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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C08C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 C08C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08C
管理番号 1149684
審判番号 不服2003-24006  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-11 
確定日 2007-01-05 
事件の表示 平成 6年特許願第183798号「ゴム製品の製法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月 7日出願公開、特開平 7- 62003〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成6年8月4日(優先権主張 1993年8月5日 米国(US))の出願であって、平成14年12月16日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成15年3月25日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成15年9月9日付けで特許法29条第1項第3号に該当するとの理由で拒絶査定がなされ、これに対し平成15年12月11日に審判請求がなされ、平成15年12月25日に審判請求書の手続補正書(方式)とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.平成15年12月25日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年12月25日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成15年12月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1?17を、
「【請求項1】 塩安定なポリマー分散液および天然ゴムラテックス用の無機塩凝固剤、ワックスエマルジョンおよびカチオン界面活性剤とを含む、天然ゴムラテックス用凝固剤組成物。
【請求項2】 ワックスエマルジョンがポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項3】 ポリマー分散液がポリクロロプレン又はポリウレタンである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】 ポリマー重量が20重量%以下である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】 無機金属塩が2価のカチオン金属塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】 塩が硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マグネシウムおよび硫酸アルミニウムからなる群から選ばれる、請求項5記載の組成物。
【請求項7】 ワックスエマルジョンがポリエチレンワックスであり、ポリエチレンワックスが組成物の10重量%以下の量で存在する、請求項2記載の組成物。
【請求項8】 ワックスエマルジョンがポリプロピレンワックスであり、ポリプロピレンワックスが組成物の10重量%以下の量で存在する、請求項2記載の組成物。
【請求項9】 カチオン界面活性剤が組成物の15重量%以下の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】 予熱された物品用浸漬型を、請求項1記載の組成物に浸漬して凝固剤被覆浸漬型を形成する工程、
凝固剤被覆浸漬型を複合天然ゴムラテックスに浸漬してゲル状ラテックスフィルムを作る工程、
ゲル状ラテックスフィルムを浸出させる工程、
ゲル状ラテックスフィルムをビニルメチルエーテルおよびマレイン酸エステルの共重合体でオーバーディピングする工程、
オーブン中で浸漬型上の被覆されたゲル状のオーバーディピングされたラテックスフィルムを硬化させる工程、さらに、
その浸漬型をシリコンエマルジョンでオーバーディピングする工程、
を含む浸漬ゴム物品の製法。
【請求項11】 塩安定なポリマー分散液が塩安定なポリクロロプレン分散液である、請求項10記載の方法。
【請求項12】 ポリクロロプレン含量が全凝固剤含量の2%から8%の範囲である、請求項11記載の方法。
【請求項13】 無機金属塩が硝酸カルシウムの水溶液である、請求項10記載の方法。
【請求項14】 硝酸カルシウム含量が組成物の20%から35%までの範囲である、請求項13記載の方法。
【請求項15】 塩安定なポリマー分散液を硬化させるために架橋剤を添加する、請求項10記載の方法。
【請求項16】ワックスエマルジョンがポリエチレンワックスであり、ポリエチレンワックスが組成物の0.5%から5%の範囲である、請求項10記載の方法。
【請求項17】 ワックスエマルジョンがポリプロピレンワックスであり、ポリプロピレンワックスが組成物の0.5%から5%の範囲である、請求項10記載の方法。」と補正するものである。

2.補正の適否について
(1)特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項違反について
ア.補正後の請求項1に記載された「ワックスエマルジョン」は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)に記載されていない事項である。
当初明細書には剥離剤として「ポリエチレンワックスエマルジョン」を用いることが記載されているものの、その上位概念である「ワックスエマルジョン」については何等記載されていない。
また、本願出願時の技術常識に照らして「ポリエチレンワックスエマルジョン」との記載から「ワックスエマルジョン」が記載されているに等しいと認めることもできない。
したがって、「ワックスエマルジョン」は当初明細書に記載した事項の範囲内のものではない。

