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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B27F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B27F
管理番号 1149238
審判番号 不服2004-16123  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-04 
確定日 2006-12-22 
事件の表示 平成 8年特許願第 6646号「あり溝及びあり形突状用加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月29日出願公開、特開平 9-193101〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成8年1月18日の特許出願であって、平成15年12月19日付で拒絶の理由が通知され、同16年3月4日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同16年6月28日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同16年8月4日に本件審判の請求がされ、同16年9月3日に明細書及び図面を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は特許請求の範囲を含む明細書及び図面について補正をするものであって、請求項1、図面及び図面に関する記載事項についての補正は以下のとおりである。なお、下線は、対比の便宜のため当審で付与したものである。

(1)請求項1について
ア 補正前の請求項1
「被加工材を載置固定するベッドを有するフレームと、このフレームに対向すると共に平行なラック部を有する第1のガイドレール4と、フレームと可動台との間に設けられた第2のガイドレールと、この両ガイドレール上を平行移動する可動台とを基台上に立設し、上記可動台には垂直取付部と水平取付部とを設け、該垂直取付部の背面部には円形ガイド溝を形成し、取付部の円形ガイド溝には回転変位可能でその中心に透孔を有する環状円盤を取付け、当該環状円盤にはその中心の透孔に関して対称位置に前記カッターを有するあり形用加工機を位置調整可能に取付けるための長孔を穿設すると共に、外周部における中心に関して対称位置にストッパ孔を穿設してなり、これらストッパ孔のうちの一方と前記取付部に設けた一つのストッパ孔とにストッパピンを挿入することにより、偏心状態に取付けられる前記あり形用加工機を反転可能に設置できるように構成したあり溝及びあり形突状用加工装置において、
上記垂直取付部の背面部には円形ガイド溝を形成すると共に、この円形ガイド溝には回転変位可能でその中心の偏心位置に透孔を穿設した第1の環状円盤を緩衝部材を介して取付け、当該水平取付部にはリミットスイッチを取り付けておき、第1のガイドレールに取り付けたリミット部と当接することにより、被加工材の加工終端を検知してあり形用加工機の移動速度と可動台の移動速度とを同期して移動すると共に、上記可動台の垂直取付部には該垂直取付部とフレームとの間に被加工材に向かって突出するカッター刃を囲繞すると共に、カッター刃に向かって吸引口が開口した吸引機構を設けたことを特徴とするあり溝及びあり形突状用加工装置。」

イ 補正後の請求項1
「被加工材を載置固定するベッドを有するフレームと、このフレームに対向すると共に平行なラック部を有する第1のガイドレール4と、フレームと可動台との間に設けられた第2のガイドレールと、この両ガイドレール上を平行移動する可動台とを基台上に立設し、上記可動台には垂直取付部と水平取付部とを設け、該垂直取付部の背面部には円形ガイド溝を形成し、取付部の円形ガイド溝には回転変位可能でその中心に透孔を有する環状円盤を取付け、当該環状円盤にはその中心の透孔に関して対称位置に前記カッターを有するあり形用加工機を位置調整可能に取付けるための長孔を穿設してなり、偏心状態に取付けられる前記あり形用加工機を反転可能に設置できるように構成したあり溝及びあり形突状用加工装置において、
上記垂直取付部の背面部には円形ガイド溝を形成すると共に、この円形ガイド溝には回転変位可能でその中心の偏心位置にあり形加工機のカッター刃を案内する第1の透孔を穿設した第1の環状円盤を緩衝部材を介して取付け、
あり形加工機のカッター刃を案内する第2の透孔を穿設しておき、第1の環状円盤に穿設した第1の透孔の垂直方向の対称位置の半径方向に延伸した取付用の長孔を穿設してなる第2の環状円盤を第1の環状円盤に固定すると共に、当該第2の環状円盤の内周部の取付部にあり形加工機を取り付け、
上記水平取付部にはリミットスイッチを取り付けておき、第1のガイドレールに取り付けたリミット部と当接することにより、被加工材の加工終端を検知してあり形用加工機の移動速度と可動台の移動速度とを同期して移動すると共に、上記可動台の垂直取付部には該垂直取付部とフレームとの間に被加工材に向かって突出するカッター刃を囲繞すると共に、カッター刃に向かって吸引口が開口した吸引機構を設けたことを特徴とするあり溝及びあり形突状用加工装置。」

(2)図面及び図面に関する記載事項について
本件補正により、ストッパ部材の正面図であるとして図10が追加されるとともに、発明の詳細な説明に「また、垂直取付部11と第1の環状円盤18の頂部には、図10に示すようなストッパ部材33が形成されている。ストッパ部材33は支点33aを介してクランク部34が設けられ、その基端側には付勢バネ35により常に離反する方向に付勢されている。他端側にはストッパピン36が第2の環状円盤22に穿設されているストッパ孔37aに挿入されている。」(段落【0023】)という事項が追加された。

