• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1149698
審判番号 不服2004-22290  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-28 
確定日 2007-01-05 
事件の表示 平成 8年特許願第216952号「画像処理装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月20日出願公開、特開平10- 51638〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は、平成8年7月31日の出願であって、平成16年9月16日付で拒絶査定され、これに対して同年10月28日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
2. 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。) は、平成15年11月25日付の手続き補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「元画像の濃度と量子化後の濃度との差を、量子化誤差として着目画素の周辺画素に配分し、平均濃度を前記元画像の濃度と等しくする誤差拡散処理をラスタ単位で行う画像処理装置において、
前記誤差拡散処理が行われる方向を色毎かつ各色のラスタ毎に設定する方向設定手段を備えることを特徴とする画像処理装置。」

3. 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平01-255379号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 「これらの色分解画像の量子化の方法として、平均誤差最小法がよく利用されている。これは、各色分解画像の各画素を所定方向の主走査及び副走査により順に抽出していき、その抽出された注目画素を次のようにして量子化するものである。まずその注目画素の近傍に配置され、且つ既に量子化されている評価画素を抽出する。次に各評価画素を重み付けし、その総和を計算する。この重み付けの値としては、第3図の(a)に示すような重みマトリックスがよく利用されている。ここで、「記号*」は注目画素の位置を示している。次に前記評価画素の重み付けされた量子化誤差の総和と、同様に重み付けされた注目画素における量子化誤差の和が最小となるように注目画素を量子化する。」(1頁右欄19行?2頁左上欄12行)

イ 「以下、本発明のカラー画像処理方法を二値化に利用したカラーコピー装置を第1の実施例として図面を参照して説明する。」(2頁左下欄11?13行)

ウ 「次に本発明の第2の実施例を以下に説明する。この第2の実施例は、第1の実施例と同一の構成を有している。ただしリードオンリメモリ52には、一組の重みマトリックス(第1の重みマトリックス)しか記憶されておらず、またプログラムも異なり、従ってプロセッサ51の作用も第5図に示すフローチャートのように変更される。
まず、プロセッサ51はステップS71において、リードオンリメモリ52に記憶された第1の重みマトリックスを読取る。次にステップS72に進み、前記メモリ48をアクセスして前記赤色の色分解画像を読み出し、原画像に対して右方向を主走査、下方向を副走査として各画像を走査し、先に説明した平均誤差最小法により前記第1の重みマトリックスを用いて順次二値化(量子化)していく。この二値化された各画素はメモリ53に記憶されていく。次にステップS73において、このメモリ53に記憶された、各画素の値はモノクロレーザプリンタ1により記録用紙22に打出され、マスク原版22Rとなる。
次にステップS74に進み、プロセッサ51はメモリ49をアクセスし、該メモリ49に記憶される緑色の色分解画像を上下のみ逆となるように書換える。次にステップS75に進み、プロセッサ51はメモリ49をアクセスして、前記上下が逆となった緑色の色分解画像を読出し、その上下画像逆になった緑色の色分解画像に対して右方向を主走査、下方向を副走査として走査し、前記ステップS72と同様に第1の重みマトリックスを用いて2値化していき、メモリ53に記憶させていく。次にステップS76に進み、プロセッサ51はメモリ53をアクセスして、該メモリ53に記憶された前記上下が逆になった緑色の色分解画像を2値化した画像を更に上下が逆となるように書換える。従ってこのメモリ53に記憶される画像は、原画像の緑色成分を右方向に主走査、上方向に副走査して2値化したものと等価である。次にステップS77に進み、モノクロレーザプリンタ1によりその画像が記録用紙22に打出され、マスク原版22Gとなる。
次にステップS78に進み、プロセッサ51はメモリ50をアクセスし、該メモリ50に記憶される青色の色分解画像を上下及び左右が逆となるように書き換える。次にステップS79に進み、プロセッサ51はメモリ50をアクセスして、前記ステップS75と同様に処理を行う。次にステップS80に進み、メモリ53をアクセスして、該メモリ53に記憶された前記上下及び左右が逆となった青色の色分解画像を2値化した画像を更に上下及び左右が逆となるように書換える。従って、このメモリ53に記憶される画像は、原画像の青色成分を、左方向に主走査、上方向に副走査して2値化したものと等価である。次にステップS81に進みモノクロレーザプリンタ1によりその画像が記録用紙22に打出され、マスク原版22Bとなる。」(4頁左下欄12行?5頁右上欄7行)

