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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1149427
審判番号 不服2002-1698  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-01-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-05 
確定日 2006-12-28 
事件の表示 平成11年特許願第175374号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月 9日出願公開、特開2001- 686〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月22日に出願されたものであって、平成13年12月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年2月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月7日付で手続補正がなされたものである。
2.平成14年3月7日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月7日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)本願補正発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数の制御用コマンドを予め設定された設定順序で発信する機能を有する制御手段(30)と、前記コマンドを受信したときに各コマンドで指示される所定の動作をする被制御手段(34)とを備えた弾球遊技機において、
前記被制御手段(34)が、
前記制御手段(30)から受信した複数のコマンドについて、コマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報を記憶可能な記憶部(36)と、
前記複数のコマンドを前記設定順序と相違する順序にて受信した場合にエラーとするエラー判定部(35)であって、前記コマンドのうちの特定のコマンドの受信を契機として、前記特定のコマンドに先行して受信した複数のコマンドに対応する且つ前記記憶部(36)に記憶していた動作履歴に基づいてエラー判定を行うエラー判定部(35)と、
を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「被制御手段」について「制御手段から受信した複数のコマンドについて、コマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報を記憶可能な記憶部」を備えるとの限定を付加し、同じく「先行して」について「特定のコマンドに」との限定を付加し、同じく「受信したコマンド」について「複数の」との限定を付加し、同じく「動作履歴」について「記憶部に記憶していた」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例及び引用発明
i.原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-182850号公報(以下、「引用例」という)には、以下の事項が記載されている。
【請求項1】 表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に遊技者にとって有利な遊技状態になる遊技機であって、前記遊技機の遊技状態を制御するとともに前記可変表示装置を表示制御するための指令信号を出力する遊技制御手段と、該遊技制御手段からの指令信号を受けて前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段とを含み、該可変表示制御手段は、前記指令信号の変化が適正な変化パターンとなっているか否かを判別する指令信号判別手段を含むことを特徴とする、遊技機。
【請求項2】 前記遊技制御手段は、所定の順序で並べられた複数のブロックデータからなる指令信号を出力し、前記指令信号判別手段は、受信した前記指令信号の複数のブロックデータのうちの或るブロックデータを前回送られてきた指令信号の複数のブロックデータのうちの対応するブロックデータと比較して適正な変化パターンとなっているか否かを判別することを特徴とする、請求項1記載の遊技機。
【0002】【従来の技術】この種の遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、遊技機の遊技状態を制御するとともに可変表示装置を可変表示制御するための指令信号を出力する遊技制御手段と、その遊技制御手段からの指令信号を受けて前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段とが設けられたものがあった。そして、前記遊技制御手段が出力する指令信号は、可変表示装置を制御指令するための複数種類の制御指令データからなり、その複数種類の制御指令データが順次出力されるように構成されていた。