2 補正の適否
(1)請求項1について
補正前の請求項1には、「外周部における中心に関して対称位置にストッパ孔を穿設してなり、これらストッパ孔のうちの一方と前記取付部に設けた一つのストッパ孔とにストッパピンを挿入することにより」という事項が記載されているが、補正後の請求項1では、この事項が削除されている。
このような、補正前の請求項に係る発明の発明特定事項を削除する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないことが明らかであり、また、請求項の削除、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。
したがって、上記請求項1についての補正は、特許法第17条の2第4項第1号から第4号までに掲げる事項のいずれを目的とするものでもない。

(2)図面及び図面に関する記載事項について
本件の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、段落【0003】、【0004】、【0009】及び【0023】にストッパ孔、ストッパピン及びストッパ部材に関連する事項が記載されているが、上記追加された図10及び段落【0023】に記載されているようなストッパ部材については、当初明細書等には何ら記載されておらず、また、当初明細書等の記載から自明な事項でもない。
したがって、図10及び段落【0023】に記載された「また、垂直取付部11と第1の環状円盤18の頂部には、図10に示すようなストッパ部材33が形成されている。ストッパ部材33は支点33aを介してクランク部34が設けられ、その基端側には付勢バネ35により常に離反する方向に付勢されている。他端側にはストッパピン36が第2の環状円盤22に穿設されているストッパ孔37aに挿入されている。」を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではない。

3 むすび
以上のとおりであり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合しないから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成16年3月4日付手続補正書により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められ、上記第2の1(1)のアの補正前の請求項1に示したとおりである。

2 引用例記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である実公昭61-6084号公報(以下、「引用例」という。)には、以下のとおり記載されている。
(1)第1欄第2?16行
「被加工材を固定するベツドに対して平行移動する可動台上に前記被加工材に向ってカツターを案内する透孔を有する取り付け部を立設し、この取り付け部の背面に円形ガイド溝を形成するとともに、この円形ガイド溝内に環状円盤を回転変位可能に配設し、この環状円盤は中心の透孔に関して対称位置に前記カツターを有するあり形用加工機を位置調整可能に取り付けるための長孔を穿設するとともに、外周部における中心に関して対称位置にストツパ孔を穿設して成り、これらストツパ孔のうちの一方と前記取り付け部に設けた1つのストツパ孔とにストツパピンを挿入することにより、偏心状態に取り付けられる前記もあり形用加工機を反転可能に設置できるようにしたことを特徴とするあり溝及びあり形突条用加工装置。」

(2)第2欄第11行?第3欄第31行
「以下にこの考案の実施例を図面に基づいて説明する。
第1図及び第2図はこの考案の装置全体を示す正面図及び側面図で、図中、1は被加工材Aを固定するベツドであつて、調整ねじ2によつて基台3に対して高さ調節可能になっており、また、ベツド1の上面に門型に架設されるフレーム4にねじ結合する調整ねじ5′を有する被加工材押え片5によつて前記ベツド1上に被加工材Aを固定しうるようになつている。
6は可動台であつて、前記基台3上においてベツド1と平行に配設された送りねじ1aに取り付けられてベツド1に対して平行に往復移動しうるようになつており、この可動台上に立設された取り付け部7に回転変位可能に取り付けられたあり形用加工機8により、前記被加工材Aのあり溝あるいはあり形突条を加工するようになつている。この場合、第3図に示すように、前記取り付け部7には加工機8のカッター8′を案内する透孔7aが穿設されており、かつ、取り付け部7の背面には透孔7aと同心円形のガイド溝9が穿設されている。そして、このガイド溝9内に環状円盤10が配設され、この環状円盤10は前記取り付け部7の背面にねじ止めされる環状保持板11によつてガイド溝9内から外部へ抜け出ない状態で回転可能に配設されている。この場合、環状円盤10は、その中心の透孔10aに関して対称位置にそれぞれ半径方向に延びる取り付け用の長孔10b,10bが穿設されており、また、外周部における長孔10b,10bの延長方向には中心に関して対称な2つのストツパ孔10c,10cが穿設されている。(第5図参照)。このように構成される環状円盤10の長孔10bとあり溝加工機8のサブフレーム8aの取り付け孔8bとを合致させつつ加工機8を適宜位置すなわち偏心状態にセットして取り付けボルト12をもつて環状円盤10に加工機8を固定し、そして、環状円盤10の一方のストツパ孔10cと前記取り付け部7に穿設されたストツパ孔7bとを合致させ、これら両ストツパ孔10c,7b内にストツパピン13を挿入して、環状円盤10及び加工機8を可動台6の取り付け部7に固定できるようになつている。しかも、ストツパピン13を抜いて円形ガイド溝9内において環状円盤10を反転させて、他方のストツパ孔10cと取り付け部7のストツパ孔7b内にストツパピン13を挿入することにより、簡単に加工機8を反転することができるようになつている。」

