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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1149575
審判番号 不服2004-8741  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-28 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 平成10年特許願第126322号「原稿照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月30日出願公開、特開平11-331506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月8日の出願であって、平成16年3月24日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成15年2月24日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「少なくとも一方の電極がガラス管の外部に設けられた外部電極式蛍光放電ランプと、この蛍光放電ランプに高圧高周波を供給する昇圧トランスおよびこの昇圧トランスに接続されたインバータ回路を備えてなる点灯用電源装置とを有してなり、前記蛍光放電ランプおよび前記昇圧トランスは、原稿台に対して移動される可動照明ユニットに搭載され、当該可動照明ユニット以外の個所に固定された前記インバータ回路が給電ケーブルを介して前記昇圧トランスの一次側に接続されており、前記インバータ回路はスイッチ機能素子を有してなり、当該スイッチ機能素子が非導通状態から導通状態に変化することにより、前記昇圧トランスの二次側に電圧の極性変化または高電圧の発生を誘起させるものであることを特徴とする原稿照明装置。」

3.引用例
[第1引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-93399号公報(以下、「第1引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「しかしながら、上記従来例1のように、光源にキセノン放電ランプを使用する場合、ランプとインバータ間の電圧が数kVと非常に高圧となるため、ランプとインバータ間を結ぶ電源ケーブルを十分に絶縁する必要がある。」(段落【0006】)
(b)「したがって、本発明の画像読取装置によれば、コンタクトガラス上に置かれた原稿を光源で照射し、原稿からの反射画像光を第1光学キャリジ及び第2光学キャリジに設けられたミラーにより導き、レンズを介してCCD上に結像させ、原稿の画像を読み取る構成において、光源を点灯させるインバータと、光源が照射する発光量を検知する光検出手段と、光量を調整する調光手段とを同一基板上に一体化している。よって、関連する部品がユニット化される。」(段落【0014】)
(c)「本発明の画像読取装置の第1の実施例の全体的な構成について、図1を参照して説明する。コンタクトガラス1の面上には原稿2が置かれており、その原稿面の下方には読取光学系を構成する第1光学キャリジ3と、第2光学キャリジ4とが設けられている。第1光学キャリジ3は光源5とミラー6とを有し、第2光学キャリジ4は一対のミラー7、8を有している。また、第2光学キャリジ4からの出射光路上には結像レンズ9が配置され、この結像レンズ9の後方には長手方向が主走査方向Xに沿って形成されたラインセンサとしてのCCDイメージセンサ10が配置されている。」(段落【0016】)
(d)「図2によれば光源5は、トランス13等の部品が回路基板上に載置されたインバータ11と一体化されている。光源5および周辺部の詳細が、図3に示されており、同図によれば光源5とインバータ11を取り付け金具12により基準穴・長穴を介して、ネジにより第1の光学キャリジ3に取り付けられる。このように光源5を光学キャリジに対して位置決めして取付けることにより、光源が光路に対して適切な位置となり、所望の原稿像を正確に読み取ることができる。また、インバータの入力側は、制御基板に接続線14を介して接続されており、接続線に印加される電圧は数十ボルトと低圧である。ここで、光源5の口金は、インバータ11上に取り付けられたソケットにはめ込むタイプでも良い。
そして、原稿2の画像読み取り時には、第1光学キャリジ3がホームポジションHPの位置からY方向(副走査方向)に沿って移動し、第2光学キャリジ4は原稿2の面からCCD10までの光路長が常に等しくなるように移動する。」(段落【0017】?【0018】)
(e)第1引用例の図1には、原稿2が置かれるコンタクトガラス1に対し、Y方向、すなわち副走査方向に沿って第1光学キャリジ3が移動する様子が示されている。