【0003】【発明が解決しようとする課題】一方、この種の従来の遊技機においては、前記遊技制御手段に異常が発生したり制御指令データがノイズ等により正規の値でなくなってしまった場合には、前記複数種類の制御指令データの出力順序が狂ってしまう場合があり、その出力順序が狂った場合には、その狂った出力順序からなる指令信号を受信した可変表示制御手段は、それに従って狂った可変表示制御を行なうことになってしまい、適正な可変表示制御が行なわなくなる欠点が生ずる。
【0004】本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、不適正な指令信号に従った不適正な可変表示制御が行なわれる不都合を極力防止できる遊技機を提供することである。
【0011】【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態においては、遊技機の一例としてパチンコ遊技機を取り上げる
【0033】図6は、コマンドデータCD0?CD7,INT信号の送信動作を示すタイミングチャートである。コマンドデータは8個のブロックデータから構成されており、その8個のコマンドデータより1セットの表示指令信号が構成される。そして、割込信号であるINT信号が2msec毎に送信され、それに合わせて前記各ブロックデータであるコマンドデータ1,コマンドデータ2,コマンドデータ3…が1ブロックずつ送信される。システムコントローラ51は、前記INT信号を受信すれば、プロセッサが割込状態となり、そのときに送信されてきたコマンドデータを取込む動作が行なわれる。このコマンドデータの送信は、切目なしに常に行なわれており、前回送ったコマンドデータに何ら変化がなくてもその同じコマンドデータを次回にも送信する。
【0034】図7,図8は、前記コマンドデータの内容を説明するための説明図である。コマンドデータは、前述したように8ブロックのデータから構成されており、その内訳は、comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comCである。comHは、8ブロックからなるコマンドデータの最初であることを示すためのコマンドヘッダであり、0EFh(16進数)というデータに固定されており、システムコントローラ51がこのコマンドヘッダを受信すれば、8ブロックのコマンドデータの最初であることを認識する。com0は、メインステータスのデータである。可変表示装置1の可変表示状態は、遊技機の遊技状態に応じて変化するのであり、その遊技機の遊技状態に応じた可変表示装置1の大まかな可変表示状態を指令して特定するためのデータがこのメインステータスデータである。このメインステータスデータcom0は、00h?7Fhの範囲内のデータであり、80h?FFhは未使用の領域となっている。
【0035】com0のデータが0xh(xは後述するように0?Fの16進数のうちの任意の値である)の場合には、可変表示装置1のLCD表示器2の画像表示をオフ状態にする指令信号となる。1xhはデモモードを指定する指令信号である。このデモモードが指定されれば、可変表示装置1による可変表示動作が行なわれる以前における遊技とは無関係の画像がLCD表示器2によりデモ表示される。2xhの場合には、ゲームモードが指定されることとなる。3xhの場合には、可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様(たとえば777)となり特定遊技状態(大当り状態)が開始した後の状態で、かつ可変入賞球装置4が第2の状態となっているインターバル期間中であることが指定される。4xhの場合には、特定遊技状態(大当り状態)が発生して可変入賞球装置4が前述した繰返し継続制御された場合のその繰返し継続回数(ラウンド回数)を表示するモードであることが指定される。5xhは未使用となっている。6xhは特定遊技状態(大当り状態)が終了したときのモード指定となっている。7xhは、エラーメッセージを可変表示装置1により表示する指令信号である。
【0163】図64は、図57(b)において、新コマンドが送信されてきた場合に実行されるホットスタートのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。034BHにより、スタックポインタを設定する処理がなされ、034EHにより、エラーフラグをゼロクリアし、退避フラグ(バックアップフラグ)をゼロクリアする処理がなされる。次に037AHに進み、送信されてきたメインステータスのコマンドデータであるcom0が「2dh」であるか否かの判断がなされる。com0が「2dh」の場合はに、図7で示したように、大当り動作のメインステータスであり、その場合には直接037AHに進むが、それ以外の場合には、0381Hにより、コマンド退避処理がなされる。
【0164】次に037AHでは、送信されてきたコマンドデータのcom0が、0xH,1xH,2xH,3xH,4xH,6xHあるいはその他のうちのどれかを判別する処理がなされる。そして判別した結果それぞれに対応するコマンド処理サブルーチンプログラムにジャンプする。このcom0のデータとジャンプ先とが、コマンドテーブルにテーブルの形で記憶されており、このコマンドテーブルをルックアップすることによりジャンプ先が決定される。なお、com0が、0xHの場合には画面非表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、1xHの場合には、デモ画面表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、2xHの場合にはゲーム画面表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、3xHの場合にはフィーバーインターバル画面の表示サブルーチンプログラムにジャンプし、4xHの場合にはフィーバーラウンド表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、6xHの場合にはフィーバー終了画面のサブルーチンプログラムにジャンプし、それ以外のデータの場合にはコマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。