(3)第2図の記載及び技術常識から、可動台6をガイドするガイドレールが設けられることは明らかである。また第2図の記載によれば、送りねじ1aがフレーム4に対向すると共に平行に設けられていることが看取できる。

上記記載事項及び図面からみて、引用例には、次の発明(以下「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「被加工材Aを載置固定するベッド1を有するフレーム4と、このフレーム4に対向すると共に平行な送りねじ1aと、ガイドレールと、この送りねじ1a及びガイドレール上を平行移動する可動台6とを基台3上に立設し、上記可動台6には取り付け部7を設け、該取り付け部7の背面部には円形ガイド溝9を形成し、取り付け部7の円形ガイド溝9には回転変位可能でその中心に透孔10aを有する環状円盤10を取付け、当該環状円盤10にはその中心の透孔10aに関して対称位置に前記カッター8′を有するあり形用加工機8を位置調整可能に取付けるための長孔10b,10bを穿設すると共に、外周部における中心に関して対称位置にストッパ孔10c,10cを穿設してなり、これらストッパ孔10c,10cのうちの一方と前記取り付け部7に設けた一つのストッパ孔7bとにストッパピン13を挿入することにより、偏心状態に取付けられる前記あり形用加工機8を反転可能に設置できるように構成したあり溝及びあり形突状用加工装置において、
上記取り付け部7の背面部には円形ガイド溝9を形成すると共に、この円形ガイド溝9には回転変位可能でその中心に透孔10aを穿設した環状円盤10を取付けたあり溝及びあり形突状用加工装置。」

3 対比
本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明における「ガイドレール」及び「取り付け部」は、本件発明における「第2のガイドレール」及び「垂直取付部」にそれぞれ相当している。そして、引用例記載の発明における「可動台」は、本件発明における「可動台」に相当するとともに「水平取付部」にも相当しており、また、引用例記載の発明における「環状円盤」は、本件発明における「環状円盤」に相当するとともに「第1の環状円盤」にも相当していることが明らかである。
さらに、引用例記載の発明における「送りねじ」は、これによって可動台をガイドしながら移動させるものであるから、第1のガイドレールであるという限りで、本件発明の「ラック部を有する第1のガイドレール」と共通している。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりと認められる。
[一致点]
「被加工材を載置固定するベッドを有するフレームと、このフレームに対向すると共に平行な第1のガイドレールと、第2のガイドレールと、この両ガイドレール上を平行移動する可動台とを基台上に立設し、上記可動台には垂直取付部と水平取付部とを設け、該垂直取付部の背面部には円形ガイド溝を形成し、取付部の円形ガイド溝には回転変位可能でその中心に透孔を有する環状円盤を取付け、当該環状円盤にはその中心の透孔に関して対称位置にカッターを有するあり形用加工機を位置調整可能に取付けるための長孔を穿設すると共に、外周部における中心に関して対称位置にストッパ孔を穿設してなり、これらストッパ孔のうちの一方と前記取付部に設けた一つのストッパ孔とにストッパピンを挿入することにより、偏心状態に取付けられる前記あり形用加工機を反転可能に設置できるように構成したあり溝及びあり形突状用加工装置において、
上記垂直取付部の背面部には円形ガイド溝を形成すると共に、この円形ガイド溝には回転変位可能でその中心に透孔を穿設した第1の環状円盤を取付けたあり溝及びあり形突状用加工装置。」である点。
[相違点1]
本件発明では、第1のガイドレールがラック部を有するものであり、第2のガイドレールがフレームと可動台との間に設けられるのに対し、引用例記載の発明では、第1のガイドレールが送りねじであり、第2のガイドレールがフレームと可動台との間に設けられるとはされていない点。
[相違点2]
本件発明では、円形ガイド溝には回転変位可能でその中心の偏心位置に透孔を穿設した第1の環状円盤を緩衝部材を介して取付けているのに対し、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。
[相違点3]
本件発明では、水平取付部にはリミットスイッチを取り付けておき、第1のガイドレールに取り付けたリミット部と当接することにより、被加工材の加工終端を検知してあり形用加工機の移動速度と可動台の移動速度とを同期して移動するのに対し、引用例記載の発明では、そのように特定されていない点。
[相違点4]
本件発明では、可動台の垂直取付部には該垂直取付部とフレームとの間に被加工材に向かって突出するカッター刃を囲繞すると共に、カッター刃に向かって吸引口が開口した吸引機構を設けているのに対し、引用例記載の発明では、そのような吸引機構を設けているものではない点。

