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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B |
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管理番号 | 1149479 |
審判番号 | 不服2005-3250 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-02-24 |
確定日 | 2006-12-28 |
事件の表示 | 特願2003- 30312「空気調和装置の更新方法、及び、空気調和装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-263885〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年 2月 7日の出願であって、平成17年 1月21日付けで拒絶査定がなされ(平成17年 1月25日発送)、これに対し、同年 2月24日に審判請求がなされるとともに、同年 3月25日付けで手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項2に係る発明は、平成17年 3月25日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項2に記載された次の事項により特定されるものである(以下、「本願発明」という。)。 「既設の空気調和装置(1)の構成機器の一部(2、5)を更新するとともに、作動冷媒をHFC系冷媒に変更して構成される空気調和装置(101)であって、 前記既設の空気調和装置に使用され、鉱油系の冷凍機油からなる既設冷凍機油が残留した既設冷媒配管(6、7)と、 前記既設冷媒配管を介して接続された熱源ユニット(102)及び利用ユニット(105)と、 通常の空調運転に先立って、変更後の作動冷媒を循環させた際に、循環される作動冷媒を導入して、作動冷媒に同伴した既設冷凍機油を分離することが可能な油捕集装置(127)とを備え、 前記変更後の作動冷媒は、R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒である、空気調和装置(101)。」 3.引用例 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-357377号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 イ「【請求項1】圧縮機、凝縮器、膨張装置、蒸発器を接続し、前記圧縮機で搬送される冷媒によって被洗浄体を洗浄して被洗浄物を回収する回収装置と、前記冷媒の物理状態が予め定められた目標値となるように、前記凝縮器の熱交換能力、前記膨張装置の流動抵抗及び前記蒸発器の熱交換能力の少なくともいずれか1つを制御する制御装置とを備えたことを特徴とする配管洗浄装置。 【請求項2】前記制御装置は前記被洗浄体に流入する冷媒が気液二相流となるように制御することを特徴とする請求項1に記載の配管洗浄装置。 【請求項15】圧縮機を有する熱源機と被洗浄配管の間に接続される配管洗浄装置において、前記熱源機または前記配管洗浄装置の少なくともどちらか一方に前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる熱交換器を備えると共に、前記配管洗浄装置に、前記熱交換器により凝縮された冷媒を減圧させる膨張装置と、前記被洗浄配管を流通した冷媒から被洗浄物を分離回収する被洗浄物回収手段と、前記熱源機が有する熱源側制御装置から運転情報を伝送可能とする洗浄側制御装置とを備えたことを特徴とする配管洗浄装置。 【請求項17】圧縮機と外部に配設した運転制御装置に運転情報を伝送可能とする熱源側制御装置を有する熱源機と被洗浄配管の間に接続される配管洗浄装置において、前記熱源機または前記配管洗浄装置の少なくともどちらか一方に前記圧縮機から吐出された冷媒を凝縮させる熱交換器を備えると共に、前記配管洗浄装置に、前記熱交換器により凝縮された冷媒を減圧させる膨張装置と、前記被洗浄配管を流通した冷媒から被洗浄物を分離回収する被洗浄物回収手段と、前記熱源側制御装置または/および前記運転制御装置の間で運転情報を伝送可能にする洗浄側制御装置とを備えたことを特徴とする配管洗浄装置。」(特許請求の範囲【請求項1】、【請求項2】、【請求項15】、【請求項17】) ロ「【発明の属する技術分野】この発明は、配管の洗浄装置に関するものであり、特に冷凍空調装置において使用する冷媒を交換すると同時に冷凍機油も交換する場合の配管に残留する冷凍機油を洗浄する洗浄装置に関するものである。」(段落【0001】) ハ「従来、このような冷凍空調装置の多くにはCFC(クロロフルオロカーボン)系冷媒やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)系冷媒が用いられてきたが、これらの分子に含まれる塩素が成層圏でオゾン層を破壊するため、CFC系冷媒は既に全廃され、HCFC系冷媒も生産規制が開始されている。 