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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 D02G
管理番号 1149529
審判番号 不服2004-1991  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-03 
確定日 2007-01-16 
事件の表示 平成 8年特許願第223519号「軽量梳毛調加工糸の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月17日出願公開、特開平10- 72731、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
この出願は、平成8年8月26日の出願であって、平成15年9月25日付けで拒絶理由が通知され、平成15年11月21日に意見書が提出されたが、平成15年12月26日付けで拒絶査定された。これに対し、平成16年2月3日に審判請求されるとともに、明細書についての手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
平成16年2月3日付けの手続補正書による補正は、請求項の削除を目的とするものであって、特許法第17条の2の規定を満たさない理由は見当たらない。
よって、本願請求項1?5に係る発明は、平成16年2月3日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1?5に記載された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 300%以上の伸度差を有する2種以上のポリエステル未延伸糸を引き揃えて同時延伸仮撚加工するに際し、伸度大なるポリエステル未延伸糸を中空率が20%以上の中空繊維とすると共に、引き揃えたポリエステル未延伸糸を80?150℃の加熱ローラーで非加撚状態で加熱した後、該加熱の終了点を加撚開始点として同時延伸仮撚加工することを特徴とする軽量梳毛調加工糸の製造方法。
【請求項2】 加熱前の引き揃えたポリエステル未延伸糸に、交絡を付与することを特徴とする請求項1記載の軽量梳毛調加工糸の製造方法。
【請求項3】 仮撚具の上流側に設けた仮撚熱固定ヒーターの出口直後の糸条温度を70?100℃に維持して、1.3倍以下の加工延伸倍率で、同時延伸仮撚加工することを特徴とする請求項1又は2に記載の軽量梳毛調加工糸の製造方法。
【請求項4】 加工後の糸条の繊度が、30?170デニールである請求項1?3のいずれか1項に記載の軽量梳毛調加工糸の製造方法。
【請求項5】 加工速度が、600m/分以上である請求項1?4のいずれか1項に記載の軽量梳毛調加工糸の製造方法。」

3.原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1-6について:引用文献1-3
引用文献等一覧
1.特開平2-293424号公報
2.特開平08-120533号公報
3.特開昭49-86658号公報」

4.当審の判断
4-1.刊行物の記載事項
原査定において引用された、特開平2-293424号公報(以下、「刊行物1」という。)、特開平08-120533号公報(以下、「刊行物2」という。)、特開昭49-86658号公報(以下、「刊行物3」という。)には、それぞれ、以下の事項が記載されている。
(1)刊行物1
「切断伸度差が少くとも70%以上である2種またはそれ以上のポリエステルマルチフィラメント糸を引揃えて、仮撚加工するに際して、少くとも1種のマルチフィラメント糸として、下記の微細孔形成剤を配合した中空ポリエステルマルチフィラメント糸を用いて仮撚し、仮撚中のセット条件を常温若しくは高々78℃迄としてセットしてから解撚し、解撚直後、又はその後の工程において130℃以上の温度で熱処理することを特徴とする吸水性を呈する超ソフト特殊混繊糸の製造方法。
微細孔形成剤
(審決注:微細孔形成剤の構造式及びその置換基についての説明は省略。)」(特許請求の範囲請求項1)
(2)刊行物2
「合成繊維糸条を同時延伸仮撚加工するに際し、該合成繊維糸条を予め非加撚状態で加熱した後、該加熱終了点を加撚開始点として仮撚を施すことを特徴とする仮撚加工方法。」(特許請求の範囲請求項1)
(3)刊行物3
「(1)供給パッケージから供給ローラーにより送り込まれた未延伸または部分的に延伸された熱可塑性合成フィラメント糸を、延伸を助長するに適当な温度に保たれた第1の加熱域を通過させた後、撚伝播阻止装置により、仮撚装置からの撚の伝播が実質上該第1加熱域に及ぶことを阻止して、さらに撚を熱固定するに適当な温度に保たれた第2の加熱域と糸の冷却域と仮撚装置と延伸ローラーを順次通過させることを特徴とする未延伸または部分的に延伸された熱可塑性合成フィラメント糸から仮撚加工糸を製造する方法。」(特許請求の範囲第1項)

4-2.対比・判断
(1)本願請求項1に係る発明について
刊行物1には、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)の発明を特定するために必要な事項である、「引き揃えたポリエステル未延伸糸を80?150℃の加熱ローラーで非加撚状態で加熱した後、該加熱の終了点を加撚開始点として同時延伸仮撚加工する」(以下、「本願発明特定事項A」という。)ことは記載されていない。
そして、刊行物1の特許請求の範囲に記載された発明は、「仮撚中のセット条件を常温若しくは高々78℃迄としてセット」するものであって、「本発明において、このような風合を得るためには、未延伸糸(1)が伸ばされるときに構成分子が凍結状態にある温度即ちガラス転移温度(二次転移点温度)未満にする必要がある。そのためには通常の仮撚加工に使う160?240℃といった合成繊維の所謂熱可塑化温度で加熱しては勿論駄目であって、高々78℃以下、好ましくは60℃以下(熱処理時間にして0.6秒以下)にする必要がある。一般には、前記の例のように熱を加えない常温で行うとき最もよい結果が得られる。」(第4頁左上欄第6?15行)との記載からみても、仮撚前の糸を80?150℃に加熱することには、所謂阻害要因があるものといえるから、刊行物2,3に上記本願発明特定事項Aに関連する開示があるとしても、これを刊行物1に適用し、本願発明1とすることは当業者といえども容易になし得たこととはいえない。

また、刊行物2,3には、「300%以上の伸度差を有する2種以上のポリエステル未延伸糸」を用いるとともに、「伸度大なるポリエステル未延伸糸を中空率が20%以上の中空繊維とする」ことは記載されておらず、また、当業者にとって自明ともいえないから、本願発明1が、刊行物2または3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

そして、本願発明1は、嵩高でソフトな風合を有し、軽量感に優れた梳毛調ポリエステル加工糸を得ることができるという効果を奏するものである。

よって、本願発明1は、刊行物1?3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願請求項2?5に係る発明について
本願請求項2?5に係る発明は、本願発明1の発明を特定するために必要な事項のすべてを、発明を特定するために必要な事項とするものであるから、本願発明1について上記(1)で示したと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.まとめ
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-12-27 
出願番号 特願平8-223519
審決分類 P 1 8・ 121- WY (D02G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 鴨野 研一
川端 康之
発明の名称 軽量梳毛調加工糸の製造方法  
代理人 三原 秀子  

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