【0168】com0が「2xH」の場合には、図66(a)に示すサブルーチンプログラムが実行される。0444Hにより、動作カウンタがゼロクリアされ、com0の値を判別して処理ルーチンテーブルをルックアップしてその値に応じたサブルーチンプログラムにジャンプする処理がなされる。そして、com0の値が「20H」の場合には、図柄変動前準備のサブルーチンプログラムにジャンプし、「21H」の場合には全図柄変動サブルーチンプログラムにジャンプし、「22H」の場合には左図柄停止サブルーチンプログラムにジャンプし、「23H」の場合には右図柄停止サブルーチンプログラムにジャンプし、「24H」の場合には中図柄停止サブルーチンプログラムにジャンプし、「25H」の場合には通常リーチ(2周)のサブルーチンプログラムにジャンプし、「26H」の場合には通常リーチ(3周)のサブルーチンプログラムにジャンプし、「27H」の場合には竜巻リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「28H」の場合には三三七拍子リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「29H」の場合には勝負リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「2aH」の場合には双子リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「2bH」の場合には短縮全図柄変動のサブルーチンプログラムにジャンプし、「2cH」の場合には短縮全図柄停止のサブルーチンプログラムにジャンプし、「2dH」の場合には大当り動作のサブルーチンプログラムにジャンプし、それ以外の場合にはコマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。
【0169】図67(a)は、0444Hの判断の結果、「20H」の場合に実行される図柄変動前準備のサブルーチンプログラムである。047DHにより、処理中フラグをセットし、処理アドレスを図柄変動前であるrtn20hにセットして0347Hのコマンドウェイトへジャンプする処理がなされる。図67(b)は、0444Hの判断の結果「21H」の場合に実行され全図柄変動のサブルーチンプログラムであり、048BHにより、コマンドをコマンド退避エリアに退避させる処理がなされ、さらに、左図柄ナンバーを取得して退避させ、中図柄ナンバーを取得して退避させ、右左図柄ナンバーを取得して退避させる処理がなされる。次に04ADHに進み、全図柄変動すなわちrtn 21hの処理アドレスをセットする処理がなされて0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。
【0170】図67(c)は、0444Hの判断の結果「22H」の場合に実行される左図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。まず04B6Hにより、コマンド順序が正しいか否かの判断がなされる。コマンドデータのメインステータスであるcom0は、基本回路30による遊技制御動作によって進行制御される遊技機の遊技状態の進行に応じて変化するものであり、その変化のパターンは所定の順序となるように予め決められている。そしてその所定の順序になっているか否かがコマンド順序判定データに従って04B6Hにより判断される。com0が「2xH」の場合には、可変表示動作は、まず図柄変動前準備処理がなされ、次に全図柄変動処理がなされ、次に左図柄停止処理がなされ、その段階でリーチが成立していなければ中図柄停止処理がなされる。そして外れ図柄であった場合には打玉の始動入賞に基づいて再度図柄変動前準備処理から順次表示動作が繰返し行なわれる。一方、右図柄停止処理がなされた段階でリーチが成立している場合には、そのリーチの種類に応じて通常リーチ(2周)または通常リーチ(3周)のいずれかが表示動作される。そしてその後中図柄が停止され、その状態で外れの場合には再度前記図柄変動前準備処理に移行するが、当りの場合には、大当り動作処理が実行される。さらに、確率変動状態で短縮モードとなっている場合には、図柄変動前準備処理がなされた後、短縮全図柄変動処理がなされ、リーチ表示する場合には竜巻リーチ,三三七拍子リーチ,勝負リーチまたは双子リーチのいずれかが表示され、その後短縮全図柄停止処理がなされることとなる。
