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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B
管理番号 1149252
審判番号 不服2003-1260  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-21 
確定日 2006-12-21 
事件の表示 平成 8年特許願第258117号「ナビゲーションシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月24日出願公開、特開平10-105050〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成8年9月30日の出願であって、本件の出願からの経緯を箇条書きにすると次のとおりである。
・平成 8年 9月30日 本件出願
・平成12年 7月25日 審査請求
・平成14年 6月19日付け 原審にて拒絶理由通知
・平成14年 8月26日 意見書及び手続補正書提出
・平成14年12月13日付け 原審にて拒絶査定
・平成15年 1月21日 本件審判請求
・平成15年 2月17日 手続補正書提出
・平成18年 1月30日付け 当審にて平成15年2月17日付け
手続補正書を却下すると共に、
拒絶理由通知
・平成18年 3月24日 意見書及び手続補正書提出
・平成18年 5月17日付け 当審にて拒絶理由通知
・平成18年 6月20日 意見書提出
・平成18年 7月19日付け 当審にて拒絶理由通知
・平成18年 9月21日 意見書提出

第2 当審における拒絶理由の骨子
当審における拒絶理由は次のような理由を含んでいる。

本願の請求項1?3に係る発明は、平成18年3月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるが、
特開平8-219797号公報(以下、「引用文献A」という。)、
特開平8- 79673号公報(以下、「引用文献B1」という。)
特開平7-306933号公報(以下、「引用文献B2」という。)
特開平6-236406号公報(以下、「引用文献B3」という。)
特開平7-248726号公報(以下、「引用文献C」という。)
に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 当審の判断
1.請求項1に係る本願発明の記載
本願の請求項1に係る発明は、平成18年3月24日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】映像取り込み機能及び映像記録機能を有するナビゲーションシステムにおいて、
映像撮影時には撮影した映像情報に地図情報を対応させて記録する記録手段と、
該記録手段に記録されている映像情報を一覧表示する表示手段と、
該表示手段に表示される映像情報を選択する選択手段と、
該選択手段により記録された映像情報を選択した時は該映像情報に対応する前記地図情報を前記映像情報とともに同一画面上への表示と、前記地図情報に番地をつけて前記映像情報の信号の後に番地をつけ、該地図情報と該映像情報とを一対として対応をさせる制御手段と、を備えたことを特徴とするナビゲーションシステム。」
(以下、同請求項1に係る発明を「本願発明1」という。)

2.引用刊行物の記載事項
当審における拒絶理由で通知した引用文献には、図面と共に下記の記載がある。

(1)引用文献Aの記載内容
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両位置を検出する車両位置検出手段と、地図情報を記録した地図情報記録手段と、文字情報を入力する文字情報入力手段、画像情報を入力する画像情報入力手段・・・のうちの少なくとも一つの情報入力手段からの情報の入力が可能な入力部と、前記車両位置検出手段によって検出された前記車両位置、前記地図情報記録手段に記録された前記地図情報および前記入力部から入力された情報を表示可能な情報表示手段と、前記車両位置検出手段によって検出された前記車両位置、前記地図情報記録手段に記録された前記地図情報および前記入力部から入力された前記情報を前記車両位置検出手段によって検出された前記車両位置に対応して記憶可能な情報記憶手段と、この情報記憶手段に記憶された前記情報内容を、前記車両位置に対応させて任意に取り出し可能な情報取出手段とからなることを特徴とする車両の情報表示装置。
【請求項2】 車両位置を検出する車両位置検出手段と、地図情報を記録した地図情報記録手段と、画像情報を入力する画像情報入力手段と、前記車両位置検出手段によって検出された前記車両位置、前記地図情報記録手段に記録された前記地図情報および前記画像情報入力手段から入力された画像情報を表示可能な情報表示手段と、前記車両位置検出手段によって検出された前記車両位置、前記地図情報記録手段に記録された前記地図情報および前記画像情報入力手段から入力された前記画像情報を前記車両位置検出手段によって検出された前記車両位置に対応して記憶可能な情報記憶手段と、この情報記憶手段に記憶された前記情報内容を、前記車両位置に対応させて任意に取り出し可能な情報取出手段とからなることを特徴とする車両の情報表示装置。