4 相違点についての検討
(1)相違点1について
送り機構としてラック部を有する軸は、例示するまでもなく従来周知であるから、引用例記載の発明の送り機構である送りねじに代えて上記従来周知のラック部を有する軸を採用し第1のガイドレールとすることに格別の困難性は見当たらない。
また、引用例記載の発明において、第2のガイドレールをどのような位置に設けるかは当業者が必要に応じて適宜設定することのできる設計的事項であって、第2のガイドレールをフレームと可動台との間に設けることにも格別の困難性は見当たらない。

(2)相違点2について
引用例記載の発明では、「環状円盤」には、その中心に透孔が穿設され、あり形用加工機が偏心状態に取付けられるが、あり形用加工機を反転させて他の加工面を加工させるためには、環状円盤に対してあり形用加工機が偏心状態に取付けられていればよいものであるから、透孔をその中心に穿設するか、その中心の偏心位置に穿設するかは当業者が適宜選択することのできる設計的事項にすぎない。
また、摺動する部材を取付ける際に、摺動を容易にする部材を介在させることは従来周知の事項であり、引用例記載の発明において、円形ガイド溝に第1の環状円盤を取付ける際に、回転を容易にする部材として緩衝部材を介して取付けることは、当業者が容易に想到することができたことである。

(3)相違点3について
引用例記載の発明では、被加工材の加工終端をどのように検知しているのか明らかではないが、移動の終端をリミットスイッチにより検出することは、例示するまでもなく従来周知の事項であり、引用例記載の発明において、水平取付部にリミットスイッチを取り付けておき、第1のガイドレールに取り付けたリミット部と当接することにより、被加工材の加工終端を検知することに格別の困難性は見当たらない。
ところで、本件発明における「被加工材の加工終端を検知してあり形用加工機の移動速度と可動台の移動速度とを同期して移動する」の意味するところは必ずしも明確ではないが、本件明細書には、「同期して移動する」に関して、段落【0010】に、
「このハンドル部を回転操作することにより第1のガイドレールのラック部に噛合しているギアが回転して可動台をあり形用加工機の移動速度に同期して移動するようにガイドするものである。」
と記載され、段落【0029】?【0030】に、
「しかして、あり形加工機9により被加工材Aを加工切削する場合には、あり形加工機9を取付けた可動台8は、ガイド送り機構である第1のガイドレール4及び第2のガイドレール5によってガイドされる。この時、水平取付部10の下面部から下方向に延出形成され取付けられているギア16が第1のガイドレール4のラック部4aと噛合しているために、これらのガイド送り機構によってあり形加工機9の回転移動速度と同期して、可動台8は定ピッチで平行移動することとなる。
そして、可動台8がガイドレールの端部、すなわち、設定された被加工材Aの一の加工面の端部まで加工してきたときには、水平取付部10に取り付けたリミットスイッチと第1のガイドレール4に取り付けたリミット部とが当接するために、目視的にも電気的にも加工終端であることが検知され第1の環状円盤18の回転変位が可能となり、次いで被加工材Aの他の加工面の切削加工が開始される。」
と記載されている。
これらの記載によれば、上記「被加工材の加工終端を検知してあり形用加工機の移動速度と可動台の移動速度とを同期して移動する」ことは、被加工材の加工終端を検知してその検知によりあり形用加工機の移動(回転変位)をさせ次いで可動台を移動することと解される。
被加工材の加工装置において、加工終端の検知により次の工程を行わせることは従来周知の事項であり、引用例記載の発明において上記周知のリミットスイッチの採用により被加工材の加工終端を検知するに当たり、検知により次の工程であるあり形用加工機の移動(回転変位)をさせ次いで可動台を移動することは当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用例記載の発明に従来周知の事項を採用することにより上記相違点3に係る本件発明の特定事項とすることは当業者が容易なし得たことである。

(4)相違点4について
カッターを有する加工装置において、カッター刃を囲繞すると共に、カッター刃に向かって吸引口が開口した吸引機構を設けて加工時の切削屑の飛散を防止することは従来周知の事項である(必要ならば、特開昭56-19703号公報、特開平2-261603号公報、特開平3-169501号公報を参照)。
してみると、引用例記載の発明に上記従来周知の事項を採用し、垂直取付部とフレームとの間に被加工材に向かって突出するカッター刃を囲繞すると共に、カッター刃に向かって吸引口が開口した吸引機構を設けることは、当業者が容易に想到することができたことである。

(5)本件発明の効果について
本件発明の奏する作用効果は、引用例記載の発明及び上記従来周知の各事項より当業者が予測できる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。

5 むすび
したがって、本件発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-26 
結審通知日 2006-10-03 
審決日 2006-10-26 
出願番号 特願平8-6646
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B27F)
P 1 8・ 572- Z (B27F)
P 1 8・ 121- Z (B27F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就堀川 一郎  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
菅澤 洋二
発明の名称 あり溝及びあり形突状用加工装置  
代理人 大津 洋夫  

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