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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 B21B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B21B
管理番号 1149602
審判番号 不服2004-18540  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-08 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 平成 8年特許願第 89812号「金属細線及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月28日出願公開、特開平 9-276901〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成8年4月11日に出願されたものであって、平成16年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年9月8日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると共に手続補正がなされたものである。

[2]平成16年9月8日付け手続補正についての補正却下の決定

〈補正却下の決定の結論〉
平成16年9月8日付け手続補正を却下する。

〈理 由〉
1.手続補正の内容
本件手続補正は、特許請求の範囲の記載について、次の(ア)、(イ)の補正事項を含むものである。
(ア)旧請求項2の
「金属線素材を、塑性変形し易い温度に加熱し、溝ローラによって前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から成形する」を、
「金属線素材を、切断面の方向から加圧成形する際に、成形加工の進行に伴い高温から低温方向へ、870℃?150℃の塑性変形し易い温度に夫々選定して加熱しつつ、溝ローラによって前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から加圧成形する」(新請求項1)
と補正する。
(イ)旧請求項5の「数分の1以下の断面積」を「求める断面積」(新請求項4)と補正する。

2.補正の適否についての判断
2-1.新規事項の追加について
本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「出願当初明細書」という)には、次の(摘示A)、(摘示B)等の記載が存在するから、金属線素材を当初870°?600℃等に加熱すること、加圧成形の進行に伴い、逐次温度が低下すること、当初加熱温度は、線素材の材質等によって異なること、加工速度などにより温度低下の度合が異なることは、記載されているといえる。
(摘示A):「【0011】線素材(例えば直径7mm)は当初870℃?600℃に加熱されるが、溝ローラによる加圧成形の進行に伴い、逐次温度が低下し、最終細線(例えば直径2.5mm)の際には150℃位の低温になる。これは連続加圧成形をする為に、このような低温でも塑性変形は容易であるが、金属薄板の時の高い異方性があると、200℃付近において脆性を示すため、成形に問題(亀裂)を起すおそれがある。然し乍ら650℃付近に加熱し、溝ローラにより温間で切断面の方向から圧延すれば、前記異方性が少なくなっているから、その後連続圧延した場合に200℃付近の脆性は生じないことになり、安全作業が出来る。
【0012】そこで当初加熱温度にしても線素材の材質、断面形状、断面積などによって異なる。塑性変形し易い材料では、かならずしも温度を高める必要はなく、常温で加工しても良いが金属材料は一般に温度を高めると塑性変形し易い。
【0013】通常の金属では870℃?150℃の温度範囲で、その加工性に応じて温度を決めれば良い。更に加工速度、加工頻度などにより温度低下の度合が異なる。例えば、直径7mmの線素材を650℃に加熱して、12セットの溝ローラで直径2.5mmまで加圧成形した際に最終細線温度が150℃になったとしても、純金属の場合と、合金の場合とでは当初加熱温度と最終温度が異なるし、・・・」
(摘示B):「【0024】【実施例】この発明の実施例について説明する。幅10mm、厚さ4mmのステンレス線素材1が加熱炉4を通過する間に650℃に加熱し、厚さ端面と直角の方向から第1の溝ローラ5により加圧成形し、直径7mmのほぼ円形の線材とし、ついでダイス14により200μmだけ表面皮むきにより酸化部および微細な傷を除去した後、第2、第3、第4の溝ローラ7、8、9に引続き数セットタンデムに連結した溝ローラを通過する間に(直列12組)直径2.5mmとなる。この場合の最終細線の温度はほぼ100℃であつた。」

しかしながら、上記(ア)の補正事項による補正後の、“金属線素材を、成形加工の進行に伴い高温から低温方向へ、塑性変形し易い温度に夫々選定して加熱しつつ、加圧成形する”旨の事項は、出願当初明細書に記載されていないし、出願当初明細書の前述のような記載から自明のこととも認められない。
してみると、上記(ア)の補正事項は、出願当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないというべきであるから、上記(ア)の補正事項を含む本件手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

2-2.補正目的違反について
上記(イ)の「数分の1以下の断面積」を「求める断面積」とする補正事項は、断面積の数値による限定を数値以外の別種の限定に置き換えようとするものであって、明りょうでない記載を釈明しようとするものではないから、特許法第17条の2第4項第4号の「明りょうでない記載の釈明」に該当するとはいえない。
また、上記補正事項が、同項第1号の「請求項の削除」、同項第2号の「特許請求の範囲の減縮」、同項第3号の「誤記の訂正」のいずれにも該当しないことは明らかである。
してみれば、上記(イ)の補正事項を含む本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

3.補正の適否に関するむすび
以上の検討からみて、上記(ア)、(イ)の補正事項を含む本件手続補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明について、
1.本願発明
上記[2]のとおり平成16年9月8日付け手続補正は却下されたから、本願の請求項1?7に係る発明は、出願当初明細書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりである(以下、「本願発明1」という)。
「圧延加工された金属薄板を長手方向に並列して細長く切断した方形断面形状の金属線素材を、溝ローラによって前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から成形すると共に、線材の外壁の皮剥きしたことを特徴とする金属細線。」