段落【0001】「【産業上の利用分野】本発明は、ディスプレイに表示された地図上に自車位置を表示するナビゲーションシステムにおいて、このナビゲーションシステムに付加することにより、任意に記憶させた種々の情報を任意に表示させることのできる車両の情報表示装置に関する。」

段落【0005】「【課題を解決するための手段および作用】・・・、本発明においては、車両位置検出手段によって検出された車両位置、地図情報記録手段に記録された地図情報、文字情報入力手段によって入力された文字情報、画像情報入力手段によって入力された画像情報および音声情報入力手段によって入力された音声情報のうちの少なくとも一つの情報を情報表示手段に表示するとともに、車両位置検出手段によって検出された車両位置に対応して情報記憶手段に記憶され、情報記憶手段に記憶された情報内容は、情報取出装置によって車両位置に対応させて任意に取り出し可能に構成されている。」

段落【0006】「このように構成された車両の情報装置によれば、使用者が文字情報および画像情報を入力したときには、その時の自車両の位置に対応して文字情報および画像情報が情報表示手段におけるディスプレイ等に示された地図上に表示される。・・・。そして、文字情報、画像情報および音声情報を表示させる場合には、情報取出装置を操作して情報を入力したときの自車両の位置を情報表示手段上で指定することにより、当該位置において入力された全ての入力情報が情報表示手段によって表示可能である。」

段落【0007】「また、前記目的を達成するために、車両位置検出手段によって検出された車両位置、地図情報記録手段に記録された地図情報および画像情報入力手段によって入力された画像情報を、情報表示手段に表示するとともに、車両位置検出手段によって検出された車両位置に対応して情報記憶手段に記憶し、情報記憶手段に記憶された情報内容を、情報取出装置によって車両位置に対応させて任意に取り出し可能に構成してもよい。このように構成された車両の情報装置によれば、使用者が画像情報を入力したときには、その画像情報が表示手段における地図上に表示される。そして、画像情報を表示させる場合には、情報取り出し装置を操作して情報を入力したときの自車両の位置を情報表示手段上で指定することにより、当該位置において入力された全ての入力情報が表示手段上に表示される。」

段落【0009】「なお、車両位置検出手段としては、高精度ガスレートセンサー型ナビゲーションシステム、GPS型ナビゲーションシステム、地磁気センサ型ナビゲーションシステム、慣性航法型ナビゲーションシステム等があり、これらのいずれを用いても、また、これらを組み合わせて用いても良い。」

段落【0010】?【0020】の【実施例】に係る記載には、【図5】、【図6】を参照しつつ、引用文献Aにいう情報表示装置10における画像情報の記録手順が説明されている。
それによると、当該情報表示装置10では、適宜の場所で、その場所に関する情報をライトペン14を用いて文字によって記憶させるとともに、ナビゲーションシステムが備えるカメラにより風景やこの風景をバックとした人等を画像情報として記憶させることができ、この記憶は、自車位置(車両位置の情報)をディレクトリとして(車両の位置に対応して)地図情報、自車位置、文字情報および画像情報がMOディスク17に記憶される。
そして、段落【0021】?【0025】の記載には、【図7】?【図10】を参照しつつ、当該情報表示装置10における画像情報の表示詳細及び手順の内容が説明されている。
それによると、当該情報表示装置10では、画像情報を記憶させた場合、地図上にその入力位置を表示する丸印が表示されており、これをカーソルにより選択すると、その車両位置において記憶させた全ての画像情報が小さく表示され、それらのうち特定の画像を大きく表示させたい場合には、再度カーソルで選択すると、ディスプレイ全体に表示されるように構成されている。

