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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1149649
審判番号 不服2006-18940  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-10-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-30 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 特願2005-190782「携帯電話機及び携帯電話機の通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-304091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年4月8日に出願した特願平11-101718号の一部を、平成16年5月6日に新たな特許出願として出願した特願2004-137724号の一部を、平成16年10月21日に新たな特許出願として出願した特願2004-307467号の一部を、平成17年6月29日に新たな特許出願としたものであって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年6月23日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「呼出信号を受信してから呼出中止までの呼出時間を計測する呼出時間計測手段と、着信に応答したか否かを示す応答情報を着信履歴情報として表示する一方、前記呼出時間計測手段により計測された呼出時間の計測結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする携帯電話機。」

2.引用発明及び周知技術
A.原査定の拒絶の理由に引用され、本願のもとの出願の日前である平成8年11月5日に頒布された特開平8-293913号公報(以下、「刊行物」という。)には、「留守番電話機」の発明に関し、図面とともに以下の記載がある(下線加筆)。
イ)「【目的】 留守番電話機において、用件メッセージを残さなかった電話を知ることができるようにする。
【構成】 着呼時のリンガ信号の回数をカウントするカウント手段と、時計回路29と、メモリ38とを設ける。相手が伝言のメッセージを残さずに電話を切ったとき、このときの時刻を示すデータを時計回路29から取り出し、この時刻のデータと、カウント手段の示すリンガ信号の回数とを、メモリ38に記憶する。所定のキー操作を行ったとき、メモリ38に記憶しておいた時刻のデータと、リンガ信号の回数とを、ユーザに通知する。」(第1頁下欄、(57)【要約】)、
ロ)「【0022】[留守番モード時の着呼(ICMを録音するとき)]着呼があると、これが検出回路17により検出され、これがシステム制御回路21に通知される。すると、システム制御回路21において、フラグCMFがチェックされ、今の場合、留守番モードに設定されているので(CMF=“1”なので)、システム制御回路21のCPU22がルーチン100の処理を開始し、ステップ101において、リンガ18がオンとされるとともに、リンガ音の回数、すなわち、リンガ信号の着信回数を示す変数Nが「0」に初期化され、次にステップ102において、変数Nが「1」だけインクリメントされる。
【0023】続いて、ステップ103において、検出回路17の検出出力をチェックすることにより、相手がまだ呼び出しを続けているかどうかが判別され、呼びだしを続けているときには、処理はステップ103からステップ104に進み、このステップ104において、変数Nの値がチェックされ、例えばN≦5のときには、すなわち、リンガ音の回数が5回以下のときには、処理はステップ104からステップ102に戻る。
【0024】こうして、リンガ音が5回なるまでは、ステップ102?104のループが繰り返される。
【0025】そして、電話の相手がリンガが5回鳴っても電話を切らないときには、N>5となるので、処理はステップ104からステップ111に進み、このステップ111において、システム制御回路21により、リンガ18がオフとされるとともに、スイッチ回路16がオンとされてこの電話機はオフフック状態とされる。」(第3頁第3?4欄)、
ハ)「【0039】[留守番モード時の着呼(リンガ中に電話を切ったとき)]着呼があると、検出回路17の検出出力により着呼であることがシステム制御回路21に通知される。すると、システム制御回路21において、フラグCMFがチェックされ、今の場合、留守番モードに設定されているので、システム制御回路21のCPU22がルーチン100の処理を開始し、上記のように、ステップ102?ステップ104のループが繰り返され、リンガが鳴っている。
【0040】そして、電話をかけてきた相手が、このリンガ期間中に電話を切ると、これが検出回路17を通じてステップ103により検出され、処理はステップ103からステップ124に進み、このステップ124においてリンガ18がオフとされ、その後、処理はステップ123に進む。
【0041】したがって、呼び出し中に、電話を切ると、そのときの変数Nの値(リンガの鳴った回数)と、そのときの時刻が、メモリ38に記録されることになる。」(第4頁第6欄)、
ニ)「【0047】あるいは、メモリ38からリンガの鳴った回数Nおよび着呼のあった時刻のデータが、録音再生回路31およびシステム制御回路21を通じてLCD28に供給され、LCD28には、例えば、4回/12:34のように、着呼のあった時刻およびそのときリンガの鳴らされた回数が文字により表示される。なお、このとき、操作キー25のうちの所定のキーを操作すると、LCD28の表示はスクロールされる。
【0048】こうして、電話をかけてきたが、ICMを残さなかった人がいるときには、そのときの時刻およびリンガの鳴った回数がユーザに知らされる。」(第5頁第7欄)、
ホ)「【0052】[まとめ]以上のように、上述の電話機によれば、留守番電話機としてICMを録音することができるのはもちろんのこと、OGMが再生される前に相手が電話を切ってしまったとき、あるいはOGMが再生されて留守だと分かると、何も話さずに電話を切ったときでも、その時刻を知ることができる。
【0053】また、そのとき、リンガの鳴った回数もユーザに知らせるようにしているので、例えば、1分間隔で、2度電話をかけるとともに、それぞれ2回ずつリンガを鳴らすというように、着呼の回数および間隔と、リンガ音の回数とを、あらかじめ決めておくことにより、「今夜は食事はいらない」などの特定の伝言を伝えることもできる。
【0054】なお、上述において、メモリ36?38は、1つのメモリのアドレスを分割して使用することにより実現することもできる。また、コーラID機能(電話局が、リンガ信号に発呼者の電話番号(回線番号)のデータを重畳して送る技術)を有する場合には、コーラID機能により得られる相手の電話番号も、ステップ123において記憶しておき、これを、着呼のあった時刻およびそのときのリンガの鳴った回数と一緒に知ることができるようにしてもよい。」(第5頁第7?8欄)。

