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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1149750
審判番号 不服2004-5176  
総通号数 86 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-02-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-12 
確定日 2007-01-04 
事件の表示 平成6年特許願第197306号「超音波センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成8年2月16日出願公開、特開平8-43522〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯及び本願発明
本件は、平成6年7月29日の出願であって、拒絶査定が平成16年2月2日付けでされ(同月10日発送)、この拒絶査定に対する審判が同年3月12日に請求されたところ、当審において発出した平成18年8月3日付けの拒絶理由通知書に対して、同年10月10日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年10月10日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
【請求項1】 セラミック振動子と、該セラミック振動子の一方の面に接着した金属板と、該金属板に接着した硬質の発泡スチロールとからなる送受信素子であって、前記発泡スチロールの面より超音波を送受信するように構成したことを特徴とする超音波センサ。


2 刊行物に記載された事項
(1)引用例1
当審の拒絶理由において引用された、本願の出願前の平成5年7月23日に頒布された刊行物である特開平5-183996号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0020】【実施例】図1は本発明の一実施例を示した実施例構成図である。図1において、10は低周波用のランジュバン振動子であり、一対の圧電振動子1a,1bの両側にジュラルミン等の金属製の共振ブロック5a,5bを設けている。圧電振動子1aと1bは中央のホット側電極8を介して密着され、反対面にそれぞれグランド側電極9a,9bを設けており、グランド側電極9a,9bの外側に共振ブロック5a,5bを設けている。また、ランジュバン振動子10の長さは使用波長λの半分となる。」

イ 「【0021】このような低周波用のランジュバン振動子10に加えて本発明にあっては、ランジュバン振動子10の一方の音響放射面11aにn層の1/4波長の音響整合層6を装着したことを特徴とする。音響整合層6の層数は1層,2層,3層等、必要に応じて適宜に層数を定めることができる。このような構造をもつ本発明の広帯域超音波探触子は水を介して30kHz前後の低周波の超音波の送受信を行う。このような本発明の広帯域超音波探触子における水を媒体とした低周波の超音波伝播の特性を評価するため、図2に示すような構成を考える。」

ウ 「【0022】図2において、12は送信回路であり、使用中心周波数foの送信電圧Vsを発生する信号電圧源14と内部インピーダンスZsを用いて表現でき、図1に示したようにランジュバン振動子10と整合層6を用いた送信振動子15を駆動している。ここで、送信振動子15における整合層6を設けたと反対側の音響放射面には独立気泡スポンジ7を設けることで空気で終端し、独立気泡スポンジ7による終端で背面での反射を大きくして受信感度を増大させるようにしている。尚、独立気泡スポンジ7としては伝播媒体としての水に比べ十分に音響インピーダンスが小さければよいことから、例えば発泡スチロール等を用いてもよい。」

エ 「【0033】尚、上記の実施例にあっては共振ブロック5a,5bとしてジュラルミンを例にとるものであったが、伝播媒体としての水の音響インピーダンスに近いものであれば他の金属でよく、例えばアルミニウムを使用してもよい。また、上記の実施例にあっては一対の圧電振動子1a,1bを用いた場合を例にとるものであったが、単一の圧電振動子1aのみを用いた構造であっても同様である。」

(2)引用発明
上記(1)の摘記事項アより、「一対の圧電振動子1a,1bの両側にジュラルミン等の金属製の共振ブロック5a,5b」を設けた「ランジュバン振動子」が読み取れる。
同摘記事項イより、「超音波の送受信を行う」「広帯域超音波探触子」において、「ランジュバン振動子10の一方の音響放射面11aにn層の1/4波長の音響整合層6を装着」し、「音響整合層6の層数は1層,2層,3層等、必要に応じて適宜に層数を定めることができる」点が読み取れる。また、図1より、「音響整合層6」は「プラスチック層」であることが読み取れる。
同摘記事項エより、「単一の圧電振動子1aのみを用いた構造」であってもよい点が読み取れる。
してみれば、引用例1には、「単一の圧電振動子1aにジュラルミン等の金属製の共振ブロックを設けたランジュバン振動子を用いた、超音波の送受信を行う広帯域超音波探触子において、ランジュバン振動子10の一方の音響放射面11aにn層の1/4波長の音響整合層6を装着し、音響整合層6の層数は1層,2層,3層等、必要に応じて適宜に層数を定めることができるプラスチック層であることを特徴とする広帯域超音波探触子」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。


3 対比・判断
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 本願発明(以下、「前者」という。)と引用発明(以下、「後者」という。)とを対比すると、後者の「超音波の送受信を行う広帯域超音波探触子」は、前者の「超音波を送受信するように構成したことを特徴とする超音波センサ」に相当し、後者の「ランジュバン振動子」の要素である「圧電振動子」は、圧電セラミックスとしての性質を有することから、前者の「セラミック振動子」に相当する。

