• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1149608
審判番号 不服2004-21307  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-14 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 特願2001-206474「画像表示システム、プロジェクタ、プログラム、情報記憶媒体および画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月29日出願公開、特開2002-344761〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成13年7月6日(優先権主張平成13年3月16日)の出願であって、平成16年9月10日に拒絶査定がされ、これに対して同年10月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月2日に手続き補正がなされたものである。

第2 平成16年11月2日付けの手続補正の却下について
1 補正却下の決定の結論
平成16年11月2日付けの手続補正を却下する。
2 理由
(1)補正後の本願発明
本願の発明は、平成16年11月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載されたものと認められるところ、その請求項10に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項10】 画像の被表示領域を観察する場合の視環境を把握する視環境把握手段による視環境情報に基づいて生成され、画像信号の変換に用いられる変換用情報に基づき、画像を表示する画像表示システム用の画像処理方法において、
前記視環境情報を取得する工程と、
取得された視環境情報と、所定環境下の色の見えの知覚量を示す情報を有する標準規格の色情報と、に基づき、当該視環境において当該標準規格の色を再現する対応色を示す対応色情報を、アピアランスモデルに基づく演算を行って生成する対応色生成工程と、
求められた対応色情報と、前記画像を表示する表示手段で再現可能な色域を示す色域情報と、に基づき、前記変換用情報を生成する工程と、
生成された変換用情報に基づき、前記画像信号を変換する工程と、
を含むことを特徴とする画像処理方法。」

本件補正は、平成16年3月12日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1について、色情報関連の技術を特定するために、限定を付加する補正を含むもので、全体として、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正された特許請求の範囲に記載された上記本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-60082号公報(以下「引用例」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

ア 「【請求項1】 プログラムされたコンピュータであって、ネットワークに接続するネットワーク接続手段と、カラー画像を表示するカラー画像表示手段と、カラーカメラあるいはセンサにより前記カラー画像表示手段の再現特性と観察照明条件を取得し、前記ネットワークを介して取得したカラー画像に色変換を施し、前記カラー画像表示手段に出力する色変換手段とを具備することを特徴とする色再現端末装置。」

イ 「【請求項9】 色変換手段は、カラー画像の三刺激値をカラーカメラあるいは照明光センサからの観察照明情報によって色順応補正する処理を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の色再現端末装置。」

ウ 「【0051】例えば、インターネット上のカラー画像を自分のディスプレイで観察する場合、インターネット上のカラー画像は標準のRGBであるsRGB色空間で表現されることが多い。そこでインターネット501経由で送られてきたカラー画像502はユーザPC上の色変換部506(色変換ソフトウエアモジュール)において、sRGB信号からsRGBプロファイル503を用いてXYZに変換され、XYZからユーザのディスプレイ・プロファイル504を用いてXYZからRGBに変換されてディスプレイ上508に表示されることにより、正しいRGB値でのカラー表示が行われる。
【0052】しかし、このようにXYZを一致させて色再現を行う方法、すなわち測色的色再現は多様されているが本当に正確であるとは言いがたい。その理由としては、まず第1に同じXYZを表示しようとしてもディスプレイ毎に出力できる最大輝度や色域が異なり何らかの色域マッピングを行なうため色ずれを生じるからである。
【0053】第2に、そもそもXYZ値を同一にする測色的色再現は、同一照明下で同一種類のメディアを観察する場合のみ成立し照明が異なる場合や実際の被写体とディスプレイ上の画像を見比べる場合には成立しないためである。特に、カラーアピアランス(色の「見え」)のモデルが「クロスメディア間色再現」の名の下で研究され標準化が進められている最中であり、アルゴリズムは今後とも発展の可能性がある。」

