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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1149306
審判番号 不服2005-4155  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-10 
確定日 2006-12-21 
事件の表示 平成 8年特許願第 82640号「カラーフィルター組成物、カラー表示装置およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月21日出願公開、特開平 9-274103〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年4月4日の出願であって、平成16年11月24日付けで手続補正がなされた後、平成16年12月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成17年4月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成17年4月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]平成17年4月8日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正の内容は、請求項1において、無機金属酸化物微粒子について「粒径0.01μm?0.07μmの粒子が全粒子の70重量%以上」とあるのを、「粒径0.02μmより大きく、0.08μm以下の粒子が全粒子の70重量%以上」と補正しようとするものである。
しかしながら、粒径の上限を、「0.07μm」から「0.08μm」にしようとする本件補正は、粒径の上限範囲を拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮(請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の請求項に記載される発明とその補正後の請求項に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)を目的とするものに該当しない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の各号に掲げる事項を目的とするものに該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年4月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、平成16年11月24日付け手続補正書の特許請求の範囲請求項1乃至7のうち、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「無機金属酸化物の微粒子を含み、可視領域の特定の光を透過する分光特性を有するカラーフィルター組成物であって、
前記無機金属酸化物の微粒子は、粒径0.1μm以上の粒子が全粒子の15重量%以下であり、粒径0.01μm?0.07μmの粒子が全粒子の70重量%以上である
カラーフィルター組成物。」

(1)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-179711号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
顔料分散液組成物、及びフィルター付き蛍光膜を有する表示装置に関するもので、
ア.【特許請求の範囲】
「【請求項1】0.5乃至50重量部の無機顔料と、アクリル系樹脂、アクリル共重合樹脂、ポリカルボン酸類及び芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、アンモニウム塩又はアミン塩からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤と、水若しくは水と相溶性のある溶剤とを含む顔料分散液組成物。
【請求項2】前記無機顔料は、粒径10乃至200nmであることを特徴とする請求項1記載の顔料分散液組成物。」

イ.【0009】欄
「本発明の第1の目的は、分散性、透明性が良好で、他のコーティング物質に染み込んだり、悪影響を与えたりすることのない優れた耐コーティング性を有する顔料分散液組成物を提供することにある。」
【0010】欄
「本発明の第2の目的は、このような顔料分散液組成物を用い、製造コストが安価で、フェースプレートと蛍光体層との間に各色蛍光体層の発光色と同じような色の体色を持つ顔料層を設けた、透明性、フィルター性能、コントラスト特性が良好で、混色がない、理想的なフィルター付き蛍光膜を有する表示装置を提供することにある。」

ウ.【0025】欄
「本発明者らは、フェースプレートと蛍光体層との間にフィルターを有するフィルター付き蛍光膜を備えた表示装置の製造工程を簡略化するために、まず顔料層の塗布工程を増やすのみで、顔料層の露光・現像工程は、蛍光体層塗布後に蛍光体層と同時に行うとの見地から検討を行った。そして、顔料層の形成に使用する顔料液組成物の分散剤に注目し、分散剤がパターニングに及ぼす影響について詳細に検討した。この結果を表1に示す。
・・・・・・・・・・
なお、表1において、透明性とは、顔料層により形成された顔料フィルターが散乱を起こすことなく十分な透明性を有しているかどうかの評価である。透明であるためには、顔料の粒径が数百nm以下、好ましくは数十nmのでフィルター層中に均一に分散されていることが必要であり、且つ、塗布後もそれが維持されていることが重要である。この透明性が維持されない場合は、せっかくフィルター特性を有する顔料を使用してコントラスト及び色純度を向上させようとしても、光の散乱のためにコントラスト及び色純度の向上効果が少なくなる。」

エ.【0033】欄
「無機顔料の粒径は、好ましくは10乃至200nmであり、10nm未満であると顔料粒子間の凝集が強くなり分散が難しくなり、200nmを越えると透明性が不十分となり、フィルター特性が悪くなる傾向がある。」