【0171】コマンド順序判定データは、図柄変動前準備処理の段階で図78の0AC2Hにより00000010b(bは2進数を表わす)にセットされている。そして、04B6Hにより、前記コマンド順序判定データに対し00000010bの論理積が演算される。コマンド順序が正しければ、00000010bと00000010bとの論理積になるために、その演算結果は、00000010bとなる。その場合には、04B6HによりYESの判断がなされ、04BEHにより、コマンド順序判定データを左回転させる処理がなされる。その結果、00000010bだったコマンド順序判定データが、00000100bとなる。次に、04C7Hにより、左図柄停止制御用のアドレスすなわちrtn 22hが処理アドレスとしてセットされ、0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。一方、コマンドデータの送信順序が正しくない場合には、コマンド順次データに対し00000010bの論理積を演算すれば、その答えが00000000bとなる。その場合には04B6HによりNOの判断がなされて、コマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。
【0172】図67(d)は、0444Hにより「23H」と判断された場合に実行される右図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。まず04D0Hにより、コマンド順序は正しいか否かの判断がなされる。この判断は、コマンド順序判定データに対し00000100bの論理積を演算し、その演算結果が000000000bになったか否かで判断し、00000000bの場合にはコマンドエラーにジャンプする。そして、コマンドデータの送信順序が正しければ、00000100bと00000100bとの論理積になるために、その演算結果は00000100bとなる。その場合には、04D0HによりYESの判断がなされて04D8Hにより、コマンド順序判定データを左回転させる処理がなされ、その結果、コマンド順序判定データは、00001000bとなる。次に、04E1Hに進み、右図柄停止処理のアドレスすなわちrtn23hが処理アドレスとしてセットされ、0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。
【0173】図68(a)は、0444Hにより「24H」と判断された場合に実行される中図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。04EAHにより、コマンド順序は正しいか否かの判断がなされる。この判断は、コマンド順序判定データに対し00001000bの論理積を演算し、その演算結果が00000000bになったか否かにより行なわれる。そして00000000bになった場合にはコマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。送信されてきたコマンドデータの順序が正しければ04EAHの段階では、コマンド順序判定データは00001000bとなっているために、00001000bと00001000bとの論理積を演算することとなり、その演算結果は00001000bとなるはずである。その場合には、04EAHによりYESの判断がなされて、04F2Hにより、コマンド順序判定データを左回転させる処理がなされる。その結果、コマンド順序判定データは、00010000bとなる。次に、04EBHに進み、中図柄停止処理のアドレスすなわちrtn24hが処理アドレスとしてセットされ、0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。

ii.前記摘示の記載及び図面によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「可変表示装置を表示制御するための複数種類の制御指令データからなる指令信号を順次出力する遊技制御手段と、該遊技制御手段からの前記指令信号を受けて前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段とを含み、該可変表示制御手段は、前記指令信号の変化が適正な変化パターンとなっているか否かを判別する指令信号判別手段を含むパチンコ遊技機であって、
前記遊技制御手段は、前記複数種類の制御指令データとして、いずれも8個のブロックデータ(comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comC)から構成されるコマンドデータからなる指令信号を所定の順序で送信する機能を有する基本回路30を有し、
前記可変表示制御手段は、前記コマンドデータを受信したときに各コマンドデータで指示される表示制御を行うシステムコントローラ51を有し、
前記システムコントローラ51は、前記指令信号判別手段として、
前記基本回路30から受信したコマンドデータについて、受信したコマンドデータのコマンド順序が正しいか否かを判断するために当該コマンドデータに対応するコマンド順序判定データがセットされ、今回受信したコマンドデータのコマンド順序が正しいと判断された場合に当該コマンド順序判定データを左回転させて次回に受信すべきコマンドデータに対応するコマンド順序判定データとしてセットするセット手段と、
今回受信したコマンドデータのメインステータスcom0を識別して定まるコマンド識別データと、前回受信したコマンドデータのコマンド順序が正しい場合にセットされた前記コマンド順序判定データとを論理積演算して両データが一致しない場合にはコマンドエラーと判断するエラー判定手段と、