イ.補正後の請求項2、8、17に記載された「ポリプロピレンワックス」は、当初明細書に記載されていない事項である。
当初明細書には剥離剤として「ポリエチレンワックスエマルジョン」を用いることが記載されているものの、「ポリプロピレンワックスエマルジョン」については何等記載されていない。
また、本願出願時の技術常識に照らして「ポリエチレンワックスエマルジョン」との記載から「ポリプロピレンワックスエマルジョン」が記載されているに等しいと認めることもできない。
したがって、「ポリプロピレンワックスエマルジョン」は当初明細書に記載した事項の範囲内のものではない。

なお、この点について、請求人は審判請求書において、「ポリプロピレンワックスのサポートとなる記載は発明の詳細な説明の実施例にあります。実施例IIで使用されているMichemlube 43040がポリプロピレンワックスエマルジョンであります。」と主張している。
しかしながら、実施例IIの「Michemlube 43040」については、当初明細書に何等説明はなされておらず、これが「ポリプロピレンワックスエマルジョン」であることは何等記載されていないし、当該記載から「ポリプロピレンワックスエマルジョン」が自明とは認められない。

ウ.以上のことから、本件補正は、平成6年法律第116号改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定を満たしていない。

(2)特許法第17条の2第3項違反について
補正後の請求項8および17は、補正前の特許請求の範囲に記載のない「ポリプロピレンワックス」に係る限定を付したものであり、補正前の特許請求の範囲にはこれに対応する請求項がない。
したがって、補正後の請求項8および17は補正前の特許請求の範囲のいずれかの請求項を限定した関係になっていない。
そうであるから、本件補正は、平成6年法律第116号改正前特許法第17条の2第3項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当しない。 また、同法第17条の2第3項に規定する、請求項の削除(第1号)、誤記の訂正(第3号)、明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれにも該当しない。

(3)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成6年法律第116号改正前特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の規定および同法第17条の2第3項の各号の規定を満たしておらず、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本件審判請求について
1.本願発明
平成15年12月25日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1乃至17に係る発明は、平成15年3月25日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至17に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるが、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】 塩安定なポリマー分散液および天然ゴムラテックス用の無機塩凝固剤とを含む、天然ゴムラテックス用凝固剤組成物。」

2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。

引用文献1:特開昭59-199701号公報
ア.
「(1) 水に、ラテックスゴムと該ラテックスゴムの量に応じた界面活性剤と、2価または3価の金属塩とがエマルジョン状態で混合していることを特徴とするラテックスゴム用凝固剤。」(特許請求の範囲第1項)
イ.
「技術分野
本発明は、ラテックスゴムの凝固剤に関するものである。」(第1頁左下欄下から2行?右下欄1行)
ウ.
「本発明の目的を達成するものは、水にラテックスゴムと該ラテックスゴム量に応じた界面活性剤と2価または3価の金属塩とが、エマルジョン状態で混合していることを特徴とするラテックスゴム用凝固剤である。さらに前記界面活性剤が、アニオン系活性剤、カチオン系活性剤、両性活性剤、ノニオン系活性剤のいずれかであるラテックスゴム用凝固剤であり、さらに、前記2価または3価の金属塩が塩化カルシウム、塩化バリウム、硝酸カルシウム、硝酸バリウムのいずれかであるラテックスゴム凝固剤である。」(第2頁左上欄15行?右上欄5行)
エ.
「本発明に用いられるラテックスゴムは、液状のものであって天然ラテックスゴム、さらに合成ラテックスゴム、・・・等種々のラテックスゴムを用いることができる。さらに、このラテックスゴムには、・・・、安定剤として水酸化カリウム等が適宜添加されている。
また、本発明に用いられる界面活性剤は、ラテックスゴムの界面エネルギーつまり表面張力を低下させる物質であって、アニオン系界面活性剤たとえば脂肪酸塩類、・・・等があり、カチオン系界面活性剤としては、脂肪族アミン塩類、・・・等があり、」(2頁右上欄11行?左下欄12行)

