必要に応じて適宜採用し得た程度のことであり、その作用効果も格別なものでない。

なお、訂正発明が、値引価格付加異種ラベル及び異種ラベル印字部を、それぞれ、臨時ラベル及び臨時ラベル印字部と称していることも単なる称呼上の問題にすぎない。

以上のとおり、訂正発明は、刊1発明、刊行物2に記載された発明、周知技術及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-20 
結審通知日 2006-10-25 
審決日 2006-11-07 
出願番号 特願平8-54009
審決分類 P 1 41・ 856- Z (B41J)
P 1 41・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 藤井 靖子
國田 正久
島▲崎▼ 純一
酒井 進
登録日 2001-04-27 
登録番号 特許第3183621号(P3183621)
発明の名称 ラベルプリンタ  
代理人 吉村 雅人  

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