上記刊行物の記載及び技術常識によれば、上記刊行物には、
「着呼時の呼び出し中のリンガ信号の回数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によりカウントされたリンガ信号の回数を表示するLCDと、を備えた留守番電話機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。

B.原査定の拒絶の理由に周知例として引用され、本願のもとの出願の日前である平成4年3月18日に頒布された特開平4-86053号公報(以下、「周知例1」という。)には、「電話機」の発明に関し、図面とともに以下イ)?ハ)の記載がある(下線加筆)。
イ)「(1)電話回線から入力されるリング信号の鳴動状態を検出するリング信号検出手段と、複数のメッセージを予め記憶させたメッセージ記憶手段と、発呼者の電話番号検出手段とを設け、上記、リング信号検出手段が検出するリング信号の、鳴動回数、または鳴動時間に対応させて、上記メッセージ記憶手段からメッセージを選択して、上記電話番号検出手段が検出した発呼者の電話番号とともに表示手段に表示させることを特徴とする電話機。
(2)リング信号検出手段は、リング信号の鳴動回数を計数することを特徴とする請求項(1)記載の電話機。
(3)リング信号検出手段は、リング信号の鳴動時間を累積測定することを特徴とする請求項(1)記載の電話機。」(第1頁左下欄、2.特許請求の範囲)、
ロ)「まず、リング信号終了検出手段14について説明する。第3図に示すように電話回線からのリング信号は120V位の交流信号が第1の一定時間(t1)継続し、次に第2の一定時間(t2)後に再び交流信号が現れる。リング信号検出手段14はこの交流信号の立上りを検出し、tl+t2よりも十分に長い時間t3を設定し、リング信号の立上りから時間をカウントしていく。そしてt3内に再びリング信号の立上りが入力されると、再びt3を設定し、時間をカウントする。使用者がオフフックせず、発呼者がオフフックして、t3をカウントする間にリング信号が入力されないと、りング信号終了検出手段14はリング信号の終了を示す信号を制御手段13に出力する。
また、記憶手段9には予め複数の、例えば「電話乞う。」「後で電話する。」等のメツセージがデジタルデータの形で記憶されており、リング信号の入力回数によってこれらのメツセージの1つが選択される。」(第3頁左上欄、1?19行目)、
ハ)「また、リング信号の入力回数によりメツセージを選択するとしたが、これはリング信号の入力時間により選択するようにしてもよい。
(発明の効果)
以上、詳細に説明して明らかなように本発明は、リング信号の鳴動回数、または時間等の入力状態によって、あらかじめ記憶されたメツセージを選択して、発呼者の電話番号と共に表示手段に表示させるものであり、その表示は電話回線の閉結によらずに、予め記憶されたメツセージがら選択して行なうから、電話料金が不要であり、留守番電話として用いて実用的効果が大きい。」(第3頁左下欄13行目?右下欄4行目)。

上記周知例1の記載のうち、ロ)の項に摘記されたリング信号検出手段における最初の「交流信号の立ち上がり」は呼出信号を受信したタイミングであり、リング信号の終了を示す信号は呼出中止のタイミングであることが明らかである。すると、上記周知例1の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、電話機において、呼出信号を受信してから呼出中止までの期間を、リンガ信号の回数(鳴動回数)で計測するか呼出時間(鳴動時間)で計測するかは、適宜選択される事項であるということができる。