これらに替わって、分子に塩素を含まないHFC(ハイドロフルオロカーボン)系冷媒を使用する冷凍空調装置が実用化されている。CFC系冷媒やHCFC系冷媒を用いた冷凍空調装置が老朽化した場合、これらの冷媒は全廃・生産規制されているため、HFC系冷媒を用いた冷凍空調装置等に入れ替える必要がある。」(段落【0006】、【0007】) ニ「この発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、配管の洗浄を迅速にかつ環境に支障なく行える洗浄装置を得るとともに、冷凍空調装置において使用する冷媒を交換するために装置の更新を行なうときに配管の洗浄を行ない、洗浄した既設配管を用いることで配管の再設置工事を簡略化する冷凍空調装置を提供することを目的とする。また、この発明は冷凍空調用熱源機を用いた配管洗浄運転による汎用性や洗浄作業の確実な完了を得ると共に、冷媒の入れ替えが簡単で信頼性の高い冷凍空調装置の取替え方法を得ることを目的とするものである。」(段落【0017】) ホ「この発明では、図1に示すように冷凍サイクルが構成されており、冷凍サイクルを循環する冷媒としてHFC系混合冷媒であるR407Cが用いられる。R407Cは、R32/R125/R134aが23/25/52wt%の割合で混合した非共沸混合冷媒であり、冷凍機油としてはこの冷媒と相溶性を有するエステル油が使用される。また既設配管4、6はHCFC系冷媒を用いた冷凍空調装置が過去に接続されており、この既設配管にはHCFC系冷媒用の冷凍機油である鉱油が残存している。R407Cに対する鉱油の溶解度は1%以下であり、鉱油とはほとんど溶解性がない。 次に本発明の洗浄手順について説明する。既設配管4、6に接続されている交換の必要な熱源機、室内機を取り外し、図1のように既設配管4、6に配管洗浄装置11、およびバイパス管5を接続する。接続後冷凍サイクル全体を真空引きした後、R407Cを適量充填する。その後圧縮機1を運転する。このときの冷凍サイクルの運転状況は以下のようになる。圧縮機1から吐出された高温高圧のガス冷媒はまず油分離器2を通過する。この段階でガス冷媒と一緒に圧縮機1から吐出された冷凍機油は油分離器2で分離され圧縮機1の吸入側に戻される。高温高圧のガス冷媒はその後凝縮器3によってガスが一部冷却され液となり、高圧の気液二相冷媒になる。この高圧の気液二相冷媒は既設配管4、バイパス管5、既設配管6を通過しこれらの配管内部の洗浄を行った後、電子膨張弁7によって低圧の気液二相冷媒に減圧される。この後蒸発器8で加熱され低圧のガスになる。次に分離回収装置9を通過し、この際、既設配管4、6内で洗浄され配管内付着から引き剥がされた鉱油が冷媒から分離され、鉱油は分離回収装置9に保持される。」(段落【0044】、【0045】) ヘ「R407C回収後は既設配管から配管洗浄装置11、バイパス管5を取り外し、新規に交換後設置される熱源機、室内機を取り付け、既設配管の洗浄および冷凍空調装置の交換を完了する。このように行うことで、配管の再設置を行うことなく簡単に冷凍空調装置の入れ替えが可能となる。」(段落【0051】) ト「配管を洗浄する洗浄冷媒としてはR407Cに限るものではなく、他のHFC系の単一冷媒や混合冷媒でもよく、例えばR32(微燃性・無毒)、R125(不燃性・無毒)、R134a(不燃性・無毒)、R410A(不燃性・無毒)、R404A(不燃性・無毒)で洗浄を行ってもよい。」(段落【0072】) 以上イ?トの記載及び図面によると、引用例には、 既設使用の冷凍空調装置の交換の必要な熱源機、室内機を更新するとともに、冷媒をHFC系冷媒に交換して構成される冷凍空調装置であって、 前記既設使用の冷凍空調装置に使用され、鉱油からなる冷凍機油が残存した既設配管と、 前記既設配管を介して接続された熱源機及び室内機とを備え、 通常運転に先立って、R410Aを循環させた際に、該冷媒により鉱油を既設配管から引き剥がし、分離回収装置に回収し、 交換後の作動冷媒は、HFC系冷媒である冷凍空調装置(以下、「引用例発明」という。) が記載されている。 4.対比・判断 本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「既設使用の」は本願発明の「既設の」に相当し、以下同様に「冷凍空調装置」は「空気調和装置」に、「交換の必要な熱源機、室内機」は「構成機器の一部」に、「鉱油からなる冷凍機油」は「鉱油系の冷凍機油からなる既設冷凍機油」に、「残存」は「残留」に、「既設配管」は「既設冷媒配管」に、「熱源機」は「熱源ユニット」に、「室内機」は「利用ユニット」に、「通常運転」は「通常の空調運転」に、それぞれ相当する。 そして、「R410A」は、「R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒」に相当している。 