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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 A01K |
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管理番号 | 1149542 |
審判番号 | 無効2006-80031 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-02-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-02-28 |
確定日 | 2007-01-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3657125号発明「ワーム抜止」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3657125号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本件特許第3657125号に係る発明は、平成10年8月24日に特許出願したものであって、平成17年3月18日に設定登録されたものであり、その後の平成18年3月1日に株式会社モーリスより特許無効の審判が請求され、平成18年4月19日に被請求人より答弁書が提出された。 本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 (本件発明) 「弾性を有し、釣り針を突き刺すことにより該釣り針の任意箇所に装着可能であり、かつ、釣り針を通す箇所に貫通していない穴が設けられていることを特徴とするワーム抜止。」 2.請求人の主張 審判請求人は、本件発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、次の理由及び証拠から特許法29条2項の規定に違反して特許されたものであり、その特許は無効とされるべきであると主張する。 (無効理由) (無効理由1)本件発明は、本件出願前に頒布された甲第5号証に記載の発明に、甲第4号証及び甲第6号証に記載のものを適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 (無効理由2)本件発明は、本件出願前に頒布された甲第4号証に記載の発明に、甲第6号証に記載のものを適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 (証拠) 甲第1号証:本件特許出願の平成16年10月27日付け拒絶理由通知書 甲第2号証:同上出願の平成16年12月27日付け意見書 甲第3号証:同上出願の平成16年12月27日付け手続補正書 甲第4号証:特開平6-62710号公報 甲第5号証:実願平2-54996号(実開平4-12858号)のマイクロフィルム 甲第6号証:実願昭54-139696号(実開昭56-62075号)のマイクロフィルム 3.被請求人の主張 一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)、次のように主張する。 本件発明の「釣り針を通す箇所に貫通していない穴が設けられている」点が、甲第4号証?甲第6号証には開示されていないから、本件発明は、これらの証拠に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、被請求人は、答弁書により次の証拠を提出している。 (証拠) 乙第1号証:特開平11-151054号公報 4.甲第4?6号証の記載事項等 (1)甲第4号証の記載事項 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第3号証(以下、「刊行物1」という。)には、「釣針係止具」の発明に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。 (イ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】幹芯部一端側に鋸刃状切込部が設けられ、かつ適便の箇所に、該切込部と嵌合する内部が空洞で、内側壁にストッパー部材が設けられている嵌合部材が、幹芯部と一体にあるいは取付可能に設けられており、又幹芯部他端側には、孔を有しかつ該孔の両側に若干の切込部を有する係止部材が、幹芯部と一体にあるいは取付可能に設けられていることを特徴とする釣針係止具。」 (ロ)「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、釣針を係止する係止具に関するものである。特には、河豚、鰹、鮪などの中型ないしは大型魚を釣るための釣針の係止具に関するものである。」 (ハ)「【0004】 【課題を解決するための手段】そこで、これらの不便、欠点を改良し、子供でもまた不熟練者でも、容易簡単に釣針を釣り糸類に結束することができるようにするためには幹芯部一端側に鋸状切込部が設けられ、かつ適便の箇所に該切込部と嵌合する内部が空洞で、内側壁にストッパー部材が設けられている嵌合部材が、幹芯部と一体にあるいは取付可能に設けられており、また幹芯部他端側には、孔を有しかつ該孔の両側に若干の切込部を有する係止部材が、幹芯部と一体にあるいは取付可能に設けられていることを特徴とする釣針係止具を使用することによって解決されるものである。」 (2)甲第5号証の記載事項 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第5号証(以下、「刊行物2」という。)には、「釣針」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。 (イ)「(1)釣餌が挿入される軸部の外周に、周方向に餌抜止め用突条体を一体に形成したことを特徴とする釣針。」(明細書第1頁の実用新案登録請求の範囲) (ロ)「[産業上の利用分野]本考案は、ワーム(疑似餌)を含む釣餌が挿入される釣針に関する。」(明細書第1頁第9?11行) (ハ)「[考案が解決しようとする課題]…ワーム(4)は生き餌に似せた柔らかいものであるため、ワーム(4)の突片(2)…への引掛り力が弱い。そのため、釣針(1)を水中で速く引っ張るなどしてワーム(4)に水の抵抗が強く加わったりすると、ワーム(4)の頭部(4a)が釣針の軸部(1a)から簡単に抜けることがあって、ワーム取付けの安定性に欠ける問題があった。本考案は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、釣餌の抜け防止効果の高い、取扱いの容易な釣針を提供することを目的とする。」(明細書第3頁第9行?