2.原査定の拒絶理由
本願発明1に関する原査定の拒絶理由の概要は、本願発明1は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用例1に記載された発明であるか、又は、該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例と主な記載事項
上記引用例1とその主な記載事項は、次のとおりである。
(1)引用例1:特開昭61-67502号公報
(1a)「(2)帯状の金属板を圧延ロールによってその両面の相対する位置に直線状の複数溝を形成し、次に切離しガイドロールにより、隣接する凸状部を交互にその厚み方向において反対方向に引張り、該溝を引張り切断して線材を得て、この線材を成形ロールにより所定形状に形成することを特徴とする金属線の製造方法。」(1頁左下欄の特許請求の範囲第2項)
(1b)「〔実施例〕
本発明の一実施例を図面につき説明すると、1は巾500mm、厚さ2mm、長さ200mのコイル状に捲回されたチタン合金製の長尺の金属板を示し、この金属板1を直角の角溝2を切った圧延ロール3の間を通し、その両面に第3図に示す通り角部を90°にした正方形状の凸状部4とその間に凹状の溝5とを複数本直線上に圧延形成する。これを次に間隔の小さなロールの後に間隔の大きなロールを配した2対の切り離し用のガイドローラー6の間に通し、隣接する凸状部4をその厚さ方向において交互に反対方向に引張り、この180°反対方向に引張ることにより凸状部間の溝5が引張り切断され、凸状部4が線材7として取出される。この線材7を次に夫々に半円形の丸溝8を形成した一対の成形ロール9の該丸溝8に噛ませ、線材の両側に突出するバリを取り除くとともに四角形の線材7の角部を丸くし、これを巻取りリール10で巻取る。」(2頁右上欄18行?左下欄16行)
(1c)「また完全な丸線として完成するには、成形ロール9を通過後、皮むきダイス(図示せず)を使用し、成形ロールに於いて発生する噛出し(バリ)を取除き、さらに表面研磨(グライデング)を施し、リール巻取りや、所定寸法に切断し、完全な丸線を製造する。」(2頁右下欄3?8行)
(1d)「〔発明の効果〕
以上の通り本発明の方法によれば、・・・アルミニウム、銅、鉄でも、従来から難位線材とされていたチタンでも極めて生産効率良く製線することができる。
即ち、・・・コイル素材を使用して2mmφの線材を製線する場合。
圧延速度 毎分10mとして
・・・・・・
製線速度 毎分 1100m?1375m
上記からも明確な通り、本発明の製線速度は、・・・驚異的に速くなり、・・・生産効率は・・・飛躍的に向上する。」(2頁右下欄14行?3頁左上欄18行)

4.当審の判断
4-1.引用例1記載の発明
(カ)引用例1には、上記(1a)のとおりの「金属線の製造方法」が記載されているから、該製造方法により製造された「金属線」の発明も記載されていると認められる。
(キ)引用例1の上記(1b)には、「金属線の製造方法」の実施例として、「線材」を得る工程に関し、「金属板1を直角の角溝2を切った圧延ロール3の間を通し、その両面に第3図に示す通り角部を90°にした正方形状の凸状部4とその間に凹状の溝5とを複数本直線上に圧延形成する。これを次に間隔の小さなロールの後に間隔の大きなロールを配した2対の切り離し用のガイドローラー6の間に通し、隣接する凸状部4をその厚さ方向において交互に反対方向に引張り、この180°反対方向に引張ることにより凸状部間の溝5が引張り切断され、凸状部4が線材7として取出される。」と記載されているから、該「線材」は、断面形状が「正方形状」であるといえる。
(ク)同(1b)には、「金属線の製造方法」の実施例で使用される「成形ロール」に関し、「夫々に半円形の丸溝8を形成した一対の成形ロール9」と記載されているから、該「成形ロール」は、半円形の丸溝を具備するものといえる。
(ケ)同(1c)には、成形ロールを通過後、皮むきダイスの使用や表面研磨(グライデング)の実施により、完全な丸線を製造する旨が記載されているから、上記「金属線の製造方法」は、皮むきダイスの使用や表面研磨(グライデング)の実施により金属線を完全な丸線とする工程を包含しているといえる。

以上の(カ)?(ケ)の事項を総合すると、引用例1には、
「帯状の金属板を圧延ロールによってその両面の相対する位置に直線状の複数溝を形成し、次に切離しガイドロールにより、隣接する凸状部を交互にその厚み方向において反対方向に引張り、該溝を引張り切断して断面が正方形状の線材を得て、この線材を半円形の丸溝を具備する成形ロールにより所定形状に形成した後、皮むきダイスの使用や表面研磨(グライデング)の実施により金属線を完全な丸線とする製造方法により製造される金属線。」の発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されていると認められる。