C.原査定の拒絶の理由に引用され、本願のもとの出願の日前である平成5年12月27日に頒布された特開平5-347659号公報(以下、「周知例2」という。)には、「電話機」の発明に関し、図面とともに以下イ)、ロ)の記載があり、本願のもとの出願の日前である昭和62年6月12日に頒布された特開昭62-130045号公報(以下、「周知例3」という。)には、「ディジタル電話機」の発明に関し、図面とともに以下ハ)の記載がある。
イ)「【目的】 応答した場合と応答しなかった場合を区別して表示することにより、未応答の呼に対して確実に電話をかけることのできるようにする電話機を実現。
【構成】 電話機は、電話回線1から入力される電話番号データを検出する電話番号検出回路4とリング信号終了検出回路14とを有し、リング信号に応答したか否かを制御手段13によって検出し、さらに制御手段13によって電話番号検出回路4が検出する電話番号を応答した呼とそうでない呼に区別して表示回路10に表示させる。」(周知例2、第1頁左下欄、(57)【要約】)、
ロ)「【0009】次に、記憶された電話番号を表示させる場合について説明する。表示スイッチ12を押下すると、制御手段13は記憶回路9からのデータを読み出し表示回路10に表示させる。ここで未応答のフラグが付与された電話番号は図5に示すように電話番号に先頭にドットを表示するよう表示回路10を制御する。」(周知例2、第3頁3欄)、
ハ)「つぎに、通話状態になったか未通話かを判断(ステップ3-3)して、通話した場合には、通話可フラッグを先の発呼者許号メモリにセットし、発呼者番号メモリアドレスを+1加算する(ステップ3-4)。未通話の場合には、通話不可フラッグを発呼者番号メモリにセットし、上記と同様に発呼者番号メモリアドレスを+1加算する(ステップ3-5)。以上の動作により、発呼者番号はRAM (9)上に第2図の記憶形態図に示されるごとく記憶される。
つぎに、第4図をもとに記憶された発呼者番号の確認動作について説明する。確認スイッチ(13)が押下されると、(スイッチ4-2)、発呼者番号メモリアドレスは-1され、最も新しい発呼者番号アドレスとなり、そのアドレスに記憶された発呼者番号と通話・未通話のフラッグを表示メモリに転送するとともに表示器(11)に出力する(ステップ4-3)。」(周知例3、第3頁左上欄18行目?右上欄15行目)。

上記周知例2の図5に記載された未応答と電話番号のリストや、周知例3の第2図に記載された通話/未通話と発呼者番号メモリのリストは、着信に応答したか否かを示す応答情報からなる着信履歴情報であるということができるから、上記周知例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、電話において、「着信に応答したか否かを示す応答情報を着信履歴情報として表示する」ことは周知である。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

a)引用発明の「着呼時の呼び出し中のリンガ信号の回数」は、上記刊行物の段落0025や0040の記載によれば、第6頁図2において、着呼からリンガオフ124に至るまで、又は、オフフック111によりリンガオフに至るまでのリンガ信号の回数を指すのであるから、「呼出信号を受信してから呼出中止までのリンガ信号の回数」であることが明らかである。
すると、引用発明の「着呼時の呼び出し中のリンガ信号の回数」と、本願発明の「呼出信号を受信してから呼出中止までの呼出時間」は、何れも、呼出信号を受信してから呼出中止までの呼出期間中に累積して計測され、呼出期間を特定可能な情報であるから、「呼出信号を受信してから呼出中止までの呼出期間特定情報」として一致する。
b)引用発明の「カウント」、「カウント手段」、「LCD」は、それぞれ本願発明の「計測」、「計測手段」、「表示手段」に相当することが明らかである。
c)引用発明において、LCDに表示される「リンガ信号の回数」は、「計測結果」であるということができる。
d)引用発明の「留守番電話機」と本願発明の「携帯電話機」は、電話機」として一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致し、相違する。

(一致点)
呼出信号を受信してから呼出中止までの呼出期間特定情報を計測する呼出期間特定情報計測手段と、前記呼出期間特定情報計測手段により計測された呼出期間特定情報の計測結果を表示する表示手段と、を備えたことを特徴とする電話機。

(相違点1)
呼出期間特定情報に関して、本願発明では「呼出時間」であり、「呼出時間計測手段」を備えるのに対して、引用発明では「リンガ信号の回数」であり、「リンガ信号の回数を計測する計測手段」を備える点。

(相違点2)
本願発明は、着信に応答したか否かを示す応答情報を着信履歴情報として表示するのに対して、引用発明は当該構成を備えていない点。

(相違点3)
本願発明は携帯電話機であるのに対して、引用発明は留守番電話機である点。

4.当審の判断
そこで、相違点について検討する。

(相違点1について)
上記「2.引用発明及び周知技術」の「B.」の項で述べたとおり、電話機において、呼出信号を受信してから呼出中止までの期間を、リンガ信号の回数(鳴動回数)で計測するか呼出時間(鳴動時間)で計測するかは、適宜選択される事項であるということができる。
すると、上記引用発明の「リンガ信号の回数」に換えて、「呼出時間」を計測するようにし、本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
上記「2.引用発明及び周知技術」の「C.」の項で述べたとおり、電話において、「着信に応答したか否かを示す応答情報を着信履歴情報として表示する」ことは周知である。
そして、引用発明と当該周知のものは、着信履歴を表示する電話機という点で共通するとともに、当該周知のものを引用発明に適用することに特段の阻害要因は見あたらないから、上記周知のものを引用発明に適用して本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3について)
留守番電話機能を搭載した携帯電話機は周知である(必要があれば、例えば、特開平6-253003号公報や特開平5-130214号公報を参照)から、引用発明の構成を携帯電話機で実現して本願発明のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-02 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-11-21 
出願番号 特願2005-190782(P2005-190782)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 北村 智彦
宮下 誠
発明の名称 携帯電話機及び携帯電話機の通信方法  
代理人 鈴木 均  

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