第4頁第2行) (ニ)「次に、第4図の第2の実施例に示す釣針(7)を説明すると、これは軸部(7a)の外周の複数箇所に、周方向に複数の鍔状の突条体(8)…を一体に形成したことを特徴とする。」(明細書第7頁第5?8行) 上記記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、刊行物2には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「ワーム(疑似餌)を含む釣餌が挿入される釣針の軸部の外周に、周方向に一体に形成した釣餌の抜止め用突条体。」 (3)甲第6号証の記載事項 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である甲第6号証(以下、「刊行物3」という。)には、「釣針」に関して、図面とともに、次の事項が記載されている。 (イ)「本案は、表面に水溶性融着子を取り付ける釣餌の離脱を防止した釣針に関するものである。」(明細書第1頁第9?10行) (ロ)「本案釣針は第1図に示す実施例では、直針の一端を湾曲させて作った針部1と、リング状に成形されると共に上記針部1に嵌着された融着子2とを有する構成に作られている。…(中略)…このため第1図に示す鎖線の如く釣餌例えば水分を含んだ練餌Aを上記針部1に付着すれば…(中略)…そして上記融着子2は、水溶性でかつ膨潤性の材料を用いれば練り餌Aに含まれる水分を吸収して傍聴を伴い、中央部に形成される空孔が縮小し、これに伴って上記針部に圧着すると云う利点がある。」(明細書第2頁第3?17行) (ハ)「ここで上記融着子2は、リング状に成形すれば上記針部1に所望の数だけ嵌着する事が出来ると云う利点があるし、或いは中央部に空孔を有する円筒状に作れば、釣場で所望の長さに切断して使用する事が出来ると云う利点がある。そして又上記融着子2は、上記針部1と嵌合する様な空孔を必ずしも設ける必要はなく、第3図に示す如く球状に成形して上記針部1の先端に形成された尖鋭部1aによつてその中心部を切孔し、これによって上記針部1に嵌着せしめる様に作っても良い。」(明細書第3頁第1?11行) 5.当審の判断 (1)対比 そこで、本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「釣針」は本件発明における「釣り針」に、引用発明における「ワーム(疑似餌)を含む釣餌」は本件発明における「ワーム」に、それぞれ相当するから、釣り針における釣餌の抜止めを行うというその機能から見て、引用発明の「釣餌の抜止め用突条体」は、本件発明における「ワーム抜止」に相当するということができる。 してみると、両者は、 「釣り針のワーム抜止。」である点で一致し、次の点で相違するということができる。 (相違点) 「ワーム抜止」の構成に関して、本件発明が「弾性を有し、釣り針を突き刺すことにより該釣り針の任意箇所に装着可能であり、かつ、釣り針を通す箇所に貫通していない穴が設けられている」ものであるのに対して、引用発明が、「釣針の軸部の外周に、周方向に一体に形成した」ものである点。 (2)相違点の検討 そこで、上記の相違点について検討する。 ところで、刊行物3には、釣餌の離脱を防止するために用いられる手段を、釣針の針部に形成された尖鋭部によつてその中心部を切孔する等により、当該針部に所望の数だけ嵌着することができるようにしたものが記載されている。 すなわち、釣り針の技術分野において、釣り針からの釣餌の離脱を防止するために用いられる手段を、釣り針を突き刺す等することによって、その針部に嵌着することができるものと構成することは、刊行物3により、公知の技術であったといえる。 また、釣り針の技術分野において、釣り針を突き刺す等することによって、その針部に嵌着することができるものを、ゴムや弾性プラスチック等の可撓性を有する素材で形成すること、言い換えれば、弾性を有する素材で形成することも、例えば、特開平3-272633号公報に示されるように、従来より周知の技術であったといえる(ちなみに、ゴム輪等に例示されるように、嵌着するものの素材として弾性を有するものを選択することは、従来よりきわめて一般的に採用されている技術であるということができる)。 そうすると、引用発明における釣針の軸部に一体に形成されたワーム抜止を、刊行物3に示されたように、釣り針を突き刺す等することによって、その針部に嵌着することができるものと変更し、その素材として弾性を有するものを選択することは、当業者が容易に想到し得たことといえる。 そして、一般的に、細長い部材等の貫通部材を被貫通部材へ貫通させたい場合に、当該貫通部材の側にはできるだけ尖った先端等を設けることにより貫通が容易となるようにすることは勿論のこと、他方、被貫通部材の側の貫通箇所には、例えば、貫通がより容易となるための切り込み等を予め設けておくこと又は(貫通箇所が比較的厚い場合には)径の小さな貫通孔を予め設けること或いは他の箇所と比較して当該貫通箇所をより薄くなるように構成すること、すなわち、凹部や窪み(貫通しない穴)を予め設けておくこと等のできるだけ貫通し易い構造を適宜設けるようにすることも、例示するまでもなく、従来より周知の技術であったということができる。 してみると、上記相違点に係る本件発明の構成は、引用発明のワーム抜止に刊行物2に記載された嵌着式の取付構造を採用するに際して、従来より周知の技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得たものといわざるを得ない。 そして、本件発明の奏する効果も、甲第5号証及び甲第6号証の記載事項並びに従来より周知の技術から当業者が予測し得るものであって、格別なものということができない。 (3)まとめ したがって、本件発明は、甲第5号証及び甲第6号証の記載事項並びに従来より周知の技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものといえる。 6.むすび 以上のとおりであるから、他の理由及び証拠について検討するまでもなく、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-11-07 |
結審通知日 | 2006-11-10 |
審決日 | 2006-11-21 |
出願番号 | 特願平10-237587 |
審決分類 |
P
1
113・
121-
Z
(A01K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 郡山 順 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
柴田 和雄 宮川 哲伸 |
登録日 | 2005-03-18 |
登録番号 | 特許第3657125号(P3657125) |
発明の名称 | ワーム抜止 |
代理人 | 森脇 正志 |
代理人 | 森 義明 |
代理人 | 本庄 武男 |