[第2引用例]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-283296号公報(以下、「第2引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(f)「以下、図1?図4を参照して本発明に係る放電灯用点灯装置の第1の実施形態例を説明する。なお、図1は点灯装置の構成と作用を示す回路図、図2?図4は回路動作を示す波形図である。図1において、1は点灯装置、Eは直流電源で、一方の極(この例では正極)はチョークコイル(インダクタ)Laを介して変圧器(以下、「トランス」という)Tの1次側コイルL1のセンタータップ(中間タップ)に接続されるとともに、抵抗R1、R2を介してスイッチング素子であるトランジスタQ1、Q2にベースに接続されている。他方の極(この例では負極)は接地(GND)されている。トランスTには、トランジスタQ1、Q2にベース電圧を供給する帰還コイルL2と交流電圧を出力する2次側コイルL3が巻回されている。」(段落【0013】、【0014】)
(g)「すなわち、例えば電圧V1の極性に対応してトランジスタQ1のベース電圧が正でトランジスタQ2のベース電圧が負になる極性であれば、トランジスタQ1が先にオン状態に動作しトランジスタQ2がオフになるので、1次側コイルL1、トランジスタQ1、GNDに電流11が流れる。
トランジスタQ1の導通が飽和し、電流11に変化が無くなりつづいて減少すると帰還コイルL2に誘起される電圧V1の極性が逆になると、トランジスタQ2がオン状態に動作しトランジスタQ1がオフになり、1次側コイルL1、トランジスタQ2、GNDに電流I2が流れる。
この結果、1次側コイルL1を流れる電流I1、I2の極性が変化することになり、この電流I1、I2により誘起される2次側コイルL3の電圧V2は、図2に示すように交流電圧になる。なお、電圧V2の電圧レベルは、1次側コイルL1と2次側コイルL2との巻数比に対応して決定されるが、電流I1、I2の電流量はほぼ同一であるから、電圧V2のみを見れば正負の電圧レベルは対称になる。」(段落【0019】?【0021】)
(h)「この例では、2次側コイルL3の一端が1次側コイルL1の一端及びトランジスタQ2のコレクタに接続されている。従って、GNDと他端bとの間の電圧V3は、V3=Va+V2で決定される電圧レベルになり、図4に示すように正側が昇圧された非対称な波形になる。電圧V3は、コンデンサC2を介して出力端子T1、T2に供給され、出力端子T1、T2に接続されたネオンランプ2を点灯するための交流電源となる。」(段落【0025】)

4.対比
(ア)第1引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)の「コンタクトガラス」は、本願発明の「原稿台」に相当する(前掲(c))。
(イ)引用発明の「インバータ」は、トランス等の部品が回路基板上に載置された(前掲(d))、光源を点灯させるための高圧電源であり(前掲(a)、(b))、該インバータから前記トランスを除いた部分(以下、「インバータ回路部」という。)が、本願発明の「インバータ回路」に相当する。
(ウ)引用発明においては、トランス等が載置されたインバータと光源とが一体化されており(前掲(d))、したがって引用発明は、本願発明の「ランプと、トランス及びインバータ回路を備えてなる点灯用電源装置」に相当する構成を備えている。
(エ)引用発明においては、トランス等が載置されたインバータ及び光源が、取り付け金具及びネジにより第1光学キャリジに取り付けられ、原稿の画像読み取り時には、前記第1光学キャリジがホームポジションの位置から副走査方向に沿って移動しており(前掲(d))、光源が照明機能を有することは明らかであるから、前記第1光学キャリジは、本願発明の「可動照明ユニット」に相当する。
また、前記第1光学キャリジは、コンタクトガラスに対し、副走査方向に沿って移動している(前掲(e))。
したがって、引用発明は、本願発明の「ランプおよびトランスは、原稿台に対して移動される可動照明ユニットに搭載され」ることに相当する構成を備えている。
(オ)引用発明は、コンタクトガラス上に置かれた原稿を光源で照射しており(前掲(b))、原稿を照明する装置を備えているから、本願の原稿照明装置と相違しない。

以上を踏まえ、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「ランプと、トランスおよびインバータ回路を備えてなる点灯用電源装置とを有してなり、前記ランプおよび前記トランスは、原稿台に対して移動される可動照明ユニットに搭載されるものであることを特徴とする原稿照明装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明においては、「少なくとも一方の電極がガラス管の外部に設けられた外部電極式蛍光放電ランプ」が用いられているのに対し、引用発明の光源は、どのような種類のものであるか明らかでない点。

[相違点2]
本願発明においては、昇圧トランスが、蛍光放電ランプに高圧高周波を供給するとともに、該昇圧トランスの一次側が、インバータ回路に接続されており、また前記インバータ回路が、スイッチ機能素子を有してなり、該スイッチ機能素子が非導通状態から導通状態に変化することにより、昇圧トランスの二次側に電圧の極性変化する高電圧の発生を誘起させるものであるのに対し、引用発明においては、光源、トランス、及びインバータ回路部の接続関係、トランス及びインバータ回路部の機能、並びにインバータ回路部の具体的構成について明らかでない点。

[相違点3]
本願発明のインバータ回路が、可動照明ユニット以外の箇所に固定されるとともに、給電ケーブルを介して昇圧トランスに接続されているのに対し、引用発明のインバータ回路部は、第1光学キャリジに取り付けられており、またトランスとの接続関係について明らかでない点。