を備えたパチンコ遊技機。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「複数種類の制御指令データとして、いずれも8個のブロックデータ(comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comC)から構成されるコマンドデータからなる指令信号」、「所定の順序」、「送信」、「基本回路30」、「表示制御を行う」、「システムコントローラ51」、「パチンコ遊技機」は、それぞれ、本願補正発明の「複数の制御用コマンド」、「予め設定された設定順序」、「発信」、「制御手段(30)」、「所定の動作をする」、「被制御手段(34)」、「弾球遊技機」に相当する。
そして、引用発明のコマンド順序判定データは、今回受信したコマンドデータのコマンド順序が正しい場合に、次回に受信すべきコマンドデータに対応してセットされる固有の値であるから、今回受信したコマンドデータの種類又はそのコマンドデータで指定された動作に関連する情報であるとともに、システムコントローラ51が、前記コマンド順序判定データをセットするための記憶手段を備えていることは技術的に明らかであるから、引用発明の「セット手段」は、本願補正発明の「記憶部(36)」に相当する。
また、引用発明の「エラー判定手段」は、受信した各コマンドに対応してセットすなわち記憶されるコマンド順序判定データに基づいてエラー判定を行う機能において、本願補正発明の「エラー判定部(35)」に相当するとともに、引用発明の「コマンド順序判定データ」は、本願補正発明の「動作履歴」と対比して、前回受信したコマンドに対応してセットすなわち記憶される「判定データ」であることにおいて共通する。
そうすると、本願補正発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点「複数の制御用コマンドを予め設定された設定順序で発信する機能を有する制御手段(30)と、前記コマンドを受信したときに各コマンドで指示される所定の動作をする被制御手段(34)とを備えた弾球遊技機において、
前記被制御手段(34)が、
前記制御手段(30)から受信したコマンドについて、コマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報を記憶可能な記憶部(36)と、
前記複数のコマンドを前記設定順序と相違する順序にて受信した場合にエラーとするエラー判定部(35)であって、コマンドの受信を契機として、該コマンドに先行して受信したコマンドに対応する且つ前記記憶部(36)に記憶していた判定データに基づいてエラー判定を行うエラー判定部(35)と、
を備えた弾球遊技機。」
相違点.複数のコマンドを予め設定された設定順序と相違する順序にて受信した場合にエラーとするエラー判定部(35)が、本願補正発明は、特定のコマンドの受信を契機として、前記特定のコマンドに先行して受信した複数のコマンドに対応する且つ(コマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報として)前記記憶部(36)に記憶していた動作履歴に基づいてエラー判定を行うのに対して、引用発明は、コマンドの受信を契機として、受信したコマンドデータに対応して記憶部(36)に記憶されるコマンド順序判定データに基づいてエラー判定を行う点。

(4)判断
i.まず、引用発明を認定した引用例の段落【0168】乃至【0173】には、複数種類のコマンドデータを所定の順序で送信する実施例として、各コマンドデータのメインステータスであるブロックデータcom0が「2xH」の場合における、可変表示動作について、まずcom0の値が「20H」の場合に図柄変動前準備処理がなされ、次にcom0の値が「21H」の場合に全図柄変動処理がなされ、次にcom0の値が「22H」の場合に左図柄停止処理がなされ、次にcom0の値が「23H」の場合に右図柄停止処理がなされ、場合に応じて各種リーチの表示動作がなされ、次にcom0の値が「24H」の場合に中図柄停止処理がなされ、次にcom0の値が「2dH」の場合に大当り動作の処理がなされることが記載されている。
そして、前記可変表示動作の処理における、所定の順序で送信されるコマンドデータのコマンド順序が正しいか否かを判断するエラー判定方式について、該エラー判定に用いられる「コマンド順序判定データ」が、図柄変動前準備処理のコマンドデータを受信した段階で00000010b(bは2進数を表わす)にセットされ、全図柄変動処理を経て、次に左図柄停止処理のコマンドデータを受信した段階で、前記「コマンド順序判定データ」である00000010bに対して、当該左図柄停止処理コマンドを識別して定まるコマンド識別データである00000010bとの論理積演算により両データが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断する一方、一致している場合には前記「コマンド順序判定データ」としての00000010bを左回転させて00000100bとし、次に右図柄停止処理のコマンドデータを受信した段階で、「コマンド順序判定データ」である00000100bに対して、当該右図柄停止処理のコマンドを識別して定まるコマンド識別データである00000100bとの論理積演算により両データが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断する一方、一致している場合には前記「コマンド順序判定データ」としての00000100bを左回転させて00001000bとし、以下同様に、中図柄停止処理及び大当り動作の処理のコマンドデータを受信した段階で、対応してセットされた「コマンド順序判定データ」と当該受信コマンドの種類を識別して定まるコマンド識別データとが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断するようにしたものが記載されている。