イ 後者の「ジュラルミン等の金属製の共振ブロック」は、圧電振動子の一方の面に接して設けられていることが図1より読み取れるから、前者の「金属板」と、「セラミック振動子の一方の面に接して設けられた金属板」という点で共通する。

ウ 後者の「音響整合層6」は、「金属製の共振ブロック」の一方の面である「音響放射面11a」に装着された「プラスチック層」であるから、前者の「硬質の発泡スチロール」と「金属板に接して設けられた音響インピーダンス整合手段」である点で共通し、「当該音響インピーダンス整合手段の面より超音波を送受信するよう構成」している点で、両者は共通する。

エ 後者の「圧電振動子」、「共振ブロック」及び「音響整合層」は、前者の「送受信素子」に相当する。

以上ア?エより、前者と後者とは
「セラミック振動子と、該セラミック振動子の一方の面に接して設けられた金属板と、該金属板に接して設けられた音響インピーダンス整合手段とからなる送受信素子であって、前記音響インピーダンス整合手段の面より超音波を送受信するように構成したことを特徴とする超音波センサ。」
という点で一致し、次の相違点Aで相違する。

[相違点A]
「音響インピーダンス整合手段」が、前者では「硬質の発泡スチロール」であるのに対して、後者では「プラスチック層」である点。

[相違点B]
前者では、「金属板」を「セラミック振動子の一方の面に接して設け」、「音響インピーダンス整合手段」を「金属板に接して設け」る際に、「接着」をしているのに対して、後者ではそのような構成を明示していない点。

(2)判断
以下、上記相違点について検討する。
[相違点A]について
「音響インピーダンス整合手段」として、いかなる材質のものを採用するかは、超音波が伝搬する媒質の特性に応じて、音響インピーダンスを整合させるための当業者が適宜為し得る設計事項にすぎず、例えば、当審の拒絶理由において引用された、本願の出願前の平成2年5月16日に頒布された刊行物である特開平2-127897号公報(以下、「引用例2」という。)にも、超音波が空中を伝搬する場合に、「音響整合層を発泡無機材料により形成」するとの記載がある。
したがって、「音響インピーダンス整合手段」の材質として、「硬質の発泡スチロール」等の発泡無機材料を採用することに当業者ならば格別の困難性はない。

[相違点B]について
超音波センサを構成する部材間を「接着」させることは、例えば、前掲の引用例2に記載されているように周知の技術であり(第2頁左下欄第15?17行参照)、かかる周知の技術を「金属板」と「振動子」の間、「金属板」と「音響インピーダンス整合手段」の間に適用して、相違点Bに係る構成を得ることに格別の困難性はない。

そして、本願発明の奏する効果は、引用例1及び2に記載された事項に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

なお、請求人は、意見書において、「(4)...刊行物2(当審注:本審決では「引用例1」に相当)に記載された発明は...ランジュバン振動子は、圧電体振動子と両側の金属製の共振ブロックが一体となったものであり、本願発明のように、セラミック振動子に単に金属を貼り付けたものではない。...(5)刊行物3(当審注:本審決では「引用例2」に相当)に記載された発明は...振動子に直接発泡無機材料を設けたものでは、振動子から発生した超音波は収束することなく発散し、又、対象物で反射された超音波も収束することなく発散する。...」と主張している。
しかしながら、引用例1の段落【0033】に「上記の実施例にあっては一対の圧電振動子1a,1bを用いた場合を例にとるものであったが、単一の圧電振動子1aのみを用いた構造であっても同様である。」と記載されているように、ランジュバン振動子は、単一の圧電振動子1aのみを用いて構成することが可能であり、その場合には、振動子の両側に金属製の共振ブロックを設ける必然性はなく、振動子と両側の共振ブロックで「一体」としなければ振動子として動作しないものでもない。そもそも本願発明は、単に「該セラミック振動子の一方の面に接着した金属板」とするのみであって、該セラミック振動子の他方の面に金属板が存在しないことまで排除していないのである。
また、送受信される超音波が「収束することなく発散」するか否かは、音響整合インピーダンスを如何に設定するかによるのであって、結局のところ音響整合手段の材料選択の問題に帰着し、発散することなく収束するような材料の選択を行うことは、当業者が適宜為し得る設計事項にすぎない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。


4 むすび
以上より、本願発明は、引用発明及び引用例2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-10-23 
結審通知日 2006-10-31 
審決日 2006-11-13 
出願番号 特願平6-197306
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 山川 雅也
濱野 隆
発明の名称 超音波センサ  
代理人 鈴木 和夫  

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