(2)引用文献B1、引用文献B2或いは引用文献B3の記載内容
これらの文献には、画像情報を扱うに際して、一覧表示する機能を備えることで、画像へのアクセスを容易化することが開示されている。

(3)引用文献Cの記載内容
当該文献には、ナビゲーションシステムにおいて用いるデータベースを作成するにあたって、地図情報と映像情報との対応関係を確認するために同じCRT上に表示することが開示されている。

3.対比・判断
(3-1)本願発明1について
本願発明1と引用文献A記載のナビゲーションシステムとを対比すると、両者は、「映像取り込み機能及び映像記録機能を有するナビゲーションシステム」である点で一致する。
そして、引用文献A記載のナビゲーションシステムは、本願発明1における「映像撮影時には撮影した映像情報に地図情報を対応させて記録する記録手段」、「該記録手段に記録されている映像情報を表示する表示手段」、「該表示手段に表示される映像情報を選択する選択手段」及び「該選択手段により記録された映像情報を選択した時は画面上への表示と、該地図情報と該映像情報とを一対として対応をさせる制御手段」に対応する手段を有している。
よって、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1>該記録手段に記録されている映像情報を表示する表示に関して、
本願発明1においては、「一覧表示する」とされるのに対して、
引用文献A記載のナビゲーションシステムでは、「一覧表示する」ものとはいえない点。
<相違点2>制御手段が行う制御について、「該選択手段により記録された映像情報を選択した時の画面上への表示」に関して、
本願発明1においては、「該選択手段により記録された映像情報を選択した時は該映像情報に対応する前記地図情報を前記映像情報とともに同一画面上への表示」をするとされるのに対して、
引用文献A記載のナビゲーションシステムでは、該映像情報に対応する前記地図情報を前記映像情報とともに同一画面上へ表示するとは直ちにいえない点。
<相違点3>制御手段が行う制御について、「該地図情報と該映像情報とを一対として対応をさせる」に関して、
本願発明1においては、「前記地図情報に番地をつけて前記映像情報の信号の後に番地をつけ」て対応をさせるとされるのに対して、
引用文献A記載のナビゲーションシステムでは、番地をつけることの記載がない点。

<相違点1についての判断>
記憶装置内に複数の映像(画像)情報が存在する場合に、すべての映像(画像)を一覧表示して、各映像(画像)情報へのアクセスを容易化することは、前記引用文献B1?B3にみられるように従来周知であって、格別なこととはいえない。
引用文献A記載のナビゲーションシステムにおいては、画像を入力した場所を表す丸印を選択した場合には、その場所で撮影した画像をすべて表示するものとなっており、少なくとも、その地点における画像情報を一覧表示するものとして構成されている。
してみるに、撮影した画像のすべてを表示する必要を考慮して、「一覧表示」するようになすことは、当業者が適宜なし得た程度のことである。

<相違点2についての判断>
引用文献A記載のナビゲーションシステムの実施例においては、撮影場所を丸印で選択した際の一覧表示が、地図情報とともになされるか定かではない。
しかし、前記段落【0006】には、「使用者が文字情報および画像情報を入力したときには、その時の自車両の位置に対応して文字情報および画像情報が情報表示手段におけるディスプレイ等に示された地図上に表示される。」との明確な記載があり、引用文献Aに触れた当業者であれば、「該映像情報に対応する前記地図情報を前記映像情報とともに同一画面上への表示」を想起することに困難性はない。
また、前記引用文献Cにみられるように、ナビゲーションシステムにおいて用いるデータベースを作成するにあたって、地図情報と映像情報との対応関係を確認するために同じCRT上に表示することが行われており、ナビゲーションシステムにおける映像情報の表示に際し、これと同様の機能を備えるようになすことは、当業者であれば適宜なし得た程度のことである。