エ 「【0074】図12は、電子ショッピングにおけるネットワーク色再現システムの色変換動作を示す流れ図である。
【0075】ステップ1201にて、ユーザ端末側の色再現端末装置705の要求により、画像サーバ1201がsRGB形式の画像データを色再現端末装置705に送出する。ステップ1202にて、ユーザ端末側の色再現端末装置705は画像データを受け取る。
【0076】次に、ユーザ端末側の色再現端末装置705は、ステップ1203、1204にて色再現サーバ706から色変換部(色変換ソフトウエアモジュール)を取得する。この色変換部は、プログラムでありユーザ端末上で実行されるモジュールである。次に、ユーザ端末側の色再現端末装置705は、ステップ1205、1206にてsRGBプロファイルを同じく色再現サーバ706から取得する。
【0077】ステップ1207にて、ユーザ端末側の色再現端末装置705の色変換部(色変換ソフトウエアモジュール)により、sRGBプロファイルを用いてsRGBからXYZへの変換を実施する。
【0078】ステップ1208において、撮影照明情報Aが画像サーバ1101からユーザ端末側の色再現端末装置705に送出される。ステップ1209にて、ユーザ側の色再現端末装置705は撮影照明情報Aを取得すると共に、ステップ1210でユーザ端末上の照明センサによってユーザが画像を観察するが取得される。
【0079】ステップ1211にて、これらの撮影照明情報A(1104)と観察照明情報B(1105)に基づきXYZ値の照明・順応・コントラスト補正を実施する。この補正は、照明条件や順応する白の色度により色の見えが異なるという従来のカラーマネジメントの不備を補完するものであり、XYZ値を色の見えが一致するように補正するものである。
【0080】最後に、ステップ1212にて、ユーザ端末側の色再現端末装置705は、既に得られている自分のディスプレイ・プロファイルを用いて照明補正されたXYZ値からディスプレイデバイス値であるRGBに変換し、ステップ1213でディスプレイ上にRGBカラー画像を表示する。
【0081】図13、図14を用いて、ステップ1211の照明・順応・コントラスト補正について詳細に説明する。図13において、XA,YA,ZA値は、図12のステップ1207における画像データの撮像時の三刺激値XYZに相当する(ステップ1301)。この撮影が行われた際の照明光を撮影照明情報Aとする。すると、XA,YA,ZAをHunt-Pointer-Estevez Transformation(たとえば、Naoya katoh:"Practical Method for appearance match between soft copy and hard copy",SPIE Vol.2170,1994など)により、錐状体応答値LMSに変換することができる(ステップ1302)。
【0082】
【数1】

【0083】次に、撮影照明情報Aから観察照明情報Bへの順応変換が行われる。そして変換された(L' M' S')をXYZに再度変換して(ステップ1304)、照明光Bでの(XB YB ZB)を得る(ステップ1305)。これはVon Kries則の変換(同上)によって以下の式で一度に実施できる。
【0084】
【数2】

【0085】ここで、LmaxA、LamxBは、A、B各々の環境下でのLの最大値、MmaxA,MmaxBはA,B各々の環境下でのMの最大値、SmaxA、SmaxBは各々A、B環境下でのSの最大値を示す。
【0086】次にコントラスト変換を実行する。これは、照明の変化でディスプレイのみかけのガンマ値が変化してしまう現象の補正である(ステップ1306)。
【0087】
【数3】(略)
【0088】コントラスト変換を行った結果の(XB‘、YB’、ZB‘)を出力する(ステップ1307)。
【0089】以上の手順により撮影されたコンテンツの被写体と同一の色の見えを色再現端末装置上で再現することが可能になる。」