4-2.本願発明1と引用例1発明との対比
本願発明1における「方形断面形状」は、「正方形断面形状」を包含するから、「方形断面形状」が「正方形断面形状」である場合の本願発明1と引用例1発明を対比すると、引用例1発明における「線材」、「半円形の丸溝を具備する成形ロール」、「皮むきダイスの使用や表面研磨(グライデング)の実施」は、それぞれ、本願発明1における「線素材」、「溝ローラ」、「線材の外壁の皮剥き」に相当するから、両者は、
「金属板を長手方向に並列して細長く切断した正方形断面形状の金属線素材を、溝ローラによって成形すると共に、線材の外壁の皮剥きした金属細線。」である点で一致するが、次の点で一応の相違がみられる。
相違点1:本願発明1では、「金属板」が「圧延加工された金属薄板」であるのに対し、引用例1発明では、それが明示されていない点
相違点2:本願発明1では、「金属線」が「金属細線」であるのに対し、引用例1発明では、それが明示されていない点
相違点3:本願発明1では、溝ローラによる金属線素材の成形が、「前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から」であるのに対し、引用例1発明では、それが明示されていない点

4-3.相違点についての検討
(i)相違点1について
まず、金属板の厚さ乃至薄さについて検討するに、本願明細書の実施例における、金属薄板を細長く切断したステンレス線素材(金属線素材)の厚さが4mmである旨の記載(段落【0024】参照)からみて、本願発明1においては、4mm程度の厚さは、“薄い”ものであるといえる。これに対し、引用例1の上記(1b)には、実施例の金属板の厚さが2mmである旨が記載されているから、「金属板」が「金属薄板」である点で、本願発明1と引用例1発明とが格別に相違するとはいえない。
次に、金属板が圧延加工されたものであるか否かについて検討するに、この種の金属板を圧延加工により形成することは、通常のことであるから、「金属板」が「圧延加工された」ものである点でも、本願発明1と引用例1発明とが格別に相違するとはいえない。また、仮に、「金属板」が「圧延加工された」ものである点が実質的な相違であるとしても、この種の金属板を圧延加工により形成することは、本出願前に周知の事項であるから、引用例1発明において、「金属板」を「圧延加工された」ものとすることは、前示の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。
してみれば、上記相違点1は、実質的な相違とはいえないか、仮に相違であるとしても、当業者が容易に想到し得たものである。

(ii)相違点2について
本願明細書における、金属細線の直径が2.5mmである旨の記載(段落【0011】、【0024】参照)からみて、本願発明1においては、2.5mm程度の直径は、“細い”ものであるといえる。これに対し、引用例1の上記(1d)には、実施例の金属線の直径が2mmである旨が記載されているから、「金属線」が「金属細線」である点で、本願発明1と引用例1発明とが格別に相違するとはいえない。
してみれば、上記相違点2は、実質的な相違とはいえない。

(iii)相違点3について
本願の図1には、「この発明の実施する装置の概略図」として、加圧する方向が同じである第1と第3の溝ローラ、及び、第1と第3の溝ローラと加圧する方向が異なる第2と第4の溝ローラを用いて金属線素材を成形する旨が示されていることからみて、本願発明1は、加圧する方向が異なる複数段の溝ローラを用いて金属線素材を成形する態様を包含していると認められる。そして、そのような態様において、「前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から」成形する溝ローラを如何なる個数、如何なる位置に配置するかに関し、本願発明1は全く限定していない。
一方、引用例1の第1図に示された実施例の成形ロール(溝ローラ)は、「前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から」成形するものではないが、次の(サ)?(ス)の事項を勘案すると、本願発明1における、溝ローラによる金属線素材の成形を「前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から」とする旨のプロセスの限定は、製造物である本願発明1の金属細線と引用例1発明の金属線との間に格別の差異をもたらすものとは認められない。
してみれば、上記相違点3は、実質的な相違とはいえない。
(サ)加圧する方向を変化させた複数段の溝ローラを用いて金属線素材を成形することは、特開昭50-71562号公報(原審の拒絶理由における引用例2)や特開平7-204709号公報(本願明細書に特願平6-2840号として記載された先行技術に係る公開公報)の記載にみられるように、本出願前に周知の事項である。
(シ)加圧する方向を変化させた複数段の溝ローラを用いて金属線素材を成形する際に、例えば、最終段等の一部の溝ローラを「前記線素材の切断面を圧延圧縮する方向から」成形するものとしても、それにより成形される金属線は、引用例1発明のものと比べ、格別に異なるとは認められない。
(ス)上記4-2.で述べたとおり、「線材の外壁の皮剥き」を行う点で、本願発明1と引用例1発明とは一致しているから、凹部等の表面傷などが存在しない点で、本願発明1と引用例1発明とが格別に相違するとは認められない。

(iv)相違点検討のまとめ
上記(i)?(iii)の検討のとおり、上記相違点1?3はいずれも、実質的な相違とはいえないか、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明1は、引用例1に記載された発明であるか、又は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-31 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-11-21 
出願番号 特願平8-89812
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B21B)
P 1 8・ 574- Z (B21B)
P 1 8・ 561- Z (B21B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 市川 裕司
正山 旭
発明の名称 金属細線及びその製造方法  
代理人 鈴木 正次  

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