<相違点3についての判断>
引用文献A記載のナビゲーションシステムにおいては、少なくとも、画像情報に係る記憶を、自車位置(車両位置の情報)をディレクトリとして(車両の位置に対応して)行うものであり、関連する情報間をリンクする適宜キーにより関連付けること自体は、データ処理上においてきわめて慣用される手法である。
してみれば、前記「自車位置(車両位置の情報)をディレクトリとして(車両の位置に対応して)行う」に際して、本願発明1におけるように「番地」を与えるようになすことは、当業者であれば容易になし得た程度のことである。

なお、請求人は、当該相違点3について、平成18年9月21日付け意見書において、提示した引用文献Aには自車位置(車両位置の情報)をディレクトリとして(車両の位置に対応して)地図情報、自車位置、文字情報、および画像情報をMOディスクに記憶するとの記載のみで、どのように地図情報と画像情報を対応させるかの記載がなく、本願の地図情報に番地をつけて映像情報の信号の後に番地をつけ地図情報と映像情報とを一対として対応をさせる点については開示も示唆もない、と主張している。
そして、ディレクトリ(directory)とは、広辞苑によれば、「コンピューターで、フロッピー‐ディスクやハード‐ディスクの中のファイルを管理するための情報を記録した部分のこと。ファイルの名前や属性などの情報が書き込まれている。」とされているから、引用文献Aにおいては、MOディスクの中の所定の記憶部の名称又は頭出し部に自車位置を付し、その記憶部の中(下層領域)に地図情報や画像情報のファイル名やファイル属性が記憶されているに過ぎないとも主張している。

なるほど、ディレクトリと称した場合には、上記広辞苑記載の意味を指すものであって、単にフォルダー内に関連するデータファイルを貯め込むような手法も包含されるのであり、ディレクトリとして情報を記憶することが、本願発明1における「前記地図情報に番地をつけて前記映像情報の信号の後に番地をつけ、地図情報と映像情報とを一対として対応させる」こと、そのものに相当するものでないことは認める。
しかしながら、関連する情報を一括して入手可能となすべく、対象となる情報の各々に共通するキーを付与することは、情報処理技術としてきわめて慣用されていることである。
また、撮影した画像情報に撮影期日と撮影時間を共に記録している場合、撮影期日のみを指定すれば、指定した期日に撮影した画像情報を一括して入手可能となることは、特開平8-139908号公報等を参照すれば容易に推察可能なことであり、この場合に、撮影期日がキーとして機能していることは明らかである。
他方、本願発明1における「番地」は、地図情報との対応を図るための対応キーであって、撮影した映像情報を一括して入手可能とすることにおいて、前記撮影期日と何ら機能に差異はなく、関連させる情報の相互にキーを付与する点において慣用されている手法を適用したに過ぎないものである。
よって、相違点3に係る「前記地図情報に番地をつけて前記映像情報の信号の後に番地をつけ、該地図情報と映像情報とを一対として対応させる」ようになす程度のことは、当業者であれば、容易に想到し得た程度のことである。
また、画像管理装置においては、関連する画像への迅速なアクセスを担保すべく、画像情報間の対応関係を予め設定しておくことも、特開平5-258045号公報等にみられるように、一般的な対応策である。
してみれば、本願発明1における「番地」を表示の要請に応えるべく付与するなる手法は、対応付けを行うに際して用いるキーである点で情報処理技術として慣用される手法を規定しているに過ぎず、表現上において従来技術と異なるもののようにみえるだけで、格別な作用効果があるものともいえないものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

(3-2)まとめ
よって、本願発明1に係る相違点1?3のいずれもが、当業者であれば適宜なし得た程度のことである以上、本願発明1は、引用文献A乃至C記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明1に係る作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものとはいえない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-20 
結審通知日 2006-10-24 
審決日 2006-11-07 
出願番号 特願平8-258117
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹榎本 吉孝  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 長島 和子
國田 正久
発明の名称 ナビゲーションシステム  

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