(3) 対比
本願補正発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。

a 引用発明は色再現端末装置であり、本願補正発明と同様、カラー画像をカラー画像表示手段に表示する際の画像処理技術に含まれるものであるから、両者は技術分野を同じにしているとみることができる。

b 引用例の請求項1及び9、段落【0078】ないし【0080】の記載と、図2、4及び12とを参照すると、「カラーカメラあるいは照明光センサからの観察照明情報」が「カラー画像表示手段」における画像の被表示領域を観察する場合の視環境であることは明らかであるから、引用例の段落【0078】ないし【0080】記載の「照明光センサ」、「観察照明情報B」、「ディスプレイ」は、本願補正発明の「画像の被表示領域を観察する場合の視環境を把握する視環境把握手段」、「視環境情報」、「画像を表示する表示手段」にそれぞれ相当し、また、引用例の段落【0078】記載の工程「ステップ1210」は、本願補正発明の「視環境情報を取得する工程」に相当する。

c 引用例の段落【0051】に記載された「sRGB色空間」は、色空間の標準規格として当業者に自明の事項であるから、引用例の段落【0075】記載の「sRGB形式の画像データ」は、本願補正発明の「標準規格の色情報」に相当する。

d 引用例の段落【0053】及び【0074】ないし【0089】の記載と、図12及び13とを参照すると、色の見えを再現する「照明・順応・コントラスト補正」処理がカラーアピアランスモデルに基づく処理を意味することは明らかであるから、引用例の段落【0079】記載の「ステップ1211」における「照明・順応・コントラスト補正」処理は、本願補正発明の「アピアランスモデルに基づく演算」処理に相当する。

また、「照明・順応・コントラスト補正」処理において、標準規格の色情報であるsRGBから変換された画像データの撮像時の三刺激値XYZに相当する「XA,YA,ZA値」をマトリックスMを用いて「錐状体応答値LMS」へ変換し、【数2】において、所定環境である「撮影照明情報A」より求められる1/LmaxA、1/MmaxA、1/SmaxAにより順応変換した段階の情報が、本願補正発明の「所定環境下の色の見えの知覚量を示す情報」に相当することは当業者に明らかであるから、標準規格の色情報と、該色情報の所定環境下での色の見えの知覚量とは対応関係にあり、標準規格の色情報は、「所定環境下の色の見えの知覚量を示す情報」を有しているといえる。

したがって、「照明・順応・コントラスト補正」処理は、取得された「視環境情報」と、「所定環境下の色の見えの知覚量を示す情報を有する標準規格の色情報」とに基づいた「アピアランスモデルに基づく演算」を行っている。
よって、引用例の段落【0080】記載の「照明補正されたXYZ値」は、本願補正発明の「当該視環境において当該標準規格の色を再現する対応色を示す対応色情報」に相当し、引用例の段落【0079】記載の工程「ステップ1211」は、本願補正発明の「対応色生成工程」に相当する。

e 引用例の段落【0051】及び【0052】には、「ディスプレイ・プロファイル504を用いてXYZからRGBに変換」する際に、「ディスプレイ毎に出力できる最大輝度や色域が異なり何らかの色域マッピングを行なう」点について記載されていることから、ディスプレイ・プロファイルにディスプレイで再現可能な色域情報が含まれていることは明らかであり、引用例の段落【0080】記載の「ディスプレイ・プロファイルを用いて照明補正されたXYZ値からディスプレイデバイス値であるRGBに変換」する処理においても、本願補正発明と同様に「画像を表示する表示手段で再現可能な色域を示す色域情報」に基づいた処理を行っていることは当業者に明らかである。

以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
【一致点】
画像の被表示領域を観察する場合の視環境を把握する視環境把握手段による視環境情報に基づいて画像を表示する画像表示システム用の画像処理方法において、
前記視環境情報を取得する工程と、
取得された視環境情報と、所定環境下の色の見えの知覚量を示す情報を有する標準規格の色情報と、に基づき、当該視環境において当該標準規格の色を再現する対応色を示す対応色情報を、アピアランスモデルに基づく演算を行って生成する対応色生成工程と、
求められた対応色情報と、前記画像を表示する表示手段で再現可能な色域を示す色域情報とに基づいて画像を表示する画像処理方法。