5.判断
上記相違点について検討する。

[相違点1について]
ファクシミリ等の画像情報機器に利用される原稿照明装置として、ガラスバルブの外壁に配設した外部電極に高周波電圧を印加して蛍光ランプを点灯させる外部電極式蛍光放電管を用いることは、例えば本願明細書の段落【0002】及び【0003】に、従来の技術として「現在、ファクシミリ、複写機、イメージリーダーなどの画像情報機器における原稿照明装置においては、種々の光源ランプが用いられているが、その一つとして、外部電極式蛍光放電ランプが知られている。図8は、直管状の外部電極式蛍光放電ランプのバルブの構成の一例を示す説明用断面図である。この外部電極式蛍光放電ランプ60は、例えば、両端が気密に封止された棒状のガラス管62によりバルブが構成され、当該ガラス管62の内面には蛍光物質64が塗布されると共にこの蛍光物質64が塗布されていない長さ方向に伸びる光放射用アパーチャ部66が形成され、また当該ガラス管62の内部には所定量の希ガスが封入されると共に、ガラス管62の外表面には、互いに直径方向に対向するよう、各々当該ガラス管62の長さ方向に伸びる一対の膜状または線状の電極68,68が配設されて構成されている。」と記載されているように、当業者に周知である。
加えて、特開平8-273863号公報の段落【0001】及び【0002】にも、ファクシミリ等の原稿照明用に用いられる外部電極式蛍光放電管が開示されている。
引用発明の光源も、画像読取装置において原稿を照明するために用いられており、前記光源として、周知の外部電極型蛍光放電ランプを採用することは、当業者が適宜決定し得る設計事項にすぎない。

[相違点2について]
インバータ回路に昇圧トランスを接続し、前記インバータ回路の作用により前記昇圧トランスに高圧高周波を発生させ、前記昇圧トランスに接続された蛍光放電ランプを点灯させる点灯用電源装置は、例えば本願明細書の段落【0006】に、従来の技術として「一方、上記のような蛍光放電ランプを点灯させるための点灯用電源装置としては、通常、蛍光放電ランプに接続された昇圧トランスと、この昇圧トランスに接続されたインバータ回路を有するものが用いられており、インバータ回路の作用によって昇圧トランスにおいて発生した高圧高周波により蛍光放電ランプが点灯される。」と記載されているように、当業者に周知である。
加えて、前掲特開平8-273863号公報の段落【0010】にも、蛍光放電管を点灯させるために、高周波電源としてインバータ回路を用いる技術が開示されている。
また、上記第2引用例にも、トランジスタQ1及びQ2を交互にオン状態に動作させ、トランスTの1次側コイルL1を流れる電流の極性を変化させることにより、トランスTの2次側コイルに、昇圧された交流電圧を誘起し、ネオンランプを点灯する旨記載されており(前掲(f)、(g)、(h))、前記トランジスタQ1及びQ2が、インバータ回路を構成している。
引用発明においては、トランス等が載置されたインバータが、光源の電源として機能しており、上記周知技術を踏まえると、光源を点灯させるために、インバータ回路部を前記トランスの一次側に接続し、前記トランスの二次側に電圧の極性変化する昇圧された高周波電圧を誘起させ、前記光源に供給していることは当業者に明らかであり、前記インバータ回路部の具体的構成として、上記第2引用例に見られるような、導通状態の変化するスイッチ機能素子を採用することは、当業者が適宜採択し得る設計事項にすぎない。

[相違点3について]
引用発明は、光源及びトランスを共に第1光学キャリジに設けており、該「第1光学キャリジ」が本願発明の「可動照明ユニット」に相当するから、ランプ及び昇圧トランスが共に可動照明ユニットに搭載される本願発明と同一の構成を備えている。
また、本願発明が、上記構成を採用することにより、放射ノイズ及び高電圧による危険を抑えられるという効果を奏することは、本願明細書の「本発明の原稿照明装置では、可動照明ユニットに蛍光放電ランプと共に昇圧トランスが配置されているので、両者間の給電経路が短くなり、従って長い給電経路で高圧高周波を供給するときに問題となる放射ノイズや高電圧による危険がきわめて小さいものとなる。」(段落【0012】)という記載から明らかである。
すると、本願発明と同一の構成を備えた引用発明が、該構成によりもたらされる、放射ノイズ及び高電圧による危険を抑えられるという効果を奏することは、当業者に明らかである。
引用発明が奏する上記効果は、インバータ回路部が取り付けられる位置に関わらず得られるものであり、第1光学キャリジの重量及び体積の増大を抑えるために、前記インバータ回路部を、前記第1光学キャリジに代えて、第1光学キャリジ以外の位置に設け、前記インバータ回路部を前記第1光学キャリジのトランスとケーブル等で接続することは、当業者が必要に応じて適宜採択し得る設計事項にすぎない。

そして、本願発明の奏する作用効果も、引用発明の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものとも認められない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例及び第2引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-02 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-11-20 
出願番号 特願平10-126322
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮島 潤  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 松永 稔
伊知地 和之
発明の名称 原稿照明装置  
代理人 大井 正彦  

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