エ 「以上詳述したように本発明では、平均誤差最小法により発生する縞模様を、少なくとも2色に関して無相関となるように設定しているため、各色の量子化された色分解画像を合成した場合に縞模様が目立たない。」(5頁左下欄8?12行)

したがって、上記アないしエの記載及び図面から、引用例1には、
「注目画素の近傍の既に量子化されている評価画素の重み付けされた量子化誤差の総和と、同様に重み付けされた注目画素における量子化誤差の和が最小となるように注目画素を量子化する平均誤差最小法を用いたカラーコピー装置において、赤色の色分解画像に対して右方向を主走査、下方向を副走査として走査し、平均誤差最小法により前記第1の重みマトリックスを用いて順次2値化し、緑色の色分解画像に対して右方向に主走査、上方向に副走査して2値化し、青色の色分解画像に対して左方向に主走査、上方向に副走査して2値化するカラーコピー装置」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

4. 対比
引用発明1の「カラーコピー装置」は、平均誤差最小法を用いた二値化処理という画像処理を行うものであるから「画像処理装置」であるといえる。
引用発明1の「注目画素」は、本願発明の「着目画素」に相当する。
引用発明1の「平均誤差最小法を用いた二値化処理」は、注目画素と近傍画素との間で、所定の重み付けを行い量子化誤差を拡散させるものであるから、画像の量子化において普通に行われている「誤差拡散処理」であるといえる。
引用発明1は、赤色、緑色、青色それぞれに異なる走査方向で二値化を行っており、各色毎に誤差拡散処理の方向を設定する手段を有しているといえる。
したがって、本願発明と引用発明1とは、「誤差拡散処理を行う画像処理装置において、誤差拡散処理が行われる方向を色毎に設定する」点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)
本願発明は誤差拡散処理として「元画像の濃度と量子化後の濃度の差を、量子化誤差として着目画素の周辺画素に配分し、平均濃度を前記元画像の濃度と等しくする」のに対して、引用発明1は誤差拡散処理として「注目画素の近傍の既に量子化されている評価画素の重み付けされた量子化誤差の総和と、同様に重み付けされた注目画素における量子化誤差の和が最小となるように注目画素を量子化する」点。

(相違点2)
本願発明は、該誤差拡散処理が行われる方向を「色毎かつ各色のラスタ毎に設定する」のに対して、引用発明1は、誤差拡散処理が行われる方向を「色毎に設定する」点。

5. 当審の判断
(1) (相違点1)について
画像の量子化のための誤差拡散処理において、着目画素から周辺画素へ量子化誤差を拡散させること、あるいは、既知の周辺画素から着目画素へ量子化誤差を拡散させることは、共に周知の技術であり、また、引用発明1における、「注目画素の量子化誤差と重み付けした近傍の画素の量子化誤差との総和を最小にする」ことは、注目画素と近傍画素との「平均濃度を元画像と等しくする」ことであるのは、明らかである。
したがって、引用発明1において、誤差拡散処理として「元画像の濃度と量子化後の濃度の差を、量子化誤差として着目画素の周辺画素に配分し、平均濃度を前記元画像の濃度と等しくする」ことは、当業者が適宜実施できた設計事項にすぎない。

(2) (相違点2)について
画像の量子化のための誤差拡散処理において、縞パターンの発生を防止するためにラスタ毎に処理方向を変化させることは、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平03-151762号の「以上説明したように本実施例によれば、多値画像情報を誤差拡散法により二値化する際に、二値化する走査方向を列毎に、または所定列毎に、任意に切り換えることにより、拡散の方向を均一でなくすることができ、低濃度部で表れる斜めの方向のドットつながりや、高濃度部で表れる白抜けのつながりを抑制することができる。」(5頁左下欄4?10行)の記載、あるいは、特開平07-212593号公報の「【0001】【産業上の利用分野】本発明は画像処理方法及び装置に関し、特に入力画像濃度と出力画像濃度等の差を誤差拡散法等により保存しつつ、入力データを2値又は多値データに量子化処理する画像処理方法及び装置に関する。」、及び「【0021】図1の回路は、入力データの1ライン毎に左から右への→方向への処理と、右から左への←方向への処理を切り換える。図1に示した如く、加算器12からの誤差データの誤差バッファ14への格納位置は→方向への処理の場合と、←方向への処理の場合とで変化する。この制御は不図示の制御回路により実行される。
【0022】この1ライン毎に処理方向を→方向と←方向と変化させるジグザグ処理を実行することで誤差拡散法を実行した際問題となっていた独特な縞パターンの発生をも防止できる。」の記載にもみられるように、周知の技術である。
したがって、引用発明1において、誤差拡散処理による量子化処理が行われる方向を、色毎かつラスタ毎、つまり「色毎かつ各色のラスタ毎」に設定することは、当業者が容易に想到できたものである。