オ.【0045】欄
使用する赤、青、緑の無機金属酸化物微粒子顔料の各種類とその粒子径の記載。

カ.【0061】欄?【0065】欄
「【実施例】
(実施例1)
まず、表2に示す組成の顔料分散液組成物及び表3に示す組成の蛍光体スラリーを準備する。表2に示す顔料分散液組成物Bp1,Gp1,Rp1は、コバルトブルー、コバルトグリーン、及びベンガラの各顔料を、各々SGミルで径0.8mmのジルコンビーズを使用して60分間分散して、平均粒子径が40nmになるように調整したものである。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
このようにして作成したフェースプレートを用いて、常法に従ってカラー受像管を製作し、その特性を評価した。その結果、明るさ、色純度、及びコントラストが良好であり、わずか15%の輝度ロスで外光反射を50%低減でき、色再現域も13%拡大した。」

したがって、上記ア.?カ.の記載事項によると、引用例には、「無機金属酸化物微粒子顔料をふくむ、カラーフィルター用に用いる顔料分散液組成物であって、前記無機金属酸化物微粒子顔料は、粒径10nm(0.01μm)?200nm(0.2μm)である前記顔料分散液組成物。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の対象である「カラーフィルター用に用いる顔料分散液組成物」は、本願発明の対象である「カラーフィルター組成物」に相当する。
また、引用発明の対象である「カラーフィルター用に用いる顔料分散液組成物」は、赤、青、緑の顔料を用いるのであるから、本願発明にいう「可視領域の特定の光を透過する分光特性を有する」ことは、明らかである。

よって、両者は、「無機金属酸化物の微粒子を含み、可視領域の特定の光を透過する分光特性を有するカラーフィルター組成物」である点で一致し、前記無機金属酸化物の微粒子について、本願発明は、粒径0.1μm以上の粒子が全粒子の15重量%以下であり、粒径0.01μm?0.07μmの粒子が全粒子の70重量%以上であるのに対して、引用例には、粒径0.01μm?0.2μmである旨記載されるが、本願発明の前記構成については記載されていない点、で相違する。

(3)当審の判断
前記相違点について検討する。
引用例の実施例1には、赤、青、緑の各顔料として平均粒子径が0.04μmのものを使用することが記載されており、しかも、引用例の【0025】欄には、透明であるためには顔料の粒径が好ましくは数十nmである旨記載されているのであるから、平均粒子径0.04μmの粒子を中心として、粒径範囲が数十nmの範囲におさまる正規分布に近い粒径分布をなす顔料を、カラーフィルター用に使用することは当業者にとって格別の困難性はない。
そして、平均粒子径0.04μmの粒子を中心として、粒径範囲が数十nmの範囲におさまる正規分布に近い粒径分布をなす顔料を用いる場合に、引用発明は粒径の下限が0.01μmの顔料を使用するものであることを考慮すると、本願発明のように「粒径0.01μm?0.07μmの粒子が全粒子の70重量%以上である」顔料を用いることに格別の困難性はない。
また、平均粒子径0.04μmの粒子を中心として、粒径範囲が数十nmの範囲におさまる正規分布に近い粒径分布をなす顔料を用いる場合には、粒径0.1μm以上の粒子の含有割合は必然的に少量となるものと認められるし、また、引用例の【0025】欄の「透明であるためには顔料の粒径が好ましくは数十nmである」旨の記載事項及び同【0033】欄の「無機顔料の粒径が200nm(0.2μm)を越えると透明性が不十分となり、フィルター特性が悪くなる傾向がある」旨の記載事項を基に、粒径0.1μm以上の粒子を極力少なくするのが望ましいことは容易に想起し得ることであり、本願発明のように「粒径0.1μm以上の粒子が全粒子の15重量%以下」とすることに格別の困難性はない。

そして、「高輝度化、高コントラスト化、色再現範囲の拡大および外光反射防止機能の向上したカラー表示装置が達成できる」とする本願発明の作用・効果についても、引用例には、例えば【0065】欄に、「このようにして作成したフェースプレートを用いて、常法に従ってカラー受像管を製作し、その特性を評価した。その結果、明るさ、色純度、及びコントラストが良好であり、わずか15%の輝度ロスで外光反射を50%低減でき、色再現域も13%拡大した。」と記載されているのであるから、引用発明から予測される範囲内のもので、格別のものではない。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-18 
結審通知日 2006-10-24 
審決日 2006-11-08 
出願番号 特願平8-82640
審決分類 P 1 8・ 57- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 岡田 和加子
森内 正明
発明の名称 カラーフィルター組成物、カラー表示装置およびその製造方法  
代理人 佐藤 隆久  

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