ii.すなわち、引用発明のエラー判定方式は、コマンドを受信する毎に、今回受信したコマンドが前回受信したコマンドに対して予め決められた所定の順序のものであるか否かについて、今回受信したコマンドデータの種類を示すメインステータスcom0を識別して定まるコマンド識別データと、今回受信すべきコマンドに対応するものとして予めセットされたコマンド順序判定データとに基づいて判断しており、その判断に用いられるコマンド順序判定データは、前回受信したコマンドデータのコマンド順序が正しい場合に今回受信すべきコマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報に対応するものとして設定され、今回受信したコマンドが予め決められた所定の順序のものである場合に限って次回受信すべきコマンドに対応するものとして順次更新されて設定されるものであるから、先行して受信した複数のコマンドに対応するコマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報に係る動作履歴が集約されたものといえる。
iii.しかして、以上の事項を踏まえて前記相違点を検討すると、受信した複数のコマンドが予め設定された設定順序で受信したものか否かエラー判定を行うものにおいて、本願補正発明が特定のコマンドの受信を契機として、先行して受信した複数のコマンドについて、まとめてエラー判定を行うのに対して、引用発明がコマンドを受信する毎にエラー判定を行う点で両者が相違することに帰着するものというべきところ、受信した複数のコマンドが予め設定された設定順序で受信したものか否かエラー判定を行うものにおいて、受信した複数のコマンドのエラー判定について、集中して行う方式、あるいは、分散して行う方式のいずれを採用しても、その作用目的が達成できることが明らかである。
iv.そうすると、受信した複数のコマンドが予め設定された設定順序で受信したものか否かエラー判定を行うものにおいて、引用発明に示される、コマンドを受信する毎にエラー判定を行う方式に代えて、特定のコマンドの受信を契機として、先行して受信した複数のコマンドについて、まとめてエラー判定を行う方式を採用して、前記相違点に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
v.また、本願補正発明の作用効果は、引用発明に基づいて、当業者が容易に予測できる範囲のものである。
vi.したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成14年3月7日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成13年10月19日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定される「弾球遊技機」にあると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「複数の制御用コマンドを予め設定された設定順序で発信する機能を有する制御手段(30)と、前記コマンドを受信したときに各コマンドで指示される所定の動作をする被制御手段(34)とを備えた弾球遊技機において、
前記被制御手段(34)が、前記複数のコマンドを前記設定順序と相違する順序にて受信した場合にエラーとするエラー判定部(35)であって、
前記コマンドのうちの特定のコマンドの受信を契機として、先行して受信したコマンドに対応する動作履歴に基づいてエラー判定を行うエラー判定部(35)を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

(1)引用例及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例である特開平9-182850号公報は、前記2.(2)において引用した引用例と同一文献であって、該引用例の摘記事項及び該摘記事項に基づいて認定される引用発明は、前記したとおりのものである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2で検討した本願補正発明から「被制御手段」の限定事項である「制御手段から受信した複数のコマンドについて、コマンドの種類又はそのコマンドで指定された動作に関連する情報を記憶可能な記憶部」を備えるとの構成を省き、「先行して」の限定事項である「特定のコマンドに」との構成を省き、「受信したコマンド」の限定事項である「複数の」との構成を省き、「動作履歴」の限定事項である「記憶部に記憶していた」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2の(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-01 
結審通知日 2006-11-02 
審決日 2006-11-15 
出願番号 特願平11-175374
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 藤田 年彦
小田倉 直人
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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