3.対比・判断
引用文献1には、本願発明と同様なラテックスゴム用凝固剤(摘示記載イ.)に関し、「(1) 水に、ラテックスゴムと該ラテックスゴムの量に応じた界面活性剤と、2価または3価の金属塩とがエマルジョン状態で混合していることを特徴とするラテックスゴム用凝固剤。」(摘示記載ア.)の発明(以下、「引用文献発明」ともいう。)が記載されている。
ここで、ラテックスゴムという用語が2カ所で用いられているが、前者のラテックスゴムは凝固剤成分となるものであり、後者のラテックスゴム用との記載におけるラテックスゴムは凝固剤の適用対象となるものであるが、これを区別するために、以下、前者を凝固剤ラテックスゴム、後者を被凝固ラテックスゴムという。
そして、凝固剤ラテックスゴムは、「液状のものであって天然ラテックスゴム、さらに合成ラテックスゴム、・・・等種々のラテックスゴムを用いることができる」(摘示記載エ.)ものであり、これが水にエマルジョン状態で混合しているものは、ポリマー分散液といえるものである。
さらに、2価または3価の金属塩として例示されている物(摘示記載ウ.)は、本願発明の天然ゴムラテックス用の無機塩凝固剤として例示されている物(請求項4および5、明細書段落【0009】)である。
また、天然ゴムラテックスが、引用文献発明の被凝固ラテックスゴムに包含されるものであることは明らかである。
また、本願発明は「塩安定なポリマー分散液および天然ゴムラテックス用の無機塩凝固剤とを含む、天然ゴムラテックス用凝固剤組成物。」であるから、他の成分を含んでいてもよいものであり、界面活性剤を含む態様を包含するものである。
そうであるから、本願発明と引用文献発明とは、下記の一致点を有し、下記の相違点で一応相違する。

【一致点】
「ポリマー分散液および天然ゴムラテックス用の無機塩凝固剤とを含む、天然ゴムラテックス用凝固剤組成物。」である点。
【相違点】
本願発明のポリマー分散液は「塩安定な」との特定がなされているのに対し、引用文献発明では、かかる特定はなされていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
まず、本願明細書には、「塩安定なポリマー分散液」における「塩安定」の意味について何等記載されていない。
そこで、その意味について検討するが、技術常識に鑑みて、次のア.およびイ.の2通りの意味が考えられる。
ア.本願発明の凝固剤組成物は無機塩凝固剤を含むものであり、その無機塩に対して安定である、すなわちポリマー分散液が無機塩によって分散状態が破壊されずに安定であるとの意味。
イ.ポリマー分散液が塩によって安定化されている、すなわち、塩によって安定な分散状態となっているとの意味。

これを踏まえて、以下、引用文献発明との相違点を検討する。
ア.の場合
引用文献発明は、「水に、ラテックスゴムと該ラテックスゴムの量に応じた界面活性剤と、2価または3価の金属塩とがエマルジョン状態で混合している」のであるから、すなわち、エマルジョンとして安定に存在していると解するのが相当であり、無機塩に対して安定であるポリマー分散液といえる。
イ.の場合
引用文献発明の凝固剤ラテックスゴムは、「安定剤として水酸化カリウム等が適宜添加されている」(摘示記載エ.)ものであるから、塩によって安定化されているポリマー分散液といえる。
さらに、引用文献発明の界面活性剤は、「本発明に用いられる界面活性剤は、ラテックスゴムの界面エネルギーつまり表面張力を低下させる物質であって、アニオン系界面活性剤たとえば脂肪酸塩類、・・・等があり、カチオン系界面活性剤としては、脂肪族アミン塩類、・・・等があり」(摘示記載エ.)と記載されているように塩を含むものであるが、表面張力を低下させる物質であるということは、凝固剤ラテックスゴムの分散性を向上する、すなわち安定化に作用する物質といえるものである。したがって、凝固剤ラテックスゴムは塩(界面活性剤)によって安定化されているポリマー分散液といえる。
以上のように、いずれにしても相違点は実質的な相違点とはいえない。
したがって、本願発明と引用文献発明とは、その構成要件がことごとく一致する。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、請求項2?17に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-07 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-24 
出願番号 特願平6-183798
審決分類 P 1 8・ 572- Z (C08C)
P 1 8・ 113- Z (C08C)
P 1 8・ 561- Z (C08C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 一色 由美子
宮坂 初男
発明の名称 ゴム製品の製法  
代理人 栗田 忠彦  
代理人 社本 一夫  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  

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