【相違点】
本願補正発明において、「求められた対応色情報と、画像を表示する表示手段で再現可能な色域を示す色域情報と、に基づき、変換用情報を生成する工程と、生成された変換用情報に基づき、画像信号を変換する工程と」を含み、「画像信号の変換に用いられる変換用情報に基づき、画像を表示する」のに対し、引用発明においてはこれらの工程、及び表示処理に対応する構成がない点。

(4) 相違点についての当審の判断
色補正処理を行う際に、計算量を低減するために、一度、変換用情報としてルックアップテーブル(LUT)を生成し、生成された変換用情報に基づき画像信号を変換し、変換用情報に基づき画像を表示することは、特開2001-36758号公報(以下「文献1」という。)、特開平11-112819号公報(以下「文献2」という。)、及び特開2001-16607号公報(以下「文献3」という。)に示されるように慣用技術である。

すなわち、文献1には、「【0044】以上、本発明の色補正処理方法および色補正処理装置について詳細に説明したが、これらの色補正処理装置は、色補正のために構成される部分の変換や調整を、それぞれの関数や式に基づいて構成させてもよく、また、色補正のために構成される全ての変換や調整を一括して行うための多数のデータセットを備えるルックアップテーブル(LUT)によって設けられてもよい。本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。」と記載されている。

また、文献2には、「【請求項12】 発光表示媒体に表示された画像と非発光表示媒体に表示された画像との間の知覚される色の見え方が等しくなるように、前記発光表示媒体の画像データを前記非発光表示媒体の画像データに変換するに際して参照される、両画像データの対応関係を表す色変換ルックアップテーブルであって、前記発光表示媒体が表示し得る画像の明るさの範囲が前記非発光表示媒体が表示し得る画像の明るさの範囲と略同等になるように、前記発光表示媒体の画像データのダイナミックレンジを前記非発光表示媒体の画像データのダイナミックレンジに変換するダイナミックレンジ補正機能と、
前記非発光表示媒体に表示された画像と前記発光表示媒体に表示された画像との間の知覚される色の見え方が等しくなるように、色順応モデルに従って、前記発光表示媒体の画像データを前記非発光表示媒体の画像データに変換する色変換機能とを備えたことを特徴とする色変換ルックアップテーブル。」、「【請求項23】 請求項12記載の色変換ルックアップテーブルを参照して発光表示媒体の画像データを非発光表示媒体の画像データに逆変換することを特徴とする画像の色変換方法。」が記載されている。

さらに、文献3には、「【請求項5】 デジタル撮影方法であって、撮影対象を撮影することによりデジタルデータとして画像を取得する撮影工程と、撮影の際の照明光に相当する光の色度を第1の色度として取得する色度取得工程と、前記画像の各画素の色情報に対して前記第1の色度および所定の照明光の色度である第2の色度を用いる色順応に基づく変換を施すことにより、前記画像の色補正を行う補正工程と、を有することを特徴とするデジタル撮影方法。」、「【請求項6】 請求項5に記載のデジタル撮影方法であって、前記補正工程が、各画素の色情報を色順応に基づいて変換するためのテーブルを前記第1および第2の色度から作成する工程、を有することを特徴とするデジタル撮影方法。」が記載されている。

引用発明における画像処理も、色補正処理を目的とするものであるから、上記慣用技術を引用発明に適用すること、すなわち、上記相違点の構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反するものであり、特許法159条1項で準用する特許法53条1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 平成16年11月2日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項10に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年3月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項10に記載されたとおりのものである。
平成16年11月2日付の手続補正は、請求項10について補正がなされていないので、本願発明と本願補正発明とは同一である。
よって、本願補正発明が、前記「第2 2 理由」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同じ理由により引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-25 
結審通知日 2006-11-01 
審決日 2006-11-14 
出願番号 特願2001-206474(P2001-206474)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 仲間 晃  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田中 幸雄
松永 稔
発明の名称 画像表示システム、プロジェクタ、プログラム、情報記憶媒体および画像処理方法  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 布施 行夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