したがって、両者は、 既設の空気調和装置の構成機器の一部を更新するとともに、作動冷媒をHFC系冷媒に変更して構成される空気調和装置であって、 前記既設の空気調和装置に使用され、鉱油系の冷凍機油からなる既設冷凍機油が残留した既設冷媒配管と、 前記既設冷媒配管を介して接続された熱源ユニット及び利用ユニットと、を備え、 変更後の作動冷媒は、HFC系冷媒である、空気調和装置 の点で一致し、 次のア、イの点で相違している。 相違点ア 本願発明では、通常の空調運転に先立って、変更後の作動冷媒を循環させた際に、循環される作動冷媒を導入して、作動冷媒に同伴した既設冷凍機油を分離することが可能な油捕集装置を備えているのに対し、引用例発明では、通常の空調運転に先立って、R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒を循環させた際に、この冷媒により鉱油を既設配管から引き剥がし、分離回収装置に回収するものである点。 相違点イ 本願発明では、変更後の作動冷媒は、R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒であるのに対し、引用例発明では、HFC系冷媒である点。 そこで、上記相違点について検討する。 まず、相違点アについて検討する。 引用例発明において、鉱油を回収する分離回収装置は、空気調和装置そのものではない形態となっている。しかし、通常の空調運転に先立って、鉱油を回収する点に変わりはない。そして、鉱油の分離回収装置を空気調和装置に具備したものとするか、空気調和装置と別体とするかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項である。 また、変更後の作動冷媒を循環させた際に、既設冷凍機油を分離することが可能な油捕集装置を空気調和装置に備えることは、当該技術分野においては、本願出願前、周知の技術である(例えば、本願明細書中に、従来技術として記載された特許第3361765号公報「冷凍サイクル装置及びその形成方法並びに冷凍サイクル装置の室外機」における「異物捕集装置」についての記載、特開2001-41613号公報「冷凍サイクル装置」における「第1の油回収装置」についての記載参照。)。 そして、一般的に、既設冷凍機油は、既設配管から、完全には除去しにくいものであると考えられ、配管の迅速な洗浄は、引用例において示唆されていることである(「3.ニ」参照。)。 そうすると、引用例発明において、通常の空調運転に先立って、変更後の作動冷媒を循環させた際に、循環される作動冷媒を導入して、作動冷媒に同伴した既設冷凍機油を分離することが可能な油捕集装置を備えるようにした点は、当業者であれば、必要に応じ、周知技術に基づいて、容易に想到し得たことである。 つぎに、相違点イについて検討する。 引用例発明においては、R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒を循環させて、既設冷凍機油である鉱油を洗浄するとの記載はあるが、変更後の作動冷媒としては、HFC系冷媒を作動冷媒とする記載があるのみである。 しかし、R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒を循環させて洗浄した後、冷媒配管に付着しているのは、この冷媒である。 また、作動冷媒としてR32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒を用いることは、本願出願前、当該技術分野において周知の技術である(例えば、特開平11-325621号公報「冷凍装置及び冷凍装置における既設配管利用方法」における【図3】で示された従来技術についての記載、特開平10-253205号公報「冷凍サイクル制御装置」における段落【0002】の従来技術に示された「R410A」についての記載参照。)。 そうすると、引用例発明において、変更後の作動冷媒を、洗浄時に使用したのと同じ、R32を40wt%以上含み、かつ、R134aを含まないHFC系冷媒とした点は、当業者であれば、適宜選択し得た設計的事項である。 また、本願発明の奏する作用効果をみても、引用例発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-25 |
結審通知日 | 2006-10-31 |
審決日 | 2006-11-14 |
出願番号 | 特願2003-30312(P2003-30312) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F25B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 谷口 耕之助、篠原 将之 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
東 勝之 佐野 遵 |
発明の名称 | 空気調和装置の更新方法、及び、空気調和装置 |
代理人 | 小野 由己男 |