(3) そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。

(4) 加えて付言すれば、本願発明は、以下の理由によって、当審で新たに発見された特開平04-264884号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいても、当業者が容易に想到できたものである。

引用例2には、「【請求項1】 各色毎に、注目画素において階調画像の入力濃度と閾値を比較して二値化し、この二値化の際に発生した誤差を所定の割合で未処理の周辺画素に配分して後続する二値化の際の前記入力濃度を変更して各色の階調画像を得、この各色の階調画像を重ね合わせてカラー画像を得る階調カラー画像の二値化方法において、二値化処理の方向を1ラインを最小単位として反転させるとともに、カラー画像を構成する各色のうち、少なくとも2色の画像の二値化処理方向を互いに逆向きになるようにしたこと」(2頁左欄【請求項1】)、及び「【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題点を解決するために案出されたものであって、簡単な構成の回路を使用し、誤差拡散法による二値化に伴って発生する特有の縞模様状の画像ノイズ及び低濃度域における濃度むらを、全体として計算量を抑制しつつ防止して、高品位なカラー画像を再現することを目的とする」(段落【0007】)、及び「【0011】図1は、本発明の階調カラー画像の二値化方法が適用されるカラー画像処理装置の概略構成を示す。」と記載されており、「誤差拡散法による二値化処理において、二値化処理の方向を1ラインを最小単位として反転させること、および、少なくとも2色の画像の二値化処理方向を互いに逆向きになるようにするカラー画像処理装置」(以下、「引用発明2」という。)が示されていると認められる。
そして、本願発明の「誤差拡散法による二値化処理」、及び「ラスタ」、及び「画像処理装置」は、引用発明2の「誤差拡散処理」、及び「ライン」、及び「カラー画像処理装置」に相当する。
また、画像の量子化のための誤差拡散処理において、量子化誤差の分配の際に「平均濃度を前記元画像の濃度と等しくすること」は、普通に行われていることであるから、引用発明2の誤差拡散処理でも「元画像の濃度と量子化後の濃度との差を、量子化の誤差として着目画素の周囲画素に分配し、平均濃度を前記もと画像の濃度と等しくすること」は当然行われているといえる。
すると、本願発明と引用発明2とは、「元画像の濃度と量子化後の濃度との差を、量子化誤差として着目画素の周辺画素に配分し、平均濃度を前記元画像の濃度と等しくする誤差拡散処理をラスタ単位で行う画像処理装置において、誤差拡散処理の方向を設定する」点で一致し、本願発明は、誤差拡散処理の方向を「色毎かつ各色のラスタ毎に設定する」のに対して、引用発明2では「誤差拡散処理の方向を1ラインを最小単位として反転させること、および、少なくとも2色の画像の誤差拡散処理の方向を互いに逆向きになるようにする」点で相違する。
しかし、引用発明2において、「二値化処理の方向を1ラインを最小単位として反転させること、および、少なくとも2色の画像の二値化処理方向を互いに逆向きになるようにする」とは、ラスタ及び色の所定の組み合わせによって二値化処理の方向を設定することであって、これをすべてのラスタと色の組み合わせである、「各色毎かつ各色のラスタ毎」とすることは、当業者が適宜実施できた設計事項にすぎない。
したがって、引用発明2に基づいて本願発明とすることも、当業者が容易に想到できたものである。

6. むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-02 
結審通知日 2006-11-07 
審決日 2006-11-20 
出願番号 特願平8-216952
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 純一仲間 晃  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 田中 幸雄
脇岡 剛
発明の名称 画像処理装置および方法  
代理人 村松 聡  
代理人 二宮 浩康  
代理人 後藤 夏紀  
代理人 別役 重尚  
代理人 池田 浩  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